新サクラ大戦 最強は果てに何を見る   作:らっくぅ

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1話 新たなる風・壱

「もう陸に上がってくるとはな」

 海軍士官学校を卒業してから数年で摩利支天(まりしてん)の艦長となったが、それから2年も経たずにあの事件が起きた。当然、艦長は解任となり、さてどんな所へ左遷されるのやらと思っていたが、まさか陸上(おか)とは。

「ふむ、それも帝都の真ん中…銀座ときたか。ますます訳がわからぬな」

 俺は提督の辞令によって指定された場所に向かっているわけだが、市街地のど真ん中に軍の基地などあったか?

 俺は帝都中央駅行きの飛行船に乗りながら、そんなことを考える。まぁ何にせよ、与えられた任務は全力をもって遂行させてもらうがな。

 

 帝都中央駅に着き、俺は改札を抜ける。

「ほう…駅も随分と変わったものだな」

 前に行ったのは数年前。あの時にはまだ、10年前に起きた降魔大戦の傷痕が残っていたが、今ではその面影はどこにもない。

「さて…予定時刻より早く着きそうだな。新聞でも読むとするか」

 俺は時間を潰すため、売店で新聞を読むことにした。最近まで海の上で活動していたから今の情勢を少し知っておきたかったのだ。

『横須賀の降魔、上海華撃団が見事撃破』

 俺がとった新聞は、横須賀に現れた降魔を上海華撃団が撃破したという記事が紙面の大部分を占領していた。

 降魔、か。

 あの正体不明の怪物には、あらゆる攻撃が通用しない。艦砲でさえも無傷なほどだ。

 だが、人類にはたった一つの対抗策がある。それが「華撃団」だ。高い霊力を持つ者達を集めた対降魔部隊。霊力を宿した攻撃は、通常兵器の効かぬ降魔を倒すことが出来る。まさに、希望の光というやつだ。

 ただし、「例外」もいるが。

「あの時も、上海華撃団が駆けつけてくれたのだったな」

 俺はそんな事を考え、そしてすぐにこれ以上の思考を停止する。感傷に耽ったり、後悔する時はもう終わったのだ。今は与えられた任務を遂行するのみ。

 俺は売店から離れ、帝都を歩き回ろうかと思った矢先、

 

 バリィィィィン‼︎‼︎

 駅の天井ガラスが割れ、列車ほどもあろうかという巨体の奇怪な生物が駅に飛び込んできた。

「降魔か‼︎」

 しかし、数ヶ月も経たぬうちにまた降魔と相見える事になるとはな。つくづく縁のある事だ。

「皆、逃げろ!」

 とりあえず民衆を避難させねば。彼らがいては思うように戦えぬ。

「あ、あぁっ…‼︎」

「‼︎」

 大体の人が駅から離れたところで、俺は震えた声の方を向く。そこには、腰を抜かして震えている少女がいた。目の前には降魔。ヤツは少女を視界に捉え、襲い掛かろうとしていた。

「させぬッ」

 俺は瞬時に少女の元へ駆け、少女を抱き寄せつつ降魔の一撃を刀で防御する。

「彼らのところまで走れるな?」

 俺は民衆が避難しているところを見やる。すると、少女はコクンと頷き、駅の端の方へ走っていく。

「さて…」

 俺は降魔の方へ向き直り、もう一振りの刀を抜く。守るべきもの達は遠くで一つに固まっている。そして敵は一体。屠る事は容易い。

「覚悟は出来ているのだろうな、降魔」

「ガァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎」

 対して降魔は剥き出しの殺意を咆哮として辺りへ撒き散らし、俺に向けて突進してくる。

 先も言ったが、降魔に通常の攻撃は効かない。なのに、何故俺はコイツを倒せると確信しているのか。

 それは、あの時の事件で発覚した自分の「力」にある。

 俺は脱力し、意識を研ぎ澄ませる。握っている刀に「力」を纏わせるように。意識を集中する。

 突進してきた降魔が間合いに入った瞬間、

「破ッッ‼︎」

 俺は瞬時に全身に力を込め、両の刀を交差させるように斬り上げる。その斬撃は衝撃波を生み出し、刃の当たった頭部だけでなく、降魔の全身を十字に切り裂いた。

「ふむ、こんなものか」

 降魔が消滅した事を確認すると、俺は臨戦態勢を解き、刀を納める。すると、

「おおおぉぉ‼︎兄ちゃんすげぇよ!」

「降魔をたった一撃で⁉︎」

「何だ何だ、上海華撃団の新入りか⁉︎」

 避難していた人達が、安全を確認したのか、俺の方へと寄ってきて歓声を上げる。

「なに、当然のことをしたまでです。皆さん、お怪我はありませんでしたか?」

「あなたのお陰で全員無事よ。この子もね。娘を守ってくれてありがとう」

「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」

 先ほど助けた少女が俺の下へ駆け寄ってくる。

「怪我がなくて良かった。降魔と会って無事に生き延びたこと、誇りに思えよ」

 そう言い残し、俺は駅を去ることにした。このまま居続けても仕様がないし、何より今の騒動で時間を大いに食ってしまった。予定時刻ギリギリだ。

 

 

 

 

 

 

「指定された場所は…ここか」

 向かった先は銀座の街中。どう見ても、ここに俺が配属されるような施設は辺りにはない。という事は、ここで迎えが来るという事なのだろうな。

「ふむ、大帝国劇場か」

 大帝国劇場は銀座の、いや帝都の名所だ。目立つここを待ち合わせ場所にするのは自然な事だ。

 そう思いながら劇場の前で待っていると、

「あの…お掃除の邪魔なんですけど…」

 左の方から女性の声がした。そちらを向くと、箒を持った着物姿の少女がいた。

「む、失礼した。ここで人を待っていてな」

 俺はその場所を退こうとするが、ふと、その少女の顔を見る。

「君はもしや…さくら?天宮(あまみや)さくらか?」

「え?…あっ!もしかして、智兄さん!?」

 どこか見覚えのある顔だと思ったら、やはりそうか。

 さくらとは昔、家が近所でよく遊んでいた記憶がある。俺の方が引っ越し、さらに俺自身も士官学校へ行ってからは、文通もしなくなり疎遠になっていたが、まさかこんな所で再会できるとはな。

「全然気づかなかったよ〜。最後に会ってからもう10年くらい経つよね?」

「うむ。正確には7年と3ヶ月だな」

「よ、よく覚えてるね、智兄さん…」

「しかし…本当に久しいな、さくら。見ないうちに綺麗になった」

「えぇ⁉︎も、もう…いきなりそんな事言って…。恥ずかしいよぉ…」

 さくらは顔を赤らめ、もじもじしている。思ったことを言っただけなのだがな。この程度で照れるとは、かわいい奴め。しかし、俺にはこの年下の幼馴染をいじっている暇はない。

「それはそうと、ここで人を待つことになっているのだが、誰か見ていないか?」

「へ?えぇと、私は特に見てないけど…」

 すると、劇場の方から声がした。

「あら、もう来てましたのね」

「あっ、神崎(かんざき)支配人!」

 横を向くと、劇場の入り口から、紫色を貴重とした和服に身を包んだ気品高い女性がやって来た。

「あなたが来栖川智久ですね?」

「ええ、そうです。あなたは…」

「私は神崎すみれ。私があなたをここへ呼んだのよ」




来栖川の7年3ヶ月という年月は意味もなく決めた訳じゃなく、ちゃんとした()計算式で作ったものです。アナグラム?というやつです。バイト中暇すぎたので思いつきました
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