うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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大空の大決戦

 プロトタイプ・フライトデクーの群れは、二機一組のエレメントを複数形成し、AFAガンダムと対峙する。

 上下左右に分かれた複数のエレメントから、AFAガンダム目掛けて、スキャッターガンより放たれた弾丸が飛来する。

 

「くっ!」

 

 プロペラントタンク兼大型ブースターを噴かせて飛来する弾丸の雨を躱したAFAガンダムは、お返しとばかりに二連装式ビームライフルの引き金を引く。

 刹那、放たれた閃光が一機のプロトタイプ・フライトデクーを貫き。更に続けて放たれた閃光が、僚機のフライトユニットを撃ち抜き落伍させた。

 

 しかし、エレメントを一つ潰しても、残りのエレメントはまだまだいる。

 

 目に付いたエレメントに向けて、AFAガンダムは二連装式ビームライフルの銃口を向けると、タイミングを見計らい引き金を引く。

 刹那、閃光が走るが、それは狙ったプロトタイプ・フライトデクーを捉える事無く、虚しく空を切るだけであった。

 

「っ! 後ろか!」

 

 だが、狙いを外したことを悔いる間もなく、凛空は後方から飛来し装甲を叩いた弾丸に気付き、次なる行動に移る。

 前方のエレメントに気を取られている隙に回り込んだのであろう。振り向くと、下方から接近する二機のプロトタイプ・フライトデクーの姿があった。

 

「このっ!」

 

 襲い来る弾丸を左腕に装備したシールドで防ぎながら、右腕の二連装式ビームライフルで反撃を行う。

 しかし、相手が最大加速に達している為か、或いは慣れない空中での戦い故か、命中弾を叩きだす事はできない。

 

 刹那、そうこうしている内に、先頭を飛んでいたプロトタイプ・フライトデクーが得物をヘヴィソードに持ち替え、AFAガンダムに肉迫した。

 

「だったら!」

 

 AFAガンダムは振るわれたヘヴィソードを蹴り飛ばすと、続けざまに胴体目掛けて蹴りを繰り出す。

 次の瞬間、蹴りを受けたプロトタイプ・フライトデクーは、破片を撒き散らしながら雲海へと消える。

 だが、そんな僚機に構う事無く、もう一機のプロトタイプ・フライトデクーが、同じく得物をヘヴィソードに持ち替え肉迫する。

 

 刹那、AFAガンダムの首を取るべくヘヴィソードを振るう。しかし、寸での所で躱され、大金星を挙げるには至らなかった。

 それどころか、攻撃後の隙を突かれ、零距離の二連装式ビームライフル攻撃を受けた同機は、夜空に輝く見事な花火と化すのであった。

 

「これで残りはあと半分──」

「サターン後方部より同型と思しき複数のLBX確認! 増援です!」

 

 オペレーターからもたらされたこの報告に、凛空は眉を顰める。

 サターン後方部の方へとカメラを向けると、報告の通り、複数のプロトタイプ・フライトデクーが編隊を組んで接近しつつあった。

 

「動きが変わった……」

 

 増援を得て態勢を立て直したプロトタイプ・フライトデクーの群れは、接近戦を仕掛ける事を止めると、一定の距離を保ちながらAFAガンダムを包囲する様に攻撃を仕掛け始めた。

 

「くっ!」

 

 左腕に装備したシールドで攻撃を防ぎつつ、何とか現状を打破する策はないかと思考を巡らせる凛空。

 しかし、思考を巡らせている間にも、防ぎ切れなかった弾丸がAFAガンダムの装甲を叩き、機体のダメージが蓄積していく。

 

 このままではジリ貧になる。そう思われた、次の瞬間。

 夜空を一筋の光が駆け、一機のプロトタイプ・フライトデクーを貫いた。

 

 この突然の光景に、他のプロトタイプ・フライトデクー達が浮足立つ中。再び閃光が走り、別のプロトタイプ・フライトデクーを貫いた。

 

「上空からの砲撃!?」

 

 勿論、これには凛空も当惑せずにはいられなかったが、光の発生源へとカメラを向けた所で、凛空はそれが味方の援護射撃であると理解する。

 何故なら、カメラが捉えたのは、エクリプス下部に備えたビッグ・ガンが(プロトタイプ・)(フライトデクー)を狙い撃つべく火を噴く光景だったからだ。

 

「凛空君」

「嶺警部!」

「ビッグ・ガンで可能な限り援護する!」

「ありがとうございます!」

 

 正確な射撃が一機、また一機とプロトタイプ・フライトデクーを撃ち抜く。

 予期せぬ援護射撃に相手が浮足立っている内に、AFAガンダムも攻撃を再開し、その数を減らしていく。

 

「これで!」

 

 やがて、二本のサブアームが装備したビームサーベルが最後のプロトタイプ・フライトデクーを切り裂いた所で、夜空に一瞬の静寂が訪れた。

 

 

 

 

 同じ頃、サターンの操縦室にて、空中戦の行く末を見届けていた二つの人影があった。

 

「全機、反応消失。迎撃は失敗です、マスター」

「ふふ……、そうか」

 

 折角の好機を逃し、少々悔しさを滲ませる黒沢。

 そして対照的に、何処か嬉しそうな雰囲気を醸し出すレックスの二人である。

 

「AFAガンダム、サターンに接近、先行している味方と合流するものと思われます」

「先行した連中は?」

「格納庫及び通路にて、防衛用に展開しているLBX部隊と交戦中です」

 

 黒沢がコンソールを操作すると、二人の目の前にあるモニターの映像がサターン艦内のものへと切り替わる。

 そこに映し出されたのは、大群と呼ぶに相応しい自律型LBXの群れと対峙している数機のLBX。

 

 閃光の如く動きでデクーを切り裂くパンドラ、自慢のライフルでアヌビスを撃ち抜くフェンリル。

 その推力を破壊力に変えて、腕部に備えたビームシールドごと、砲撃型ことデクーカスタムCをランスで貫くガーベラ。

 自慢の超我王砲で複数機を葬り去るハカイオー絶斗、自慢の機動力で複数機を相手に大立ち回りを演じるナイトメア。

 個々の力は上記の機体に及ばずとも、チーム力で戦うクイーン・マッドドッグ・ナズー。そして、必死に得物を振るうブルド改。

 

 以上九機が、それぞれの場所で奮戦している様子であった。

 

「オーディーンとゼノンの姿が見当たらないが?」

「防衛線を突破し、ダクト内から制御室を目指していると思われます。先ほど、ダクト内に配備していたLBXからのカメラ映像で確認したしました」

 

 第一波としてサターンに取り付いたのは、合計で十一機。

 残りのオーディーンとゼノンは、一足先に制御室を目指している様だ。

 

「くくく……、そうか」

 

 本来ならば心中穏やかではない筈なのだが、何故かレックスは、寧ろバン達の快進撃を喜んでいる節があった。

 

「マスター、意見具申、よろしいでしょうか?」

「何だ?」

「今こそECMを作動させる絶好の好機と考えます」

「……、いや、まだだ」

 

 レックスの返答を耳にするや、黒沢の眉がピクリと動く。

 

「何故です? 今ECMを作動させれば、邪魔なLBX達を一掃できます」

「心配するな。制御室には、アイツがいる」

「確かに、彼のLBXの操作技術には一目置く部分もあります。しかし……」

「兎に角、まだECMは作動させん」

「……、了解いたしました」

 

 黒沢は完全に納得した訳ではないが、レックスが判断した以上、彼はその判断に従うしかなかった。

 

「あ、オーディーンとゼノンが制御室に侵入しました」

「くくく……、いいぞ、バン」

 

 わだかまりを感じつつ、黒沢は淡々と報告を続けるのであった。

 

 

 

 

 一方その頃、レックス達が観戦しているとは露も知らないミカ・ゴウダ三人衆・リュウの五人はと言えば。

 格納庫内で自律型LBXの大群を相手に必死の戦いを続けていた。

 

「ひーっ! 倒しても倒してもキリがないよー!」

「弱音を吐くんじゃないよ! この先でリーダー達も頑張ってるんだ! ここが踏ん張りどころだよ!」

「しかしリコ、このままじゃジリ貧だぜ」

「そろそろトーチカも心許なくなってきたでごわす……」

 

 当初は、先行している面々と共に第一波としてサターンの格納庫に降り立った彼ら。

 しかし、先行した面々の後顧の憂いを無くすと共に、後続の着陸場所を確保するべく、彼らは格納庫に残る事となった。

 そして、倒した自律型LBXの残骸などをかき集め即席のトーチカを作り戦いに挑んだのだが……。

 

 敵の想像以上の数、それに比例する様に、雨霰の如く飛来する弾丸や弾頭の数々。

 熾烈な敵の猛攻を前に、即席のトーチカは最早蜂の巣状態。加えて、各々の機体に蓄積したダメージも、既に限界寸前であった。

 勿論、それはプレイヤー自身の疲労も同じであった。

 

「しまった抜けられた! リコ、一機そっちに行ったぞ!」

 

 刹那、マッドドッグの隙を突いた一機のインビットが、即席トーチカのクイーン目掛けて駆ける。

 そして、自慢の跳躍力で即席トーチカを飛び越えると、クイーン目掛けて鋭いクローを突き出した。

 

 しかし、鋭いクローはクイーンの装甲を貫く事はなかった。

 

「大丈夫?」

「あ、あぁ……」

 

 何故なら、横合いからヒート・ランスの一撃を受けて機能を停止させたからだ。

 

「助かったよ」

「ん、どういたしまして」

 

 クイーンの無事を確かめたミカは、次なる獲物を探すべく、カメラを動かす。

 だが、その時であった。

 

「危ない、後ろだ!」

 

 リコの言葉に反応してカメラを向ければ、背後から飛び掛かる二機のインビットの姿があった。

 間に合わない。そう直感的に判断したミカは、専用のシールドを構え衝撃に備えた。

 

 だが次の瞬間、ミカは予想外の光景を目撃する事となる。

 

 二つの細長い円形状の物体が、二機のインビット目掛けて突撃してきたのだ。

 その物体にミカは見覚えがあった。それは紛れもなく、AFAガンダムが装備していたプロペラントタンク兼大型ブースターであった。

 質量弾と化したそれは二機のインビットに直撃し、最後の役目を果たすのであった。

 

「ミカ、大丈夫!?」

 

 刹那、愛しの人の声がミカの耳に届くと共に、ガーベラの目の前にAFAガンダムが降り立った。

 

「ん、大丈夫」

「よかった……。あ、待たせてごめんね」

「全然、気にしてない」

 

 そして、凛空とミカのやり取りが一段落ついた所で、ゴウダ三人衆とリュウの沸き立つ声が聞こえてくる。

 

「遅かったじゃないか!」

「待ちわびたぜ!」

「心強い味方の到着でごわす」

「た、たすかったぁ……」

「到着したのは僕だけじゃありませんよ」

 

 刹那、格納庫に第二波と呼ぶべき味方のLBX達が次々と降り立つ。

 

「よっしゃー、ここからもうひと踏ん張りだ! 気合入れていくよ!!」

 

 心強い味方の到着に、リコの音頭と共に気合を入れ直す一同。

 そして、戦いの第二幕が切って落とされるのであった。

 

 

 

 

 

 水平・垂直360度、全天周囲モニターが夜空を映し出しその中にぽつんと制御機器が浮かんでいる様は、まるで夜空に浮かぶ空中庭園を彷彿とさせる。

 そんなサターンの制御室では現在、白金色に神々しく輝く"悪魔"が降臨していた。

 

「ははは! 美しい……、美しいよルシファー!!」

 

 その正体は、オーディーンとゼノンとのバトルの末に半壊にまで追いやられたルシファーである。

 神々しい造形の左半身に対して、バトルで傷つき一部が溶解した悍ましい右半身。その二つを兼ね備えた姿は、まさにルシファーの名に相応しい。

 

 だが、変わったのは見た目だけではない。

 オーディーンのX(エクストリーム)モード、ゼノンのA(オルタナティブ)モードと同様の特殊モード。セラフィックモードと呼ばれる特殊モードを発動させたのだ。

 ついでに言えば、プレイヤーであるコウスケも、眼帯に隠していたオッドアイを露わにしている。閑話休題。

 

「君達二人には感謝しているよ、ルシファーの本当の美しさを引き出してくれたからね。そのお礼に……、粉々に打ち砕いてあげるよ!!」

 

 刹那、ルシファーの必殺ファンクションであるセラフィックウイングが炸裂し、オーディーンとゼノンに光りの雨が降り注ぐ。

 これで勝負あった──、と思われた次の瞬間。

 

「何!?」

 

 煙が晴れると同時に姿を現したのは、ビームガーターにより事なきを得たオーディーンとゼノンの姿であった。

 

「皆に託された思いは打ち砕けない!」

「ば、馬鹿な……。今のルシファーは完璧で究極の……」

「哀れだな。LBXバトルは機体のスペックが全てじゃない」

「そんなもの、力なき者の戯言だ!! 薙ぎ払え、ルシファー!!」

 

 天を駆け、オーディーンとゼノンをヘブンズエッジの錆にするべく突撃するルシファー。

 しかし、二機の連携を前に逆に返り討ちに遭い、ルシファーは特殊モードを解除してしまう。

 

「「必殺ファンクション!!」」

 

 刹那、オーディーンとゼノンが繰り出した必殺ファンクションがルシファーを襲う。

 

「馬鹿なぁっ!? うわぁぁぁっ!!!」

 

 その破壊力はすさまじく、ルシファーを破壊するのみならず、爆風に巻き込まれたコウスケも下の階層に吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

 ゴライアスから続く因縁の対決に決着がついたその瞬間を見届けたのは、当人達だけではなかった。

 

「強くなったな、バン……」

 

 サターンの操縦室にて、モニター越しにバトルを見届けたレックスは、小さく感想を零す。

 

「プログラムへのハッキングを確認。制御プログラム、停止します」

 

 そんなレックスを他所に、黒沢は対空砲とフェンスが無力化された旨を報告する。

 

「マスター、敵の第二派到着を受けて、防衛線が押し返されつつあります」

「……」

「マスター、ご決断を」

「……よし、ECMを展開しろ」

「了解」

 

 刹那、レックスの決断を受けて、黒沢はコンソールを操作する。

 

「出力上昇、80……、90……、100……、120。プラズマ磁場の発生確認。スパークブロード通信、間もなく遮断します」

 

 次の瞬間、モニターに映っていたシーカー側のLBX達が次々と動きを止める。

 

「敵LBX部隊、沈黙しました」

「そうか……」

 

 サターン全体を高密度のプラズマ磁場が覆い、スパークブロード通信の遮断に成功。

 これにより、サターン内のシーカー側LBXを一気に無力化させたのだ。

 

 一気に形勢を逆転させ安堵の表情を浮かべる黒沢。

 一方のレックスは、自身のCCMを操作し始める。

 

「マスター?」

「準備しておけ。連中、乗り込んでくるぞ」

 

 CCMを操作しながら黒沢に指示を飛ばすレックスの表情は、子供の様に輝いていた。

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