魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ、たから僕は描いている   作:至ッ亭浮道

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第2章
第7話


「どういうこと?」

「だから――」

 

 翌日(よくじつ)。

 僕(ぼく)は、川上(かわかみ)さんと佐藤さんの二人(ふたり)に、昨日(きのう)の事件(じけん)を話(はな)していた。

 

「言(い)ってる意味(いみ)はわかるんだけど」

「大変(たいへん)だったんねぇ」

 

 けれど、二人(ふたり)とも心底(しんそこ)どうでも良(よ)さそうだ。

 確(たし)かに、二人(ふたり)にはどうでもいい話(はなし)だとは思(おも)っていたけど……。

 僕(ぼく)は溜息(ためいき)をついた。

 僕(ぼく)のその様子(ようす)を見(み)て、川上(かわかみ)さんが話(はなし)に乗(の)ってくれた。

 

「峯村(みねむら)から見(み)たら、その人(ひと)は村口(むらぐち)さんそっくりに見えたんだ」

「うん」

「それだったら、まりあ先輩(せんぱい)が、その人(ひと)と峯村(みねむら)が、似(に)てるっていうのはおかしいね」

「そうなんだよ」

 

 僕(ぼく)は、激(はげ)しく首(くび)を振(ふ)って、その時(とき)の驚(おどろ)きを、再現(さいげん)しようとする。

 

「それでまりあちゃんは、タロちゃんのそっくりちゃんの、どこが似(に)てるって言(い)ったんだっけ?」

「雰囲気(ふんいき)が似(に)てるって」

「雰囲気(ふんいき)じゃあ、わからないにゃあ」

「そうなんだよね……」

 

 僕(ぼく)の話(はな)していることは、正(ただ)しいはずだ。

 昨日(きのう)のことを正確(せいかく)に説明(せつめい)していると思(おも)う。

 けれど、その内容(ないよう)がわけのわからない話(はなし)だから、何度(なんど)も話(はな)しているうちに、僕(ぼく)もわけがわからなくなってきた。

 

「瑠(る)美(み)はどう思(おも)う? タロちゃんが間違(まちが)えてるのかな?」

「わからない。……けど、まりあ先輩(せんぱい)が、峯村(みねむら)と女子(じょし)を見(み)間違(まちが)えてる方(ほう)が気(き)になる」

「だよねぇ。タロちゃんは別(べつ)に男(おとこ)の娘(こ)ってわけでもないしねぇ。

 昨日(きのう)、実(じつ)は、放課後(ほうかご)に女(じょ)装(そう)してた?

 隠(かく)れ女装癖(じょそうへき)?」

「してないよ!」

「やっぱりかぁ」

 

 と言(い)って、佐藤(さとう)さんはケラケラ笑(わら)った。

 

「僕(ぼく)が見(み)間違(まちが)えてたのかな?」

「見(み)間違(まちがえ)えてた可能性(かのうせい)が高(たか)いのは、まりあ先輩(せんぱい)だと思(おも)うけどね。普通(ふつう)に考(かんが)えると」

「瑠(る)美(み)は辛辣(しんらつ)だねぇ」

「でも、そうじゃない?」

「……まあ、タロちゃんとまりあちゃんだったら、タロちゃんを信(しん)じるかなぁ」

「ほらね」

 

 そんな調子(ちょうし)で、僕(ぼく)たちの話(はな)し合(あ)いは進(すす)まずに、環状(かんじょう)線(せん)をぐるぐる周回(しゅうかい)する。

 すると、佐藤(さとう)さんが、突如(とつじょ)として立(た)ち上(あ)がった。

 

「タロちゃん! その木戸口(きどぐち)さんとやらの写真(しゃしん)は、持(も)っとらんのだね?」

「……持(も)ってないよ」

「ほんとかにゃぁ。実(じつ)はこっそり隠(かく)してるんじゃないのかい?」

「してないってば!」

「にゃはは! ならば、方法(ほうほう)は一(ひと)つしかあるまい! 見(み)に行(い)こう!」

「えぇ⁉」

 

 僕(ぼく)は、唐突(とうとつ)過(す)ぎる提案(ていあん)に、呆気(あっけ)に取(と)られた。

 しかし、川上(かわかみ)さんは、はあぁと深(ふか)い溜息(ためいき)をついた。

 

「これはもう! 確認(かくにん)するしかないよ! 私(わたし)たちの眼(め)で見(み)て!」

「でも……」

「でもも、だってもなーい! 行(い)くぞ少年(しょうねん)! 真理(しんり)を見(み)つけに!」

 

 と佐藤(さとう)さんが言(い)ったその時(とき)。

 

「HR(ホームルーム)始(はじ)めるぞー。席(せき)座(すわ)れー、佐藤(さとう)」

「あ、はい」

 

 時刻(じこく)は午前(ごぜん)の8時(じ)半(はん)頃(ごろ)。

 これはすべて朝(あさ)の出来事(できごと)――。

 

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