うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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過去へ逃げ出すよりも、未来へ進むことを

「どうして貴方がここにいるんですか、黒沢さん!?」

「まさか、黒沢さんもイノベーター!?」

 

 黒沢の登場に困惑するバンと凛空を他所に、当の本人は、短いため息を漏らす。

 

「山野くん。私は、イノベーターの一員などではありません。その点、誤解なきよう」

「それじゃ……、黒沢さんはどうしてここに?」

「私はマスターの"影"。故に、マスターに付き従うのは当然の事です」

「影? ……黒沢さん、貴方は一体何者なんですか?」

 

 黒沢の言葉から、彼とレックスがブルーキャッツの店主と従業員以上の関係にある事は理解できた。

 しかし、それ以上の具体的な関係性や、黒沢本人の素性等。疑問点はまだまだ残されている。

 だが、その答えを知る黒沢本人は、バンと凛空にその答えを教えるつもりはない様だ。

 

「こいつは……、黒沢は……」

 

 すると、その答えを知るもう一人の人物、レックスが徐に黒沢の素性について語り始めた。

 

「俺と同じく、世の中に裏切られた者なのさ」

「レックスと、同じ?」

「あぁ。……"トキオブリッジ崩落事故"、お前たちも聞いた事があるだろう」

 

 ジンや八神、そして凛空自身の運命にすらも大きく影響を及ぼした未曾有の大倒壊事故。

 その事故の名がレックスの口から零れた瞬間、二人の脳裏に、黒沢も事故の被災者だったのかとの答えが浮かぶ。

 だが、レックスがその前に口にした裏切られたとの発言が、その答えに違和感を感じさせた。

 

 程なく、二人は新たなる答えに辿り着く。

 すると同時に、レックスが答え合わせの様に続きを語り始めた。

 

「黒沢の父親は、トキオブリッジを建設した際に現場監督をしていた」

 

 すると、これ以上隠し通せないと観念したのか、レックスの言葉を引き継ぐかのように、黒沢が自身の口で自らの素性を語り始めた。

 

「……父は、トキオブリッジ建設に携わった事をとても誇らしく語っていました。……そう、あの事故が起こるまで」

 

 トキオブリッジ崩落事故は後の調査により、その原因が担当企業の無理な工費圧縮に伴う手抜き工事であると判明している。

 

「あの事件が起こり、犠牲者の遺族や世間の人々の増悪や非難は当然ながら担当した企業に向けられた。そして、建設に際して現場監督を務めていた父にも……」

 

 そこで一拍置くと、黒沢は続きを語る。

 

「だが、そもそもの原因となった工費の圧縮は、施工管理者と会社の一部役員が結託し、工費の一部を横領したから起こったのだ!」

 

 曰く、黒沢の父親は事件後にこの事実を偶然知り、施工管理者と役員達にこの事実を世間に公表する様に迫ったのだとか。

 しかし、彼らは公表を拒んだだけでなく、有ろう事か、黒沢の父親に自分達の罪をなすりつけた。

 

「当然父は必死に身の潔白を主張した。だが、世間の人々は、誰も父の言葉に耳を貸そうとはしなかった。……そして、遂に父は、自身に向けられる増悪や非難に耐えられなくなり、自ら命を絶った」

 

 だが、そこで悲劇は終わる事はなかった。

 

「父の身の潔白を信じていた母も、父が自殺した数日後、父の後を追う様に自ら命を絶った」

 

 刹那、それまで平静を装っていた黒沢の表情が、徐々に険しさを増していく。

 

「こうして、当時中学生だった私は父と母を失い悲しみに暮れた。だと言うのに! 親戚も、当時親しかった友達も!! 誰も私に優しい言葉を掛けないどころか、手のひらを返し、私に罵詈雑言を浴びせてきた!!」

 

 その後、当時中学生だった黒沢は、世間からの罵詈雑言から逃れるように地元を離れ、縁もゆかりもない土地でひっそりと暮らし始めたという。

 

「私は恨んだ、この世界を!! 身勝手な人間達を!!」

 

 語気を荒らげた、次の瞬間。一転して黒沢が冷静さを取り戻す。

 

「それから数年後。私は、マスターと出会った。マスターは、同じ境遇の者として、私の事を理解してくれた。嬉しかった……。同時に、マスターは私に自らの計画を打ち明けてくださった」

「その計画って、もしかして……」

「そう、今回の革命計画ですよ。最も、その時はまだ漠然としたものでしたが。それでも、その話を聞いた時、私は自らの存在意義を悟った。マスターの手となり足となり、そして影となり、この方の計画を成功に導く。それこそが、私の存在意義の全てだと!!」

 

 刹那、再びレックスが口を開く。

 

「流石にこれだけの計画を一人で実行するのは困難だったんでな。黒沢との出会いは、俺にとって僥倖だった」

 

 レックス曰く、黒沢は自身の忠実な駒として、物資や資金の調達、隠れ家の確保にアリバイ工作。更には諜報活動の他、時には暗殺も行う等。

 十二分すぎる働きをしてくれたという。

 

「それも全ては計画成功の為。その為ならば、この手を血で染める事に何の躊躇いもなかった。そして、計画の成功まであと一歩にまで迫っていたというのに……」

 

 刹那、黒沢の表情が再び険しさを増していく。

 

「だというのに、 マスター!! 貴方は、一体、何処に行こうというのです!!」

 

 そして遂に、黒沢は心の内のどす黒い感情を曝け出し、激昂する。

 

「何故、そんなガキどもの肩を借りている!! 何故、操縦室にいない!! 何故だぁ!!」

 

 初めて目にする黒沢の姿に気圧され息を呑むバンと凛空。

 一方、レックスはそんな黒沢に気圧される事なく、彼に言葉を掛ける。

 

「黒沢! もう終わったんだ。お前も、自爆シーケンスが開始されたアナウンスを聞いただろう。だから──」

「まだ終わってなどいない!!!」

「っ!」

「まだ自爆完了までは時間が残されている。そう、今すぐ操縦室に引き返して、自爆シーケンスを中断すればいい。そして、計画を成功させるんだ! この穢れきった世界を浄化する為に!!!」

 

 最早レックスの言葉にも耳を貸そうとしない黒沢。

 それでも、レックスは再び黒沢に言葉を投げかける。

 

「黒沢! 俺は、バンと凛空と戦って気付かされた。この世界もまだまだ捨てたものじゃないって事を! だからお前も──」

「クックックッ……、ハッハッハッ……、ハーッハッハッハッ!!!」

 

 程なく、笑い終えた黒沢はズレた眼鏡を直すと、レックスに焼け付くような眼差しを向ける。

 

「世界に裏切られた貴方が、世界の素晴らしさを説くのか!!!」

「黒沢! 俺の話を──」

「黙れぇ!!」

「っ!」

「お前は最早私のマスターなどではない!! 最早、そのガキども同様、私の計画を邪魔する敵だ!!」

「私の計画、だと!?」

「そうだ! 貴様の計画は私が引き継ぐ!」

 

 黒沢の手でサターンが再びNシティを目指す。そに認識に至り漸く、押し黙っていたバンと凛空が口を開いた。

 

「やめて、黒沢さん! そんな事をしても、哀しみや憎しみはなくならないよ!」

「過去の悲劇をなかった事にはできない。でも、皆で手を取り合えば、悲劇のない未来を作る事はできる!」

「黙れ、黙れぇっ!!! ガキどもが、知ったような口を利くな!!」

 

 しかし、二人の言葉も、最早黒沢の耳に届く気配はない。

 だが、次の瞬間。黒沢は不意に自身のポケットに手を入れるとそこから何かを取り出す。刹那、黒沢はそれを目の前に放り投げる。

 

 そして、黒沢の目の前に現れたのは、展開が完了したDキューブであった。

 

「……そんなに止めたければ、私を倒してみせろ。そいつにした様にな」

 

 次の瞬間、黒沢は自身のCCMと共に一機のLBXを取り出す。

 その姿を目にしたバンと凛空は、息を呑んだ。

 

 漆黒に彩られた装甲、角や尻尾の形状、更には歪んだ笑みを浮かべているかの如く不気味な口元など。

 幾つかの差異は見られるが、その姿はまさに、先程戦ったイフリートに酷似していた。

 

「イフリート!?」

「否、こいつの名は"イフリート改"。イフリートのデータを参考に、私が持てる技術の粋を集めて作り上げた、イフリートすらも超える地上最強のLBXだ!」

「バン、凛空。俺は黒沢を忠実な影として仕立て上げる為に、俺の持てる全てを教え込んだ。それは、LBXの操作技術や制作技術も含めてな。……凛空、お前は一度、黒沢の実力をその目で見ている筈だ、覚えているか?」

 

 ふと投げかけられたレックスの言葉に対して、凛空は瞬時に記憶を辿らせていく。

 やがて、凛空はある記憶に辿り着く。第三回LBX世界大会アルテミスの際、プラチナカプセルを守るために黒いGレックスと戦った時のことを。

 

「まさか! あの時の黒いGレックスって……」

「そうだ」

 

 二人の会話の意味を理解できずに疑問符を浮かべるバンを他所に、黒沢の実力を判断した凛空は、端的に黒沢の実力をバンに伝える。

 

「バン、黒沢さんの実力は、レックスにも引けを取らないレベルだよ」

「っ!」

 

 凛空の言葉を受けて、黒沢が大口を叩いているのではないと漸く理解するバン。

 それは同時に、更なる躊躇いを生み出す事となった。

 

 既にイフリートとの戦いでオーディーン、そしてガンダムも、共に満身創痍。

 こんな状態では、イフリート改と戦って勝ち目がない。

 だが、戦って勝たなければ、黒沢を止める事はできない。

 

「どうしたガキども、私を止めたいんだろう? なら、さっさと自慢のLBXを出せ!」

 

 そんな迷いを見透かしているかのように、黒沢の口から挑発的な言葉が飛び出す。

 やがて、バンと凛空は覚悟を決めたように、視線を合わせてお互い小さく頷いた。

 そして、Dキューブの前に立つべく一歩を踏み出そうとした……、その時。

 

「「え?」」

 

 二人よりも先に一歩を踏み出す者が現れる。

 それは誰であろう、レックスであった。

 

「二人は見ていろ。黒沢とは、俺が戦う」

「レックス!」

「でも、どうして?」

「今の黒沢は本物のモンスター()だ。そして、俺にはそれを育てた責任がある。だから、黒沢とは俺が戦う」

 

 レックスの気持ちは尊重したい、しかし、今のレックスにはもう戦う力は……。

 バンと凛空がその事を口にするよりも先に、黒沢が口を開く。

 

「貴様が戦うだと? ハッハッハッ、馬鹿を言うな! 貴様のイフリートは、先程ガキ共との戦いで完膚なきまでに破壊された筈だ!」

「確かにその通りだ。……だが、俺の相棒は、イフリートだけじゃない」

「何を言って──」

「まさか忘れた訳じゃないよな。俺が檜山 蓮であると同時に、伝説のLBXプレイヤー"レックス"である事を」

「っ!! まさか!?」

 

 刹那、レックスは一機のLBXを取り出す。

 伝説のLBXプレイヤーが操る無敵の火竜、Gレックスだ。

 

「ふざけるな! そんな旧式のLBXで、このイフリート改を倒せると思っているのか!?」

「ふ……、なら、試してみるか?」

「っ!! イフリート改!!」

「Gレックス!!」

 

 刹那、Dキューブ内に広がる火山遺跡のフィールドに二機のLBXが降り立つ。

 そして、戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 まず先に仕掛けたのはイフリート改。

 イフリートのデータを参考にしたと言うだけはあり、その見た目に反するスピードであっと言う間に距離を詰めると、Gレックスに対して次々と拳を繰り出していく。

 これに対してGレックスは、装備したバーンナックルを盾に、イフリート改の猛攻を防いでいた。

 

「クックックッ、どうしたどうした? 伝説とは所詮、この程度のものなのか?」

 

 Gレックスは隙を見て距離を取ろうとするも、イフリート改はすぐさま追い付き、反撃に転じる間を与える事無く拳を叩きつける。

 

「あぁ、レックス!?」

「大丈夫だよ、バン」

「でも……」

「大丈夫。レックスの強さは、僕達が一番よく分かってるでしょ」

 

 バトル開始から防戦一方のGレックスに、バンは不安の声を漏らす。

 しかし、凛空の言葉を聞き、バンはレックスの勝利を信じて、バトルの行方を見守るのであった。

 

「ハッハッハッ! どれ程粘った所で、所詮、貴様の負けは確定だ!!」

「……ふ」

 

 開始から一撃も与えられていないGレックスと、猛攻を続けているイフリート改。

 どちらに分があるのかは火を見るよりも明らか。にもかかわらず、レックスの表情に焦りの色は見られない。

 寧ろ、攻めている黒沢の表情にこそ、焦りの色が見え始めていた。

 

「何故、何故だ!? 何故これだけの攻撃を受けているにも関わらず倒れない!? イフリート改の性能は、イフリートのインフェルノモードすらも上回るんだぞ!?」

 

 全てにおいてイフリート改がGレックスを上回っているのは事実。黒沢の予測では、既に倒れていてもおかしくはない筈だった。

 にもかかわらず、Gレックスはいまだに健在。

 これには、黒沢も堪らず困惑の声を漏らすのであった。

 

「何故かって? 簡単な事さ。……軽いんだよ、お前の拳は。バンと凛空のものに比べればずっとな」

 

 刹那、レックスの口から答えが語られる。

 するとその瞬間、イフリート改の拳を繰り出す速さが増していく。

 

「ふざけるな! あんなガキどもよりも軽いだと! 劣っているだと!! そんな筈、あるかぁぁっ!!!」

 

 そして、黒沢の声と共に、イフリート改がGレックスに向けて拳を放った、次の瞬間。

 Gレックスは軽い身のこなしでその拳を躱すと、直後の隙を狙い、イフリート改の頭部目掛けてバーンナックルを繰り出した。

 

 刹那、頭部にバーンナックルの一撃を喰らったイフリート改は、よろけながら後退りする。

 

「っ!!」

「見たか。これが、本物の拳ってやつだ」

「ふ、ふざけるなぁっ!!」

 

 そしてそこから、二機による攻防は更に激しさを増していく。

 拳のみならず、互いの尻尾や頭突きなど繰り出し、相手にダメージを負わせていく両機。

 その激しさに、観戦しているバンと凛空も固唾を呑んでいる。

 

 やがて、互いの攻撃で一旦距離が離れた所で、黒沢が次なる一手を繰り出した。

 

「なら、こいつで、粉砕してやるよ!!」

〈アタックファンクション、ヴァルゾダース〉

 

 刹那、イフリート改は火球の如く勢いと共に、威力の倍増した拳をGレックス目掛けて放つ。

 

「必殺ファンクション!」

〈アタックファンクション、ガトリングバレット〉

 

 これに対して、Gレックスもバーンナックルにエネルギーを集約させると、その拳を、イフリート改目掛けて繰り出した。

 

 次の瞬間、両機の必殺ファンクションがぶつかり合い巨大な爆発を発生さると、Dキューブ内を大量の爆煙が覆った。

 

「な!?」

「……ふ」

 

 程なく、爆煙が晴れて露わになったのは、必殺ファンクションの衝突で生まれた巨大クレーター。

 そして、その両端に立つGレックスとイフリート改の姿であった。

 

「馬鹿な!? 打ち消した、だと!?」

「どうした、地上最強とやらも、この程度なのか?」

 

 刹那、黒沢は体を小刻みに震えさせると、程なく、激しい怒りを露わにした。

 

「ふ、ふざけるなぁぁっ!!! この程度なものか!! イフリート改の力がこの程度であるものかぁぁぁっ!!!」

 

 黒沢が怒りの咆哮をあげた、その時。

 イフリート改に変化が現れる。

 

『ガャオオオオォォォォォォンッ!!!』

 

 イフリート改が咆哮を上げたのだ、まさに獣の如く咆哮を。

 

「あれって……」

「まさか……」

 

 その姿を目にした瞬間、バンと凛空の脳裏に、自我を手に入れたイフリートの姿が重なる。

 

「クックックッ……、ハッハッハッ……、ハーッハッハッハッ!!! そうだ、その通りだイフリート改! 我々は、こんな所で止まってなどいられないんだ!!」

『ガアァァァァァァァァッ!!!』

 

 まるで黒沢の言葉に応えるかの如く、再び咆哮を上げるイフリート改。

 その姿はまさに、色合いも相まって、破滅をもたらす悪魔そのものであった。

 

「お前さんには、この戦いが終わったら山ほど説教してやらんとな。だがその前に、刈らせてもらうぞ、自分で蒔いた種をな!」

 

 一方、そんな悪魔と対峙するレックスは、極めて冷静であった。

 Gレックスの得物をバーンナックルからバトルランスに持ち替えると、決着が付くであろう次の一撃に備える。

 

 そして、暫し睨み合いが続いた、次の瞬間。

 

「全てを消し炭と化せ!!」

〈アタックファンクション、プロミネンスレイド〉

 

 イフリート改から無数の熱線が放射される。

 しかし、同時に。

 

「世界を、あいつらが作る新しい世界(みらい)を、消し炭などにさせるものか!!」

〈アタックファンクション、超プラズマバースト〉

 

 雷撃を身に纏い、巨大な槍と化したGレックスが、イフリート改目掛けて突撃する。

 刹那、二つの巨大なエネルギーが空中でぶつかり合う。

 

『ガアァァァァァァァァッ!!!』

「うぉぉぉっ!!」

 

 死力を尽くして放たれた必殺ファンクション。

 刹那、両機の装甲にヒビが入り始める。

 

「な、馬鹿な!?」

「おぉぉぉっ!!」

「このイフリート改が!!!」

 

 しかし、レックスの覇気がGレックスにも伝わったのか。

 徐々に、イフリート改の装甲のヒビが全身へと広がっていく。

 

「崩れる……」

 

 そして、次の瞬間。

 Gレックスの超プラズマバーストがプロミネンスレイドを打ち破り、イフリート改の胴体を見事に貫いてみせた。

 

『ギャァァァァァッ……!!!』

 

 刹那、イフリート改は断末魔の叫びと共に、その巨体を大爆発の中へと消すのであった。

 

 

 

 

「馬鹿な、そんな馬鹿な……」

 

 イフリート改の最期を見届けた黒沢は、その場に崩れ落ちる。

 

「そんな筈はない、そんな筈は……」

 

 そして、敗北を認められないかの様に、ぶつぶつと独り言を呟き続ける。

 

「勝負はついたぞ、黒沢」

「黒沢さん、黒沢さんも一緒に行こう!」

「行きましょう、黒沢さん!」

 

 そんな黒沢に対してレックス・バン・凛空は声をかけるも、黒沢は床を見つめたまま独り言を呟き続ける。

 

「バン、凛空。お前たちは先に行け」

「え?」

「レックス?」

「黒沢は俺が連れていく」

 

 すると、レックスが責任をもって連れていくと言い出した。

 

「で、でも……」

「何だ? もしかして俺が、黒沢を連れていくふりをして操縦室にでも戻ると思ってるのか?」

「そう言う訳じゃないけど……」

「なら、凛空」

 

 刹那、レックスは凛空を呼び寄せると、凛空にある物を手渡した。

 それは、レックスの使っていたCCMと、イフリート改とのバトルで傷だらけとなったGレックスであった。

 

「持っていてくれ」

「レックス……」

「これなら、俺は何もできないから安心だろ?」

 

 レックスの固い意志を感じ取った凛空は、CCMとGレックスを受け取ると、バンを引き連れてコントロールルームを後にしようとする。

 だがその去り際、凛空はレックスに声をかける。

 

「レックス!」

「何だ?」

「必ず、一緒に帰ろうね!」

「あぁ、分かってるさ」

 

 そして今度こそ、凛空はバンを引き連れてコントロールルームを後にするのであった。

 

「さてと……。先ずは山ほど説教してやりたい所だが、その前に、サターンから脱出するぞ」

 

 二人を見送ったレックスは、再び黒沢に声をかける。

 しかし、黒沢は相変わらず床を見つめたままであった。

 

「おい黒沢!」

 

 全く動こうとしない黒沢に業を煮やしたレックスは、黒沢の肩を掴もうと自身の手を伸ばす。

 だが、その時。突如、黒沢がレックスの手を掴んだ。

 

「ゲームオーバーです。マスター……」

「っ!」

 

 そして、レックスは気が付いた。黒沢のもう片方の手に握られていた、黒光りする自動拳銃の存在に。

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間──

 

 

 

 

 

 

 コントロールルームに、乾いた銃声が響き渡った。




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