うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

110 / 122
小さなマシンとの出会い

 西暦2051年。来年で誕生から十周年の節目を迎えるLBXは、世界最高峰のホビーとしての地位を確立させつつあった。

 人々に熱狂と感動をもたらす、最早ホビーの枠を越えつつあるLBXは、世界中の人々に夢と希望を与える存在でもあった。

 

 そして、日本の首都であるトキオシティの一角にある街、ミソラタウン。

 そのミソラ商店街の広場でも、LBXを用いたLBXバトルに熱中する少年達の姿があった。

 

「いけぇっ!」

「このぉっ!!」

 

 設置されたDキューブ内に広がる草原のフィールドで激しくぶつかり合う数機のLBX。

 ナズー、ブルド改、そしてデクー。

 上記の三機がチームを組んで戦っているのは、オレンジと青のツートンカラーの機体。その名を、イプシロン。

 

「連続攻撃だ、いくぞ!」

「応!!」

 

 ナズーとブルド改が果敢に攻撃を仕掛けるも、イプシロンは二機の攻撃をさらりと躱すと、得物であるイプシロングレイブでナズーを貫く。

 こうしてナズーをブレイクオーバーにした所で、イプシロンはイプシロンガーダーを使いデクーからの銃撃を防ぎつつ、今度はブルド改をあっという間にブレイクオーバーにする。

 

 そして、最後に残ったデクーの銃撃を掻い潜りつつ、イプシロングレイブの光の穂先をデクーに突きつけた、その時。

 

「……うわ、もうこんな時間!?」

 

 突如CCMから現在時刻を知らせるアラームが鳴り響くと、イプシロンを操作していたプレイヤーは、慌てた様子でDキューブ内からイプシロンを回収し始める。

 当然、あと一歩で決着が付くというタイミングでの突然のバトル中止という事態に、対戦相手であった少年達からは抗議の声が飛ぶ。

 

「なんだよバン。まだバトルの途中だろ!?」

「そうだぜ」

「どうしたんだよ?」

 

 刹那、少年達の抗議に対して、イプシロンのプレイヤーことバンは謝罪の言葉を述べると、理由を説明し始める。

 

「今日、タイニーオービット社の新製品発表会があるだろ? 俺、それに招待されてるからさ」

 

 「このLBX、歴史を変える!!」とのキャッチコピーと共に数週間前に告知された、タイニーオービット社の新製品発表会開催の知らせ。

 会場となるトキオシアデパート内のイベントフロアへの入場が許されるのは、タイニーオービット社から招待を受けた者のみ。

 当然、主な招待者はテレビやLマガの記者等の業界関係者が殆ど。そんな発表会にバンが招待されたと知り、少年達はバンに羨望の眼差しを向ける。

 

「え!? バン、お前招待されてるのか!? いいなぁ……」

「さっすが、去年のアルテミス優勝者!」

「なぁバン、あとでどんな感じだったか教えてくれよな!!」

「あぁ!」

 

 そして、バンは少年達に見送られながら広場を後にすると、期待に胸を膨らませながら、トキオシアデパートに向けて走り始めるのであった。

 その道中、自身の父親である山野博士が生み出したLBXの素晴らしさを改めて実感しながら。

 

 

 

 

 

 一方同じ頃。トキオシアデパートのほど近くにある公園にて、一人の少年がベンチに腰を下ろしていた。

 

 ピンと跳ねた短い毛に瓶底眼鏡、地味な色合いのシャツにジーパンという身なりの少年の名は、大空 ヒロ。

 そんな彼が手に持っているのは、トキオシアデパートのゲームセンターにて、LBXバトルオペレーションと呼ばれるゲームの連勝景品として手に入れた、復刻版・宇宙英雄センシマン・カスタム形態の箱である。

 

「中身は大丈夫かな?」

 

 本当なら自宅に戻ってからじっくり中身を堪能する予定だったのだが、とある事情から、ヒロは透明フィルムを破いて中身の状態を確かめ始めた。

 

「あれ? センシマン……じゃない!」

 

 しかし、箱の中に入っていたのは宇宙英雄センシマンのフィギュアではなく、LBXとCCMのセットであった。

 

「ペルセウス……」

 

 赤い羽根を付けた兜を彷彿とさせる頭部、白いマントに青を基調としたその造形は、まさに西洋の騎士を彷彿とさせた。

 

「これ、LBX、だよね。……むむ、このフォルム、精巧なディテール。……カッコいいかも」

 

 ペルセウスと書かれていたLBXを暫し観察したヒロは、すっかりペルセウスに心奪われていた。

 

「ちょっとだけ、やってみようかな……」

 

 そう言うと、ヒロはペルセウスを地面に立たせ、同梱されていた説明書に目を通しながら、CCMを使ってペルセウスの操作を始めた。

 

「えっと、このボタンで前進……」

 

 一歩二歩と進むペルセウスだったが、程なく倒れてしまう。

 

「あ、あれ? もう一度!」

 

 起き上がらせて再度前進させようとするも、ペルセウスは再び倒れてしまう。

 

「むー、ゲームみたいに上手くいかないなぁ……」

 

 ゲームでのLBXの操作なら誰にも負けない程の自信があったヒロだが、こと本物を操作するとなるとやはりゲームとは勝手が違う為に悪戦苦闘する。

 それでも、諦めずに再びチャレンジするヒロ。

 

 そんなヒロのもとに、近づく人影があった。

 

「もしかして、ヒロ君?」

「え? ……あぁ! 凛空さんじゃないですか!」

 

 聞き覚えのある声に反応し、振り返ったヒロが目にしたのは、凛空であった。

 以前よりも背丈が伸び、更に服装も相まって以前よりも大人びた雰囲気を醸し出す少年へと成長した凛空。

 その為、一瞬凛空本人とは気が付かなかったヒロだが、気付くや否や、久々の凛空との再会に歓喜の表情を浮かべる。

 

「お久しぶりです!!」

「うん、久しぶり」

「所で凛空さん、どうしてここに?」

「あ、実はね──」

 

 凛空曰く、タイニーオービット社の新製品発表会に招待され会場に向かっていた途中でヒロを偶然見かけて声をかけた、との事。

 

「あぁ、そう言えばそんなイベントがあるって話題になってたような……」

「所でヒロ君。それ、LBXだよね? ヒロ君もLBX始めたんだ!」

「え、いえ、そう言う訳じゃ……」

「それに、見た事のないデザインだけど、まさかヒロ君が自分で?」

「ち、違います! 実はそれ、ゲーセンの景品と取り違えられたみたいで……」

「そうなんだ」

 

 実はヒロがペルセウスを手に入れる事になった経緯を原作知識として知っている凛空ではあったが、知らない体で話を進める。

 

「けど、面白いですね、LBXって。今まではセンシマンのグッズを集める事を優先してたので実際に触ったことはありませんでしたけど、本当は、こんなにもワクワクするものだったんですね!」

「ヒロ君がLBXの楽しさに目覚めてくれて、僕も嬉しいよ!」

「そうだ、凛空さん! 僕に、LBXの操作を教えてくれませんか!?」

「え、僕が?」

「はい! お願いします!」

「……分かった。それじゃ、教えてあげる。けど、やるからには徹底的にやるよ!」

「ありがとうございます!」

 

 こうして、凛空コーチによるヒロのLBX操作特訓の幕が切って落とされる事となった。

 

 

 それから十数分後。

 そこには、十数分前とは比べ物にならない程、軽快な走りを見せるペルセウスの姿があった。

 

「そうそう、その調子!」

 

 更に華麗なターンやジャンプを披露したペルセウス。

 こうして、一通りの動きを披露し終えた所で、一旦休憩に入る。

 

「大分上手になってきてるよ、ヒロ君!」

「これも、凛空さんが丁寧に教えてくれたお陰です!」

「そんな、ヒロ君の飲み込みが早いからだよ」

 

 程なく、休憩を終えた所で、凛空は次のステップに進む為に必要なとある物を、自身のバッグから取り出した。

 取り出したのは、大小異なるサイズの赤い紐。

 

「凛空さん、それは?」

「LBXを操作する上で一番大事なのは、如何にLBXと心を通わせて一心同体、即ち人機一体となれるかどうか。そこで、ヒロ君にはまずこの大きな紐を使ってあやとりの"はしご"を作ってもらう。その後、ペルセウスを操作して小さい紐で同じくあやとりのはしごを作ってもらう。共にはしごを作る事で、LBXと心を通わせるんだ!」

「成程……。でも、どうしてあやとりなんです?」

「あやとりは"哲学"だからだよ!」

 

 凛空の言葉の意味は理解できなかったが、ヒロは早速、大きな紐を使ってあやとりを始める。

 程なく、ヒロは無事にはしごを完成させる。

 

 そして今度は、ペルセウスを操作してあやとりを始めるのだが。

 

「あ、あれ……。自分の指でするよりも難しいな……」

 

 やはり自分自身の指で作るのとは勝手が違う為戸惑わずにはいられないヒロ。

 

「ヒロ君、ポリシーだよ! 中指の第二関節にポリシーを持たないと!!」

「は、はい!」

 

 凛空からよく分からないアドバイスをもらいつつ、必死にペルセウスの操作を続けるヒロ。

 やがて、その時は訪れた。

 

「で、出来たぁ!」

「おめでとうヒロ君! とってもお上手だよ!!」

 

 ペルセウスが掲げた両手、その間に完成した見事なはしご。

 暫し、達成感を味わう二人。

 

「それじゃ、次のステップ。今度は武器を使ってみよう!」

 

 程なく、今度はペルセウスに基本装備である鎌状の剣、ペルセウスソードを両手に装備して、武器を使った動作の練習を始めのであった。

 

 

 

 

 

「そこでジャンプ! からの回転斬り!」

「はい!!」

 

 凛空の指示に合わせペルセウスは跳躍すると、空中で見事な回転斬りを披露してみせる。

 そして、綺麗な着地を見せた所で、凛空から合格点と言わんばかりの声が飛ぶ。

 

「おめでとうヒロ君!」

「あ、ありがとうございます!」

 

 刹那、ヒロはペルセウスを見つめながら、特訓を終えた感想を零す。

 

「凛空さん、LBXって、本当に面白いですね!!」

「上達すれば、もっと面白くなっていくはずだよ」

 

 こうして、ヒロがLBXの魅力にはまった所で、ふと、凛空の名を呼ぶ声が響いた。

 

「おーい、凛空!」

「……バン?」

 

 声がした方へ振り向くと、そこには二人のもとへと駆け寄ってくるバンの姿があった。

 

「あ、あぁ、もも、もしかして……」

「あれ? 凛空、この子は?」

「そうだ、折角の機会だから紹介しておくよ。ヒロ君、こちら僕の親友の山野 バン。バン、こちらは大空 ヒロ君」

「よろしく!」

「ここ、こちらこそ、よよ、よろしくお願いします!!」

 

 どうやらヒロは、去年の第三回LBX世界大会アルテミスを視聴していた為にバンの事を知っていた様で。

 優勝者であるバン本人を前にして、緊張からぎこちない動きで握手を交わすのであった。

 

「ん? 所でそのLBXって、君の?」

「あ、はい、ペルセウスって言うんです」

「へぇ~、聞いた事のないLBXだけど、もしかしてレア物!?」

「あ、えっと……」

「バン。それよりも、僕に何か用があったんじゃないの?」

「あ、そうだった!」

 

 凛空の注意を受けて、バンは本来の目的を思い出す。

 

「凛空、急がないと発表会が始まるぞ!!」

「……、っ!」

 

 刹那、バンの言葉を受けて、凛空は慌てて公園に設置されている時計で現在時刻を確認する。

 時計が示した時刻は、新製品発表会の開始五分前であった。

 どうやら特訓に熱中し過ぎて、予想よりも時間が経過していた様だ。

 

「た、大変だ!!」

「早く行こう凛空!」

「う、うん!」

「あの、凛空さん!! ありがとうございました!」

「それじゃヒロ君、またね!」

「はい!」

 

 そして、凛空はバンと共に、急いでトキオシアデパートへと向かうのであった。




 オタクロスのオタ知識デヨ!
 今回は、作中に登場したシグー並びにシグーアサルトについてのじゃ。

 21世紀のファーストガンダムを目指し制作されたテレビアニメ機動戦士ガンダムSEEDにて初登場したこの機体は、ザフト軍がジンに代わる次期主力機として開発した機体デヨ。
 ジンの高い汎用性を受け継ぎつつ、スラスターの増設や高出力化により、宇宙空間での機動性や運動性が大幅に向上している。しかし、結局大量生産には至らず少数機が指揮官用に配備されるにとどまった。
 じゃが、本機の遺伝子はディンやバビと言った空戦用モビルスーツに受け継がれ、ザフト地上勢力の一翼を担う事になるデヨ!

 そんなシグーに専用の追加装備「アサルトシュラウド」を装着したのがシグーアサルトじゃ。
 胸部・肩部・前腕部に装甲が追加され、背部ウイングと脚部にスラスターが増設されているが、固定兵装の追加はない。

 なお、作中で凛空が使っていたシグーアサルトは外伝作品に登場するジスト・エルウェス専用機がモデルとなっており、両肩にガトリング砲内蔵の大型バインダーが追加され、火力向上と高度な空力制御を両立させているデヨ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。