魔王と妖狐の聖杯戦争   作:華洛

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 遠坂凛は猛烈に後悔をしていた。

 聖杯戦争に参加するための英霊召喚。古代の英霊を授肉し、サーヴァントとして顕現させる魔術儀式だ。

 英雄と所縁のある物を触媒とすれば、狙って強力な英霊を召喚することが可能である。だが、凛は所縁のある物を触媒にすることなく、自分の力のみで、セイバーのサーヴァントを召喚することを選択した。

 結果としてその事を、凛は後悔することになる。

 英霊召喚の儀式を終わらせたが、なぜか目の前にサーヴァントは存在しなかった。そして上の階から、物が壊れる音がしたため、凛は慌ていて居間へと向かった。

 居間に置かれたテーブルは破壊され、その上にはモノは、凛を見るとため息を吐き、こう呟いた

 

『ハァ……。もしかして、キミが私のマスターなのか』

 

 出来れば「違う」と否定したい気持ちを、自前の精神力で抑えて、凛は首を縦に振る。

 目の前にあるのは、赤い色をしたペンギン。首には赤い聖骸布と思われる物を巻き、背中には小さい悪魔の羽を生やし、目は生意気そうなツリ目をしていた。

 

『……一つ。一つ確認させて。貴方のクラスは何?』

『プリニーだが?』

『ゲッ。よりにもよってイレギュラーのクラスを引くなんて』

 

 通常の聖杯戦争で振り分けられるクラスは7つ。

 セイバー。ランサー。アーチャー。キャスター。ライダー。アサシン。バーサーカー。

 しかし、何かしらの要因によってイレギュラーのクラスが召喚されることがある。実際に過去の聖杯戦争においては、アヴェンジャーと言うクラスに召喚されたことがある。

 

『百歩譲ってよ! イレギュラーでもいいわ。でも、よりにもよってペンギン! そもそもプリニーって何よッ』

『キャスターを上回る最弱のクラスだ。運がなかったな、マスター』

 

 淡々とプリニーは答えた。

 イレギュラークラス「プリニー」に適応する条件は2つのみ。

 1.人間の血が混じっていること(半人半魔。半人半神も適用する)

 2.罪を犯していること

 この二つに該当する英雄がプリニーに選ばれる。故にこのクラスは、ほぼ9割方の英霊に該当するとも言える。

 更に言うならば、この「プリニー」のクラスに召喚された英霊のステータスは、全部「E」となる。その替りに、100回の蘇生が可能となるが、プリニーの体質と、紙装甲の事を考えると、決して脅威とはいえない。

 

「悪夢なら覚めて欲しいわ」

「残念だが、これは現実だ」

「ええ。そうでしょうね!」

 

 凛はイライラとしながら、目の前のプリニーを睨む。

 睨まれているプリニーは「やれやれ」と肩を竦めると、壊れたテーブルから降りて、凛の近くへと寄ってきた。

 ふと凛はある事に気付いた。プリニーの身長である。

 ちょうど目の前にいると高低差で、凛のスカートの中が見える可能性があり、それに気付いた凛は顔を真っ赤にしてスカートを押さえる。

 

「――マスター。言っておくぞ、私はキミのような尻の青い小娘の下着など興味もないし、見ても興奮などしないから安心したまえ。ただ、一つ言わさせ貰えるならば、年齢に見合った下着を穿くべき、」

「うるさい! この、エロサーヴァント!!」

 

 怒鳴り声をあげて凛は、全力でプリニーを蹴った。プリニーは高速で居間の壁へとぶつかり爆発した。

 爆発と爆風で居間はグチャグチャと成り果て、居間の隣にある部屋も同じ状況で、目も当てられない。

 呆然としている凛に、プリニーは爆発地点から起き上がる。

 

「やれやれ乱暴なマスターなことだ」

「な、なんで、爆発するのよ!」

「クラス別能力「爆発体質」だ。投げたり、先ほどのように蹴り飛ばしたりすると爆発するから注意したまえ」

「だ・か・ら、なんで爆発するのよっ!」

「私は、運悪くこのクラスに呼ばれただけだ。クラス別能力がどうして「爆発体質」があるかなど分かる筈があるまい」

「……」

 

 凛は思わず膝をつき絶望した。

 まさか聖杯戦争がきちんと始まってない段階で、これほどの絶望を味わう事になるとは思わなかった。

 しかし、このまま後悔していたも、何も前進はしない。なんとかしてプリニーのサーヴァントを従えて、聖杯戦争を勝ち進むしかないのだ。

 

(……一つだけ。一つだけ、この状況を覆すことのできそうな魔術礼装があるんだけど。アレはッ)

 

 悶々と悩むが現状で縋ることが出来るとすれば、あの魔術礼装しかない。凛は覚悟を決め立ち上がり、自室へと向かった。

 その後ろを、先ほどのように蹴り飛ばされないように、十二分に間合いを取りプリニーは付いて行く。

 

「そう言えば」

「なによ」

「マスター。キミの名前を聞いてなかったな。名前はなんと言うのかね」

「……遠坂凛よ。好きなように呼べば?」

「トオサカリン、か。ふむ。それでは凛と呼ばせてもらおう」

 

 プリニーは一人納得している内にも凛は自室へと付いた。

 扉を開けて中へと入り、クローゼット奥深くに仕舞っている匣をテーブル近くまで運ぶと、凛は少し躊躇いはしたが覚悟を決めて匣を開けた。

 匣の中には、それほどの物は入っておらず、ポスターとステッキが入っているだけだ。

 ただプリニーが気になったのは、無造作に置かれたステッキだ。左右には白い羽が、丸い円の中には星の飾りが付いており、その下には宝石が装飾されていた。

 見た目は子供の玩具であるが、これは魔術礼装だとプリニーにはハッキリと感知できた。

 凛は覚悟を決め、近くにあるナイフで指を少しだけ切ると、指に血の粒ができ、そのままステッキに触れた。

 するとステッキは禍々しい魔力を放出を初めた。ゴゴゴゴと擬音を立てながら宙へと浮き、クルクルと回転しながら凛へと近寄った。

 

『いやー、凛さんから呼び出してくれるなんて、ルビーちゃん感激です』

「……できれば二度とアンタとは会いたくなかったわルビー」

 

 カレンドステッキ。

 魔法使い。宝石翁キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが制作した愉快型魔術礼装。そして、その礼装に宿るのが人工天然精霊のマジカルルビー(愛称:ルビーちゃん)である。

 凛はルビーに今までの事の流れを話した。

 聖杯戦争に参加すること。イレギュラークラスのプリニーを召喚したこと。そして聖杯戦争に勝つために力を貸すように言った。

 それにルビーは頷いた。

 

『……分かりました。このルビー、全力をもって凛さんを魔法少女へと!』

 

 ルビーが言い終わる前に、凛は思いっきりステッキを床に叩き付けた。

 

「……人の話を聞いてた?」

『も、勿論ですよ。聖杯戦争に勝ち抜きたいんですよね? なら。魔法少女になるしかないじゃないですか』

「ならないわよ。アンタは文句ひとつ言わずに、力を貸せばいいの」

『いえ、凛さんが魔法少女になるのは運命で決まってます。なんたってサーヴァントがペンギンの成りをした物を呼んじゃうんですからね。もう魔法少女のパートーナーたるマスコットとするようにと聖杯の意思です! 間違いありません!!』

「そんな聖杯の意思があってたまるかぁぁぁ」

 

 再び凛はカレンドステッキを床へと叩き付けた。

 様子を見ていたプリニーは、一度ため息を吐くとルビーに向けて言う。

 

「ルビー。凛を魔法少女にするのは反対だ」

「……プリニー。アンタ」

「もう18歳以上の凛に、魔法少女が務まるとは到底思えん。魔法少女に必須の少女力が喪われている。成長と引き換えにな……」

 

 プリニーは遠い目をして言った。

 

『フフフ。無問題ですよ、プリニーさん。私はジジイの第二魔法を応用して造られた魔術礼装です。本気になれば姿形を、魔法少女適齢にまで変えることなんて造作もありません!!』

「なるほど。なら問題はないな」

『ええ!』

「ありまくりでしょうがァァァァァァアアア」

 

 三度、凛はカレンドステッキを床に叩きつけ、同時にプリニーを蹴り飛ばした。

 今度はクローゼットの方に飛んでいき、クローゼットの中身が木っ端微塵に爆砕することとなる。

 

『凛さん。もう少し優しく扱って下さいよ。私はこう見えても意外とデリケートな魔術礼装なんですよ?』

「全くだ。おかげで残機が96となってしまった」

「――ちょっと待ちなさい。残機って何よ」

「む。「プリニー」クラスのスキルだ。全ステが「E」となるが、死んでも99回復活することが出来る。ただ召喚の時に1回。居間の爆発で1回。先ほどの1回。計3回消費した事になる」

「……フフフ、あははははは」

 

 凛は突如として笑い出した。

 

「こうなったらやってやるわよ! ええ、魔法少女でもなんでもね。意地でも聖杯戦争を勝ち抜いて、この忌まわしい出来事を聖杯に願って無かった事にしてやるんだからっ!!」

 

 こうして冬木市に期間限定ではあるものの、魔法少女が誕生した瞬間であった。

 

 

 

「あ、プリニー。今日、私が目を覚ますまでに、家が壊れた所を完全に直しておいて」

「……なぜ、そんな事をしなければならない」

「アンタが壊したからでしょう」

「その原因を作ったのは凛、キミだろう。私を怒りのままに蹴り飛ばして」

「ああもう! ルビーの事もあってイライラしてんの! 私の言う事を訊けぇ!」

 

 凛の手の甲にある令呪が光り輝くと3つある内の1つが消える。

 

「なっ! こんな事に令呪を使用しただとっ」

「いいわね。私が目を覚ますまでに、完全に修理しておいて」

 

 そう言うと凛は扉を開けて部屋を出て行く。

 プリニーはそれを見送ると呟く。

 

「地獄に落ちろ、凛……ッ」

 




――少し凛を弄り過ぎたかな。
ただ凛は物語の重要なキーパーソンになる予定なので、あまり扱いは悪くはなりません
あとプリニーが語尾に「ッス」を付けてないのは、番外編としてプリニー教育に命をかける吸血鬼が来るからです

○マスター情報
Name:遠坂凛
CLASS:魔術師
好きなもの:宝石磨き。■■弄り
嫌いなもの:電子機器全般。突発的なアクシデント
天敵:言峰綺礼
装備:カレンドステッキ(Lv.50)
※補足
サーヴァント戦などの時は魔法少女へと変身して、外見年齢は10~12歳程度となる。
魔法少女となると魔力および身体能力が強化され、中位から下位クラスの英霊とならば、勝つことは難しくても渡り合うことは可能。


○サーヴァント情報
CLASS:プリニー
真名:■■■
好きなもの:家事全般
嫌いなもの:正義の味方
ステータス:筋力/E 耐久/E 敏捷/E 魔力/E 幸運/E 宝具/-
スキル:爆発体質/A、最弱の意地/B、
※補足
全ステがEにはなっているが投影魔術などは使用可能。また魔チェンジする事で10分間だけ弓となれる。ただし10分経過すると解除されて、命のストックが1つ減る。
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