うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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変わる世界

 逃げ惑う人々、鳴り響く悲鳴。そして、断続的に起こる銃声や爆発音。

 トキオシアデパートは、一瞬のうちに戦場と化した。

 しかも、その惨状を引き起こしたのは人間ではなくLBXであった。

 

 最初に引き金を引いたアキレス・ディードに続くように、トキオシアデパートのテナントに展示されていた機体、更には客が所持していた機体など。

 多くのLBXが突如として暴走を始め、装備した武器を使用し手当たり次第に破壊活動を始めたのだ。

 

「どうなってるんだ……」

「こんな事って……」

「信じられない」

「くそ、何なんだよ!」

 

 LBXが暴走し破壊行為を繰り広げ人を襲う。この光景を目の当たりにしたバン達は、一様に我が目を疑っていた。

 

「結城、俺だ! すまないが、今すぐトキオシアデパートに応援をよこしてくれ!」

 

 一方、同じ光景を目の当たりにした拓也は。すぐに結城に連絡を取り事態の収拾を図ろうとする。

 しかし、結城の口から告げられたのは耳を疑う内容であった。

 

「社長! それがこちらでも、社内に保管されていたLBXが暴走し対処に追われているんです!」

「何だと!?」

「しかも、LBXの暴走はトキオシティの各所で起こっているらしく、テレビやネットはその報道ばかりです!」

「馬鹿な!?」

 

 拓也は急いで自身のCCMを操作するとニュースサイトに目を通していく。

 そこには速報の文字と共に、トキオシティ駅やトキオシティ空港、更にはトキオシティの主要な道路などでも大量のLBXが暴走している記事が載せられていた。

 

 しかも、この事態に対して警視庁はロンド・ベルをはじめとする部隊の出動を決定した様なのだが。

 事件が同時多発的に発生している事や、混乱に伴う渋滞の発生で現場への到着が遅れる事が予想される等。

 迅速な事態の収拾が困難である事は想像に難しくはなかった。

 

「カズ! アミ! ミカ! 何だかわからないけど、兎に角今は、暴走したLBXを止めよう!」

「おう!」

「分かったわ!」

「ん!」

「イプシロン!」

「フェンリル!」

「パンドラ!」

「ガーベラ!」

 

 一方バン達は、各々のLBXを取り出すと、臆することなく暴走したLBXに対して戦いを挑み始める。

 イベントフロア付近で遭遇した暴走LBXの一団と戦端を開いたバン達だったが、直後にバン達は相手の性能に驚く事となる。

 

「おいおい、どうなってんだ!?」

「性能が、上がってる?」

「あいつらって、こんなに高性能だっけ!?」

 

 イプシロン、パンドラ、ガーベラの突撃を軽くいなし、加えてフェンリルの狙撃も巧みな機動で躱してみせる暴走LBX。

 しかも、対峙しているのがデクーやタイタン、ザクⅡやウォーリアー等、特別な機体ではなく一般流通している機体である事もバン達に更なる衝撃を与える。

 

 それでも、各々の連携による各個撃破で数を減らし、程なく、対峙した暴走LBXの一団を鎮圧する事に成功した。

 

「LBXが人を襲うなんて……」

「まさか、またイノベーターが!?」

「でも、イノベーターはもう活動を再開する事はないって、嶺警部達も言ってた」

「なら、一体何処の誰だって言うんだよ……」

 

 疑問が尽きる事のないバン達。そんな彼らのもとに、拓也が血相を変えてやってくる。

 

「皆! 怪我はないか!?」

「はい。……拓也さん、一体何が起こってるの?」

「分からない。だが、LBXの暴走はここだけでなくトキオシティの各所でも起こってるようだ」

「そんな……」

「兎に角、このままでは逃げ遅れた人々の避難もままならん。すまないが、分担して暴走しているLBXの注意を引き付けて時間を稼いでくれ。アミはこのフロアを、カズは上、ミカは二つ上、バンは下、凛空は──っ! 凛空はどうしたんだ!?」

 

 そこで拓也は凛空の姿が見えない事に気が付く。

 バンはすぐに凛空がトイレに行った旨を説明しようとしたのだが、その時、不意にバンのCCMに着信が入る。しかもその相手は、今し方話題に上がった凛空であった。

 

「凛空!?」

「バン、そっちは大丈夫?」

「あぁ、こっちは俺やアミ達、それに拓也さんも全員無事だ」

「よかった……」

「それよりも凛空、今何処にいるんだ!?」

 

 曰く、凛空は三階にあるトイレから動くに動けない状態にあるという。

 その理由が、トイレに避難してきた人々を追いかけてきたと思しき暴走LBXの集団から守るためとの事。

 

「との事だそうです、拓也さん」

「そうか、分かった。では、凛空はその場を死守してくれ。他の皆は、先ほど言った通りのフロアを頼む」

「「はい!!」」

 

 こうして凛空の安否も確認できた所で、バン達は拓也が指示した各々のフロアへと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 同じ頃、三階のトイレにいる凛空は、個室にて次の一手を考えていた。

 トイレには凛空以外人の姿は見られず、先程バンに説明した状況とは食い違っているが、これは凛空の思惑故であった。

 

(まさかアキレス・ディードがもう一機いたなんて……、迂闊だった)

 

 原作においても描かれた今回の暴走事件。後に、文字通り世界を巻き込んだ大事件の序曲となるこの一件を、凛空は未然に防ぐべく以前から準備を進めていた。

 その為に用意したのが、デモンストレーションでパトリックの操作するアキレス・ディードを駆逐した謎のLBX。

 ガンダムアストレアをベースに格闘戦に重きを置き開発された第三世代型GNドライヴ搭載型LBX、その名を"ガンダムエクシア"。

 

 しかし、結果として事件を未然に防ぐことは叶わず、事態は原作通りに推移する事となった。

 

(仕方ない。こうなったら、少しでも被害を抑える方に動こう……)

 

 凛空は考えを切り替えると、自身のCCMを操作し始める。

 

「システムのリポーズ解除、GNドライヴ出力上昇……よし。火器管制・駆動系・センサーカメラシステム……各システムオンライン」

 

 起動に必要な手順を確認していく凛空。

 

「チェック完了。システムを戦闘モードに移行」

 

 次の瞬間、CCMの画面にメインシステムが戦闘モードに移行したとの表示が現れる。

 同時に、トキオシアデパートの一角に設置されていた観葉植物の陰で、とある機体のツインアイが光を放つ。

 

「さぁ出撃だ、ガンダムデュナメス!」

 

 刹那、観葉植物の陰から姿を現したのは、緑を基調とし右肩に狙撃用ライフルを装備し両肩に全身を覆う程のシールドを備えた、見た目通り狙撃能力に重きを置いた機体。

 エクシアと同じ第三世代型GNドライヴ搭載型LBX、その名を"ガンダムデュナメス"。

 

「介入行動を再開する!」

 

 凛空の発言と共に、噴水に没していたガンダムエクシアも再浮上を果たすと、ガンダムデュナメスと共に混迷の戦場へと介入を開始するのであった。

 

 

 

 

 指示されたフロアで暴走LBXの相手をしていたバンは、その顔に苦悶の表情を浮かべていた。

 アパレル系のテナントを舞台に対峙しているのは、クノイチやオルテガ、ジムやインビットやクイーン等々。ざっと確認できただけでも十数機ものLBX達。

 対してバンは、商品棚などを活用し射線を切ったり高低差を生かす等の戦術を駆使しているものの、数だけで言えばイプシロン単機。数的な不利は否めない。

 しかも、バンは戦いの中で妙な違和感を覚えていた。それは、LBX達の行動が暴走しているにしては妙に組織立っているように感じたからだ。

 

「っ! あれは……」

 

 程なく、バンは目撃する事となる。

 不意に飛んできたアキレス・ディードが集団後方に控えていた数機に近づくと、まるで指示を出す様な仕草を行う。すると、まるで従うかの如く、数機の暴走LBXがその場から移動を開始したのだ。

 

「まさか、アキレス・ディードが暴走したLBX達を率いているのか!?」

 

 自身にとって特別な機体であるアキレス。そんなアキレスの兄弟とも言うべきアキレス・ディードが今回の破壊活動を指揮していると知り、バンは悔しさを滲ませる。

 

「っ!」

 

 とその時、不意に背後から物音が聞こえたので急いで振り返ると、そこには、スキャッターガンを構えた数機のデクーの姿が。

 

「しま──!」

 

 あの位置ではイプシロンの迎撃は間に合わない。そう判断したバンが反射的に目を閉じようとしたその時。

 突如飛来した一筋の閃光が先頭のデクーを貫いたのだ。

 

「何だ!?」

 

 更に、続けて飛来した閃光が残りのデクーを貫き機能を停止させる。

 

「っ! あれは」

 

 刹那、驚愕するバンの目の前に、それは姿を現した。

 力天使の名を由来とするガンダム、ガンダムデュナメスが。

 

 ──デュナメス、目標を狙い撃つ!

 

 颯爽と姿を現したガンダムデュナメスは、得物であるGNスナイパーライフルを構え直すと、イプシロンを援護するかの如く攻撃を開始する。

 放たれる閃光はまるで吸い寄せられるかのように暴走LBX達を貫き、次々と撃破していく。

 そんなガンダムデュナメスの戦いぶりに見惚れていたバンだったが、直ぐに我に返ると、自身もイプシロンの操作を再開する。

 

 それから程なく、アパレル系のテナント内にいた暴走LBX達は漏れなく鎮圧された。

 

「あのLBX、武装や装甲は違うけどさっき見たLBXに似ていた……。一体、誰が作って誰が操作してるんだろう……」

 

 鎮圧を確認するや否や、その場を飛び去って行くガンダムデュナメス。

 その姿を見送りながら、バンは独り言ちるのであった。

 

 

 

 

 一方その頃、ガンダムデュナメスを操作している凛空はと言えば、同時に操作しているガンダムエクシア側の状況を確認していた。

 

「やっぱり、数だけは多いな……」

 

 九階の通路を舞台に、次々と襲い来る暴走LBXを切り裂いていくガンダムエクシア。

 飛来する弾丸や弾頭を人間に近いとされる運動性を遺憾なく発揮し掻い潜ると、装備した大小二振りの実体剣、GNロングブレイドとGNショートブレイドをすれ違い様に振るい切り裂く。

 更に、滑るような動きと共に相手の間合いに入ると、鋭い一閃と共に真っ二つに切断する。

 

 刹那、ガンダムエクシアに対して前後からの挟撃を仕掛ける暴走LBX達。

 だが、ガンダムエクシアは素早く大小二振りの実体剣を腰部にマウントすると、前方から迫る機体に対して腰背部に装備されたGNビームダガーを抜刀するや投げつける。

 こうして前方の脅威を排除すると、続けて振り向きざまに肩部のGNビームサーベルを抜刀し、勢いそのままに後方から迫る機体を一刀両断とした。

 

「けど、ここで踏ん張らないと……」

 

 不意に、ガンダムエクシアがカメラを向けた方角。そこはスポーツ用品を扱うテナントで、そこでは今、ミカが暴走LBXの一団と戦っている最中であった。

 そう、ガンダムエクシアが大立ち回りを演じているのは、暴走LBXの注意を自機に引き付け少しでもミカの負担を軽くするためであった。

 

 

 その後も大立ち回りを演じるガンダムエクシアであったが、不意に、下の階から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

 通路の欄干に飛び乗り吹き抜けから下のフロアを確認すると、一階中央にある噴水の近く、そこに今まさにアキレス・ディードに襲われんとする大空 ヒロの姿があった。

 

「っ! ヒロ君!」

 

 何とか助けに向かいたかったが、ガンダムエクシアもガンダムデュナメスも、ヒロのいる一階からは距離があり、とても間に合いそうにない。

 凛空の想いも空しく、ヒロに向けられたダークシューターが光を放とうとした、まさにその時。

 不意に、両者の間に一つの影が飛び込んだ。

 

「あれは……、イプシロン!?」

 

 どうやらバンもヒロのピンチに気が付いていたらしく、イプシロンで助けに入った様だ。

 だが、慌てていたのか、ダークシューターから放たれた光の弾丸はイプシロンガーダーで受け止められず装甲に直撃してしまう。

 

 すると、アキレス・ディードは間髪入れずにダークシューターの引き金を引き、イプシロンに対して光の弾丸を浴びせ続ける。

 直後、遂に耐え切れなくなったイプシロンは爆炎の中に姿を消した。

 

「イプシロンが……、っ! 今のは!?」

 

 親友のLBXの無残な姿を目の当たりにした所だが、事態は凛空に悲しむ暇を与えてはくれなかった。

 何故なら、スポーツ用品を扱うテナントの方から、爆発音と共にミカの悲壮な声が聞こえてきたからだ。

 

「ミカ!!」

 

 ミカの危機を察した凛空は、ガンダムエクシアをミカのもとに急行させようとする。

 だがその直後、凛空はLBXの駆動音を耳にする。

 

 はっと凛空がドア下の隙間に視線を向けると、そこには身を屈めて侵入してくるデクーやアマゾネス等のLBXの姿があった。

 

「くそっ!」

 

 直感的に身の危険を感じ取った凛空は、直ぐに自身のバッグに手を伸ばすと、そこからある物を取り出し自身の顔に装着する。

 刹那、一機のデクーが凛空の顔目掛けて、装備したスプレー缶のような物からガスを噴射する。

 

「やっぱり催眠ガスか!」

 

 しかし、凛空にはガスは効かなかった。

 何故なら、原作知識でガス攻撃を事前に知っていた凛空が、前もってガスマスクを用意していたからだ。

 

 一方、まさか凛空が対策を講じていたとは思いもよらなかった暴走LBX達は困惑の様子を見せる。

 だがその一瞬、その際に生じた隙が命取りになる事を、彼らは直後に身をもって知る事となる。

 

 刹那、アマゾネスの横を一つの影が通り過ぎる。

 すると次の瞬間、アマゾネスは胴体を切断されるという無残な姿をさらす。

 更にはアマゾネスに続くように、デクーやグフ等、個室に侵入したLBX達が次々と切断されていく。

 

 

 程なく、個室の安全を確認した凛空はガスマスクを外すと、安全確保に貢献した愛機を回収する。

 

「ありがとう、ストライク」

 

 凛空に感謝の言葉をかけられたのは、トリコロールカラーに額のV字型ブレードアンテナ、ツインアイを有し、背部に大振りの実体剣、左肩にブーメラン、左腕にシールドとしても機能する小型ロケットアンカーを装備した機体。

 汎用性と特化性を両立させたストライカーパックシステムと呼ばれる装備換装システムを有する"ストライクガンダム"が近接戦仕様のソードストライカーを装備した形態。

 その名を"ソードストライクガンダム"。

 

「……っ! そうだ、ミカは!?」

 

 自身の身の危険を脱し安堵する凛空だったが、直後にミカの事を思い出し、すぐさまガンダムエクシアの操作を再開する。

 祈るような気持ちでテナント内にガンダムエクシアを進ませる凛空。

 

「あれ、は……」

 

 直後、ガンダムエクシアのカメラがとある物体を捉える。

 周囲に散らばる暴走LBXの残骸の中、一つだけ、見覚えのある残骸があった。

 それは紛れもなく、ミカが愛用していたガーベラのもの。

 

 刹那、凛空はガンダムエクシアを動かし周辺を探してみるも、床にも物陰にも、何処にもミカの姿は見当たらない。

 

「っ……!」

 

 これが何を意味するのか、瞬時に理解した凛空は怒りに身を震わせた。

 そして──

 

「あのダブスタクソおやじぃぃぃっ!!!

 

 腹の底から怒りの咆哮を上げるのであった。

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