魔王と妖狐の聖杯戦争   作:華洛

2 / 4
02

 

 深夜二時を回った頃。

 夜空には無数の星々が浮かび、月はほぼ満月に近い形をして爛々と輝いている。

 ラハールとキャスターは、廃墟と化している建物からアインツベルンが保有している城へ向けて歩いていた。それなりの魔術師であれば、魔術で民家の住人を洗脳する方法があるが、ラハールはそう言った細かい魔力の使い方は苦手であった。

 一軒家よりは魔王らしく城に住みたいと言うのが、ラハールの持論だ。……最近はアパートに住む魔王も珍しくはなかったりするが、この場にそう言う事をいう者はいない。

 今、ラハール達が向かっている城を保有しているアインツベルン城は、この冬木市に聖杯を造り出した御三家の一角である。

 聖杯を造るにあたり御三家が担当したのは、土地を提供したのが遠坂、システムを担当したのがアインツベルン、サーヴァントシステムを考案して令呪により縛る技法を編み出したマキリ。

 現在、遠坂はこの地に霊脈を管理している魔術師の名門なのにに対して、マキリは間桐と名を変えこの地にいるが、土地と合わなかったのか魔術回路は代々失っていき今や零落していた。

 

「ご主人様ー。トラップとか解除しなくていいんですかー?」

「別に構わん。向こうから向かってくるなら好都合だ」

 

 牙を覗かせラハールは不敵に笑う。

 

「あのー、ご主人様は聖杯に何を願うつもりです?」

「……」

「あ、言い難いことでしたら、別に無理に聞き出したりはしませんからね!」

「一人……ただ一人を蘇らせたい。ただそれだけだ」

 

 キャスターに顔を見られないように、ラハールは顔を俯け、そしてあの時にエトナへと届かなかった拳を強く握りしめた。

 エトナが魔力の暴走により消滅したから数百年の間。ラハールは、エトナを蘇らせれる方法を探すのと同時に、自分を更に強くなるべく修練を行った。

 ある時は宇宙最強と呼ばれる魔王、ある時は暴君と呼ばれる吸血鬼、ある時は破壊神と呼ばれる死神、そしてかつて戦い打ち勝ったがパワーアップして再臨した超魔王。それぞれと戦う事によりラハールは、かつてよりも戦闘力は大幅に上昇していた。

 ラハールの並々ならぬ決意を感じ取ったキャスターは、不安に思っている聞いた。

 

「その蘇らせたい人は、ご主人様の恋人だったりしますか?」

「……ッ」

 

 キャスターの言葉に、おもわずラハールはなにもない所で転びそうになった。

 

「ば、バカなことを言うな!オレ様に、そんな者はいないっ。アイツは……アイツはオレ様の部下だ。それ以上でも、それ以下でもない」

「……その人は幸せものですね。そんなに思ってもらって。――ちょっとジェラシーを感じちゃいます」

 

 キャスターはラハールには聞こえない程度の声で、ポツリと漏らした。

 

「ところでキャスター。お前の真名はなんだ」

「あ、まだ言ってませんでした! クッ……私としたが。――コホン。私は見ての通り、霊験あらたかな、狐耳のお手伝いさんです! 真名は「玉藻の前」。キャスターでもタマちゃんでも、勿論ハニー♪でもOKです♪」

「……む。なら、タマモで良いか?」

「はい。無問題です♪」

 

 嬉しそうにキャスター……タマモは頷いた。

 本来ならばサーヴァントの真名は秘密であり、軽々しく口に出来るものではない。しかも此処は、アインツベルンのフィールド。つまりはアウェー。どこで聞き耳を立てているか分からない。

 しかし、それはあくまでサーヴァントが戦う場合である。今回の聖杯戦争においては、ラハールが全てのサーヴァントと戦うつもりをしていた。あくまでサーヴァントはサポートに徹し、他の六騎のサーヴァントとぶつけるつもりは毛頭なかった。

 故にラハールは敵陣に関わらずキャスターに真名を聞いたのである。答えたタマモは、マスターであるラハールに名前を呼んでもらいたい一心でだが。

 

「それで、タマモは何を願うために聖杯に応えたのだ? 一応マスターだからな。聞いておいてやる」

「私の願い……それはですね」

 

 タマモが言おうとした瞬間。ラハールは、右手でタマモを押した。

 突如とした現れたバーサーカーは、手に持つ斧剣でラハールを攻撃する。タマモを庇い、攻撃の直撃を受けたラハールは、いくつもの木々を破壊するように飛ばされた。木々が倒れると同時に土埃が舞う。

 残ったのはタマモとバーサーカーのみ。

 この二人の相性は最悪と言っても良かった。仮にタマモが尻尾が8揃っていればどうとでもなるだろうが、残念な事に彼女は1尾して持っていない。そして極めつけの紙装甲。バーサーカーの一撃が決まれば、その時点で終わり。

 バーサーカーの赤い目が、キャスターを捕らえ、無慈悲にも斧剣が振り下ろされた時。

 土埃を斬り裂くように赤い閃光が、バーサーカーの上半身を吹き飛ばす。タマモが赤い閃光がした方向を見ると、土埃からラハールが現れる。

 

「ふん。あの程度の一撃でオレ様を倒そうとは片腹痛いぞ。だが、直前で姿を表しての奇襲攻撃は中々だったがな」

「ご主人様! 無事だったんですね!」

「ええーい。一々、抱きついてくるな! そのムチムチが当たるっ」

「照れなくていいんですよ」

「照れてなぞいな……ん?」

 

 ラハールは先ほど上半身を吹き飛ばしたバーサーカーを見た。すると吹き飛ばしたハズの上半身が蘇生したのだ。

 

「ほぅ。再生したか。ならば、もう一度吹き飛べ!」

 

 ラハールの赤い瞳が魔力を溜め爛々と輝き、そして先ほどバーサーカーの上半身を吹き飛ばしたのと同じ赤い閃光が、再びバーサーカーを襲う。

 この業はとある魔界に赴いた際に、宇宙最強の魔王が目からビームを出していたのを羨ましく思ったラハールが、なんとなく真似てみると出来た経緯がある。オリジナルのように月やらア・○オア・○ーを消し飛ばすほどの広範囲ではないが、威力だけはオリジナルに匹敵する。

 その攻撃を直に受けたバーサーカーだが、先ほどと違い上半身は吹き飛ばされること無く、それどころかダメージを与えられた様子がなかった。

 

「――オレ様の『魔王眼』を二度目は防いだだと。まさか、バールと同じ能力か」

 

 超魔王バールが持つ最悪の魔ビリティ「超魔王アナライズ」

 ・1度使った攻撃ではダメージを受けけず、形態変化を挟んでも同じ人物が1度使った攻撃は記憶されており通用しない

 ・受けたダメージに応じて徐々に攻撃力アップ

 ・魔ビリティーなどによる固定ダメージ無効

 ・持ち上げ&盗み無効

 ・ステータス低下魔ビリティー無効

 更にバール自体を五回斃さないといけないため、ラハールも再臨した超魔王バールと戦った時は、苦戦を強いられた。

 

「■■■■■■■■!!」

「ふんっ」

 バーサーカーは雄叫びを上げ斧剣をラハールに向けた振る。対するラハールも、手に持つ魔剣良綱で答える。

 バーサーカーとラハールの身長差は倍以上あるが、それを感じさせないほど、ラハールとバーサーカーは幾度と無く斧剣と魔剣良綱をぶつけあう。その度に魔力の衝動が辺りに襲う。もし魔力耐性のない一般人が居れば、失神しかねないほどの魔力だ

 二人の幾度と無くぶつかりあう攻撃。

 先に攻撃の仕方を変えたのは、ラハールの方であった。バーサーカーの斧剣の攻撃を、魔剣良綱で弾くと、剣を地面に突き刺して、両腕をあげた。魔力が爆ぜ、周りに十数個の赤い魔力の塊が現れる。それを全てバーサーカーのへと向けた放つ

 バーサーカーは幾つかは、斧剣で叩き潰すことができた魔力の塊以外は肉体へと直撃を受けた。その気に慣れば、一つの星すら吹き飛ばす事が出来る、ラハールの得意業「魔王玉」。バーサーカーの肉体はあたかたもなく消し飛ぶ。

 しかし先ほどと同じように、消し飛ばしたハズのバーサーカーの肉体は、すぐに復元された。ラハールは今一度「魔王玉」を一つだけ作り出し、バーサーカーの肉体へとぶつける。結果は先ほどと同じくダメージを与えられた様子はなかった。

 

「やはりバールと同じく一度受けた攻撃は、二度目は無効化するか。まぁいい。なら、完全に斃れるまで違う攻撃を繰り返すだけだ。聖杯戦争が一種のゲームなら、無限に蘇生するようチートはないだろうからな!!」

 

 ラハールは地面に突き刺した魔剣良綱を抜くと、バーサーカーに向って行った。

 

 

 

 

 

 

 ラハールとバーサーカーが激しい戦闘を繰り広げている様子を、上空から一人の男が見ていた。男は厚手の黒いコートを身につけ、髪は赤く、真紅の瞳で見下ろしている。彼の名はゼノリス。エトナの実の兄だ。

 下で行われている戦いは、ラハールが勝つとゼノリスは確信していた。

 まず先ほどからラハールに斧剣での攻撃しか行っていないこと。何度か攻撃は当たっているが、ダメージはほとんど与えられていない。それなのに、一向に攻撃手段を変える素振りを見せない所を見ると、それ以外の攻撃は出来ないと見て間違いない。

 更にラハールの魔ビリティ「大激怒」は通常攻撃を受ける度に攻撃力が5%アップするというものである。つもりバーサーカーの斧剣の攻撃があたる度に、攻撃力がアップしているのである。ただ、「十二の試練」の効果で、攻撃力がアップしたとしても、一度受けた攻撃は通らない。しかし通常攻撃は1度だけだが剣技は別である。攻撃力がアップする事により、スキルによって死に難いバーサーカーの命を確実に削り、追い込んでいく。

 

「……そろそろ頃合いか」

 

 そう呟くゼノリスの右腕の掌には翡翠色に輝く宝玉――「盗賊王の秘宝」が埋め込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 宙を飛ぶラハールは、右手に炎を発現させ、そのままバーサーカーの頭へぶつけた。

 ――獄炎ナックル――

 ラハールが魔王玉と並び得意とする技である。潰された頭は、また直ぐに蘇生。再びバーサーカーは咆哮をした。

 

「ええっい。まだ蘇生するか……っ。タマモ、これで何回蘇生した?」

「えっと、今ので9回、ですね」

「ちぃ。物理攻撃一辺頭の獣を相手にするのも、そろそろ飽きてきたぞ」

 

 忌々しげに舌打ちをすると、声が響いた

 

――そう。なら、もっと楽しませてあげる。狂いなさい、バーサーカー!――

 

 声がした方に顔を向けると、白い少女がそこにいた。

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 バーサーカーのマスターであり、アインツベルンが技術の粋を極めて造り出した最高傑作のホムンクルスである。

 「狂いなさい」と言う言葉がトリガーになり、バーサーカーは空間が震えるほどの雄叫びをあげ、ラハールへ向かう。手に持つ斧剣を両手に持ち替え、全力をもって上段から振り下ろした。

 両手持ちにしたことで一撃の威力がタダでさえ増しており、更に通常はイリヤスフィールにより抑えられているクラススキル「狂化」を開放したことにより、全ての能力値が上昇している。

 間違いなく今回召喚されたサーヴァントの中では、最強の物理攻撃。

 その一撃はラハールへ直撃した。すると地面には大きくクレーターが生まれ、地震と錯覚するかのような揺れが起きる。

 

「ご主人様!!」

 

 タマモが叫ぶが、ラハールの返事はなく、クレーターからは土埃が出ているだけで、ラハールがどの状態なのか確認することは出来ない。

 

「バーサーカーが本気になったら、こんなものよ。次はキャスターを……。バーサーカー?」

 

 バーサーカーは大穴が空いた所をジッと見ていた。

 

――ハァーハッハッハッハッ!!――

 

 大穴から高笑いが聞こえると同時に、まるで間欠泉の如く魔力が沸き上がってくる。魔力で周りの土埃を吹き飛ばすと、ラハールは大穴から抜けだしバーサーカーの前に立つ。

 少し頭から血をポタポタと流しているぐらいで致命傷にはなっていないようだ。

 

「今までの攻撃と比べれば、さっきの一撃は良かったぞ。ただ、オレ様を斃すには程遠い一撃だったがな! 先の一撃の礼に、魔界の剣技を見せてやる」

「■■■■■■■■ッッ!!」

 

 バーサーカーは再び斧剣を振り上げて、両手持ちにして攻撃しようとする。それよりも素早くバーサーカーの懐に入ったラハールは、拳に魔力を集中させ、バーサーカーの巨体を空中へと殴り上げた。

 同時にラハールも地面を蹴り空中へと飛んだ。魔剣良綱を上向きに構え、そして魔力で出来た斬撃を八つバーサーカーに向けて放つ。

 バーサーカーに向けて八つの魔力の斬撃と、ラハールの魔剣良綱の一撃。合わせて九つの斬撃が一瞬で、バーサーカーの肉体を襲う。九つそれぞれが急所への攻撃である。バーサーカーは攻撃を受け、そのまま地面へと墜落した。

 地面に激突したバーサーカーは、しばらくするとまた復元をする

 

「それで十回目か……。まだ魔力は残して置きたかったが、オメガ系を使うか」

 

 魔界においては、一部魔法は破壊力が高すぎるため、それぞれの魔法には管理人がおり、それに魔力を渡すことで発動できるというルールがある。

 ラハールは何度も復元するバーサーカーを睨んでいると、周りの異変を感じた。

 

「これは……。クッ。おい、バーサーカー。その場から離れろ!!」

「■■■■■■■■っ」

 

 ラハールは吠え、今いる場所から瞬時にタマモがいる場所まで移動する。

 バーサーカーも直感で何かを感じ離れようとした。が、バーサーカーに向けて放たれた、黒い混沌とした魔力の塊で出来た巨大な剣が直撃する。そして次元の断層が生まれ、その範囲内にいる物質で全て崩壊させていく。

 

「おい、小娘! 令呪でバーサーカーを喚べっ。こんな決着はオレ様は認めん!」

「貴方に言われなくても! バーサーカー、来なさい!」

 

 イリヤスフィールは身体全身に刻印を浮かび上がせて令呪に命じた。しかしバーサーカーは次元に捕われ、空間移動する事が出来ないようだ。

 次元の断層が徐々に収縮していき、最後はまるで初めから何もなかったかのように、綺麗に消滅する。

 

「あっ……バーサー……カー?」

 

 自分のサーヴァントが消滅した事が分かったショックのためか、イリヤスフィールは膝をつき地面へ倒れこみそうになる。その寸前に、ラハールはイリヤスフィールの掴む。

 

「タマモ。この小娘を頼んだぞ」

「それは構いませんけど。ご主人様はどうするんですか?」

「戦いの邪魔をした奴に用事がある」

 

 ラハールはイリヤスフィールをタマモに預け、攻撃して来た者がいる場所まで瞬時に移動する。

 その場所にいたのは、かつてラハールの部下であったエトナの実の兄・ゼノリスだった。

 

「ゼノリス……。キサマが、なぜ此処に居るっ!」

「……」

「答えろ!」

「……」

 

 ゼノリスはラハールの問いかけに、何も答えずに、そのまま刀を引き抜いた。ゼノリスが持っているのは、赤色をした長い刀である。銘は「一閃」。魔剣良綱よりも上位の魔剣であり、全世界を恐怖に染めた究極魔剣と謳われるバールソードを超えるとも言われる逸品だ。

 「一閃」は超々高温の魔力で刀身を覆っており、全ての物を斬り裂く最強の刀と言われている。

 戦う気だと察したラハールもまた魔剣良綱を構える。

 そして、刹那の時間に互いが交差し合い、ちょうど居た位置が反対となった。

 

「ガァッ……」

 

 軍配があがったのかゼノリスの方だった。ラハールの左腕が綺麗に斬られている。痛みよりも怒りが勝ったラハールは、ゼノリスに向けて「魔王眼」を放つ。

 真紅に輝く魔力の光がゼノリスに向けて一直線に奔る。ゼノリスはそれを見ると、黒い混沌の魔力の塊を――ちょうどバスケットボールほどの大きさを生み出して、赤い閃光へ向けて放った。

 赤い魔力と黒い魔力。それぞれがぶつかり合い、そして収縮していき、一気に魔力が爆ぜた。

 眩い光が夜の森に照らした。そして光が収まる頃には、ゼノリスの姿は何処にも無かった。どうやらあの一瞬で、転移したようだ。

 

「……ゼノリス」

 

 ラハールは呻き、ゼノリスがいた場所を睨む。そして舌打ちをして、木に引っかかっている着られた自分の左腕を回収をした。

 

「あ、ご主人様っ、腕が――っ」

「ふん。少し斬られただけだ。タマモ、これで腕を巻け」

「は、はい」

 

 ラハールはキャスターに包帯を渡し、斬られた腕とラハールの腕を引っ付け、包帯を巻いた。これはラハールの妹であるシシリーが渡した回復アイテムの一つ。巻いた者の魔力を吸収して治療促進をするマジックアイテムで、肉体の部分が吹き飛んだりでもしない限り、これを巻いておけば治癒をする。

 タマモに腕を固定させ、包帯を巻かせた終わると、ラハールはイリヤスフィールを背負いアインツベルンの城へと向かった。

 

 

 

 




※作中に登場した「一閃」はディスガイア4Returnに登場する武器で、ディスガイアD2にはありません。ご承知下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。