「どうだ、美しいだろ? これこそ、世界を変える"希望"の光だ!」
悪魔に魅入られているかの如く、グラビティポンプの素晴らしさを説くレックス。
これに対して、バンと凛空は憐みの表情を浮かべる。
「──たのに。信じてたのに、どうして、レックス!!」
「信じてた、か。……いいか、バン。人は、裏切る生き物なんだよ。そして、そんな奴らが作るこの世界もまた、信じるものなど何もない! そうさ、こんな病んだ世界など、何の価値もない!」
今の世界は救うべき価値など欠片もないと言い放つレックス。それに対してバンは異を唱える。
「それは違うよ! 今の世界にだっていい所は一杯ある! 絶対にあるよ!! だから──」
刹那、バンの言葉を遮るかのように、レックスが近くのコンソールに自らの拳を叩きつける。
「笑わせるな。……俺の妹も、俺の親父も、家族も、みんなこの腐った世界の犠牲になった!! だから、この世界は浄化されねばならんのだ! そして、浄化後の新たな世界を手に入れる、俺のこの手で!!」
そして、怒気を含んだ声と共に世界への増悪を滾らせたレックスは、自身のCCMと共に一機のLBXを取り出す。
通常のLBXと比較し一回り程大きな体格、全身の装甲はまるで燃え盛る炎の如く色合い、尻尾に、背中には薄い炎のような翼を備えている。
その禍々しい姿は、まさに炎の魔神の名に相応しいものであった。
「こいつは"イフリート"。俺の持てる技術の粋を集めて作り上げた最強の相棒だ」
「イフリート……」
「バン、あのレックスがあそこまで言うんだ、生半可な性能じゃない筈だよ」
「その通り。こいつは俺の憎しみ、この世界を焼き尽くしたいとの想いを込めて作られた最強のLBXだ」
そこでレックスは一拍置くと、再び語り始める。
「バン、凛空。この世界に守る価値があるというのなら、イフリートに勝って、それを証明してみせろ」
「レックス……」
「……ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん」
「凛空?」
ぽつりと呟いた凛空の言葉に、バンは疑問符を浮かべる。
次の瞬間、凛空はそんなバンを見つめながら、彼に言葉を掛けた。
「バン、戦おう! レックスを止めるには、もうそれしかない!」
凛空の言葉を聞き暫し躊躇していたバン。しかし、遂に決心したのか、自身のCCMを取り出す。
「オーディーン!!」
「AFAガンダム!」
操縦室に降り立つオーディーンとAFAガンダム。
戦闘態勢を取る二機と対峙する様に、イフリートもまた戦闘体勢を取る。
「これが、最後の戦いだ! お前たちに、真の絶望と言うものを教えてやる!!」
レックスの言葉と共に、戦いの幕が切って落とされる。
先に仕掛けたのはオーディーンとAFAガンダム。
AFAガンダムが二連装式ビームライフルで援護し、それを受けてオーディーンがイフリート目掛けて駆ける。
しかし、イフリートは飛来する閃光を最小限の動きで躱してみせると、続けて懐に飛び込んできたオーディーン目掛けて右腕を振るう。
刹那、体勢の崩れた隙を狙って、炎を纏ったかの如くイフリートの左拳がオーディーンに放たれる。
重たい一撃を受けたオーディーンは、操縦室の壁へと吹き飛ばされる。
「オーディーン!」
「っ!」
「よそ見をしている場合か!?」
バンの声につられ凛空の視線がオーディーンの方へと向けられた、その時。
その見た目に反するスピードで距離を詰めたイフリートは、AFAガンダム目掛けて右拳を放つ。
咄嗟にシールドを構えた為本体への直撃は免れたものの、その威力によって壁際まで吹き飛ばされる。
「まだまだ、こんなものじゃないだろう!」
刹那、イフリートは標的をオーディーンに切り替え、オーディーンの前に降り立つ。
これに対して、オーディーンはイフリート目掛けてリタリエイターを突き出す。しかし、イフリートはこれをあっさりと躱しただけでなく、リタリエイターを掴んでオーディーンの動きを封じる。
次の瞬間、イフリートの尻尾が、第三の拳の如くオーディーンに襲い掛かる。
イフリートの攻撃はそこで止まる事無く、更にオーディーンを床に叩きつける等、イフリートの容赦のない攻撃が続く。
「どうしたバン! もっと攻めてこい!!」
「オーディーン!」
このまま一方的にやられてしまうのかと思われた、その時。
一筋の光がイフリートの眼前を掠める。
「このっ!」
その正体は、AFAガンダムの攻撃であった。
「ふ……」
二連装式ビームライフルを放ちながらイフリートに接近するAFAガンダム。
そんな同機に対し、イフリートは放して欲しければ放してやると言わんばかりに、首を掴んで持ち上げていたオーディーンを、AFAガンダム目掛けて投げつける。
次の瞬間、AFAガンダムはオーディーンを受け止めきれず、両機はぶつかり床に倒れ込んだ。
「どうした? バン、凛空。お前たちの力はそんなものか?」
「くっ……!」
「バン、熱くなり過ぎちゃ駄目だ。ここは、連携を仕掛けよう」
「分かった!」
立ち上がったオーディーンとAFAガンダムは、凛空の指示通り連携攻撃を仕掛け始める。
AFAガンダムが二連装式ビームライフルを連射しイフリートの動きを止めている隙に、オーディーンが間合いに飛び込み接近戦を仕掛ける。
しかし致命的なダメージは与えられず、お返しとばかりに、イフリートの拳がオーディーン目掛けて放たれようとした。
だがその時、AFAガンダムが間合いに飛び込み、二本のサブアームに装備されたビームサーベルでイフリートの装甲を切り裂く。
しかしながら、見た目通りの重装甲故か、あるいは踏み込みが足りなかったのか、致命的な攻撃とはならなかった。
それでも、この方法なら通用すると確信したのだろう。
オーディーンとAFAガンダムは代わる代わるの攻撃を仕掛け、イフリートにダメージを与えていく。
だが、いつまでも同じ手が通用する程、レックスは甘くはなかった。
「見せてやるよ。こいつがイフリートの必殺ファンクションだ」
〈アタックファンクション、ヴァルゾダース〉
刹那、イフリートの胸部にある窪みが光を放つと共に、背面から激しい炎が噴き出した。
次の瞬間、イフリートはまるで火球の如く勢いでオーディーンに突撃すると、威力の倍増した拳を放つ。
オーディーンは咄嗟に構えたビームガーターで受け止めるものの、次の瞬間、最強のシールドはヴァルゾダースを防ぎ切れずに破壊されてしまう。
更にイフリートの勢いは止まらず、灼熱の拳がオーディーンを、更にはAFAガンダムを襲い、二機を壁に吹き飛ばした。
〈アタックファンクション、グングニル〉
〈アタックファンクション、メガビームキャノン〉
しかしすぐさま、二機は必殺ファンクションを繰り出す。
刹那、二つの巨大なエネルギーがイフリート目掛けて放たれるものの……。
「そんな……」
「くっ!」
イフリートはその場から動くことなく、上半身を捩って必殺ファンクションを躱すという離れ業をやってのけた。
「くくく、思い知ったか、実力の差と言う奴を? だが、この程度で終わりじゃない。……見るがいい、真の絶望というものを!!」
「真の」
「絶望……」
そして、レックスが自身のCCMを操作した、次の瞬間。
イフリートの巨体を、まるで磁気嵐の如くどす黒い渦が包み込む。
「焼き尽くせ、イフリート!!」
〈インフェルノモォォォードッ!!〉
刹那、渦の中のイフリートが竜の咆哮の如く声をあげる。
同時に、まるで沸き立つ力を抑え切れないかの如く、もがき苦しむかのように体を動かし始めた。
「これは……」
「まるで怪物だ……」
「そうさ、こいつは今や正真正銘のモンスター。俺の中で沸き立つ、怒り、哀しみ、そして憎しみ……。つまり、俺そのものだ」
やがて、黒い渦が消えるや、目を覆うばかりの光が放たれる。
そして光が収まり姿を現したのは、破壊の炎を全身に纏った、文字通り地獄の業火と化したイフリートの姿であった。
「っ!」
「早い!」
刹那、先程までとは比較にならない、まるで瞬間移動の如くスピードでオーディーンの懐に飛び込んだイフリートは、オーディーンの頭部を鷲掴みにする。
そして、何度か床に叩きつけた後、操縦室の天井を破壊し何処かへとオーディーンを連れ去ってしまう。
「オーディーン!」
叫ぶバンを他所に、凛空はCCMを操作すると、AFAガンダムをイフリートが天井に開けた穴に突入させ二機の後を追いかけるのであった。
イフリートが開けた穴を抜け、サターンの外壁部分にまで到着したAFAガンダムのカメラが捉えたのは、今まさにその拳をオーディーン目掛けて放とうとするイフリートの姿であった。
「させるか!」
〈アタックファンクション、ミサイルパーティー〉
AFAガンダムの各所から一斉に発射されたミサイルの数々が、イフリートに襲い掛かる。
命中すれば並のLBXならば致命傷となるが、今のイフリートにはこの程度、毛ほども痛くない様だ。
しかし、致命傷は与えられなかったものの、オーディーンへの攻撃を阻止する事はできた。
「バン、オーディーンは大丈夫!?」
「何とか……」
「くくく。それでは、第二ラウンドといこうじゃないか、バン、凛空」
オーディーンの隣に降り立つAFAガンダム、そしてそんな両機を見据えるイフリート。
サターンの外壁部分にて、三機は再び対峙する。
暫し見つめ合った所で、不意にオーディーンが戦闘再開の口火を切る。
〈アタックファンクション、JETストライカー〉
飛行形態に変形したオーディーンは、青い光に覆われるや、猛スピードでイフリート目掛けて突撃する。
だが、オーディーンの機首はイフリートを貫く事は叶わなかった。
何故なら、イフリートは猛スピードで突撃してきたオーディーンを受け止めたからだ。
しかし、そのお陰で背後に隙が生まれた。
その隙を突き、背後に回ったAFAガンダムが、二本のサブアームに装備したビームサーベルで斬りかかる。
だが、イフリートは尻尾を巧みに使ってその攻撃を防ぐと即座に反撃に移行し、オーディーンを巻き込むように二機を吹き飛ばす。
「どうした? このままじゃ世界は救えないぞ?」
「……バン、僕がイフリートの注意を惹き付ける。その隙に、
「よし、分かった」
挑発的なレックスを他所に、バンと凛空は手短に作戦会議を終えると、早速行動に移る。
〈
AFAガンダムがイフリートの注意を引いている間に、オーディーンは
「どうした、そんなものか!? もっと打ってこい!!」
「うぉぉぉっ!!」
基本の性能が高いとは言え、特殊モードがない事に少々疎外感を感じる凛空を他所に、オーディーンとイフリートの攻防は更に激しさを増していく。
最早並のLBXではとても立ち入れない攻防が暫く続いた後、遂に、イフリートの拳がオーディーンを捉える。
更に続けてイフリートの尻尾攻撃が繰り出され、オーディーンを壁際に吹き飛ばす。
だが、このピンチにオーディーンは諦める事無く、リタリエイターをイフリート目掛けて投擲した。
この予期せぬ攻撃にイフリートは反応できず、リタリエイターはイフリートの頭部に命中。隙を生み出す。
刹那、リタリエイターを拾い直したオーディーン、更にはサブアームのビームサーベルを展開させたAFAガンダム。二機の攻撃が、イフリート目掛けて放たれる。
その勢いはすさまじく、イフリートを押し込むかのように、三機は再びサターンの内部へと戻っていく。
程なく、三機はとある通路に降り立った。
「ならば!」
〈アタックファンクション、プロミネンスレイド〉
刹那、空中へと跳躍したイフリートは内部に集中させたエネルギーを熱線にして一気に放射させる。
無数の熱線がオーディーンとAFAガンダムに向けて降り注いだ、その時。
「させない!」
〈アタックファンクション、メガビームキャノン〉
大型のビーム砲から放たれた巨大な一筋の光が、放射されたエネルギーを相殺し、イフリートまでの道を作り出した。
「バン、今だ!」
「うぉぉぉっ!!」
刹那、オーディーンはその道を使い一直線にイフリートに突撃する。
そして、装備したリタリエイターの切っ先を、イフリートの胸部目掛けて突き刺した。
「やった!」
「っ!!」
次の瞬間、イフリートは糸の切れた操り人形の如く力なく床に落下し、やがて四つの目からも光が消え、その機能を停止させた。
そして、そんなイフリートの様子を見届けるオーディーンとAFAガンダム。
「俺達の勝ちだ。だからレックス、もう止めてくれ!」
「レックス!」
「くっ! そんな、そんな筈は……」
自身の負けを認められず、CCMを操作しイフリートの再起動を試みるレックス。
だが、CCMの画面には、エラーとの赤文字が表示されるばかりであった。
「馬鹿な……。イフリートが、負けるだと? ふ、ふざけるなぁっ!!!」
「「っ!」」
「お前の力はそんなものではない筈だ!! イフリートよ! その身を焦がす程の、絶望の炎をもっと滾らせろ!!」
本来、そんな事は起こり得ない筈であった。
だが、レックスの怒気を含んだ言葉に共鳴したかの如く、イフリートの目に再び光が宿る。
そして、次の瞬間──。
「何だ!?」
「あれは……」
操縦室の壁の一部が破壊され、バン・凛空・レックスの三人はそちらに視線を向ける。
そこで三人が目にしたのは、
そして、溶解した壁の中、その巨体に紫炎を纏わせたイフリートの姿であった。
刹那、イフリートが咆哮を上げると共に、三人を熱波が襲う。
「何で、どうして!? だって確かに……」
「そうか、そう言う事か……」
信じられない光景を前に狼狽えるバンを他所に、レックスは状況を理解した様で、笑い声をあげると、バンと凛空にも理解できるように説明を始める。
「バン! 凛空! これはイフリートの意思だ!!」
「え?」
「……」
「イフリートに搭載されたCPUが俺の感情を完全に理解したんだ! 俺の憎しみが、完全にイフリートに宿ったんだ!! ハハハッ、アッハハハハッ!!」
仮にイフリートに搭載されていたCPUがメタナスGX級のものであったとしても、CPUが自我を持つなどあり得ない。
しかし、機能を停止した筈のイフリートが再起動し、あまつさえレックスの指示もなく動いている事を鑑みると、イフリートが自我に目覚めたとしか思えなかった。
「そんな……」
そして、バンがぽつりと呟いた、次の瞬間。
イフリートは両掌を構えると、そこにエネルギーを凝縮させていく。
凝縮されたエネルギーはまるで燃え盛る太陽の様になり。刹那、凝縮されていたエネルギーが、まるで火球の様に放射される。
「うわっ!」
「っ!」
幸い、狙いを定めて放たれたものではなかった為、バンと凛空に火球が命中する事はなかった。
しかし、レックスの足元に一発の火球が命中、爆発の衝撃で吹き飛ばされたレックスはコンソールにぶつかってしまう。
「レックス!」
「大変だ!」
慌ててレックスのもとへと駆け寄るバンと凛空。
どうやら頭部を打撲したらしく、レックスの頭からは少量の血が流れていた。
「くくくくくっ、はははははっ!!」
しかし、レックスはそんな痛みなど気にも留めていない。
「見ろ、バン! 凛空! アレこそ本物のモンスターだ!!」
寧ろ、全てを灰燼に帰すまで止まらぬ化け物が生まれた事に、この上ない喜びを感じている様だ。
「……凛空」
「……分かってる!」
刹那、バンと凛空は互いの意思を確認し終えると、レックスに宣言するかのように口火を切った。
「止めてみせる! 俺達で!」
「必ず!」
そして、バンと凛空はCCMを操作し、イフリート目掛けてオーディーンとAFAガンダムを突撃させる。
しかし、イフリートは二機の同時攻撃を軽々と躱すと、オーディーンに向けて尻尾を振るい吹き飛ばす。
刹那、AFAガンダムがオーディーンを気にかけ一瞬注意が逸れた隙を見逃さず、イフリートはAFAガンダム目掛けて破壊の権化と化した拳を放った。
「AFAガンダム!!」
その威力はレックスが操作していた時よりも格段に上昇しており、AFAガンダムは反対側の壁まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「このぉっ!」
その光景を目にしたバンは、再びオーディーンをイフリートに突撃させる。
しかし、再びオーディーンの攻撃を躱したイフリートは、オーディーンの頭部を鷲掴みにすると、そのままグラビティポンプの中へと姿を消すのであった。
「オーディーン!」
「くくく、無駄だ。もう誰にも、
「止めてみせる! そうでなきゃ、これまでの俺達の戦いが……。俺達に託された思いも何もかもが、全てが無駄になる!!」
バンはCCMを操作し、グラビティポンプの中でイフリートとの死闘を続ける。
一方凛空は、そんなバンの加勢に向かおうと焦る気持ちを抑えつつ、AFAガンダムを動かそうとする。
「頼む、動いてくれ……」
CCMを操作するも、CCMの画面にはノイズが走り、機体状況を示す表示は一様に赤く点滅している。
最早、ここまで来て見ている事しかできないのか。
「っ! オーディーン!」
苦戦しているのであろうバンの声を聞くたびに、凛空は焦燥感に駆られる。
「動け! 動けよ!! ガンダム!!」
だが、そんな凛空の訴えも空しく、AFAガンダムは動き出す気配がない。
「頼む、動いてくれよ……。僕はイフリートを止めたい……、止めなきゃならないんだ!! だからガンダム! 僕に力を貸してくれ!!」
刹那、凛空の気持ちに応えるかの様に、AFAガンダムのカメラが光を取り戻す。
そして、傷だらけとなりながらも、その体をゆっくりと立ち上がらせると、ファイティングポーズをとる。
まるで、どんな奇跡でも起こしてみせるかのように。
「行こう! ガンダム!!」
こうして戦線に復帰したAFAガンダムは、オーディーンの加勢に向かうべく、グラビティポンプの中へと突入する。
グラビティポンプの中をしばらく進んだAFAガンダムは、やがて炉心付近で死闘を続けるオーディーンとイフリートの姿を発見する。
「凛空!?」
「お待たせ、バン」
そして、一旦オーディーンとイフリートが距離を取った所で、AFAガンダムはオーディーンと合流を果たす。
「バン、もうあまり時間もない。だから、一気に勝負を決めよう!」
「でも、どうやって?」
「ガンダムで動きを止める。そしたらバンは、必殺ファンクションを!」
「よし、分かった!」
作戦が決まった所で、二機は早速行動を開始する。
オーディーンはリタリエイターで、AFAガンダムは先ほどの攻撃で射撃武器が使えなくなった為、両手に装備したビームサーベルで。
イフリートに対して近接攻撃を仕掛け続ける二機。
しかし、やはり近接戦闘ではイフリートの方に分があり、拳や尻尾を巧みに使い二機の攻撃を防ぐと、反撃とばかりに二機に対して拳を打ち続ける。
それでも、重い拳に耐えながら、二機は果敢に攻め続ける。
それはまるで、バンと凛空の諦めない心を表すかのように。
「オーディーン!」
刹那、イフリートの攻撃後の僅かな隙を突き、オーディーンのリタリエイターがイフリートの胸部を突く。
そして、イフリートが後方に下がった、その時。
「為すべきことを為すために!!」
AFAガンダムは両手に装備したビームサーベルの刀身を伸ばすと、イフリート目掛けて振り下ろす。
意表を突くこの攻撃にイフリートは対応できず、光の刃がイフリートの装甲を斬りつける。
だがこの程度ではイフリートは止まる事無く、反撃とばかりに、AFAガンダム目掛けて火球を放射する。
これに対してAFAガンダムは、回避するどころか、自ら火球目掛けて突撃する。
次の瞬間、複数の爆発と共に、爆煙が周囲一帯を覆う。
先ずは一機。イフリートが確信した、次の瞬間。
爆煙を突き破りAFAガンダムが、否、追加装甲を全て脱ぎ捨てた"ガンダム"が姿を現したのだ。
「うぉぉぉぉっ!!」
そして、懐に飛び込んだガンダムは、イフリートの頭部目掛けて渾身の右ストレートを繰り出した。
その威力は凄まじく、殴られた箇所が変形しただけでなく、イフリートの巨体を吹き飛ばしたのだ。
更に、イフリートが息つく暇もなく、ガンダムはスラスターを噴かせて先回りすると、今度は左回し蹴りが炸裂する。
この怒涛の攻撃を受け、イフリートは堪らず膝をついた。
「今だ、バン!」
「超プラズマバースト!」
〈アタックファンクション、超プラズマバースト〉
刹那、雷撃を身に纏ったオーディーンは巨大な槍となり、イフリート目掛けて突撃する。
イフリートも最後の足搔きとばかりに火球を放射するも、巨大な雷槍と化したオーディーンは止まる事無く進み続け、そして──。
見事
次の瞬間、断末魔の叫びと共に、イフリートはその巨体を灰燼に帰す。
「あ、あぁ……」
グラビティポンプの中から立ち上る黒煙を目にし、戦いの結果を悟ったレックス。
「ばか、な……」
そして、半ば放心状態のレックスに、満身創痍となった愛機を回収したバンと凛空が歩み寄る。
「超プラズマバースト。レックスに教えてもらった技だよ」
「は、ははは……、そうか、俺が教えたあの技か……、っ!!」
自嘲の笑みを浮かべた刹那、興奮が収まり漸く痛みを自覚したのか、レックスが激痛に顔を歪める。
「早く、ここに来た目的を果たせ」
「バン。レックスは僕が介抱しておくから、バンは自爆の指示を」
「分かった」
凛空の提案もあり、バンはコンソールに歩み寄ると、CCMで山野博士からの指示を仰ぎながらサターン自爆の準備を進める。
一方凛空は、近くに備えていた救急箱から包帯を取り出すと、止血の為にレックスの頭に巻いていく。
こうして応急処置を行う最中、凛空はレックスに語りかけた。
「ねぇ、レックス」
「何だ……」
「今、どんな気分?」
「……とても清々しいよ。こんな気分は、本当に久しぶりだ」
「そっか……」
そこで凛空は一拍置くと、更にレックスに語りかけた。
「ねぇレックス、他の方法はなかったの? 例えば、レックスの口からみんなに伝えてみるとかさ」
「伝える、か。……どうせ、そんな事をしても握り潰されるだけだ」
「そうかもしれない。だけど、試してみなきゃわからないじゃない。可能性はゼロじゃないんだから」
「可能性、か……」
「僕もバンも、色々な人から託された思いを背負ってここまで歩き続けてきた。例えその道が、どんなに
「どうして、そこまで……」
「何故なら、信じていたからだよ。人を……、人の持つ可能性を!」
「……」
「だから、諦めないでよレックス! 信じていれば、新しい世界だって作れる筈だよ!」
「新しい世界を……、作る、か……」
刹那、サターンが針路を変更し、尚且つ自爆シーケンスが開始された旨のアナウンスが流れ始める。
同時に、自爆準備を完了したバンが二人のもとへと駆け寄ってきた。
「凛空、レックスは?」
「一応、応急処置は終わったよ」
「よかった……」
安堵の表情を浮かべたバンは、不意に、自らの手をレックスに差し出す。
「レックス、帰ろう」
「俺はいい……。二人で逃げろ」
「駄目だ! 帰るんだ、レックスも一緒に帰るんだ!!」
一度は拒否したものの、最後には、レックスはバンの手を掴む。
バンはレックスに肩を貸し、凛空も続けてレックスに肩を貸す。
こうして三人は、ハープーンの接続部分目指して、操縦室を後にするのであった。
階段を下り、操縦室とコントロールルームを繋ぐ長い通路を歩く三人。
その最中、不意にバンが、レックスに質問を投げかける。
「ねぇ、レックス。世界の人達に送ろうとしたメッセージって、どんなものだったの?」
「アレか……」
一拍置いた後、レックスはメッセージの内容について語り始めた。
「人は獣にあらず、人は神にあらず。人が人である為に、今一度考えるのだ。人とは何かを……、何をするべきかを」
「人は何をするべきかを?」
「賢くなり過ぎた人間は、この世の全てを管理し支配しようとする。まるで神であるかのように。大きな力を手に入れた人間は弱者を喰らい、どんな残酷な行いも厭わない。……まるで、獣であるかのように」
レックスの言葉を一言一句聞き逃さないように耳を傾けるバンと凛空。
「進歩し過ぎた人は、人である事を、いつの間にか忘れてしまったんだ。だから、だからこそ俺は、世界の人々に考えさせたかった。人はどうあるべきか、人が人である為の真実の姿を……」
「人は変われるさ。新しい世界はきっと作れる。俺達が作ってみせる。レックスが望んだ世界を!」
「バンの言う通り。だからレックスは、僕達が作る世界を最後まで見届けて。それが、レックスにとっての贖罪だと思うから……」
「お前たち……」
満足げな笑みを浮かべるレックスと共に、コントロールルームの階段を下っていくバンと凛空。
その最中、二人は制御用の機器の近くにぽつんと佇む人影がある事に気がつく。
一歩、また一歩と近づくにつれ、その人影の正体が確かになる。
「え……」
「どうして……」
階段を下り切ったバンと凛空は、その人影の正体を目にし、困惑の表情を浮かべる。
一方のレックスは、言葉を発する事無く険しい表情を浮かべていた。
「マスター。一体、何処に行こうというのです?」
指で眼鏡を押さえた人影の正体は、誰であろう、黒沢その人であった。
日頃よりご愛読いただき誠にありがとうございます。
そしてご意見・ご感想、皆様の温かな評価、本当にありがとうございます。
お陰様で、本作品のお気に入り登録者数が1000人を越えました。本当にありがとうございました。
最後に、これからもどうぞよろしくお願いします。