魔法少女リリカルなのは 炎雷春光伝   作:しばらく

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7話 瞬きの攻防

「ストラーダ! はあぁぁぁぁぁ!」

 

「キャロ、補助魔法を頼む」

 

「はい、我が乞うは疾風の翼、《アクセラレーション》!」

 

 キャロから速度強化の魔法を受けエリオの撃ち漏らしたガジェットを叩く。作戦を変えてからは想定以上の撃破効率を誇っている。

 敵の足止めを開始してから、暫く経ったが未だ急場に陥る事はない。

 

「はやてさん、撤退部隊はどうなってますか」

 

『もうそろそろ安全圏に出るよ、みんなも脱退の準備をしといてな』

 

 いぜん敵が主力を打ち出してくる様子はない。地中の戦闘機人にも動きはなく撤退部隊を追う事はしない。どこかに潜む敵も細かく位置取りを変える事はあってもこの場に留まっている。ーー奪取は諦めたか……

 そんな考えなら既に撤退しているだろう。であれば狙いは一つ、最後の最後、ーー合流して気の抜けた一瞬に仕掛けてくる。

 

「であれば、此処で敵を一掃します」

 

『一掃って……広域魔法でも打ち込むつもりなん?」

 

「まぁ似たような物です、一度2人に下がってもらって高威力の魔法で一気に殲滅します」

 

「できるっちゅうなら私は大賛成や、合流も早いに越した事はないからなぁ」

 

このまま戦線を下げる形で敵を連れて行けば、離陸までのあいだ航空機を守る必要がある。そうなればリオやレリックの守りが薄くなってしまう。

 2人が頑張ってくれたおかげで、かなりの魔力を温存できた。その分で敵軍を一掃する、そうなれば敵主力に集中できる。

 

『2人の退避もうすぐ完了するよ』

 

「あっ、そうだ、もう一つ頼みがありました」

 

『?』

 

「リオに、大きな音が鳴るけど怖くないよって言っておいてください」

 

『ふふっ、過保護やねレオンくん、わかった心配しないよう伝えとくな、……ふふっ』

 

「っ! 急ぎますよ!」

 

 さっきまでの緊張感はどこに行ったのか、ごめんごめん、と謝りながらもその口元は微笑みを隠せていない。はやてさんとの通信に映るリオは少し落ち着きを取り戻しているみたいだった。

 終わったよ、と声をかけられて通信先のリオから視線を外す。

 

「それじゃあ、いきます。ーー《龍雲・焔》展開!」

 

 力強く踏み込み術式を“貼る”地面が爆ぜ、まるで沸騰する水面のように爆裂は伝染的に広がり戦場を覆う。地面に近いガジェットは、その爆炎に次々と焼かれていく。

 

「昇れ、《絶招・焔龍演盡》!」

 

 その足から地へ魔力を流し込むと数多の火柱がに上がる、否、柱では無い此れは龍だ。それも巨大な、総数4体の巨大な焔の龍が地面からうねり上がる。

 列車おも一飲みにできそうな程の龍が暴れ狂い、並み居る敵を蹂躙する。甲虫型の召喚獣達が雷撃を放つが、その勢いを殺すこと無く飲み込まれる。

 

 

     △▽△▽△

 

 

 送られて来る映像が膨大な熱と魔力により乱れる。これほど強大な魔法をどのように制御しているのか。なのはちゃんの砲撃並みの魔力密度を維持したまま操作しているのだ、普通なら魔力が拡散して崩壊するか、随時魔力の供給が必要になり魔力がすっからかんになるはずなのに。

 

「これは……あれは結界魔法です!」

 

「結界って…地面に術式を展開してるようやけど、空間に作用したような事は起きてへんよ?」

 

 展開された術式を解析したリインの出した活論に疑問が生じる。

 

「はい、確かに結界といえば空間を切り取り支配下に置く事で成立します。むしろ、だからこそ結界魔法と言われるのですが。

 彼が行っているのは本来空間を切り取るための結界をどう言う訳か底面だけで維持しているみたいです」

 

「それになんの意味があるん?」

 

「よく見てください、魔法が放たれた後も結界面と繋がったままです。恐らく本来は四方に展開する部分で魔法の外殻を形成しているんだと思います。ただ、そんなことが本当に可能なんでしょうか……」

 

「普通に結界を維持するだけでも高い適性と技術が必要やしなぁ、それを流動的に操作し続けるなんて……それを可能にしているのが“あの眼”って訳や」

 

 

 稀少資質エネルギーの視覚化、ここまで強力とは、此方でも感知できない戦闘機人の発見や魔力の異常なまでの精密操作。

 戦闘技術にしてもそうだ、ただの学生にしてS級魔導師並みの能力を持っている。それに頭も悪くはない。こんな人材がまだノーマークだったなんて。ーーこれは切り札になるかもしれん……

 

『掃討しました』

 

 さっきまで大量に展開していた敵軍は見る影もなく、戦場の動乱は治り本来の公園の広場に戻っていた。レオンくん達3人に撤退の指示を出し、なのはちゃん達に通信を繋ぐ。

 戦闘機人が仕掛けて来ない以上はまだ気を抜けない、通信が傍受されている為その存在を伝える事が出来ないのは痛いが、皆んなであれば警戒を促せば自ずと気づくだろう。

 

「みんなご苦労さん、もうすぐ残った3人も合流するで、帰投準備を進めてな。ーーそれとな……」  

 

 

     △▽△▽△▽

 

 

「2人ともお疲れ様、今回は本当に助かったよ」

 

「いえ此方こそ、レリックを無事確保できたのはレオンさんのおかげですから」

 

「僕も一緒に戦えて凄くためになりました」

 

 合流地が近くなり2人へお礼の言葉をかける。短い間でも命を預けあった仲だ、今ではすっかり打ち解けた。リオの事もあって年下とは接し慣れていたからだろう、これが他の隊員だったら話は違ったと思う。 

 しかし管理局が人材不足なことは有名な話だけど、こんな若さで勤めている子もいるのか。まだ10歳にも届いてないんじゃないか? 。

ーーまぁ2人とも“見るからに”訳ありだ、キャロはとんでもない力と繋がってるし、エリオは……。

 しかし他人の事情に首を突っ込む気はない、簡単に触れて欲しくないのは自分も一緒だ。

 

「おーい! エリオ、キャロー!」

 

「スバルさん!」

 

 林を抜け視界が開けると合流地点が見える。此方に向かって手を振っているのは青髪の魔導師だ、スバルと言うらしい。前衛として配置されていたのだろう。その後ろに他の隊員に守られたリオが見える。その手に件のケースは無く、既にヘリに積まれている。

 

「にいちゃーん!」

 

 スバルに釣られたのか、リオも同様に手を振っている。敵を一掃する際にかなり大きな戦闘音が鳴っていたはずだけど、伝言のおかげか落ち着いているようだ。リオが局員の囲いを抜けこちらに駆けてくる、なのはさん達は止める事はしないが周囲への警戒をより一層強める。

 次第にリオとの距離が近づき歩速を緩める、一分一秒も早く離脱したい今、疑問に思うだろう。しかしーー動いた……

 

 撤退を開始してから今まで、付かず離れずの距離を保ってきた地中の戦闘機人が距離を詰めてきた。此方に意識を向けていたなのはさんにアイコンタクトを送ると、頷きを返す。敵は俺の進行方向に合わせ進み、ついには追い越し丁度スバルの横を抜けたリオと俺の間に達する。

 

「ーー悪いが、ここから先は行かせない」

 

 振り上げた脚をダンッ!と極限まで魔力で強化し震脚を踏む、地面の土は深くまで捲り上がり砂塵と共に人影が跳ね上がる。とうとう対面を果たした戦闘機人は突然天地がひっくり返った感覚に、未だ現状を理解できていない。

 逆さまの状態で宙に投げ出されたその躯体にソッと両手を添え雷電を纏う。

 

 

「ちょっま! ヒィ」

 

「《双雷纒手》! はぁ!」

 

 足から肩、手へと力を流し更に雷撃を乗せ一気に解き放つ、その衝撃を受けた敵はリオの横を抜け岩壁へと突き刺さる。ーー次!。

残る敵の所在は掴めている、震脚により舞った砂塵で変わる、環境情報のコンマ1秒のズレを見逃さない。その空間へ向け踏み出し、距離を詰める。

 

「ッ!」

 

 瞬間、何かが高速で飛び出すのを目の端に捉える。気づいた時には手遅れだ、先程のガリューとは桁違いのスピードで距離が開く。

ーーまずい! 狙いはリオか!。

 リオを人質にレリックと交換するつもりか、レリックには目も暮れず迫る。

 

「間に合わない!」

 

「大丈夫」

《ソニックムーブ》

 

 凛とした声とデバイスの電子音を、音と認識する前に稲妻が走る。目にも止まらぬ速さに姿を捉えきれず、刃を撃ち合う音だけが響く。

ーー1人じゃないんだ……

 と今更ながらに思い出していると、撃ち合いが途切れフェイトさんが姿を表す、その腕には無傷のリオが抱えられていた。

 

「リオ!」

 

「え、え、なに⁈」

 

 フェイトさんの腕から降ろされたリオの元へ駆けつけると、あまりの速さに目を回していた。恐らくリオには突然立ち位置が変わった様に感じただろう、咄嗟に抱えられ撃ち合い、下されるまで、ほんの一瞬の出来事だったのだから。

 柔和な笑みを浮かべたフェイトさんは、直ぐに真剣な表情に変わり眼前の敵を睨む。

 

「どちらも廃棄都市での戦闘で確認されたタイプだ」

 

「まさか気づいていたとはな、クアットロ!どう言うことだ」

 

「トーレお姉様は私がしくじったと思ってるんですかぁ、全く持って心外です! 私のシルバーカーテンは完璧でした!」

 

「ならば、私たちは一杯食わされたと言うわけか」

 

 紫髪のトーレと呼ばれる戦闘機人が仲間にそう告げると、鋭い眼差しで俺を見る。前にも接触していたのであれば異分子である俺を疑うのは当然だ。今までも何となく違和感を感じていたのだろう。

 

「あなた達を拘束します、投降してください」

 

 なのはさんがデバイスを向けながら告げる。気づけば周囲はエリオ達が包囲していた。

 

「あなた達の目的とスカリエッティの居場所をはいてもらいます」

 

「いやーん、もしかしなくても私たち大ピーンチ」

 

「馬鹿な事を言ってるな! 退くぞ。私はのびてるセッテを回収してから行く。お前は自分でどうにかできるだろ」

 

「はぁーい、ちょっと悔しいですけど、お楽しみはこの後に取って置かないとですしぃ。それでは皆様さようなら、せいぜい足りない頭で最後の日まで頑張ってくださいねぇ」

 

 クアットロと呼ばれた戦闘機人がそう告げると再び姿を消す、同時にトーレがって対を始めた。

 

「フッ!」

 

 先程までクアットロの姿があった場所へ雷刀を放つが、ただ地面に突き刺さるだけに終わる。

 

「行かせない!」

 

「待ってフェイトちゃん! 今回は追わないで」

 

 そう言ってリオへ視線を向ける。フェイトはとハッとした表情を浮かべると頷き戻ってくる。追えない理由は俺達だ。恐らくリオの安全を優先してくれたんだろう。もしくは律儀に約束を守ってくれているのかもしれない。

 

『みんな、今度こそ本当にご苦労さん。戦闘機人が退いたのと同時に適性反応は完璧に消失。あとは帰ってくるだけや』

 

 はやてさんから通信が入り、戦いが終わったことを告げられる。周りを見渡し自分でも確認を終え、やっと肩の力を抜く。戦力的に問題がなかったとしても命をかけた戦いは初めてに近い、その覚悟を持って戦った事はあるが、やはり実戦は違った。

 緊張が解けたのを感じ取ったのかリオも笑顔でエリオ達と話している。

ーーそういえば……

 

「フェイトさん! さっきはリオを助けてもらって本当にありがとうございます!」

 

「違うよレオンくん」

 

 なのはさんとの会話が終わるのを待ちお礼の言葉を掛けると、一緒にいたなのはさんにそう返される。違うとは何のことだろう、と頭を傾げると花の咲いたような笑みを浮かべる。

 

「助けられたのは私たちの方、本当にありがとうレオンくん!」

 

 前回に負けずとも劣らない満面の笑みを向けられ、俺は……再び顔を背けることしかできなかった。

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