うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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LBX、それはテクノロジーが生み出した、全く新しいロボットである。
コアスケルトンと呼ばれる基本フレームに、モーターやCPU等のコアパーツを搭載。
更に様々なアーマーフレームを合体させる事によって、無限の能力を引き出す事ができるのだ!


無印編
小さな戦士の世界へと


 西暦2042年、この年、日本の玩具メーカーである"タイニーオービット社"の名は、瞬く間に世界中が注目する所となった。

 その理由は、同社が発表した手のひらサイズのホビー用小型ロボット。Little Battler eXperience(小さな戦士の体験)の頭文字を取ってLBXと呼ばれる小型ロボットにあった。

 これまでにない画期的なこのホビーは、発表と同時に世界中の子供達の心を鷲掴みにし、その熱気は日を追うごとに高まっていき。

 そして、迎えた第一弾となる商品の発売日には、日本のみならず世界各地で店先に長蛇の列が見られるなど、文字通り社会現象を巻き起こした。

 

 このLBXの大ヒットにより、それまで小規模だったタイニーオービット社の業績はぐんぐんと向上し、一躍大企業の仲間入りを果たすに至った。

 更には、第二弾・第三弾となる新たなるLBXも世に送り出され、それらが次々と即日完売する等。

 LBXの生みの親であり第一人者でもあるタイニーオービット社の躍進は、今後も続いていくものと思われていた。

 

 ──だが、LBXの販売開始から程なく、LBXによる窓ガラスや家具の破損、更には遊んでいた子供が怪我を負う等。LBX関連の事故が多発。

 そして、事故をメディアが取り上げるや、世間の見方は一変した。

 その性能の高さがあだとなり、LBXは危険な玩具であるとの認識が広がり、間もなくLBXは販売が中止となってしまう。

 当然、ドル箱であったLBXの販売中止はタイニーオービット社の業績に大きく影響し、右肩上がりから一転して下降を始めるのであった。

 

 こうして、LBXと呼ばれる新たなホビーは、まさに流星の如く一時の輝きを放ち消えゆく運命を辿る──、かと思われた。

 

 

 しかし、西暦2046年。

 この年、アスカ工業が開発し発表した"強化ダンボール"と呼ばれる梱包材、高度なナノテクノロジーを分子レベルで構築する事により内外の衝撃を八割近くも吸収する事の出来る、文字通り物流業界に革命をもたらした未来の箱が発表される。

 この未来の箱の出現が、風前の灯火であったLBXを不死鳥の如く蘇らせる事になるとは、誰が予想できただろう。

 

 発表から間もなく、タイニーオービット社は強化ダンボールを開発したアスカ工業を吸収すると、手に入れた強化ダンボールの技術を応用してLBX専用のバトルフィールドを開発し、安全面での課題をクリアする事で再起を図ったのである。

 この目論見は見事成功し、LBXは再び販売を再開する事となった。

 こうして、第二次LBXブームの発生と共に、タイニーオービット社の業績は再び右肩上がりに転じたのであった。

 

 

 強化ダンボールを用いて製造されたLBX専用のバトルフィールド、折り畳み可能で、サイコロ程度のサイズにして持ち運ぶことも可能なDキューブと呼ばれる箱の中で戦う小さな戦士達。

 いつしか人は彼らを、"ダンボール戦機"、と呼ぶようになった。

 

 

 

 

 

 Dキューブの開発とLBX販売再開以降、LBXは第一次の頃を遥かに凌ぐ勢いで、世界中を熱狂の渦に巻き込んでいた。

 その勢いが世界規模での社会現象である事は、西暦2048年度から毎年開催が行われているLBXの世界大会、"LBX世界大会アルテミス"からも容易に実感できる。

 このLBXブーム最大の享受者は言わずもがなタイニーオービット社だ。だが当然ながら、同業他社がそれを指をくわえて見ている筈はなかった。

 日本のみならず世界中の玩具メーカーが自社製LBXの開発を進めた他、その恩恵を自らも享受しようと、異業種企業も、自社製LBXの開発を進めていたのだ。

 

 その異業種企業の一社としてLBX業界に参戦を果たしたのが、日本のIT企業であるサイバーランス社であった。

 同社はIT企業という事で、LBXを構成する内臓パーツ、特に情報処理等に強みを持ち。またLBX業界では後発という事もあり、タイニーオービット社等の先発企業との差別化を図るべく、特徴的な機能を有したLBXを開発・販売している事でも知られている。

 

 

 そんなサイバーランス社の現社長の名は、西原 蔵土(さいばら くらど)

 IT業界、そしてLBX業界でも成長を続けるサイバーランス社を率いる彼の家族構成は、妻と、そして一人の息子がいた。

 息子の名は西原 凛空(さいばら りんく)

 両親の会社がLBX業界に進出した影響も多少はあるものの、歳相応にLBXが大好きな少年である。

 

 一見すると、有名企業の社長の息子、という印象しかない凛空少年だが。

 実は、彼には、家族にも明かしていない秘密が存在していた。

 その秘密とは、この世界の行く末を知っていると言うもの。

 

 厳密に言えば、この世界が"ダンボール戦機"と呼ばれるメディアミックス作品の世界であるという事実を知っているのだ。

 かつては傍観者であったが、今やその時の記憶を引き継ぎ、世界の一員たる当事者としてこの世に生を受けた。

 即ち、凛空は所謂"転生者"なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の名前は……、西原 凛空」

 

 病院の個室のベッドで、凛空はまるで再確認するかのように自身の名前を呟く。

 一体何故か、それは今し方彼に、本来存在する筈のない記憶が流れ込んできたからである。

 

「そしてこれは、知らない天井だ……」

 

 それを裏付けるかのように、見覚えのない天井を目にした凛空は、物心ついて間もない彼が知る筈もない台詞を口にする。

 

「ふふ、まさかこの台詞がピッタリな状況に置かれるなんてな……」

 

 そして、見た目に似合わぬ自嘲めいた笑みを浮かべる凛空。

 

「けどまさか、ね」

 

 そう呟きながら、凛空はテレビのリモコンを手に取ると、テレビを点ける。

 テレビの画面に映し出されたのは、丁度始まったばかりのニュース番組であった。

 

「まず最初のニュースはこちら、一刻も早い原因の究明が待たれる──」

 

 暫くニュース番組を視聴した後、凛空はテレビを消すと、まるで確信したかのようにぽつりと呟いた。

 

「ダンボール戦機の世界、か」

 

 ニュース番組内に登場したとある大事件、更にはとある国会議員の名前など。

 それらはとある創作の世界、先程凛空が口にした"ダンボール戦機"というメディアミックス作品の世界に登場するものだ。

 

 そこから導き出される答えは一つ、即ち──

 

「にしても、アニメや小説で描かれるような出来事を、まさか自分自身が体験する事になるなんてな……」

 

 西原 凛空は前世で夢中になったダンボール戦機の世界に転生したという事だ。

 厳密にいえば西原 凛空の身体に憑依するという形で。

 

 

 

 

 

 その後、退院し、新たな日常生活を送り始めた凛空。

 当初は、前世とは全く異なる新たな世界での生活環境を受け入れられるかどうか不安な部分もあった。

 だが、幸か不幸か、前世の自分自身の名前、更には家族や友人などの記憶等。記憶の中に虫食いのように抜け落ちている部分が存在したお陰で、新たな世界での生活環境をすんなりと受け入れる事が出来た。

 

 こうして問題はすべて解決したかに思われた凛空ではあったが、彼にはまだ、最大の問題が残されていた。

 それが、このダンボール戦機という世界の行く末に自分自身が関与するか否か、についてである。

 

 所謂原作において、西原 凛空と呼ばれる登場人物は登場しない。

 しかし、彼の父親が社長を務めるサイバーランス社は、原作において主要な登場人物の使用するLBXを輩出する等。原作の物語に少なからず関わりを持っている。

 だが、原作に登場しない自分自身が介入する事で、原作が影も形もなくなってしまうのではないか。その恐怖もあり、結局、答えを出すには至らなかった。

 

 

 それから月日が流れ、世間が第二次LBXブームの真っただ中のとある日。

 凛空は、父親である蔵土に連れられ、サイバーランス社の研究開発施設に足を運んでいた。

 

「お待ちしておりました。どうぞこちらです」

「父さん、この先に何があるの?」

「もうすぐ分るさ」

 

 出迎えの研究員の先導のもと、二人はとある部屋に案内される。

 部屋には幾つものデスクや機材が並び、その中央にはDキューブが設置されている。そして、その近くの展示台には、一機のLBXが佇んでいた。

 

「父さん、これって……」

「これこそ、我がサイバーランス社初となるLBX、その試作機だ!」

「凄い……」

「驚くのはまだまだこれからだぞ。凛空、お前はこの試作機のテストプレイヤーに選ばれたんだ!」

「っ!!」

 

 展示台に佇むLBX、後に原作同様"ムシャ"の名で販売され、多くのプレイヤー達が愛用する事となる同機。

 そんな機体のテストプレイヤーに抜擢されたと知り、凛空の心が弾む。

 

「さ、早速動かしてみなさい」

「う、うん!」

 

 Dキューブ内の草原にムシャの試作機を投下し、CCMと呼ばれるLBXを操作する為の携帯端末を用いて、ムシャの試作機を動かし始める。

 CCMの画面に映し出された草原の風景、ボタン入力と共に思い通りに動くムシャの試作機。

 

 刹那、凛空は前世では叶わなかったLBXを操作できるという事実に強い感動を受けると同時に、とある考えが浮かび始める。

 それが、自分自身が介入する事で、原作の物語において描かれた登場人物たちの未来を、良い方向に変化させる事が出来るのではないかとの考えだ。

 当然、悪い方向に変化する可能性もあるものの、折角当事者となったのに、再び傍観者として過ごすのは勿体ない。

 

 そして凛空は決断した。

 モブとしてではなく、主人公たちと肩を並べてこの世界の行く末を見届ける。即ち、原作への介入を。

 

 

 

 

 

 こうして原作への介入を決めた凛空は、原作の物語開始に向けて様々な準備を始めた。

 その際、最も重要視したのが、物語の根幹と言うべきLBXに関する知識や操縦技術等であった。

 幸いと言うべきか、サイバーランス社の社長の息子という境遇から、凛空は同社が開発している試作LBXのテストプレイヤーを務める機会が多く、LBXに対する造詣を深める事は容易であった。

 

 この様に準備を進めていく中で、凛空の中にある思いが芽生え始めた。

 それが、前世から引き継いだ別の次元のロボットのアイデアと融合させ、LBXというホビーを更に昇華できないかというものだ。

 

 凛空が調べられる範囲で調べた限り、このダンボール戦機の世界には前世で存在していたロボット作品群が影も形もなかった。

 即ち──

 

 

 MS(いきまーす!):医薬品卸販売担当者でしょ。

 EVA(ヤシマ作戦):エチレン酢酸ビニルだろ。

 VF(板野サーカス):心室細動ね。

 AT(むせる):アディショナルタイム! サッカーやろうぜ!

 LBX(Little Battler eXperience):西暦2042年にタイニーオービット社が世に送り出した人型のホビー用小型ロボット。コアスケルトンと呼ばれる素体とアーマーフレームと呼ばれる外装パーツで構成され、コアスケルトンの胸部にはモーターやバッテリー、CPU等が収められているコアボックスが存在する。これらのパーツを自由に組み合わせる事で、自分だけのオリジナルLBXを作る事が可能となっている。なお同機の操作には、CCMと呼ばれる携帯端末を使用する。

 

 

 上記の様な認識が一般化しているのだ。

 即ち、最大の障害と言うべき権利関係を気にする必要はない。

 

 確信を得た凛空は、早速動き始める。自身の脳内にある、ヘルメスの薔薇の如くアイデアを具現化する為に。




2024年9月6日、加筆修正いたしました。
ご理解のほどよろしくお願いいたします。
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