うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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その名は、ディテクター

 何処からか聞こえてくる爆発音、そして伝わる地響き。

 その瞬間、サングラスの男性は思い当たるふしがあるのか、慌ててトキオシアデパートの外へと向かう。

 それにつられる様に、バン達四人も彼の後を追うのであった。

 

 そして、外に出た一行が目にしたのは、トキオシアデパートの近くにあるビルの屋上付近から吹き出す真っ赤な炎と、立ち上る黒煙であった。

 

「くそ! やっぱりか……」

「あの爆発は!?」

「あぁ、そうだ。あれも奴らの仕業だ」

「一体何が起こってるの!?」

「それは……」

 

 怒涛の展開続きで頭の整理が追い付かない中、バンは何らかの事情を知っているであろうサングラスの男性から有意義な回答を得ようと試みる。

 しかし次の瞬間、まるでサングラスの男性の声を遮るかの如く、トキオシアデパートの出入り口上部に設けられた大型ビジョンの映像が切り替わる。

 映し出されたのは、不気味な仮面をかぶった男性と思しき人物。

 

「──地球上全ての人間達に告ぐ。我々は"ディテクター"。我々の宣言は至極単純だ、我々は、世界をこの手にいただくことにした」

「ディテクター……」

「悲劇による悲劇の回避。その方法といい名前といい、本当に、存在自体が矛盾してるよ」

 

 音声変換され依然として性別不明な人物による宣言を聞いたバンは、まるで心に刻み込むかのように新たな敵の名を呟く。

 一方の凛空は、鋭い視線を向けながら、何やら意味深な言葉を呟くのであった。

 

「言っておくが、これは妄言などではない。見たまえ、ダイソンビジネスセンターの惨状を」

 

 刹那、映像が切り替わり、仮面の男の言うダイソンビジネスセンター周辺のライブ映像が流れ始める。

 そこには、突如信号機が不具合を起こした為に事故や渋滞が発生し混乱の広がる現地の様子が映し出されていた。

 更には、エレベーターが途中で停止している様子や、自動ドアが反応せずに閉じ込められている人々の様子など。現地の混沌とした様子が次々と映し出される。

 

「ご覧の通り、この一帯の都市機能は我々ディテクターが支配した。……だが勘違いしないでほしい、これは我々の実力を示す為のデモンストレーションに過ぎない」

 

 すると再び映像が切り替わり、今度はトキオシアデパートをはじめとしたトキオシティ各所で起こったLBXの暴走時の様子が映し出される。

 

「この様に、我々は日本をはじめ世界中に存在しているLBXを意のままに出来る。これの意味する事、賢明な諸君ならばもうお分かりだろう? 今、世界はディテクターの手の中にある!」

 

 そして、仮面の男の宣言が終わるや否や、大型ビジョンは元の映像に切り替わるのであった。

 

「あの内容から察するに、目的は世界征服。……なんて悪い奴なんでしょう、許せません!」

「……」

 

 世界征服を企む悪の登場に心を燃やすヒロ。

 一方、バンはオーディーンとイプシロンの残骸を無言で見つめ、凛空は真剣な表情を浮かべ物思いに耽るのであった。

 

 そんな三人を他所に、徐に拓也がサングラスの男性に質問を投げかける。

 

「君は、あのディテクターとか言う敵について何か知っているようだな?」

「おっと、勘違いしないでくれ、俺は味方だぜ」

「なら、名前ぐらいは名乗ってもいいんじゃないか?」

「おっとこいつは失敬。では改めて、俺の名は"コブラ"だ」

「コブラ?」

「そうだ、いいコードネームだろ?」

 

 白く輝く歯を見せながら、自らの名を名乗るコブラ。

 すると、早速ヒロが食いつく。

 

「カッコイイ!! コブラさんですか!」

「ありがとよ。だが、さんはいらない、コブラでいい」

 

 コブラの対応にヒロがますます目を輝かせる一方、バンと拓也は、疑いの眼差しをコブラに向けるのであった。

 

 

 

 

 それから数分後。

 コブラの指示に従い拓也がワゴン車をトキオシアデパートの前に移動させた所で、コブラは助手席に自身が持っていたノートパソコンを置くと、慣れた手つきで操作を始める。

 その様子を、残りの面々は暫く見守っていたが、やがて拓也が口火を切った。

 

「何を始める気なんだ?」

「そう慌てなさんなって、宇崎の旦那」

「っ! 俺を知っているのか?」

「勿論さ」

 

 するとコブラは一旦手を止め、バン達三人の方に顔を向ける。

 

「お前は山野 バン、そしてお前は西原 凛空。更に、お前さんは大空 ヒロ、だろ」

 

 凛空以外の二人は、コブラが自分達の名前を言い当てた事に驚く。

 特に、タイニーオービット社の社長を務める拓也、去年のアルテミス優勝者と三位入賞のバンと凛空と、ある程度名の知られている三人に対して全くの無名と言ってもいいヒロの名を言い当てた事は驚愕に値する。

 

「ふ、どうしてって顔だな。ヒロ、お前がここにいるのは偶然なんかじゃない。お前は選ばれたんだ、奴ら……ディテクターと戦う為に」

「っ! 僕が、選ばれた……。僕は選ばれた!」

「?」

 

 刹那、コブラの言葉を聞き、ヒロは高揚感に包まれる。

 一方、そんなヒロの様子をバンは不思議そうに見つめるのであった。

 

「よし、準備完了だ。先ずは、暴走したLBX達をコントロールしているシステムがこの街の何処にあるのかを逆探知する」

「可能なのか?」

「ふ、安心しな宇崎の旦那。コイツなら大抵のブロックは突破可能だ」

 

 コブラが作業を進める一方、それを見守っていたバンは、不意にコブラに質問を投げかける。

 

「アミ、カズ、ミカの三人はディテクターに連れ去られたって言ってましたよね?」

「あぁ」

「どうしてあの三人が?」

 

 するとコブラは一拍置いた後、バンの質問に答え始める。

 

「ディテクターは、世界中から優れたLBXプレイヤーを誘拐しているんだ」

「え! 何の為に!?」

「理由は分からん。だが、ディテクターがお前たちには想像もつかない程の強大な組織である事は間違いない。それこそ、世界各国で同時テロを簡単に引き起こせるぐらいのな」

 

 イノベーターが生易しく感じられるほどの相手。新たな敵、ディテクターの強大さに息を呑むバン達。

 

「こいつはもう、日本が世界がという次元の話じゃない。文字通り、地球という星の運命を左右する戦いと言っても過言じゃない」

 

 この戦いの勝敗が地球の運命を左右する。

 そんな責任の重大さを理解してか、ヒロの身体が小刻みに震える。

 

「ん? 怖いのか?」

「いえ、怖くなんかありません。さっき言ってくれましたよね、僕は選ばれたって!?」

「あぁ」

「やります! 僕、ディテクターと戦います! 世界征服を企む悪い奴らを、許す事は出来ません!」

「本気なんだね、ヒロ君」

「勿論です!!」

「ヒロ……」

 

 改めてヒロの決意表明も終わった所で、コブラのノートパソコンから音声が流れる。

 

「よし、逆探知完了だ。さて、場所は……」

 

 どうやらシステムの居所を突き止めた様だ。

 再び操作を始めるコブラ、バン達はそんな彼の様子を再び見守り始める。

 

「って、おいおいマジかよ!」

「コブラ、一体何処にあったんだ!?」

「それが……」

 

 刹那、ノートパソコンのモニターに映し出された反応地点、その場所を目にしたバン達は一様に目を見開いた。

 

「この場所って……、トキオシアデパートじゃないですか!?」

 

 何故なら、その場所というのが彼らの目の前にあるトキオシアデパートだったからだ。

 

「間違いない。トキオシアデパートの地下に強い電磁波を探知した。……この数値から察するに、相当大型のコンピューターシステムが使用されているようだな」

 

 コブラの説明を聞く限りでは、トキオシアデパートの管理システムが乗っ取られたかに思われた。

 しかし、コブラが再び操作し反応地点の詳細な位置情報が表示された所で、その認識が誤りであった事にヒロを除く三人は気づかされる。

 

「ねぇ、この場所って……」

「っ! そうだ、間違いない! ね、拓也さん!」

「あぁ、旧シーカー本部だ!」

 

 何故ならその場所が、タイニーオービット社の本社ビル内にあるシーカー本部の稼働以降放置されていた旧シーカー本部だったからだ。

 

「中は無人の様だが複数のLBXの反応を確認。どうやら、敵が待ち構えている様だ」

 

 コブラの言葉通り、旧シーカー本部内を示した地図上には複数の光点が存在し、その数は数十は下らない。

 最早、戦闘を避ける事は不可能であった。

 

「僕、ペルセウスで戦います! 勿論、凛空さんもですよね!」

「うん。僕も戦うよ」

「……」

 

 戦える準備は万端のヒロと凛空に対して、戦いたくても戦える状態ではないバン。

 すると、そんなバンに対してコブラが言葉をかける。

 

「おっと忘れてた。バン、こいつを使ってくれ」

 

 刹那、コブラはとある箱をバンに手渡す。

 手渡されたのは、白を基調としたカラーリング、白亜の騎士と呼ぶに相応しい各種パーツの造形、槍と盾を装備した"エルシオン"と呼ばれるLBXのイラストが描かれた箱であった。

 

「お前の新たなLBX、エルシオンだ」

「エルシオン……」

「一体誰がって顔してるな。そいつは山野博士がお前の為に用意したんだ」

「父さんが!?」

「あの、凛空さん。バンさんのお父さんって何者なんです?」

「バンのお父さんは山野 淳一郎博士と言って、LBXの生みの親なんだ」

 

 同時に元凶でもあるんだけどね。と心の中で呟く凛空を他所に、ヒロは目を輝かせ、更に自身の愛機であるペルセウスも山野博士が作った機体であると知り更に感動するのであった。

 

「コブラ、君は山野博士の指示を受けて行動しているのか?」

「あぁ。こう見えても、俺は山野博士の優秀なエージェントなんだぜ!」

 

 自画自賛するコブラを他所に、ふとバンが疑問を呟く。

 

「でも、父さんは今海外でLBXの研究をしている筈じゃ?」

「それは表向きだ」

 

 すると、コブラは一拍置いた後、続きを話し始める。

 

「実は、ディテクターの動きに勘付いた博士は、以前から戦う為の準備を進めていたんだよ」

「……そうだったのか」

「で、この俺が、お前たちと接触するという重要任務を託された訳だ!」

「接触? 接触……。あぁ!!」

 

 刹那、ヒロは何かを思い出したかのように大声を上げた。

 

「そう言えば僕のセンシマン、貴方が持ってるんじゃないですか!?」

「おっと、またまた忘れてた」

 

 実は、ヒロがゲームの連勝景品として手に入れた復刻版・宇宙英雄センシマン・カスタム形態の箱をペルセウスが入っていた箱と入れ替えたのはコブラだったのだ。

 それを思い出したコブラは、アタッシュケースからお目当てのフィギュアを取り出しヒロに返そうとしたのだが。

 

「うわぁぁぁっ!」

「っ! こ、今度はなんだよ!?」

「素手、素手で触ってます! それ、超が付くほどのレア物なんですよ!!」

 

 いつの間にか綿の手袋をしたヒロに強引に奪い取られるのであった。

 そんなヒロの様子を目の当たりにしたコブラは、フィギュアを雑に扱ってしまった事を反省するのであった。

 

「拓也さん、オーディーンとイプシロンの修理、お願いします」

「分かった」

 

 一方、拓也にオーディーンとイプシロンの修理を託したバンは、ワゴン車の荷室でエルシオンを組み立て始める。

 

「凛空、工具貸してくれる?」

「いいよ」

「サンキュー」

「あれ、ペルセウスの時とは違う……」

 

 凛空から工具ケースを受け取ったバンは、慣れた手つきで作業を開始する。

 一方、作業の様子を見学していたヒロはふとした疑問を口にする。

 

「LBXは、骨格となるコアスケルトンにアーマーフレームと呼ばれる各部の装甲を装着する事で完成するんだ。多分、ヒロ君のペルセウスは完成品の状態だったんだと思うよ」

「成程」

 

 凛空の説明を聞き、ヒロは納得した様子で頷く。

 そんな二人を他所に、バンはランナーから切り離したパーツを組み立て、コアスケルトンに装着していく。

 そして数分後、三人の目の前に、完成したエルシオンがその凛々しい姿を現した。

 

「うわぁ、カッコイイ!」

「うん。オーディーンやイプシロンとも異なる、趣のある造形だね」

 

 ヒロと凛空の二人がエルシオンを見た感想を言い合う中、バンは自身のCCMとエルシオンとの同期を始める。

 程なく同期を完了させたのだろう、バンの口から準備が完了した旨が告げられる。

 

「それじゃ、こいつを持ってってくれ。目的地への移動ルート上は非常灯のみで視界が悪い場所もあるからな」

 

 刹那、コブラがバン・ヒロ・凛空の三人に暗視装置付きのゴーグルとヘッドセットを手渡す。

 三人は受け取ったそれらを装着すると、最後に拓也と言葉を交わす。

 

「頼んだぞ、三人とも」

「はい!」

「必ずシステムは止めてみせます!」

「行ってきます!」

 

 そして三人は、旧シーカー本部を目指して駆け出していくのであった。

 

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