魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ、たから僕は描いている   作:至ッ亭浮道

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第13話

「タロちゃん、帰(かえ)ろー」

 

 放課後(ほうかご)、HR(ホームルーム)が終(お)わった後(あと)。

 佐藤(さとう)さんは、一目散(いちもくさん)に僕(ぼく)と川上(かわかみ)さんの元(もと)に来(き)てから、そう言(い)った。

 はいはい、と川上(かわかみ)さんはカバンを取(と)った。

 けれど僕(ぼく)は、座(すわ)ったままでいる。

 

「どうしたの?」

 

 川上(かわかみ)さんは振(ふ)り返(かえ)りつつ、そう言(い)った。

 

「ごめん、今日(きょう)は予定(よてい)があって。二人(ふたり)とも先(さき)に帰(かえ)ってて」

 

 僕(ぼく)は、川上(かわかみ)さんを見上(みあ)げた。

 川上(かわかみ)さんと眼(め)が合(あ)う。

 川上(かわかみ)さんの緑玉色(エメラルドグリーン)の眼(め)が、ギラッと光(ひか)った気(き)がした。

 

「……なんで?」

「木戸口(きどぐち)さんと約束(やくそく)があるんだ」

 

 川上(かわかみ)さんは一瞬(いっしゅん)、眼(め)を外(はず)して、また僕(ぼく)に視線(しせん)を戻(もど)した。

 戻(もど)ってきた時(とき)には、緑玉色(エメラルドグリーン)のギラツキは消(き)えていた。

 

「描(か)くんだ」

「……うん」

 

 どうしてわかったのか、わからない。

 川上(かわかみ)さんは、僕(ぼく)の態度(たいど)や雰囲気(ふんいき)から、僕(ぼく)が木戸口(きどぐち)さんを描(か)こうとしているのを予測(よそく)したらしい。

 

「どこで描(か)くの?」

「大園(おおぞの)先輩(せんぱい)に、生徒会(せいとかい)の倉庫(そうこ)を使(つか)わせて貰(もら)ってる」

「前(まえ)から準備(じゅんび)してたんだ?」

「うん。一週間前(いっしゅうかんまえ)から」

「タロちゃんってば、用意周到(よういしゅうとう)だにゃあ」

 

 佐藤(さとう)さんはそう言(い)って、僕(ぼく)の肩(かた)を突(つ)っついた。

 

「春奈(はるな)、私(わたし)たちも行(い)こう」

「「え?」」

 

 僕(ぼく)と佐藤(さとう)さんは同(おな)じ反応(はんのう)をした。

 

「それはちょっとぉ……」

「いや、行(い)こう。峯村(みねむら)の描(か)いてるのを見(み)よう」

「見(み)てどうするの?」

「確(たし)かめるの。私(わたし)たちに、木戸口(きどぐち)さんがどう見(み)えるか」

「何(なに)を?」

 

 と僕(ぼく)が聞(き)いた。

 けれど、黙殺(もくさつ)れた。

 そうして、僕(ぼく)を置(お)き去(さ)りにして、会話(かいわ)は流(なが)れていく。

 

「瑠(る)美(み)さ、見(み)えなくなったの?」

「いいや。でも、見(み)えなくなった方(ほう)がいいのかも知(し)れない」

「それは、遠慮(えんりょ)? 決別(けつべつ)?」

「それを決(き)めるために行(い)こ」

 

 会話(かいわ)は終着点(しゅうちゃくてん)に着(つ)いたようで、佐藤(さとう)さんは川上(かわかみ)さんに同意(どうい)したらしい。

 

「瑠(る)美(み)は真面目(まじめ)すぎるにゃあ」

「でも、これが私(わたし)だから」

 

 そう言(い)って、川上(かわかみ)さんと佐藤(さとう)さんが目配(めくば)せをした。

 

「じゃあ、行(い)こう」

「う、うん」

 

 川上(かわかみ)さんに促(うなが)されて、僕(ぼく)は、画材(がざい)でいっぱいのカバンを取(と)って立(た)ち上(あ)がった。

 

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