パーティー前日。
二枚の招待状と一通の手紙が葉山家に届いた。
手紙に書かれていた内容は要約するとたった一つの問いが書かれていた。
「雪乃の一番笑顔になれるプレゼントを用意した者をパートナーとする。」
その文言を見たとき、隼人は覚悟した。
なぜなら、柚耶に貰ったものなら雪乃は何でも喜びそうだからである。
不利な戦いになる。
だが、前回の問答で勝利したことを考えれば戦えない訳ではない。
故に覚悟をその目に宿し、最後の戦いに挑んだ。
その逆に柚耶は難しそうに唸っていた。
何か考えることがあるのか、腕を組み深く長考した様子だった。
リビングで隼人、柚耶、葉山父の三人は、その手紙を囲むようにして
三者三様の表情で思い耽っていた。
葉山父が考えていたのは昨日の誠志の部屋で話された件だった。
そもそも今回の〈パートナー騒動〉は初めから予定されたものだった。
全ての事の始まりは次代の雪ノ下家当主候補を兼ねた婿候補の選定で
誠志さんと月乃さんの意見が別れたことにあった。
月乃さんは昔から可愛がっていた隼人を推したが
誠志さんはそもそもまだ決める時期ではないの一点張りだった。
しかし、今回の騒動を境に前言を覆すように葉山柚耶の名をあげた。
それに納得出来ない月乃さんが、強引に事を進めようとしたところ
前日の「パートナー決定戦」などという親睦会程度の催しだった。
つまるところ
誠志さんは婚約者を決めるにはまだ早い。
でも、現状誰かと言われれば葉山柚耶を推す。
というのが言い分で
それだけで月乃さんが納得しないのは明白で
最悪、強引にでも事を進めることも予想した誠志さんは
今回の計画を私に持ちかけた。
〈葉山柚耶がどんな人間か見極める機会を作る。〉
すべてがそれに集約した今回の騒動。
誠志さん曰く
「柚耶くんときちんと話す機会さえあれば、月乃も理解してくれるさ。」とのことで
柚耶を避けていた月乃さんを騙し討ちする形で、今回の騒動は起こされた。
もちろん最初に聞いた時に柚耶が断っていれば
そこで話は終わっていた。
柚耶が参加したいと言い出すのは、親としては情けないが予想外だった。
誠志さんは初めからこうなるのが解っていたようだったが……。
そもそも月乃さんは昔から隼人をいたく気に入っていた。
それとは逆に柚耶に苦手意識を持っていたこともなんとなく知っていた。
今回のことをきっかけに、どちらを選ぶにしても
葉山家と雪ノ下家がこれからも長く付き合っていく為に
葉山父には損のない計画だったのである。
しかしここで予想外の事態が起こった。
前当主源一郎さんの参入である。
源一郎さんまでもが柚耶を推薦するのを知らなかった私は誠志さんに聞いたが
柚耶の話を何度かしたことがある程度で
あそこまで柚耶を推すのは予想外らしかった。
それもそのはずである。
そもそも源一郎さんと柚耶は会ったことすらないのだから。
もし、源一郎さんが強引に柚耶と雪乃の婚約を強引に取り立てたのならば
せっかくの親睦会も意味がなくなり
月乃さんと誠志さんの不和の目になりかねない。
何にしても、それだけは阻止しなければならない。
雪ノ下が二つに割れるなど絶対にあってはならないからだ。
思考から意識を復活させた葉山父は隼人と柚耶に声をかけた。
「隼人、柚耶。もし何にするか決まったのなら声をかけなさい。
今日は一日家にいるようにするからもし必要なら車でも出そう。」
隼人と柚耶はそれに礼を言い、各々の部屋に戻った。
× × ×
先に動いたのは隼人だった。
「父さん、舞浜のデステニーランドまで車を出してもらえるかな。」
「隼人か……。解った。柚耶にも一応声をかけてから行くがいいな?」
「もちろん。」
そういうと葉山父は柚耶の部屋に向かった。
ノックを何度かしても、返事がなかったために
葉山父は部屋に入室した。
すると柚耶は部屋の真ん中で、何枚もの紙をばらまき、
その内の一枚に集中して何かを書いていた。
この子はたまに集中しすぎると、周りの声が耳に入らないことがあるので
念のために部屋を確認してよかった。
そう安堵した葉山父は柚耶に声をかけた。
「柚耶、いいかい?」
「……あ、父さん。ごめんごめん、ちょっと集中して考えてたから気づかなかった。」
「隼人のプレゼントが決まったらしくてね。
先に隼人と出ることになるけど、いいかい?」
柚耶は特に気にする事なく了承した。
「いいよ。いってらっしゃい。せっかく高い入場料を払うんだし、ゆっくりしてきなよ。」
「いや、柚耶もまだ決まってない様だし早めに帰るようにするよ?」
すると柚耶は、頭を振って
本当に気にしていないように答えた。
「ううん。僕のは一人で準備してなきゃできないものだし。出先でご飯も済ませる予定だから。」
何処か違和感を感じたまま、せっかくの好意なので甘えることにした。
隼人がプレゼントを購入したあとは外食でもして帰るか、と予定をいれた。
柚耶に抱いた違和感の正体に葉山父は最後まで気づかなかった。
そうして迎えた1月3日。
葉山家の三人は正装一式で、パーティ会場に向かった。
× × × ×
パーティー会場であるホテル・ロイヤルオークラに到着した三人は
煌びやかなホールを抜けたところで、雪ノ下家執事の都築さんが迎えてくれた。
「お待ちしておりました。」
「つづきんおっはーっ‼」
元気いっぱいの挨拶した柚耶に畏まったように挨拶をする都築。
葉山父は自分が知らないうちに都築と柚耶の距離感が縮まっているのに驚き
思わず声をかけた。
「つ、都築さん。えらく家の柚耶を可愛がってくれているようで……。」
微笑みながら柚耶の手をとってエスコートする都築は
特に焦る様子も見せずに返した
「昨日、柚耶様からデートのお誘いを受けまして。
本来なら、葉山様にご連絡をと思ったのですが、御当主や柚耶様本人から
今日の事に関する事なので黙っているように言われたのです。
未成年である、柚耶様をあなたの許可なしに連れ出したのです。
罰は如何様にも。」
そう頭を下げる都築さんに葉山父は混乱した。
いや、その事を責めてはいない。
そもそも今回のことは葉山父自身各々の判断に一任している。
間違った事をしたのなら怒るのが大人の責任なのだが……
それを言ってしまえば、そもそも子どもたちを巻き込んでいるのはこちらなのだ。
むしろ柚耶が自分で判断したのなら、今回の件について追及するのはお門違いである。
そうではなく、葉山父が知りたいのは
なぜ、柚耶が都築さんを選んだかなのだ。
だが、それを聞くのなら柚耶に対して聞くのが当然の理で……。
なんとなくだが柚耶は答えてくれない気がしたのだ。
葉山父は悩んだ末にお茶を濁すような返事をする。
「いや、柚耶がそう言ったのならいいんだ。」
「そう言って頂けるのなら幸いです。」
結局、一礼したあと柚耶のエスコートに戻った都築さんに
これ以上追及出来ずに、とりとめのない会話をしながら会場を目指した。
会場は交流や顔合わせが目的だからなのか立食式のブッフェパーティーだった。
普段の年始の親睦会ならば、着席式のコース料理の方が多いことから
隼人は注意深く周囲を探った。
隼人からしてみれば、これから始まるパートナー選の結果がどうであれ
ここには雪ノ下家に取り入る為に、雪乃の婚約者の座を奪わんとする者が多くいる敵地である。
表情を変えぬまま、隼人は臨戦態勢である。
柚耶はにこにこと朗らかな表情をしながら料理を見渡した。
サーモンやマグロの巻き寿司やフルーツサンドにサラダサンドなどの
サンドウィッチなど片手で食べれるものから始まり
その場で焼いてくれるお肉や簡易なバーカウンターまであった。
それぞれがパーティーの様子を横目に見ながら会場からすこし離れた広い一室に案内された。
「当主がもうすこししたらこちらに伺いに来ますのですこしお持ちください。」
広めの待合室には簡易なお茶セットがあり、都築がハーブティーを淹れた。
それを隼人父、隼人、柚耶の前に置き、蒸らす時間を示すために砂時計を置いた。
「ご用の際はそちらのに内線でお呼びください。」
そう言って退室しようとする都築に柚耶が声をかけた
「つづきん。雪乃ちゃんは会場入りしている?」
「……。いいえ、まだ到着しておりません。
ご予定では雪乃お嬢様と陽乃お嬢様お二人で
数十分もしない内に到着する予定でございます。」
その答えに満足そうに笑って礼を言うと椅子に腰をかけた。
都築が退席した部屋では、葉山父がパーティーでの注意やマナーの再確認を
雑談を交えながら柚耶に確認していた。
元々その辺の教養は小さい頃から躾られてきたとはいえ
普段は社交界に参加することがないに等しい柚耶に
緊張をほぐす意味も込めて話していたが
緊張の「き」の字もないように
柚耶はハーブティーで喉を潤していた
その様子に、隼人は注意をした。
「柚耶、そんなに飲んでいたらパーティーの肝心な時にトイレに行く羽目になるよ。」
その注意に柚耶は
「大丈夫だよ。そんなに長居するつもりないし。」
その言葉を奇妙に感じた隼人は柚耶にたずねた。
「それは一体どういう……」
隼人が言い終えるより先にノックが響いた。
葉山父が「どうぞ」と返事をすれば
「葉山のおじ様、こんばんは。」
紫と白のスレンダーラインのドレスに薄い化粧で着飾った
それはそれは美しい少女。雪ノ下陽乃が入室した。
「やぁ陽乃ちゃん。すこし見ない間に、また一段と綺麗になったね。」
丁寧な口調で話す陽乃と慇懃な口調で話す二人の間に変わらない態度の声が響いた。
「陽ちゃんすっっごいきれーだよ‼」
興奮したように話す柚耶の態度に、変わらず話す陽乃
「それはありがとうございます。柚耶もありがとう。」
どこか素っ気なく返す陽乃の態度を特に気にせず
柚耶は引き続きハーブティーを楽しんだ。
隼人は何度かこういった場でみたことがあるのか慣れた様子で
陽乃に聞いた。
「誠志さんは、もう来るのかな?」
「さぁ?私は別でいま来たところだから。」
「それじゃ、また後で」と返しながら去っていく
柚耶はその様子を楽しそうに見ていた。
「待たせてしまったかな?」
入れ替わるように入室してきたのは雪ノ下誠志と
「お待たせしました。」
落ち着いた柄の着物を着た月乃さんだった。
隼人は佇まいを直して柚耶の横に掛けた。
後ろで、葉山父は見守るように立ち
葉山夫妻もそれに倣うように対面に二人で並んで座った。
「さて、まずは二人の答えを聞かせておくれ。」
「答え……ですか?プレゼントが何かってことでしょうか?」
誠志はにやにやと意地の悪そうな笑顔で隼人に返す。
「もちろん。君たちが何をプレゼントするのか。
それはとても大切なことだからね。」
意味深げに言う、誠志の言葉に被せるように柚耶が名乗りをあげた。
「はいはーい‼まずは僕からで良いかな?」
元気よく声高々に話す柚耶が取り出したのは
小さな一束の赤い花が綺麗にまとまったコサージュだった。
「これはプレゼントじゃないんだけど、そのプレゼントの鍵……みたいなものかな?」
そう言いながらそれを誠志に渡した。
「これを僕に?」
柚耶から受け取った赤い花のコサージュを胸ポケットに差し
すこし考えた誠志は嬉しそうに笑った。
「なるほど……。柚耶くんは本当僕に似ている。」
嬉しそうに笑う誠志は満足そうに柚耶の頭を撫でた。
いまいち柚耶の行動の意味が解らない
隼人と葉山父。
誠志の横でため息を吐く月乃。
そんな周囲など関係ないとばかりに嬉しそうに誠志は続ける
「ペンタスの花言葉は〝嘘つき〟君は気づいたんだね。」
あまりにも笑って話す誠志の様子に
我慢の限界だったのか月乃が頭を下げながら隼人に事情を話した。
「ごめんなさいね隼人くん。私も先程聞いたばっかりだったの。」
未だに事情が解らない隼人は、困ったように尋ねた。
「えっと、何がでしょうか……。いまいち状況がわからないんですが……。」
「雪乃は今日、ここに来ていないんだ。」
その言葉に隼人は「えっ、」と溢して固まった。
「どういうことでしょうか……。」
いまだ混乱から抜け出せないままに隼人はなんとか言葉を返す。
「そもそもの発端は、雪乃の婚約者を誰にするかだったのよ。」
そこからは、大まかにだが今回の騒動の全容が説明された。
月乃さんが隼人を婚約者候補として考えていたこと
誠志さんは婚約そのものを時期尚早と考えていて
候補を挙げるなら柚耶を婚約者候補として考えていること
そして二人の意見が別れた結果、
今回の騒動で互いの家の親睦。
もっと言ってしまえば柚耶のことを月乃が知るために計画されたこと
父は元々事情を知っていて、今回の騒動がどう転んでも
葉山家には得のあるはなしだったからこそ受けたこと
父や月乃さんは僕を婚約者として考えてくれていたのは嬉しかったし
誠志さんが柚耶を推しているのはとてもショックだった。
そんな上げて落とされたような心境の中で
1つ疑問がうまれた。
「……柚耶は一体いつ気づいたんだい?」
そうだ。柚耶はまるで答えを知っていたかのように話していた。
プレゼントの件だってそうだ。
あの花のコサージュにそんな意味があるなんて知らなかった。
「ん―、疑問に思ったことは三つあってさ。」
誠志は楽しそうに、月乃はそんな誠志を肘で打ちながら
隼人と葉山父は静かに続きをうながした。
「まず、月乃さんが部屋で話したとき「第一回雪乃のパーティパートナー」って言ったんだよね。」
隼人はその時の状況を思い出す。
たしかにそう言っていた記憶がある……。
「あれってさ、あからさまに雪乃パパが月乃さんに読ませた文章だよね?
なんだったら月乃さんは紙を開く瞬間まで中身を知らなかったんじゃないかな?」
隼人が月乃さんをみると、月乃さんは頷きながら説明した。
「たしかにその通りよ。
私が主だって話すと柚耶くんも話すに話せないかもしれないし
もっと言えば君が知りたいことが、知れないかもしれないでしょう。
という理由で直前に渡されたわ。
でも、その文章におかしなところなんてあったかしら?」
「まぁ、いまはパーティーの最中で雪乃パパも長いこと時間をとれないだろうから
説明は省くけど、一番最初はそこかなぁ。
そのタイトルを聞いた瞬間「あ、雪乃パパが考えたやつだ」って確信したし
そもそもの状況もおかしかったしね。
僕が苦手な月乃さんが話すような状況を自分で作るとは思えないもん。」
すると間髪いれずに、月乃が柚耶をフォローする。
「苦手……そうね。苦手と言っても過言ではなかったかもしれないわ。
今まで失礼な態度を取って来てごめんなさい。」
申し訳なさそうに話す月乃に、柚耶は気にした素振りも見せず笑顔で応対した
「全然いいよ‼アッシー楽しみにしてます‼」
元気よく話す柚耶に「ええ、もちろん、」と返す。
葉山父だけは「アッシーって何のことだろう」と考えていたが
空気を読んで声には出さなかった。
「次に、陽ちゃんのこと。」
「陽乃さん?」
ここで急に出てきた陽乃さんに、隼人は首を傾げた。
「これは確信ってほどでもないし、違和感程度の話なんだけど
そもそも婚約者を決めるなら、まずは陽乃さんからじゃないのかなって。
でも、これは家の方針とかもあるだろうし違和感あるなーって程度。」
隼人は「そう考えてもおかしくはない」程度に納得した。
隼人としては陽乃のその辺は完全に自立出来ていると思っている。
あしらうも上手く掌で転がすのも陽乃さん次第……とまでは言わないが
少なくとも雪乃よりは自分で対処出来るイメージがあった。
だからこそ、柚耶のようにそこに違和感は覚えなかった。
「最後にこの会場のこと。」
「会場?」
それを聞いて隼人は立食パーティーのことが頭に出てきたが、違和感に繋がらず
どういうことか疑問に返した。
「どこかおかしなところがあったのかな?」
「すっごい根本的な話なんだけどね。
誠志さんはねみんなが思ってるより雪乃ちゃんや陽乃ちゃんのことが大好きなの。」
葉山父は長年の付き合いだからか、そこには激しく頷いた。
今まで葉山父が覚えているだけでも
娘自慢エピソードを何十、何百と聞かされてきたのだ。
さすがに仕事中はないが、終業後にまで聞かされるのは
なかなか堪えるものがある。
「それで、誠志さんが僕たちが思っているより娘のことが大好きなことと
このパーティーの違和感はどう繋がるんだい?」
「そんな雪乃ちゃん、陽ちゃん大好きーな、誠志さんが
雪乃ちゃんの誕生日を祝う日だって銘打って
ブッフェの料理に雪乃ちゃん、陽ちゃんの好物が全くないなんてあり得るのかなって。」
「あぁ……それは確かに。」
思わず漏れたかのように葉山父は納得した。
他の人間ならいざ知れず、誠志さんに限っては「あり得ない」と即答出来る。
それくらい誠志さんは娘大好きーなのだ。
葉山としてはいまいち納得出来ない理由だったが。
詳しい話は後日にでも聞けば言いと、とりあえずの納得をした。
「あなた……そろそろ。」
月乃さんがそう言うと、誠志さんは時計を確認して頷いた。
「それじゃ、そろそろ会場に戻らないといけないから。
隼人くん、柚耶くん今回は家の事情に巻き込んで申し訳なかったね。」
そう言いながらも全然罪悪感なんて感じてなさそうに朗らかそうに笑う誠志。
隼人としては、別に今回の事に思うところはない。
……いや、全くない訳ではなかったが
父親が納得した上で、必要と判断したのなら
それに茶々をいれるつもりはなかった。
ただ、せっかくのプレゼントを今日渡せないのは
何だかもったいない気がしたので
駄目で元々くらいの気持ちで誠志さんに聞いてみた。
「あのっ、誠志さん。
せっかくなんで雪乃ちゃんにプレゼントを渡したいのですが
帰りに雪乃ちゃんに渡しにお邪魔してもいいでしょうか?」
「ん?あぁ、そういえばまだ言ってなかったね。
雪乃が家で待っているから、二人で向かいなさい。
都築を外で待たせているから……雪乃のこと任せたよ。」
悪戯っ子のようにウインクをして見送る誠志の言葉に
隼人は嬉しそうに返事をした。
「お兄、途中でケーキ屋さんに寄ろ?予約しといたんだ‼」
初めから、みんなで祝う予定だったと言わんばかりの準備の良さに驚きつつ
柚耶を連れて、部屋を出ようとした時。
ノックもせずに扉が開いた。
「誠志様、月乃様大変です。」
酷く狼狽えたように入室してきたのは
僕たちがこれから合流しようとしていた都築さんと陽乃さんだった。
陽乃さんと都築さんは余程急いできたのか肩で行きをしていた。
その様子を見て月乃さんが厳しい目付きで言い放つ。
「都築、落ち着きなさい。あなたがそのような醜態でどうしますか。」
月乃さんが都築さんを叱責すると
都築さんは「申し訳御座いません奥さま。」と一言謝罪した。
「そんなことより大変なのよお母さん」
陽乃も珍しく慌てたように、月乃に事の大きさを伝える
都築が誠志の耳元で話始めた。
それを聞いた誠志はバッと立ち上がると
慌てたように室内にあったモニターの電源を入れた。
するとそこには、信じられないような状況が映っていた。
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次話 10月6日 21:00 予定
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