魔法少女リリカルなのは 炎雷春光伝   作:しばらく

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6話 若き稲妻

 

 撤退するなのは達を背に遊撃を開始する。此方の作戦を察したのか敵はさらなる動きに出る。

 地面に複数の魔法陣が浮かぶと同時に大型の甲虫が姿を表す。

 

「召喚獣! エリオくんこれって!」

「あの子が来てるんだ!」

 

「仕掛けてきたか」

 

 それだけではない、ガジェットの影を縫う様に猛スピードで接近する影を眼が捉えている。

 狙いはレリック、奪取が目的ではない足止めと撹乱だ。

ーー速いな…

 

「あれは、確かガリューって呼ばれてた……!」

 

ーーという事は……あった!

 先ほど送られてきた召喚師のデータに該当する物が見つかる。過去の戦闘記録を見るにエリオ達にはまだ難しい相手だろう。

 

「俺が追う、すまないが戦線の維持を頼む」

 

「はい!」

 

 並走して仕掛けるタイミングを伺う。敵はフェイントを織り交ぜ、此方を巻こうと駆ける。

 電気に変換された魔力で形成した雷刀を放つが、混在するガジェットを盾に上手く逃れる。

 しかし投擲を続ける。1射、2射、3射と繰り返し同じリズムで放つ。

ーー回避パターンは見えた、ここだ!

 

「紅蓮拳!」

 

 離れた先に姿を捉え拳を放つ、振り抜かれた拳は当然届かない。しかし拳を纏う炎は収束し直射砲となり敵へと迫る。

ーー捕えた!

 砲撃がその身を捉える瞬間、遥か後方にエネルギーの高まりを見た。

 解析をする間も無くエネルギーは放たれ針の穴を縫うように砲撃の鼻先を捕らえた。

 

「狙撃!、しかも、これは……はやてさん!」

 

『此方でも確認でてるよ、反応は市街地ビル群の直上からーーやっぱり戦闘機人も出張ってきた……』

 

 戦闘機人、との言葉が気になるが考えている暇はない、狙撃により砲撃の軌道は曲げられ敵は後方へ抜けた。

 加えて今度は此方が狙撃に怯え逃げ隠れる番だ。それでも届かせる訳にはいかない。

 

『スターズ隊のティアナに対応させるから、レオンくんは戦線に戻って」

 

 抜けていく敵のさらに後方、撤退部隊を見やる、髪をふたつ結びにした双銃の魔導師が振り向き迎撃体制に入る。これでは敵の狙い通り戦力が削られっ分散してします。

 

「いえ、追いつきます!、雷神装!」

 

 全身に雷を纏い駆け出す、その体は稲妻のように走り魔導師との間に滑り込む。

 

「振り返らずに、いけ!」

 

「は、はい!」

 

 多少の戸惑いを抑え彼女ティアナは返事をすると、再び地へと合流する。

 目の前の敵は此方を警戒して構えている。体は黒く肌は甲殻に覆われ腕からは刀のような刃が生えている。鋭い目が此方を睨むが、その瞳は知性を湛える光を宿している。

 

 気づけばエリオ達から少しばかり距離が開いている。

戦場を戻す必要がある、ならーー

 仕掛けようと一歩踏み出すと、同時に敵も身を屈め突っ込んでくる。ーーしかし狙いは読めている

 

「ーー今度は見えてる」

 

 そう呟き頭を右絵傾けると、まさに先ほどまで頭があった位置を光線が通り過ぎる。

 瞬きの間に再び光線が足を狙い放たれる、しかしその場には何も存在しない。ーー既に死角に入っている

 

「仲間ごと、なんて事はしないだろ」

「ッ!」

 

 射線の死角、ガリューの眼前まで一足飛びで迫る。現在までの戦いを監視していたのであれば敵はまだ今の速さに慣れていないのだろう。

 別段力を温存していた訳ではない、先ほどまではリオから離れられない枷があった。そのため過剰なスピードは必要なかっただけだ。

 

「お前ごと押し戻す!」

 

 突然俺が目の間に現れた事で驚愕し強張るその身を蹴り上げる。

 

「絶招炎雷砲!」

 

  高密度の魔力が練られた雷を纏った蹴りを受けた敵は、咄嗟に腕の刃で受けも耐えきれずにその刀身は砕ける。

  踏ん張りも虚しくその身は後ろへ吹き飛ぶ、ガジェットを撥ねながらも勢いが死ぬ事はなく戦場の広場を抜け林の中へ消える。

 残る敵の狙撃から晒された身を隠すため、ガジェットの群へ紛れ込む。

 

『レオンくん、狙撃手にはライトニング2……と言っても分からんか、ライトニング隊の副隊長が向かわせたから、もう心配はいらんで、』

 

「わかりました、あの……さっき言っていた戦闘機人とは何のことですか?」

 

『そうやね、反応が確認された以上は説明しておいた方がええかもな、うん、ーー彼女達はガジェットと同様にスカリエッティに造られた人の身体と機械の融合体、それが戦闘機人、魔力とは違う独自のエネルギーを運用してるんや…けど、ん……?』

 

「どうかしましたか?」

 

 戦闘機人についての説明を受けながら通信で映るはやての顔を見ると、言葉を紡ぐ毎に頭が傾いていく。

 

『もしかしてなんやけど……何か見えてたりする……?』

 

 俺の稀少技能であれば確認できる物に心当たりがあるのだろう。単刀直入に聞いてこないのは今までの違和感から此方に思惑がある事を察してくれたのかもしれない。

 此方も説明するわけには行かないのだ、何故ならーーこの通信は傍受されている。

 つながって暫くしてジャミングが無駄だと分かると、ジャミングは通信の傍受に切り替わったのだ。ーーだから……

 

「実は、"魔力探知“に敵の召喚師と思われる少女が映ってます、黙っていてすみません、リオの安全の為に、つい……」

 

 そう魔力探知だ、話の半ばで敵は傍受に切り替えた、俺の稀少資質については聞かれていない、であればこの言い方で誤魔化せるだろう。それに、はやてさんも違和感を感じるはずだ。こんな質問をして来るくらいだ見えないような敵に思い当たる何かが有るんだろう。

 

『ーーなるほどな、レオンくんの“置かれた状況“は理解したわ……言えないのも理由があっての事やろうし』

 

「全てを話せなくて申し訳ないです……」

 

『わかっとる、私たちも初めての事やないしな』

 

ーー通じた、それに……

 気づいたことに加えて、その存在を知っている事も伝えてくれた。此方が情報を隠していたにも関わらず。その優秀さに舌を巻く。であれば自分がリオに着いているよりよっぽど安全かもしれない。

 

「それに、助けて貰ってるのはうちらも同じや、困った事があればなんでも言ってくれてええから」

 

「ーーそれなら、早速相談が……」

  

 

         △▽△▽△▽

 

 

『エリオ、キャロ、ちょっとええか』

 

「「はい」」

 

「戦闘中に悪いな、実は俺から提案があるんだ」

 

「レオンさんから……?」

 

キャロが不安そうな声でそう答える。最初に一悶着起こした前科があるのだ、恐らくまたイチャモンを付けられるのかと思ったのだろう。

 

「そう身構えないで、もう必要ないなんて言わないから」

 

出来るだけ優しい声音でそう伝えると、2人の安心したような吐息が聞こえる、ーーそんなに気にしてたのか、悪い事をしたな

 しかし今回はその逆だ、先程はやてさんにした提案を再び2人に説明する。

 

「2人の力を見込んでお願いがあるんだ、ーー戦い方を変えたいんだ。

 今のままでも戦況は有利に運べるかもしれない、だけどもっと効率良く行こう」

 

「効率ですか?」

 

「ああ、2人の戦闘を見させてもらって気づいたんだが、面での制圧力に関しては俺よりもエリオくんの方が優れていると思ったんだ、だから君に縦横無尽に暴れてもらって撃ち漏らした敵を俺が各個撃破する、もちろんキャロさんの補助魔法も頼みたい」

 

 俺が外してる間も残された2人で上手く戦線を維持していたし、何よりも状況判断能力が良く鍛えられている。自分の能力を正しく認識し最適な行動に出ていた。

 

「エリオくんの負担が大きい事は重々承知してるから判断は任せる」

 

「ぼ、僕達も危険は承知の上で此処にいます!ーーやります、やらせて下さい!」

 

「私だって!」

 

ーー本当に、見誤ってたな

2人の揺るぎない意思に当てられグッと身体に力が入る。子供だから、未熟だからと心の何処かで無意識に侮っていた物が無くなる。

 

「改めてよろしく頼む、ーーエリオ、キャロ!」

 

「「はい!」」

 

 

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