うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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忌むべき訪問者

 ここで時間軸はイプシロンが破壊された直後に巻き戻る。

 イプシロンの破壊を見届けたアキレス・ディードは何処かへと飛び去って行く。

 と同時に、まるで入れ替わるかのようにバンがイプシロンのもとへと駆け付けた。

 

「イプシロン……」

 

 床に散らばった残骸をかき集め、無残な姿となったイプシロンを悲痛な面持ちで見つめるバン。

 

「バンさん……」

 

 そんなバンの様子を目の当たりにしたヒロは暫し考えた後、ある決心を固めた。

 

「バンさん! 僕、戦えなくなったバンさんの代わりに戦います!!」

「え?」

 

 ヒロの突然の宣言に困惑するバン。

 一方のヒロは、自身のCCMとペルセウスを取り出すと、威勢のいい掛け声と共に近くの暴走LBXに対して戦いを挑み始める。

 

 しかし、ペルセウスソードは暴走LBXを捉える事無く虚しく空を切り、逆に暴走LBXの放った弾丸は次々とペルセウスの装甲を叩く。

 

「あ、あれ、そんな!」

 

 自身の思い描いていたものとは異なる展開に焦りの色が隠せないヒロ。

 何とか打開しようと必死にペルセウスを操作するも、一向に改善される気配はない。

 

 このままでは──、ヒロの脳裏に最悪の展開が過ぎった、その時。

 一筋の閃光が暴走LBXを貫き沈黙させる。

 

「ヒロ、大丈夫か!?」

「バンさん!」

 

 どうやらバンが助け舟を出したようだ。

 

「あれ、でも確か、バンさんのLBXって……」

「俺のLBXはイプシロンだけじゃない、こいつもさ!」

 

 シューターSR33を装備したオーディーン、同機の紹介を終えたバンはヒロに共闘を打診する。

 その旨を承諾したヒロは心機一転、再び暴走LBXに挑もうとしたのだが。

 

「え? う、うわぁ! こっちくるなぁ!!」

「ヒロ!」

 

 暴走LBXの一部がヒロ自身に襲い掛かってきたため、ヒロは慌ててその場から逃げ出す。

 しかし、暴走LBX達はヒロを執拗に追いかけ続ける。

 そんな暴走LBX達から逃れるように、ヒロは停止したエスカレーターを駆け上がる。

 

「……ん? うわぁぁぁっ!?」

 

 程なく、暴走LBX達を振り切り二階へと逃れたヒロは、安堵すると同時に下半身に違和感を覚えた。

 刹那、視線を下半身に向けたヒロは違和感の正体を知る事となる。その正体とは、暴走LBX達の攻撃で破けてしまった愛用のジーパンの姿であった。

 

「うわわ! まずい、早く別のズボンを穿かないと!!」

 

 ヒロは慌てて近くのテナントに駆け込み、新しいズボンを調達しようとする。

 だがそのテナント内にも、暴走LBX達の姿があった。

 

「う、噓ぉぉぉっ!!」

 

 再び暴走LBX達との追いかけっこを始めるヒロ。

 テナント内の棚や商品をうまく活用し何とか別のテナントに逃げ込む事に成功するも、そこで再びヒロは気付く事になる。今度は愛用のシャツも破けて、パンツ一丁という恥ずかしい姿になってしまっている事に。

 

「ちょ、ちょっとお借りします……」

 

 流石にこの姿のままという訳にもいかず、ヒロはテナント内に展示されていた青と紺のジャケットや白のジーパンを着用する。

 程なく、着替えを終えたヒロは通路の様子を窺おうとするも、そこで三度暴走LBX達に発見され追いかけっこを再開する事に。

 

 しかも、今回は追いかけてくる数も多い上、通路の欄干に追い込まれてしまう。

 

「こ、こうなったら!」

 

 絶体絶命のピンチ。だが、ヒロは覚悟を決めると、一縷の望みをかけて通路の欄干を飛び越える。

 刹那、二階から一階に飛び降りたヒロを待ち構えていたのは、落下地点に設営されていたテントであった。

 

 運よくテントがトランポリンの役割を果たし、ヒロの身体は一階中央にある噴水へと吸い込まれていくのであった。

 

「ヒロ!」

 

 一部始終を見ていたバンは慌てて噴水へと駆け寄る。

 

「大丈夫……か?」

「はい、大丈夫です」

 

 程なく、自力で噴水から出てきたヒロの姿を目にしたバンは、ヒロのあまりに様変わりした様子に唖然となる。

 

「ヒロ……、その、眼鏡は……?」

「あ、これですか? これ、度の入っていない伊達眼鏡なんです。雰囲気でかけていただけでちゃんと見えてますから」

 

 着水した時の衝撃でレンズにヒビが入った瓶底眼鏡をポケットにしまい込みながら、あっけらかんと話すヒロ。

 そんなヒロの様子に唖然とするしかないバンだったが、程なく、彼の動じなさに感心の念を抱くのであった。

 

「よし、それじゃ──」

「バンさん、あれ!」

「っ!」

 

 こうして一騒動を経て無事に合流を果たした二人。だが、そんな二人のもとに、再び暴走LBXの集団が迫る。

 

「ヒロ、俺達でこいつらを倒そう!」

「はい!」

 

 これに対して二人はオーディーンとペルセウスを繰り出すと、果敢に戦いを挑み始めた。

 しかし、ヒロはまだ初心者の為、バンからアドバイスをもらいながら戦いを進める。

 

「やった!」

「いいぞ、その調子だ!」

 

 とは言え、ヒロの成長速度は凄まじく、次々と暴走LBXを無力化していく。

 

「コツが掴めてきました」

「いいぞ、その調子でどんどん倒そう!」

「はい!」

 

 その後も次々と襲い来る暴走LBX達を無力化していく二人。

 やがて、ひとしきり襲撃してきた暴走LBX達を無力化し終えた所で、二人のもとに複数の影が接近する。

 

「バンさん!」

「っ! アキレス・ディード……」

 

 影の正体、それはアキレス・ディード。そして、同機に率いられた二機のLBX。

 白を基調とし、背部にフライトユニットを増設、頭部バイザーや機体各部にバーニアを追加する等の改良が施されたデクー。ガトリングショットと呼ばれる大型の機関銃を基本装備とする同機の名は、"フライトデクー"。

 片や、グフカスタムをベースに背部や脚部のスラスターを強力なものに換装、スカートアーマー等に可動式の安定翼を取り付け空中での姿勢制御能力を向上させる等、飛行能力を獲得したスカイグレーのグフ。グフカスタムに準ずる武装を持つ同機の名は、"グフフライトタイプ"。

 

「ヒロ、こいつには気を付けろ」

「はい」

 

 近くに降り立ち、二人を見つめる三機。

 一方の二人は、三機の出方を窺いつつ周囲の状況にも目を配る。

 

(とは言ったものの、このまま俺達がここで戦ったら……)

 

 バンは近くの物陰からこちらの様子を窺っている人々、おそらく逃げ遅れたのであろう人々の姿を発見し、険しい表情を浮かべる。

 かと言って戦わない訳にもいかず、完全に行き詰まった──、かと思われた次の瞬間。

 

「おい、これを使え!」

 

 突如男性の声が聞こえると同時に、バン目掛けて青い卵状の物体が投げられる。

 

「これは……、Dエッグ!」

「何ですかそれ?」

「LBXの最新式バトルフィールドさ。このスイッチを押すと展開し、展開時にエネルギーフィールドを発生させてプレイヤーを包み込むんだ。これは周辺への被害を抑えると同時に、バトルを途中で放棄される事を防止する為でもあるんだ」

「へぇー」

 

 バンの説明を聞き感心するヒロ。そんなヒロを他所に、説明を終えたバンはDエッグを自身に投げ渡した人物に視線を向ける。

 視線を向けた先にいたのはオールバックにサングラス、青いジャケットに赤いネクタイという出で立ちの、一見すると怪しさ満載の男性。

 しかし、バンは直感的にこの男性を信じる事にした。

 

「Dエッグ展開! バトルフィールドセットアップ!!」

 

 刹那、バンの手により勢いよく投げつけられたDエッグは展開すると、同時にエネルギーフィールドを発生。バンとヒロ、そしてアキレス・ディード達三機を包み込む。

 そして、バンとヒロの目の前に円形状の強化ダンボールで出来た、荘厳な雰囲気漂う王宮場内のバトルフィールドが出現した。

 

「よし、これで心置きなく戦えるぞ!」

「はい!」

 

 王宮場内のバトルフィールドで対峙する五機。

 間もなく戦いの幕が切って落とされようとした、その時。

 

「っ! こいつは!?」

 

 バトルフィールド内に新たな機影が降り立つ。その名を、ガンダムエクシア。

 

「バンさん、知ってるんですかこのLBXの事?」

「あぁ。こいつは多分、味方……だと思う」

 

 あと少しの所で確信が持てず曖昧な回答を行うバン。

 そんな回答を聞いたヒロは困惑の表情を浮かべる。

 

 すると不意に、二人のCCMにメッセージが送信される。

 

「黒いLBXの相手はこちらで引き受ける、二人は取り巻きを頼む。……バンさん、これって!?」

「あのLBXからのメッセージ……」

「バンさん、どうします?」

「うーん……」

 

 メッセージの内容に目を通した二人は、送り主であろうガンダムエクシアの意図を探ろうとする。

 しかしそんな二人を他所に、ガンダムエクシアは大小二振りの実体剣を抜刀すると、アキレス・ディードに向けて突撃を開始した。

 

「っ! 仕方ない。ヒロ、アキレス・ディードはあのLBXに任せて、俺達は残りの二機を相手にするぞ!」

「分かりました!」

 

 こうしてメッセージの通り、バンとヒロはフライトデクーとグフフライトタイプを相手に戦端を開くのであった。

 

 

 

 

 相手は両機とも飛行能力を有する機体、故に飛行能力を最大限に生かした戦法を採るのは必然であった。

 

「く!」

 

 空中を移動しつつ、左腕に装備したガトリングシールドによる攻撃を行うグフフライトタイプ。

 それと対峙するオーディーンは、飛来する弾丸の雨を躱し続ける。

 

 一見するとオーディーンが押され気味に見えるが、バンは焦る事無く相手の動きを観察しチャンスを窺っていた。

 

「そこだ!」

 

 そして、タイミングを見計らいシューターSR33から放たれた一筋の閃光がグフフライトタイプの右肩を捉える。

 刹那、被弾しバランスを崩した所に間髪入れず二射目・三射目が飛来し、四射目を受けた所で、グフフライトタイプは爆炎の中に姿を消した。

 

「く、くそ! これじゃ近づけない……」

 

 一方のヒロは、フライトデクーを相手に完全に防戦一方であった。

 経験が浅い故か、ペルセウスソードをシールド代わりに防御に徹するばかりで、勝機を見出せずにいた。

 

「ヒロ、俺が援護する!」

「ありがとうございます!」

 

 しかし、オーディーンが援護に入った事で、戦況は一気にペルセウスに傾く事となる。

 フライトデクーは被弾と共に地上付近まで高度を落とした所で、ペルセウスソードによる一閃を受けて機能を停止させるのであった。

 

「やりました!」

「よし! これで残るは……」

 

 見事取り巻きの二機を倒した二人は、上空で繰り広げられているアキレス・ディードとガンダムエクシアとの空中戦の行方を見守り始める。

 

 

 得意の近接戦を仕掛けるガンダムエクシアに対して、アキレス・ディードもダークシールドを巧みに使用し互角の戦いを繰り広げる。

 そうして暫く一進一退の攻防が暫し繰り広げられた後、アキレス・ディードがダークシールドの裏から筒状の物体を取り出す。

 そして、不意に筒状の物体をガンダムエクシア目掛けて放り投げた、次の瞬間。

 

 筒状の物体が爆発すると共にガンダムエクシアの動きが突如として止まり、そのまま地上に落下する。

 

「あれは、スタングレネード!」

 

 筒状の物体がスタングレネードであると看破したバンは、ガンダムエクシアを援護するべくオーディーンを急行させる。

 すると、アキレス・ディードは一時的に行動不能となったガンダムエクシアではなく、オーディーンに標的を変えた。

 

「く、強い!」

 

 シューターSR33からリタリエイターへと得物を持ち替えたオーディーンは果敢に近接戦を仕掛けるも、アキレス・ディードは素早いステップでそれを躱す。

 やがて、オーディーンは一気に勝負を決めるべく、必殺ファンクションのグングニルを繰り出した──、だが。

 

「っ! グングニルが効かない……」

 

 驚くべきことに、アキレス・ディードはダークシールドを用いてグングニルを耐え切ったのである。

 これには思わずバンも息を呑むが、直ぐに気持ちを切り替えると、仕切り直しとばかりに一度距離を取り再度突撃を開始する。

 だが、その直後。突如としてアキレス・ディードのカメラが点滅すると、次いで不気味な機械音声が流れ始める。

 

〈アタックファンクション、ブラックストーム〉

 

 刹那、ダークシューターから放たれた黒い竜巻状のエネルギー弾に巻き込まれるオーディーン。

 それから暫くした後、ブラックストームが収まると共にDエッグのバトルフィールドも解除される。

 

 そこでバンとヒロの二人が目にしたのは、無残にも大破したオーディーンの姿であった。

 

「オーディーン……」

 

 イプシロンに続きオーディーンまでもが破壊され、バンは悲しみに暮れる。

 一方、そんなバンに対してかける言葉が見つからないヒロは、アキレス・ディードとガンダムエクシアの姿を探す。

 しかし周囲に両機の姿は見当たらず、どうやら両機とも何処かへと飛び去って行ってしまったようだ。

 

「バン!!」

 

 程なく、拓也が息を切らせて二人のもとに走ってくる。

 

「拓也さん……」

「暴走していたLBXはトキオシアデパートからはいなくなった様だ」

「そうですか」

 

 喜ばしい報告だが、今のバンは素直に喜べる状態ではなかった。

 

「ん? 所で君は?」

「僕、大空 ヒロといいます」

「よろしく、俺は宇崎 拓也、タイニーオービット社の社長を務めている」

「よ、よろしくお願いします!」

 

 一方、拓也はヒロとの自己紹介を終えると、姿が見当たらないカズ達の事について尋ねようとした。

 だがその時、視線の端からこちらに向かって歩いてくる人影がある事に気が付く。

 

「凛空、無事だったか!」

 

 拓也の声に反応するようにバンも視線を向ける。

 するとそこには、顎に手を当てながら何やらぶつぶつと呟いている凛空の姿があった。

 

こんな事なら原作崩壊覚悟で引っ捕らえて監禁しておくべきだったか……。いや、あの人には監禁なんて生温い、身ぐるみ剥いで島流しに……。いや、でもあの人の持つ頭脳は魅力的だし……。そうだ、いっそのこと脳だけ摘出して生体コンピュータにでも……

 

 何やら物騒な内容を呟いている凛空。しかも、彼の身体からは禍々しいオーラのようなものが放たれている。

 そんな彼の様子を目にした三人は、背筋に冷たいものを走らせずにはいられなかった。

 

いやそれよりも……、ん? やぁ、バン。それに拓也さんも。あれ、ヒロ君、どうしてここに?」

「「「っ!!」」」

 

 刹那、漸く三人の事に気が付いた凛空が声をかけた瞬間、三人は肩を震わせる。

 その様子を見た凛空は首を傾げたものの。

 

「ま、まぁ兎に角だ。凛空の方も無事でよかった!」

「で、ですね!!」

「??」

 

 咄嗟に拓也とヒロが話を逸らした事で事なきを得るのであった。

 

「あ、そうだ、バン」

「っ! な、何……」

「今度、山野博士に会う事があったら、お礼参り(修正)させてもらってもいいかな?」

 

 後にバンは、この時の凛空の発言の意味を理解する事となるのだが、この時はまだ理解し切れず、誤魔化す様に話題を変えるのであった。

 

「そうだ拓也さん! アミとカズ、それにミカは!?」

 

 刹那、バンの質問に答えたのは拓也ではなく別の人物であった。

 

「君の友達、川村 アミに青島 カズヤ、それに三影 ミカの三人は奴らによって連れ去られたんだ」

 

 答えたのは、先程バンにDエッグを投げ渡した男性であった。

 

「奴らって、まさかイノベーター!?」

「いや、奴らはそんな生易しいもんじゃない。組織の規模も、その戦力も、何もかもが桁違いだ、今度の敵は」

「敵だと!?」

 

 男性の口から語られた内容に衝撃を受けるバン達。

 だが次の瞬間、そんな彼らに更なる衝撃が襲い掛かる。爆発音と地響きという形で。

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