魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ、たから僕は描いている   作:至ッ亭浮道

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第11話

「じゃあ、お(ねが)い!」

「うん。それじゃあ、板書(ばんしょ)はお(ねが)い」

「わかった~」

 

 日直(にっちょく)相方(あいかた)板書(ばんしょ)(たく)して、(ぼく)はゴミ(ぶくろ)()って教室(きょうしつ)()た。

 ()かうのは、体育館(たいいくかん)(うら)にあるゴミ()()だ。

 本当(ほんとう)は、昨日(きのう)日直(にっちょく)()てておくべきなんだけど、()(わす)れてしまったらしい。

 昨日(きのう)のゴミがずっと教室(きょうしつ)(すみ)()いてあるのは、なんとなく気分(きぶん)(わる)いということで、(ぼく)()てに()くことにした。

 ゴミは(あさ)回収(かいしゅう)されるから、(ぼく)はゴミ()()ヘと(いそ)いでいる。

 校舎(こうしゃ)()て、体育館(たいいくかん)()かう。

 そしてその(うら)のゴミ()()に――と、体育館(たいいくかん)()がり(かど)()がろうとした(とき)

 体育館(たいいくかん)(うら)(だれ)かがいることに()がついた。

 (ぼく)(おも)わず、(かく)れてしまった。

 体育館(たいいくかん)(かど)背中(せなか)をぴったりとつけて、(みみ)をそばだてて、様子(ようす)をうかがう。

 

木戸口(きどぐち)さんって……に……てるよね」

(べつ)に……、そうじゃ……です」

「でも……てる、そっくり」

(いろ)んな(ひと)に、……って……われます」

(おれ)友達(ともだち)も……、……って」

「……そうですか」

 

 体育館(たいいくかん)(うら)にいるのは木戸口(きどぐち)さんだ。

 (ぼく)はそのことを察知(さっち)すると、なぜかドクンと心臓(しんぞう)()ねて、血液(けつえき)活発(かっぱつ)(はこ)びだそうとし(はじ)めた。

 木戸口(きどぐち)さんは、(だれ)(おとこ)といるらしい。

 それがわかると、二人(ふたり)会話(かいわ)がより()になった。

 

「マジ、木戸口(きどぐち)さん()てるよ、アイドルの下関(しものせき)ゆまに」

「アイドルですか……?」

()()()()()?」

()われない、です。自分がアイドルなんて……」

 

 より集中(しゅうちゅう)して(はなし)(ぬす)()きしようとすると、鮮明(せんめい)会話(かいわ)()こえてくる。

 

「そのさ、自分(じぶん)って()うのなんなん?」

「え?」

普通(ふつう)は、(おんな)()自分(じぶん)って、ゆわんくね?」

「ああ……、そうですね」

「じゃあ、なんでなん?」

 

 (たし)かにそうだ。

 木戸口(きどぐち)さんの一人称(いちにんしょう)が自分なのは、木戸口(きどぐち)さんの()()にも性格(せいかく)にも、()っているようには(おも)えない。

 と()っても、(ぼく)から()木戸口(きどぐち)さんは村口(むらぐち)さんに()ているから、本当(ほんとう)木戸口(きどぐち)さんはどんな(ふう)なのかはわからないけど。

 でも、とにかく、()っていない()がした。

 二人(ふたり)会話(かいわ)は、(おとこ)7:木戸口(きどぐち)さん3の配分(はいぶん)(すす)む。

 

「わかりません。でも、自分(じぶん)って()うのは大事(だいじ)()がして」

「そうなんや。でも、ギャップがいいんじゃない。なんかキャラが立ってていいってか、面白(おもしろ)いし」

「……そうですか」

 

 そう木戸口(きどぐち)さんが(こた)えてから、ほんの一瞬(いっしゅん)だけ、(みょう)()があった。

 (ぼく)()になって、その一瞬(いっしゅん)使(つか)って、体育館(たいいくかん)(かど)から(かお)()して、二人(ふたり)様子(ようす)垣間見(かいまみ)る。

 それから(おとこ)がとある提案(ていあん)()()けた。

 

「でさ、もしよかったら()()わない?」

「……(なに)にですか?」

 

 ()()した(おとこ)はもう(もど)ることはできない。

 (おとこ)(くち)から桃色(ももいろ)吐息(といき)(こぼ)している。

 その(のう)(しょく)()(うご)(せん)となって、木戸口(きどぐち)さんへと()(すす)む。

 

(おれ)()()ってくれない?」

 

 (おとこ)提案(ていあん)には傲慢(ごうまん)があった。

 (こえ)調子(ちょうし)から言葉(ことば)(おも)みを(かん)じなかった。

 

「……え?」

 

 やっと、(おとこ)()意味(いみ)()づいた木戸口(きどぐち)さんは、ありえないという(ふう)に、()(くち)()てる。

 その(あし)(ふる)えていた。

 木戸口(きどぐち)さんは明確(めいかく)(おび)えていた。

 

「どう?」

 

 そう()(おとこ)は、品定(しなさだ)めしているかのような、ベタついて(いと)でも()きそうな()(せん)

 

「……ちょっと、いまは、その」

 

 木戸口(きどぐち)さんはそう(のが)れる。

 (くる)(まぎ)れだ。

 でも、()げの口実(こうじつ)には十分(じゅうぶん)だ。

 

「そっか。じゃあ、いつまで()てばいい?」

「えっと……」

「じゃあ、来週(らいしゅう)までには、(こた)えを(おし)えて?」

「……はい」

 

 (おとこ)はもっと上手(うわて)だった。

 木戸口(きどぐち)さんは来週(らいしゅう)までに(こた)えを()さなければならない。

 そうなれば、自然(しぜん)と、木戸口(きどぐち)さんが(おとこ)について(かんが)える時間(じかん)()える。

 そう()()って、(おとこ)用事(ようじ)()んだらしい。

 

「じゃあね。また、来週(らいしゅう)、ここで」

 

 (おとこ)はどんどんこっちへ()かってくる。

 やばい!

 (ぼく)はとっさに体育館(たいいくかん)()(ぐち)へと()()いた。

 そこは(すこ)(くぼ)みになっていた。

 ここならバレないかもしれない。

 (ぼく)(いき)をひそめる。

 (おとこ)(かど)から()てきた。

 (おとこ)軽薄(けいはく)さが顔面(がんめん)()()ていた。

 瞬間(しゅんかん)感覚(かんかく)でしか()きていない(かお)つきだった。

 (おとこ)(ぼく)()づかずに校舎(こうしゃ)(ほう)へと、()をポケットに()()んだまま、小走(こばし)りで()っていった。

 (ぼく)はほっと、(いき)()いた。

 そして、(おとこ)()てきた体育館(たいいくかん)(うら)へと(いそ)ぐ。

 そこでは、木戸口(きどぐち)さんが、(ひざ)(かか)えて()いていた。

 

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