英雄がヒーローになるまでのお話   作:カΩズくん

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 3話目です。
 ここら辺からこの作品の方向性が(いい悪いはともかく)わかってきますね(にっこり)


3話

 オールマイトが駆けつけたときには全てが終わっていた。

 最初に目に入ったのは上半身が爆散した男の死体、そして二年前世界を震撼させた未確認生命体……その四号であった。

 

(何故ここに四号が!?それにこれは……彼がやったとでも言うのか?)

 

「それで……君が四号でいいのかな?緑谷 出久君」

 

 雄英高校にある仮眠室、そこに出久、そしてオールマイトと捜査の為に来た警察の塚内がテーブルを挟み座っていた。

 

「は、はい……僕が四号です……」

 

 出久はチラチラとオールマイトの方を見ながら塚内の問いに答える。

 ガリガリの痩せた姿のトゥルーフォームのオールマイトが気になってしょうがないのだ。

 

「気になるかね?」

 

「そ、そりゃあ……」

 

 出久はオールマイトのことの事情は既に説明を受けている。

 しかし元は彼の大ファンな彼である、事情は理解できても中々気になるものは仕方がないのだ。

 

「君は四号だと正体を明かしてくれた……ならばこちらもそれ相応の対応をしなければならない。平和の象徴の成れの果てを……ね」

 

 オールマイトはそう言いながら目の前にあるお茶を飲む。

 出久はその様子を見ながら軽く頷くが気づいている、今のオールマイトの姿は恐らくヒーロー界隈でもトップシークレット……つまり機密事項のはずだ。

 それを明かすということは彼が言ったこともあるのだろうがもう一つ、出久を逃さないという無言の圧力だ。

 

「さて……君のことは軽く調べさせてもらった。緑谷 出久、16歳。個性はなし、父親は単身赴任中で母親と二人暮らし。間違いないかい?」

 

「間違いないです」

 

 オールマイトは塚内と出久のやり取りを聞きながら資料に目を通す。

 それは緑谷 出久のプロフィールと軽い経歴が書かれたものであり、その中は中学卒業後各所を旅している以外は至って普通の経歴が載せられている。

 ごく普通の少年、それが四号の正体……オールマイトは思わず目を細め、当時のことを振り返る。

 

 未確認生命体、並のヒーローでは束になっても叶わずオールマイトでさえも苦戦を強いられた怪物。

 彼らはゲームのように人々を殺し、平和を脅かした宿敵に匹敵するほどの巨悪であった。

 あれ程己の無力さを呪った時期は無い……その中で民衆に希望があるとすれば未確認生命体に対抗できる自身、そして未確認生命体四号の存在であった。

 そんな四号がただ……それも無個性の少年だったのは受け入れがたい事実であった。

 

「まさかの君みたいな少年が……当時は中学2年生か……四号と協力していた未確認生命体対策本部が唯一その正体だけは情報を開示しなかったが……そうか、そういうことだったのか」

 

 当時研究され、明かされた未確認生命体に関する情報は警察、及びヒーロー達にも共有された。

 それは四号についても例外ではなく、特に最後の方の未確認生命体での戦いはその被害の大きさから警察、ヒーロー総出で戦いの場を確保したことも多くあった。

 しかし四号の正体、動向は対策本部の人間以外は掴むことはできず、また彼らも最後まで公開することはなかった。

 それは当時の警察、ヒーローの中でも大きな疑問を読んだが四号の正体がただの少年であったのならば辻褄が合う。

 

「でだ……こうして君に自分とオールマイトが話をしている理由なんだが……君には雄英高校のヒーロー科に」

 

「ま、待ってください!僕は雄英高校になんて……それもヒーロー科になんて入りませんよ!?」

 

 塚内が要件を全て言う前に出久は彼を慌てて立ち上がり止めた。

 その慌てように塚内は少し驚く。

 

「た、確かに君には雄英高校ヒーロー科に入ってもらおうと思ったんだが……そこまで慌てて拒否をしなくても」

 

「そりゃあしますよ!?僕は無個性です、それに僕の中には人間じゃない力も宿してる……そんなのが雄英高校になんて入れる訳……」

 

「だからこそだよ」

 

 塚内の先程までとは打って変わり、重々しい雰囲気と口調に出久は言葉を止め、固唾を呑んだ。

 立っている出久を見上げる形で見ながら塚内は言う。

 

「君の力は……四号の、未確認生命体の力は個性を逸脱している。だからこそ君には雄英高校に入学してもらい、そこで生活を送ってもらいたい」

 

 それは事実上のヒーロー達による監禁だと出久は気付く。

 目の前に座っている塚内は出久の四号としての力を危険視し、それを監視しようとしている。

 思わず奥歯を強く噛む。

 

「で、でも僕は無個性です。ヒーローになんてなれない……僕には」

 

「力はあるだろう?」

 

 塚内はそう出久の言葉に被せるように言う。

 

「例えば君が(ヴィラン)のような人間であれば……君のような少年でなければ警察及びヒーローの監視下に置いている。確かに君は未確認生命体の驚異から救ってくれた英雄かもしれないがそれだけその力は恐ろしい物なんだ。だが君はまだ未来ある少年だ、だからこそ雄英に入学してもらいたい……」

 

 事実上の最終通知であった。

 塚内もこんなことは言いたくない、だがそう言わざる負えないほど四号の力は強大すぎるのだ。

 それが個性であれば話は早く済んだのだ……だが個性ではないまだ別の、オールマイトのワン・フォー・オールと同等とも言える力であるからこそこう言わざる負えないのだ。

 二年前と同じだ、そう塚内は心の中で自嘲するしかなかった。

 

「……一つ、緑谷少年に提案がある」

 

 ここで今まで口を閉ざしていたオールマイトが喋る。

 思わぬ言葉に二人の視線が彼を注ぐ。

 

「君は確かに強大な力を持っているやもしれない……もし、もしもその力をヒーローとして使うのが嫌だというのならば……私のワン・フォー・オールを受け継いではくれないか?」

 

 四号の力と未確認生命体の力が同質のものであるとすれば……多くの人やヒーローを殺めた力を使うのに忌避感を覚えているからこそ雄英高校の入学を拒否している……ヒーローと同じ土俵に立てない、そうオールマイトは出久が考えているのではと思った。

 ならばオールマイトの個性であるワン・フォー・オールという個性を引き継ぐことで、その力を扱えるようになれば己と同じ平和の象徴になれるとそう考えたのだ。

 

「私の個性は代々引き継がれていく個性……平和の灯を消してはならない……しかし君ならば、四号として平和の為に戦った君ならば……いや君だからこそ引き継いでほしい!」

 

 オールマイトは手を差し伸べる。

 その手さえ取ってくれれば彼は出久に個性を継承することができる。

 しかし出久はその手を何時まで経っても取らない。

 

「……ど、どうした?少年」

 

「……るな……」

 

 手を取ってくれると思っていた、しかし一向に出久は動きを見せない。

 ブツブツと何を呟き俯いている。

 オールマイトも塚内も内心首を傾げているとその手は払い除けられた。

 

「ふざけるな!」

 

 出久は自身の手を机に叩きつける。

 息を荒くし、目からは涙が零れ落ちていく。

 二人にとっては全く予想外の反応を出久はしていた。

 

「何で、何で今更なんだ!何でもっと前に言ってくれなかったんだ!何で……何で今になって僕の前に現れたんだ!僕は……僕はずっと前からあなたに憧れて……だから……なのに……なのに!なんで!」

 

 二人が呆気に取られている隙に出久は部屋から出ようとする。

 それに気付いた塚内は慌てて出久に忠告する。

 

「き、君はいいのか?」

 

「……」

 

 出久は振り返らない。

 わかっている、だが彼に塚内は言わなくてはならない。

 

「二年前とは事情が違う。あの時は君が四号なんて誰も知らなかったんだ、でも今回はそうじゃない。このままこの学校を出れば警察とヒーロー達は君を(ヴィラン)として……そうじゃなくても危険人物として追わなくてはならなくなる。それでも……君は」

 

「いいですよ」

 

 出久は振り返らない。

 だが拳は握られ、その覚悟は決まっていることは伝わってきた。

 

「僕はここにいちゃいけないんです……」

 

 彼はそれだけを言い残し、部屋を後にする。

 塚内とオールマイトだけが残され、出久は姿を消した。

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