魔王と妖狐の聖杯戦争   作:華洛

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『冬木市では少女が襲われる事態が発生しています。女性の方はできるだけ一人では歩かず、人通りのない所を通るのは止めましょう』

 

 パトカーがマイクを使いながら市民に呼びかけている。

 冬木市では、少女が襲われると言う事態が起こっていた。襲われた少女は怪我しないが、意識不明に陥っており、警察が日夜警戒を強めているのだった。

 パトカーから流れる呼び掛けを聞きながら、衛宮士郎は、酒屋コペンハーゲンのバイトを終えて帰路につく。

 「正義の味方」を目指す士郎は、この犯人を捕まえたい気持ちはあるが、所詮は魔術が少し使える程度で、後はほぼ一般人と変わらない。そのため出来る事はほとんどない。

 新都から深山町へ戻るため、未遠川を跨ぐ全長665メートルのアーチ状の冬木大橋を渡り海浜公園へと出た。

 昼間は水族館やバッティングセンターといった遊具施設があるため、冬木市でも有数のデートスポットだが、もう日が暮れて夜のためか人はあまりいない。

 本来ならば冬木大橋からまっすぐ行きマウント深山商店街を通り、十字路の交差点を通るのが最も近く帰れるルートだが、士郎は遠回りをして帰ることにした。

 深山町は山側の方には遠坂邸のよう西洋風の建物があり、海側の方には衛宮邸のような武家屋敷が多く点在している。また海側に近づくと住宅は少なくなり田畑が増えるのも特徴である。

 

「――ャ――」

「……?」

 

 田畑を通り住宅地に入る直前に、悲鳴のような音が聞こえる。

 咄嗟に士郎は、地面に落ちているそこそこ太い木の枝を手に持ち、強化の魔術を行うことで、木の枝を鉄並の強度へとなる。

 

(……ふぅ。なんとか成功したな。声がしたのは、そっちだったか)

 

 士郎は慎重に足を運ぶ。

 音がしたのは空き地を公園に改装した場所からだ。ブランコと砂場、木製の椅子があるぐらいの小さな公園で、街灯ははついておらず、ちょうど周りの家々からも死角となっている。

 壁に隠れ、公園の中を伺う。

 公園の中には、銀髪のロングヘアー、黒のゴスロリの格好をした年端もいかない少女が、倒れている穂群原学園の制服を着ている少女の前に立っていた。

 

「……これもハズレ。これで5人目。ほんと、アレはどこにあるのよ」

 

 呟いている言葉から、少女が冬木市で起きている連続少女暴行事件の関係者だと見て間違いなかった。

 士郎は木の枝を握りしめ、壁から飛び出して少女へと向かおうとした。だが、何者かに腕で首を締め上げられる。

 あまりの強さに握り持っていた木の枝を、士郎は地面へと落とす。

 

「? 影桜。何、それ?」

「どうやら見られたみたいです」

「ハァ……。ほんと、つくづく私って運がないわ。探しものが見つからず、その上に目撃者なんて」

 

 少女はため息を吐いて言った。

 

「マイ・ロード。コレはどうします?」

 

 士郎の首を腕で締めあげている女忍者――影桜(カゲロウ)は、自分の主へと聞いた。

 彼女は美しい容姿と男を惑わせる肉体で、黒く長い髪はポニーテールとして纏め、大きく開いた目には紅い瞳、腰の所には大きめな巻物をつけている。

 

「殺しちゃって。捜し物のために少女ばかり狙ってたから、ゼノリスにちょっと不信感を抱かれたもの。ここら辺りで男の犠牲者が出た方がいいかもしれないからね」

「分かりました」

 

 影桜は士郎の首を締めている腕を緩め、開放された事でふらつく士郎の背中、ちょうど心臓の所に手持ちの刀で突き刺した。

 

「――ッァ――」

 

 士郎は声を上げることも出来ず、そのまま地面へと前のめりに倒れた。地面には刺し傷から漏れる血が広がる。

 影桜は士郎を刺した刀についた血は、見る見るうちに刀が吸い取るようにして消えた。

 

「それじゃ私はそろそろ工房に戻るわ。人形(スケープ・ゴート)で、ゼノリスを騙すのも限界……いえ、あの男のことだから気がついてるかもしれないけど」

「……」

「そんなに不満そうな顔はしないで。「契約」がある限り、ゼノリスは私の言うとおりに動く狗。そのためにも、なんとしても「捜し物」を見つけないと」

「心得てます、マイ・ロード」

 

 ゴスロリ少女の足元に魔法陣が浮かび上がる。転移魔法陣で、自身の持つ工房へと帰るつもりだ。

 しかし、魔法陣が発動しようとする瞬間に、幾つもの魔力弾が二人に向けて放たれた。

 影桜は手に持つ刀で、向かってくる魔力弾を一瞬で斬り、魔力弾を霧散させる。

 魔力弾を放出して攻撃したきた者は、少女と影桜の前に降り立つ。

 ツインテールにミニスカの可愛らしい格好をした小学生ほどの少女と、その横で浮遊している一匹のプリニー。

 

「影桜。なにあれ?」

「……人間界では魔法少女と言うカテゴリーのキャラクターがありますから、それを模したコスプレでしょう。しかも身体変化を使用して肉体を幼くしているようです」

「え。わざわざ肉体変化の魔法まで使うなんて……そこまで魔法少女をやりたいのかしら」

「好きでこんな格好をしてるんじゃないわよ!!」

 

 凛は怒りのあまりステッキを相手へ向けて一発魔力弾を放つが、またしても刀に斬られ霧散した。

 

「少しは冷静になれ。彼女らは強いぞ」

『そうですよ、凛さん。幾ら基本ステが上昇しているからって相手は、それを凌駕するステの持ち主です。気をつけて下さい』

「……分かってる」

 

 ルビーとプリニーに注意をされた凛は、相手からの攻撃に備えるため、魔力の使用割合を防御力をに高めることに大きく割いた。

 影桜はいつでも凛たちを殺せるように刀を構え睨む。その後ろで、ゴスロリ少女は郊外の森の方へと視線を向け舌打ちをする

 

「影桜。帰るわよ」

「……」

「貴女の魔力は独特だから、使用すれば間違いなく魔王に感付かれるわ。今はまだ私達の存在を知られるのは得策じゃない。そのデメリットを考えれば、魔法少女の一人ぐらい放っておいても別に構わないわ」

「御意」

 

 影桜は頷き懐から煙玉と転送用の魔法玉を取り出し地面へと投げた。ゴスロリ少女と影桜の足元に魔法陣が浮かび上がると同時に辺り一面に煙が立ち込める。

 凛はカレンドステッキに魔力を注入し風を巻き起こす事で、辺りに立ち込める煙を吹き飛ばした。だが、煙が晴れた時には、既に二人の姿は消えていた。

 

「……何者よ、アレ」

「間違いなく人間ではないな」

『そうですねー。感じただけの魔力で言うと吸血種に匹敵あるいは上回るぐらいと思いますよー。ぶっちゃけ「影桜」って呼ばれた方の実力を考えると、封印指定の執行者レベルの実力でないと自殺するレベルですね』

「あんたの無駄な機能をフルに使用したらどれぐらい持ちそう?」

『無駄な機能とは失礼ですが、ま、持って30秒持てば良い方ですね。とはいえ彼女は暗殺者タイプ。後ろからブスッと刺されたら一巻のおしまいですけどねー』

「……はぁ。聖杯戦争だけでもやる事が多いのに、それを上回る厄介事が舞い降りてくるとはね」

「それは単純にキミの日頃の行いが悪いのではないのかね?」

「うっさい。また投げられたいの」

「……」

 

 凛はプリニーを睨みつけ、まずは血を流している士郎の元へと近寄る。急所を一突きされて瀕死の重体だ。

 とりあえず凛は俯いて倒れている身体を仰向けにする。

 そして凛は、刺されたのが衛宮士郎である事に初めて気がついた。

 

「――! なんで、よりによって……っ」

 

 プリニーは倒れている少女の方へと近寄り状態を診てみた。

 意識がなく生きているというよりは死体に近い。触ってみても小さな脈が僅かに下苦難できるぐらいだ。

 ふとプリニーが凛の方に視線を向けると、凛は赤いペンダントを握りしめてて蘇生を試みている。ある事情から士郎を蘇生する行為を邪魔をしたい気持ちにも駆られたが、今の状態では蹴り飛ばされて爆発するオチが容易に想像できた。

 つくづく自身の運の無さにプリニーは苦笑する。

 プリニーは蘇生が終わるのを待ち凛へと近寄り少女の状態を報告した。

 

「……そう」

『どうやら魂を弄られているようですね。残念ですが、私達では手の施しようがありません。魂は複雑で専門に特化していないと駄目ですからね』

「分かってるわよ」

 

 凛は携帯を取り出して救急車を呼ぼうとするが、ルビーとプリニーに止められた。携帯だと万が一だが後々事情を聞かれる可能性が出てくるためためだとか。

 二人は分かりやすく説明をしたが、凛はどうやら理解はしていないようだ。ただ2人に止められたため、近くにある公衆電話を使い救急車を呼び、凛は士郎を抱かえてこの場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 士郎が目を覚ましたのは自宅にある土蔵だった。

 凛は家の中に置こうとしたが、キチンと戸締まりがされている事もあり、鍵が開いていた土蔵に士郎を置くことにしたのである。

 ちょうど床には布が敷かれており、その上に士郎を降ろすと凛たちは去っていった。

 士郎は朦朧とした意識の中で、身体を起こした。

 

「……あれ。俺は……」

 

 混濁とした意識は徐々にハッキリとしていく。

 人気のない公園で倒れている同じ学校の制服を着た少女。

 ゴスロリのファッションをした年端もいかない少女。

 そして何者かに首を絞められ、急所を刀で一突き。

 思い出したところで、刺された所に激痛が走った。制服は赤い血で染まっている。だが、制服を開けて身体を見てると、刺された傷跡は全く無かった。

 

「どうなって――るんだ……」

 

 僅かに残っている夢現か判断できないが、二人の少女の声と、なにか小憎いらしい男の声を聞いた気がする。

 とりあえず土蔵から出ようとした矢先。気配を感じて振り返った。

 そこにいたのは鼠色の忍者の格好をした女性。鋭い視線が士郎を射抜き、動くことができなくなる。

 

「……あの魔法少女も余計なことをしてくれた。お陰で一度殺したヤツを、また殺すことになる」

「――」

 

 動けない。もし微動だにしたら直後に、もう一度殺される。

 音を立てずに影桜は士郎へと近づき、腰のところにある刀を抜く。

 また殺される。

 士郎がそう感じた直後。影桜の動きは止まった

 

「……ああ、それならまた殺すところです。面倒くさい事に魔法少女が蘇らせましたから。……。……。構わない? ……。――――。ああ、なるほど。承知しました、マイ・ロー……!」

 

 テレパシーの類で通話する影桜に向けて風と思われる無色の剣閃が奔り、影桜は手に持つ刀で防ぐと火花が散る。

 床に描かれている魔法陣が青白く光り輝き、そこから一人の甲冑に身を包んだ金髪の少女が姿を現した。

 騎士風の少女は影桜に向けて透明な剣で斬りかかる。それを影桜は難なく刀で防ぐ。

 何度も透明な剣と刀がぶつかり合い、その度に火花が散った。

 

「……。はい。ええ、あの少年がサーヴァントを召喚しました。……。………向こうは戦う気満々みたいですが、――。はい、はい。分かりました」

「逃げるつもりか」

「我が主の命だ。ここは退かせてもらう」

「逃すと思うか?」

「騎士が暗殺者に逃走で追いつけるとでも?」

 

 そう睨み合う二人な中で、まず動いたのは影桜だ。

 胸元から苦無を三本取り出して騎士風の少女へ向けて投げる。だが、騎士風の少女は僅かに身体を動かすだけで全てを躱した。三本の苦無は床へと突き刺さる。

 

「その程度の投擲で……っ。身体がッ」

 

――忍法・影縫

 

 苦無はちょうど騎士風の少女の影に刺さり、苦無からは赤い魔力が滲み出ていた。

 影桜は素早く月明かりが差し込む窓へ移動し鉄格子を刀で斬ると去っていく。

 騎士風の少女は歯噛みし、手に持つ透明な剣を一瞬開放した。それにより辺り一面に突風が吹き荒れ、辺りにあるガラクタが宙を舞い、地面に突き刺さった苦無も魔力の風により抜けて宙を待った

 風が落ち着くと待っていたガラクタや苦無は地面へと音を立てて落ちた。

 そして騎士風の少女は振り返り、尻もちをついている士郎へと目向けて問いかける

 

「――問おう。貴方が、私のマスターか」

「……。ま、マスター……?」

 

 士郎が未だに状況を把握できないでいる。

 

「まだ外に敵が二人います。感じからして1分もかからずに倒せれる相手です」

 

 戸惑う士郎は何も返すことが出来ず、騎士風の少女は土蔵から出て「敵」へと向かっていった。

 士郎は重たい身体を起こして外へと向かった。

 土蔵から出て、門を玄関から外へ出て、音がする方へ向けて走る。

 そこで戦っているのは見に覚えのある少女……遠坂凛が若返り魔法処女の格好をしてステッキを振り回し、干将莫邪を手に持つ赤いペンギンが、騎士風の少女と戦う光景。

 

「なんでさ」

 

 そう思わず呟いてしまう。

 

「ああ、もう! なんで私がプリニーでアイツがセイバーを召喚できるのよ。おかしくない!? プリニー、ちょっと特攻して自爆してきなさいよ」

「断る。爆発すると結構な痛みを感じるからな」

「なんのために爆発体質があるのよ! 文句があるなら、そんなクラスで召喚された己の不幸を恨みなさいッ」

 

 凛とプリニーが口論をしているが、騎士風の少女は攻撃の手を緩めない。

 二対一と数的には不利な状況ではあるが、騎士風の少女が凛とプリニーを完全に圧している。なんとか攻撃はしているが、全て防がれるか、躱されるか。そして騎士風の少女の一撃をなんとか耐えるので凛は精一杯であった。

 凛とプリニー側には奥の手として「魔チェンジ」が存在する。

 「魔チェンジ」はプリニーが武器に変化して、所持した者のステータスをアップする事が出来る。たたプリニーが変化できる武器は弓のため、今で来たとして接近戦で弓はあまり強力な武器とはいえない。またデメリットとして、使用すると残機が一減る。

 

「――っ。なんでプリニーじゃなくて、私を積極的に狙ってくる訳っ」

「貴女からは、禍々しい力を感じる」

 

 振り下ろされる透明な剣をカレンドステッキでなんとか防ぎ、凛は後方へと跳んだ。

 

「……性格の悪さが魔力にまで反映されるのか」

『やれやれですねー。ちょっとは素直に真面目に清く正しく生きたほうがいいですよ?』

「うるさいっ。と、言うか性格に関してはアンタにだけはいわれたくなってーの!!」

 

 凛はプリニーを蹴り上げると、カレンドステッキをバッターのように持ちプリニーを打った。

 プリニーはそれなりのスピードで騎士風の少女へ向けて飛んで行く。騎士風の少女は、プリニーが飛来する横を通り、一直線に凛の元へと行き透明な剣でステッキを弾き飛ばす。

 ステッキから手が離れたことで凛の姿は、魔法少女からただの魔術師へと戻る。

 騎士風の少女は透明な剣を凛へ向けた。

 

「――っ」

「これで終わりです」

 

 騎士風の少女が剣を振り上げた直後、

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 士郎が大声を上げて叫ぶ。

 それに呼応するかのように掌の甲に現れている3つの令呪の内一つが消えるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 同時刻。冬木市郊外にあるアインツベルンの城

 テラスで夜空を見上げるイリヤスフィールは、後ろでゲームをしているラハールに向けていった。

 

「7体目のサーヴァントが召喚されたわ」

「ふん。やっとか」

 

 ラハールはセーブするとゲームの電源を落として立ち上がった。

 

「最後のサーヴァントはセイバーか」

「ええ。間違いないわ」

「ゼノリスに斬られた腕も完全にくっついたことだ。リハビリ相手にはちょうどいいだろう」

 

 この数日はラハールはゼノリスに斬られた腕の治療に専念をしていた。アイテム界の至宝たる「一閃」で斬られた傷は中々治癒さなかったが、今朝になって動かせるまでに治癒が完了した。

 またキャスターと契約したことで、魔力に変調を来たした事で昨日までラハールちゃんになっていた事もあり、アイテム界やに潜り淡々と自己強化に勤しんでいた。

 ラハールちゃんになっている時にちょっとした騒動もあったが、それは別の話。

 イリヤスフィールはラハールを見て言った。

 

「油断して足元を掬われないようにね」

「ふん。貴様に言われるまでもない。……キャスター、行くぞ」

「はい! ご主人様っ」

 

 

 

to be continued

 

 

 

※注意

魔チェンジはディスガイアD2には登場しません

作中的におんぶよりは魔チェンジの方が決まりが良いため使用することにしました。




Name:???
クラス:反魂術師(ネクロマンサー)
好きなもの:??
嫌いなもの:??
天敵:??
※補足
冬木の地においてある「捜し物」をしているゴスロリ少女。魔界随一の反魂術の担い手とされる。


Name:影桜
クラス:マスタークノイチ
好きなもの:??
嫌いなもの:??
天敵:??
※補足
ゴスロリ少女に絶対的な忠誠を誓うくノ一。その実力は魔王クラスとも……。
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