魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ、たから僕は描いている   作:至ッ亭浮道

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第4章
第14話


 生徒会(せいとかい)の物置(ものおき)となっている開(あ)き教室(きょうしつ)では、大園(おおぞの)先輩(せんぱい)が既(すで)に準備(じゅんび)を進(すす)めてくれていた。

 

「なんで川上(かわかみ)ちゃんが⁉ ……っは! 今日(きょう)もおっきいねー!」

「まりあ先輩(せんぱい)もかわいいですよ。……峯村(みねむら)が描(か)くのを見(み)ようと思(おも)って」

「そうなんだね!」

 

 と、大園(おおぞの)先輩(せんぱい)は納得(なっとく)しかけた。

 しかし、思(おも)い返(かえ)したように、窓側(まどがわ)に座(すわ)っている女子(じょし)生徒(せいと)を見(み)た。

 

「でも、菜(な)緒(お)ちゃんは大丈夫(だいじょうぶ)かな?」

「……大丈夫(だいじょうぶ)です。もう、緊張(きんちょう)してるので」

 

 木戸口(きどぐち)さんは、前(まえ)の学校(がっこう)のブレザーを脱(ぬ)いで、シャツだけになった状態で、椅子(いす)に座(すわ)っていた。

 木戸口(きどぐち)さんは、水色(みずいろ)のシャツを着(き)ていた。

 首元(くびもと)にはいつもの通(とお)り、リボンを結(むす)んでいる。

 髪(かみ)の揺れとシャツの淡(あわ)い水色(みずいろ)のグラデーションが海(うみ)の色彩(しきさい)に似(に)ている気(き)がした。

 

「峯村(みねむら)クン、準備(じゅんび)は終(お)わったよ。あとはお水(みず)だけ!」

 

 大園(おおぞの)先輩(せんぱい)はそう言(い)って、腰(こし)に両手(りょうて)を当(あ)ててエッヘン。

 

「ありがとうございます。それじゃ水(みず)を取(と)ってきます」

 

 そう言(い)って僕(ぼく)は、カバンを床(ゆか)に置(お)くと、先輩(せんぱい)の用意(ようい)してくれた筆(ふで)洗(あら)いを持(も)って、部屋(へや)を出(で)た。

 

★

 

「ねえ、木戸口(きどぐち)さん」

「はい?」

「木戸口(きどぐち)さんは、どうして描(か)いて貰(もら)いたいと思(おも)ったの」

「わかりません。ただ――」

「ただ?」

「――峯村(みねむら)さんの気持(きも)ちが嬉(うれ)しくて。いきなり絵(え)を描(か)かせて、って言(い)われたときはびっくりしましたけど」

「あちゃー、タロちゃんのいつものパターンだにゃ」

「ね! 峯村(みねむら)クンってやっぱり優(やさ)しい!」

「いつもの……?」

「私(わたし)もね、同(おな)じようなことがあったの」

「あたしもー」

「わたしもだよ!」

「……なんとなく聞(き)きました。やっぱり、峯村(みねむら)さんは優(やさ)しいんですね」

「誰(だれ)にでも優(やさ)しい人(ひと)だから、時(とき)に傷(きず)つけちゃうのにゃー」

「え?」

「春奈(はるな)、余計(よけい)なこと言(い)わない」

「ごめんにゃー」

「木戸口さん。最後(さいご)に一(ひと)つ言(い)っておくね」

「……はい」

「峯村(みねむら)の眼(め)を見(み)る時(とき)は覚悟(かくご)してね」

「え――?」

 

★

 

「すいません! 遅(おく)れました」

 

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