英雄がヒーローになるまでのお話   作:カΩズくん

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 デクくんをクウガにしたかった、それだけ。


1話

 その日は非常に珍しく、目の前が見えないほどに吹雪いていた。

 普通なら外に出るなど考えられないようなその日、二人の少年が並び立っている。

 一人は頭が爆発的に尖っている少年、もう一人は緑色の髪が特徴的な少年だ。

 

「……」

 

 尖っている方の少年、爆豪 勝己は一歩先に立つ少年を見る。

 吹雪と角度のせいで目の前に立つ少年の顔は見えない、いや見たくなかった。

 爆豪は少年をよく知っている、幼い頃からの付き合いだからだ。

 それだけではない、この一年彼がどれだけの思いで戦ってきたか知っている。

 彼がどれだけの人の想いを背負ってきたかを知っている。

 それは爆豪が最後の最後まで彼が立ち入ることのできなかったものだ。

 

 いや、もしかしたら少年のことを理解できたとしても並び立つことはできなかったのかもしれない。

 何故なら彼はヒーローですら入るのことのできない、そんなところで戦っていたのだ。

 孤独だったのかもしれない、それでも彼は人前では笑って戦った。

 

「……」

 

 少年が爆豪の方に目を向ける。

 その顔は心配するな、そう言っていた。

 それを見て思わず爆豪の手に力が入り、爪が手に喰い込む。

 

 爆豪はこの世界においては弱くはない、いや『爆破』という個性故に強者の分類に十分入るだろう。

 今は確かにまだ中学二年生という未熟な立場ではあるがそれは目の前の少年と変わらない。

 だがしかし少年は無個性という謂わば弱者にいながら、力を手に入れたとはいえ戦っていたのだ。

 

「……っ」

 

「……」

 

 何も言わない爆豪に少年は目を離し、正面を見据える。

 その先には敵がいる、そしてその敵を倒せば、究極の闇は訪れない。

 見れば少年の手が僅かに震えていた。

 それは寒さのせいもあるが違う、恐怖も無視できないほどにあるのだ。

 ただ見ているだけの人間の心配をしている場合か、と爆豪は思ったがそれが彼なのは知っている。

 

「変身!」

 

 少年は左腕を前に突き出し、そして左に動かす。

 幾多も繰り返してきた掛け声とその動作には淀みはなく、その姿を戦士へと変える。

 赤い……ではなく黒の戦士へと。

 

「……」

 

 少年から姿を変えた戦士はもう爆豪の方を見はしない。

 吹雪の暗闇の先に一歩、二歩と歩を進め駆け出していく。

 爆豪はその後ろ姿を見ながら……ただ見詰めることしか出来なかった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「う……っ……!」

 

 意識が一瞬飛んでいた。

 爆豪はすぐに起き上がり、周りの状況を把握する。

 目の前には脳みそが剥き出しのグロテスクな(ヴィラン)、その少し離れたところには倒れた相澤イレイザーヘッドこと相澤、そして背後には蛙吹、峰田、そして心操がいる。

 そう、爆豪は圧倒的な力の前に時間稼ぎ(・・・・)をしていた。

 

 本来ならば嘘の災害や事故ルーム(USJ)での授業の筈だった。

 しかしオールマイト抹殺を目指す(ヴィラン)がそこに襲ってきたのだ。

 生徒達は混乱し、先生達も不意を突かれながらも応戦する。

 

 そんな中爆豪は動いてみせた。

 (ヴィラン)のワープゲートを回避し、それに巻き込まれ散り散りとなる生徒の数を減らした。

 周りの有象無象を薙ぎ倒し、相澤が動けなくなればその代わりに時間を稼いでみせた。

 

「あぁもう、うっざいなぁ……さっさとやられろよ」

 

 襲撃のリーダー格だと思われる男は爆豪を見て苛つきながら言った。

 実際相澤を瞬殺した(ヴィラン)は対オールマイト改人、そう言わしめるだけのパワーとスピード……つまり格上とも言える程の力を持っていた。

 まともに喰らえば致命的であり、掠っただけでも意識を一瞬刈り取られた。

 

 まともにやればやられるのは確実、だが(ヴィラン)からして見れば誤算だったのは爆豪がそう言った格上とも言える相手どの戦闘に熟練していたこと、これだ。

 

「へっ、悪かったな。ちょこまかと動いてよぉ」

 

 爆豪はリーダー格の男にそう言いながら後ろの三人に目で合図を送る。

 それは早く相澤を連れてこの場から離れろ、という合図だ。

 既に委員長の飯田が応援を求めに行っている、時間さえ稼げばこちらの勝ちだ。

 そして爆豪は少なくともそこまでの時間を稼ぐことができる。

 最悪は殺す……爆豪は腰にある拳銃に僅かに意識を向ける。

 

「さっさとそのガキぶっ殺せ、脳無」

 

 男の声を号令に脳無は動き出す。

 繰り出される拳を何とか回避するが行き場を失ったそれは地面のコンクリートを粉砕する。

 

「行け!」

 

 爆豪は脳無の視界を奪うように爆発を起こし、そう叫んだ。

 この脳無、確かに爆豪の爆破ではダメージを与えることはできずまた痛覚のようなものもあるのか怪しい。

 しかし少なくとも視界はその目に依存している、ならば僅かにでも動きを止めるのには有効だ。

 

「あいつらは……!」

 

 時間的な余裕が生まれ、意識を一瞬三人に移す。

 三人共相澤と一緒にこの場から離れていることを確認すると安心した。

 爆豪一人なら時間稼ぎは幾らでもできる、だが庇いながら、守りながらは無理だ。

 一瞬、一瞬緑の紙の幼馴染を思い出しすぐに思考から消す。

 

「っ!あああああ!」

 

 思わずそのままもう一発爆破を脳無に喰らわせる。

 明らかに感情的な、自身の煩悩を振り払うような一発。

 こんなところでもう戦わせないと決めた相手を一瞬でも頼りにしたことへの嫌悪。

 本来の彼ならやらない無駄な一発は明らかな隙を産んだ。

 

「ぐぁ!」

 

 脳無にその右の大振りをした右腕を掴まれたのだ。

 まずい、そう脳味噌は警告をけたたましく出すが振り解くことなど叶わない。

 死が脳裏に浮かぶ。

 

「俺は……こんなところで……!」

 

 腕を潰される、そう思った次の瞬間聞き慣れたバイクのエンジン音が爆豪の耳に入る。

 そして横からバイクが脳無に突撃し、二人は吹き飛ばされた。

 地面に転げ落ちながらも爆豪は自身を救った何かを確認する。

 それはもうこんな場面で見るはずもないと思っていた、見慣れた、そして一台しか存在しないバイク。

 信じたくない、だがそのバイクはビートチェイサー2000……見間違えるはずもない。

 

「間に合った!かっちゃん大丈夫!?」

 

 バイクに乗っていたのは聞き覚えのある声をした少年だ。

 いや、ビートチェイサー2000に乗る人間など一人しかいないがしかしそれでも尚信じたくなかった。

 

「なんで……てめぇここに……」

 

「その、大量の(ヴィラン)に襲われて……まあチンピラみたいなものだったから問題なかったけど、問い詰めたら雄英高校を襲撃するとか言っててそれで……気になって……」

 

 ヘルメットを取りながら少年は言う。

 だが次第に言葉尻が小さくなっていったのは爆豪の顔を見たからだ。

 

「……ごめん、でも」

 

「でももなんでもねえんだよ!」

 

 爆豪は地面に爆破を叩きつけながら右腕で少年の胸倉を掴む。

 少年は驚いたような、申し訳ない様な複雑そうな顔をしていた。

 

「なんで、なんでてめえがここにいやがるデク!もうてめえは戦わなくていいんだ!ヒーローじゃねえんだよ!なのになんで、なんでこんなとこに来ちまうんだよ!」

 

「当たり前だろう!」

 

 そう言いデクと言われた少年、緑谷 出久は爆豪の右腕の掴む。

 そこは先程脳無に掴まれた部分でもあり、顔には出さないが相当な痛みが走った。

 そして、幼馴染の目は逃れられなかった。

 

「こんなにボロボロじゃないか!昔からそうだかっちゃんは!当たり前だろ心配するのなんて!だって、友達じゃないか!」

 

 爆豪の腕を振り払い、出久は脳無に視線をやる。

 リーダー格の男と脳無は突然の出久の登場に困惑し、様子を見ていた。

 

「かっちゃん、後は僕がやる。だから逃げて」

 

 幾度となく聞いてきたその言葉に爆豪はもう無理だと悟る。

 ここまで来たら任せるしかない、また……戦わせるしかない。

 

「……っ」

 

 あの時のように何も言えず、拳に力を入れるしかない爆轟を尻目に出久は腰に手をかざす。

 すると腰にアークルが出現し、左腕を前に突き出す。

 

「変身!」

 

 その掛け声と共に腕を左に移し、そして右腰のスイッチを押す。

 少年の姿は赤き戦士へと変わっていく。

 それは二年前、彼らが中学二年生の頃巷を騒がした未確認生命体、その四号の姿だった。

 

「……マジか」

 

 男は予想の斜め上を行く展開に思わずそう溢した。

 

 出久……未確認生命体四号、いやクウガは一歩先足を前に出し構える。

 伝説が、英雄が、この場にいた。

  




 因みにヒロアカ仮免辺りまでしか読んだことないけどプロット的にはオールマイト対オール・フォー・ワン戦までだから問題ないかなって。

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