自律稼働型LBXによるハッキングというアクシデントはあったものの、社長専用機は無事に、A国東海岸にあるNシティ上空に到達した。
窓の外、眼下に広がるは、そびえ立つ高層ビル群にモノレール用の路線、更に高速道路網等々。A国最大、そして世界を代表する都市の情景。
「凄い、これがNシティですか……」
「この国のどこかに、連れ去られた皆がいる……。待っててくれ、必ず助けるから」
「……ミカ」
各々が決意表明や思いを馳せる中、社長専用機は空港管制塔の誘導に従い降下を開始。程なく、空港滑走路に降り立つ。
一般的な旅客機が使用する駐機場とは別の、ビジネスジェット専用の駐機場に誘導された後、程なく停止する。
そして、タラップ車が横付けされると、漸く機内の扉が開く。
「それじゃ、行くぞ」
コブラを先頭に、荷物を持った凛空達も扉を潜り久々の外へ。
旅客機よりも快適だったとはいえ、やはり長時間狭い空間に閉じ込められるのは心身ともに疲弊する様だ。
「んんーっ! 着いたーっ!!」
その証拠に、外に出た途端、圧倒的な解放感を全身で表現する様に、ランが体を伸ばしながら叫んだ。
それにつられ、残りの面々も軽く体をほぐしていく。
「それじゃ、先ずは入国手続きを済ませるぞ」
刹那、凛空達はコブラを先頭にして専用ターミナルへと足を運ぶ。
ニ十分後。必要な検疫や審査等を終えた凛空達は、NICSからの迎えを待つために、ターミナルの待合室で各々寛いでいた。
「へぇー、ストライカーパックシステムって言うんだ」
「武装や推進器、更に補助装置などを一つにまとめて換装させる事で、高い汎用性はそのままに、専用機にも匹敵する特化性を両立させる事に成功したんだ」
「凄い凄い!」
そんな中、ランはストライクガンダムのメンテナンスをしていた凛空との会話に興じていた。
「ねぇ凛空。そのストライカーパックシステムって、私のミネルバにも装備できたりする!?」
「うーん、改造すれば装備できなくもないけど……おすすめはできないかな」
「え、どうして?」
「ミネルバは高出力近接格闘型だから、ストライカーパックシステムのようなバックパックを装備させると、バランスが崩れて折角の長所が台無しになってしまうんだ」
そこで一拍置くと、凛空は更に説明を続ける。
「それに、ラン君のバトルスタイルは、スラスターを多用するよりも足を使う頻度の方が多いから、可能な限り機体の重量は軽い方がいいと思うんだ」
「そっか……」
凛空の説明を聞き、一応は納得した様子のラン。しかし、その表情からは未練が感じられた。
「そうだ。ストライカーパックシステムよりも小型の、推進用途のみのものなら、装備できなくもないかも」
「本当!?」
「えっと、確か参考になる機体が……あった、これだよ」
刹那、凛空は自身のCCMを操作し、参考となる機体の写真をランに見せる。
画面に映し出されていたのは、ミネルバ同様すらりと伸びた四肢、モノアイ式のカメラセンサーを有する、くすみのあるライトブルーの機体。
同機の背部には、中心部の大型ノズルと四界の小型ノズルで構成されたバックパックを装備している。
「"ヅダ"って言う機体なんだけど、この機体が装備しているものならミネルバでも装備できると思うんだけど、どうかな?」
「……」
ヅダの写真を見た途端、目は虚ろになり、押し黙ってしまうラン。
それから暫く沈黙が続いた後、ランがゆっくりと口を開く。
「……やっぱり、いい、かな」
「え?」
「何だか、これを装備したらミネルバがお星様になるような気がするから、やめておく」
「そっか……。あ、だったら、コアパーツの見直しやチューニングでも機体の性能は格段に良くなるから、教えてあげようか?」
「本当! ありがとう凛空!」
凛空の口から新たな提案が飛び出した瞬間、ランは再び目を輝かせ、嬉しそうに笑みを浮かべた。
そして、凛空の手を取ると、感謝の気持ちを伝えるように握手するのであった。
それから暫くした後、ストライクガンダムのメンテナンスを終えた凛空がランの指導を始めようとしたその時。
不意に、一人の少女が凛空達のもとへとやってきた。
「山野 バン! 勝負よ!!」
「……え?」
綺麗な金の髪、黒いテンガロンハットに白のブーツ。その姿はまさに、西部劇に登場する保安官を彷彿とさせる。
そんな彼女の名は、ジェシカ・カイオス。
そして、彼女の手には、テンガロンハットやカウボーイシャツを彷彿とさせる造形パーツ、細身な体格と相まって女性ガンマンを彷彿とさせるLBXが握られていた。
「このジャンヌDと、勝負よ!!」
機体名、ジャンヌD。
スナップピストルと呼ばれる二丁拳銃を主武装とし、高い機動力で相手を翻弄しつつ、二丁拳銃の火力で相手を蜂の巣にする戦法を得意としている。
「えっと……誰?」
「何なのよ、あれ」
「どなたですか?」
そんなジャンヌDを操るジェシカから突然勝負を申し込まれ、困惑せずにはいられないバン。
勿論、ヒロやランも、ジェシカの有無を言わせぬ態度に面食らう。
「兎に角、勝負よ!」
「……そう言われても」
勝負を迫るジェシカに対し、バンはすっかり困ってしまう。
刹那、それまで静観していた凛空が口を開く。
「バン、ここまでお願いしてるんだから、戦ってあげたら?」
「え、凛空?」
「そうだぜ、異国での初バトル、いいんじゃないか」
「コブラまで!?」
二人からのまさかの後押しに目を見開くバン。それから暫し考えた後、覚悟を決めたように口を開く。
「分かった。その勝負、受ける!」
「ふふ、そうでなくちゃ」
刹那、不敵な笑みを浮かべたジェシカはDキューブを展開させる。
そして、バンとジェシカの二人はDキューブの前に立つと、各々のLBXを投入する。
草原のフィールドに降り立つエルシオンとジャンヌD。
「準備はOK?」
「あぁ!」
「それじゃ、Battle start!」
ジェシカの合図と共に、二人の勝負の幕が切って落とされた。
開始早々、スナップピストルが火を噴き、軽快な射撃音と共に弾丸の数々がエルシオンに襲い掛かる。
これに対して、エルシオンはエルシオンシールドで弾丸を防ぎながら接近を試みる。
しかし、近接戦になれば不利になる事はジェシカも把握している。故に、ジャンヌDは自慢の機動力を生かして、エルシオンと一定の距離を保ち続ける。
「く、やるな……」
「なんて正確な射撃!?」
「この人、強い!?」
何とか近接戦に持ち込もうとするエルシオンだが、ジャンヌDの機動力とジェシカの操作技術により、あと一歩のところで逃げられてしまう。
そんな攻防が暫く続いた後、エルシオンの攻撃を躱したジャンヌDが大きく跳躍すると、眼下のエルシオンにスナップピストルの銃口を向けた。
「チェックメイトよ!」
決着の時──と思われた次の瞬間、エルシオンはエルシオンシールドをジャンヌD目掛けて投擲する。
予想外のエルシオンの行動に、ジェシカは一瞬目を見開く。だが、ジェシカは冷静にエルシオンシールドの軌道を読むと、ジャンヌDはアクション映画さながらの動きでエルシオンシールドを躱し、地面に着地する。
刹那、まるでその瞬間を待ち望んでいたかのように、エルシオンがジャンヌDに迫る。だが、ジャンヌD側もエルシオンの接近に気が付き、瞬時にスナップピストルの銃口を指向する。
次の瞬間、エルシオンハルバードの穂先がジャンヌDの胸元に突き付けられ。同時に、エルシオンの頭部と胸元にスナップピストルの銃口が突き付けられた。
張り詰めていた緊張感が最高潮に達した、その時。
突如、ジャンヌDがスナップピストルを下げ始める。
「噂通りの実力で安心したわ。勝負はここまでにしておきましょう」
「……え?」
「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私はジェシカ・カイオス、よろしくね。……それと、一方的に勝負を挑んでごめんなさい」
DキューブからジャンヌDを回収しながら、ジェシカは先ほどの非礼を詫びる。
この突然の様変わりにバン達が唖然とする中、コブラが口火を切った。
「君がNICSからの迎えだな」
「YES!」
「えぇ!?」
「そうだったの!?」
ジェシカがNICSからの迎え人だと知り、驚きの声を上げるバン達。
「それじゃ、改めて。ようこそA国へ! 私達NICSは貴方達を歓迎するわ、盛大にね!!」
そんな彼らを他所に、素敵なウィンクと共に、ジェシカは歓迎の言葉を贈るのであった。