機内の散策、と言っても盛り上がるのはほんの少しの間だけ。
再び会議室に戻ってきた凛空達は、機内の冷蔵庫から調達したジュースを片手に、どの様に暇をつぶすかを話し合う。
「四人で楽しめる遊びか……」
「なら、しりとりなんてどうです?」
「うーん、ちょっとありきたり過ぎない?」
「それじゃ、連想ゲームなんてどうでしょう!?」
「うーん」
「まぁまぁ、とりあえずやってみようよ」
こうして、先ずはヒロが提案した連想ゲームを遊び始めた凛空達。
食べ物や動物、更にはLBX等々。様々なお題でひとしきり盛り上がった。
しかし、夕食や就寝時間を差し引いても、時間はまだまだ残されていた。
「どうしましょう。夕食にはまだ早すぎますし……」
「なら、皆で筋トレなんてどう!? ひと汗かけばご飯も美味しいし、ぐっすり眠れるよ!」
「え、えっと……」
「それは……」
「あ、そうだ!」
このままではランの言う通り、全員で筋トレをすることになる。その矢先、不意にバンが自身のバッグに手を入れると何かを探し始めた。
程なく、バンはバッグからとある箱を取り出した。
「バンさん、それって」
「そ、トランプ。暇つぶしになるんじゃないかって入れてたのを思い出したんだ」
こうしてバンのファインプレーにより、凛空達はトランプで遊ぶ事となった。
「どのゲームで遊ぼうか?」
「四人で遊べるとなると……七並べは?」
「神経衰弱はどうでしょう?」
「ポーカーは?」
「うーん。なら、大富豪はどうかな?」
どのトランプゲームで遊ぶかを話し合った結果、凛空達は大富豪で遊ぶ事となった。
バンがカードを切り、それぞれにカードを均等に配り終えた所で大富豪開始……と思われた矢先。ランがとある提案を持ちかける。
「ねぇ、ただ遊ぶだけじゃつまらないし、折角だから何か賭けない?」
「え?」
「あぁ、安心して。賭けるのはお金じゃないから」
「なら、一体何を?」
「さっき冷蔵庫からジュースを出した時に見つけたんだ。……冷蔵庫の奥に、"港町魔法の壺プリン"が"三個"あるのを、ね」
「「っ!!」」
港町魔法の壺プリン。濃厚なカスタード、ふわふわのクリーム、ほろ苦カラメルソースの三層構造が特徴的な壺入りプリンである。
国際的な品評機関の最高金賞を授与した事もある商品で、お取り寄せギフトとしても大人気の逸品だ。
しかし、冷蔵庫の中にあるプリンは三個。そして、凛空達は四人。つまり、誰か一人は食べられない事になる。
「最下位になった一人が食べられない。これでどう?」
「……いいぜ」
「分かりました。皆さん、この勝負、勝たせていただきます!」
「そういう事なら、負けられないね、この勝負」
「それじゃ、始めるよ……」
刹那、四人の目付きが鋭くなり、空気が張り詰める。
「「デュエルスタンバイ!!」」
そして、対戦開始の掛け声と共に、熱き決闘者達による運命の大富豪が幕を開けた。
「先行は俺だな。なら俺は、ダイヤの3をフィールドに召喚! そして、ターンエンドだ」
ダイヤの3を持っていたバンの親で始まった大富豪。そこから時計回りに、ラン・ヒロ・凛空という順番で進んでいく。
「私のターン、チェック! ……私は、ハートの5をフィールドに召喚! そして、ターンエンド!」
「僕のターン! チェック! 僕はスペードの7を場に出してターンエンドです」
「僕のターン、チェック。……なら僕は、クラブのJを場に出して、ターンエンド」
「よし、俺のターン! チェック! 俺はスペードのAをフィールドに召喚! ターンエンドだ!」
「な! スペードのA!? ……うぅ、パス」
「つ、強すぎますよぉ……パス」
「僕もパス」
こうして場が流れ、再びバンが親となりゲームが進んでいく。
それから何度か場が流れ、ランの親で新たなゲームが始まる。
「私のターン、チェック! ……悪いけど、仕掛けさせてもらうよ! 私はハート・クラブのQとジョーカーを融合し、フィールドに特殊召喚!」
「「っ!!」」
「これでターンエンドよ!」
ジョーカーを合わせてのQ三枚出し、ランの繰り出したこの一手に、ヒロと凛空の表情がこわばる。
「さ、ヒロの番よ!」
「う、うぅ……パスです」
肩を落としてパスを宣言するヒロ。続く凛空もパスを宣言する。
これを見たランは、半ばこの場の勝利を確信する。
だが、ランは気付いていなかった。バンが不敵な笑みを浮かべている事に。
「ラン。勝利を確信するのは、まだ早いぜ!」
「……え?」
「何故なら、俺の所にも来ているのさ、切り札は!」
「まさか!?」
「俺のターン! チェック! 俺はダイヤ・スペードの2とジョーカーを融合し、フィールドに特殊召喚する!!」
「っ!!」
バンが繰り出した最強カード三枚出し。これには誰も敵わず場が流れ、バンの親となる。
「悪いが、このまま上がらせてもらう! 俺のターン! ……集いし四つの季節が新たな時代を呼び起こす! 天地逆転! 特殊召喚! 巻き起こせ、
刹那、バンはクラブ・ダイヤ・ハート・スペードの6を場に出し革命を起こす。この効果により、以降数字の強さが逆転する事となる。
この効果を無効にするためには6以上の数字のカードを四枚出す革命返しが必要があるが、残りの三人の反応を見る限り、革命返しは起こりそうになかった。
結局、この革命が決定打となり、宣言通りバンが一番に上がった。
因みに、二番はヒロ、三番はラン。そして最下位……即ちプリンを食べられないのは凛空という結果となった。
こうしてプリン争奪戦に決着が付いた後も、凛空達は夕食の時間までトランプに興じるのであった。
数時間後、星々輝く夜の空を飛ぶ社長専用機機内。
機内食とは思えない豪華な夕食を経て、凛空達は各々の座席で就寝していた。
このまま順調にフライトが続けば、数時間後には目的地のNシティに到着する。そう、順調ならば……。
「っ! な、何だ!?」
刹那、突如機内に衝撃が走り、これに驚いた凛空達は飛び起きる。
「緊急事態です! 機体制御に異常が発生し、速度・高度共に制御不能! このままでは墜落します!」
「何だって!?」
「嘘ーっ!」
刹那、機長からの緊急連絡を受けたコブラが急いで原因の究明を始める。
程なく、原因を突き止めたのだろう、コブラは自身のノートパソコンのモニターを凛空達に見せながら説明を始める。
「これはこの機内をスキャンした模式図だ。見ろ、機体の制御コンピューターがハッキングを受けている」
「ハッキング!?」
「でもここって、空の上ですよね!?」
「ハッキングは地上からじゃない。こいつを見てみろ」
刹那、コブラの操作でモニターの表示が切り替わる。そこには、LBXらしき複数の機影が映し出されていた。
「どうやらハッキングをかけてるのはLBXの様だ」
「まさか、ディテクター!?」
「なら、そのLBXもどこかのコンピューターが操作してるんですか?」
「いや、こいつらは自律稼働型LBXの様だ」
「自律稼働型……って何?」
「その名の通り、自分で判断して行動する事のできるLBXだよ」
「そんなLBXもあるんだ!?」
こうして原因を突き止めた所で、凛空達は問題を解決するべく、四か所それぞれの自律稼働型LBXの排除に動く。
バンは車輪格納室、ランは化粧室の天井裏、ヒロは会議室。そして、凛空は機体の後部貨物室を担当する事となった。
後部貨物室に到着した凛空は扉を開けると、内部を覗き込む。
無機質な金属の床、配線や配管がむき出しの貨物室内は薄暗い。
「いた!」
そんな貨物室内の一角に、ハッキングを行うマスターコマンド。そして、護衛と思しきザクⅡやインビット等のLBXの姿があった。
「頼んだぞ、ストライク」
標的を確認した凛空は、すかさず貨物室内にソードストライクガンダムを投入すると、操作を開始する。
シュベルトゲベールの光の刃が手近なザクⅡを一刀両断にしたのを皮切りに、本格的な戦闘が開始される。
飛来する弾丸の嵐を躱しながら、時にはパンツァーアイゼンを巧みに使用し、ソードストライクガンダムは護衛のLBX達を撃破していく。
こうして護衛のLBX達を粗方シュベルトゲベールの錆にした所で、ソードストライクガンダムは本命のマスターコマンドに向かう。
だがその時、巨大な盾を装備したジム・ガードカスタムが行く手に立ちはだかった。
「く、あの盾は厄介だな……」
手早く、どの様にジム・ガードカスタムを撃破するかを思考する凛空。
やがて、思考を終えた凛空は自身のCCMを操作する。
刹那、ソードストライクガンダムは左肩のマイダスメッサーに手を伸ばすと、投擲する。
ジム・ガードカスタムはそれを容易く躱すも、同機は気付いていなかった。マイダスメッサーが弧を描きながら戻って来ることに。
次の瞬間、戻ってきたマイダスメッサーが無防備な背後から襲い掛かり、ジム・ガードカスタムの右脚を切り裂く。
こうして構えが崩れた所にシュベルトゲベールの一刀を受けたジム・ガードカスタムは、断末魔の如く爆発の中に消えるのであった。
「これで残るはマスターコマンドのみ。一気に決める!」
凛空の宣言と共に、ソードストライクガンダムはシュベルトゲベールを構え直す。そして、次の瞬間。
〈アタックファンクション、パワースラッシュ〉
切り払うと同時に、シュベルトゲベールに集められたエネルギーが、マスターコマンド目掛けて一気に放たれる。
ハッキング中で動く事のできないマスターコマンドは回避できる筈もなく、正面から受ける。
そして、マスターコマンドは爆発の中に消えるのであった。
時を同じくして、残りの三人も対峙していたマスターコマンドを撃破した事で機体は制御を取り戻し、今回の一件は無事解決する運びとなった。
更新が滞っている間も目を通し、感想を書いたり、評価してくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。
今後も、不定期になるとは思いますが、ご愛読のほど、よろしくお願い致します。