うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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戦士の力

 凛空がハンゾウの紹介により、ブルーキャッツの地下闘技場の存在を知ってから半月ほどが経過した頃。

 この半月の間、凛空は時間があれば地下闘技場へと足を運び、そこにいるプレイヤー達とバトルを行い腕を磨いていた。

 最初の頃は、地下闘技場の洗礼、アンリミテッドレギュレーションでのバトルの洗礼を受けて敗北を味わう事になった凛空であったが。最近では、そんな敗北を糧にしてバトルを続けた結果、凛空自身も実感できる程操作技術が向上し、地下闘技場での戦績も勝利を得る事が多くなっていた。

 

 そしてこの日も、凛空はブルーキャッツの地下闘技場でバトルを行い、お昼を過ぎた所でバトルを切り上げ地下闘技場を後にすると、観光がてらミソラタウン内の散策を行っていた。

 

「へぇー、ここにはこんなお店があるんだ」

 

 原作では描かれていないミソラタウンの一面を堪能していた凛空。

 そんな散策を続けた凛空が足を運んだのは、露天商などが立ち並ぶミソラ駅近くの高架下。

 

(流石に、まだあの露店は出てないか)

 

 原作においてとある事件の一幕として描かれたこの場所だが、今は、特に事件に関与する雰囲気などが漂ってはいなかった。

 

(うーん。やっぱりアキバと比べると見劣りしちゃうな……)

 

 露天商に並ぶ商品ラインナップを目にし、凛空は、内心肩を落とした。

 LBXに対する造詣を深めると共に、新たなLBX開発の参考として、サイバーランス社以外のアーマーフレームやコアパーツ等を購入する事のある凛空だが。その際、よく利用しているのが、日本のポップカルチャーの聖地の一つ、アキハバラにある店舗であった。

 アキハバラの店舗で取り扱う商品は、一般的なLBX販売店でも取り扱っている物から、一体どの様な経路で入手したのか、各企業の試作品レベルの品物など、かなりコアな商品ラインナップも多く。

 その為、一般的なLBX販売店のラインナップに毛が生えた程度のラインナップである露天商では、あまり魅力を感じない凛空であった。

 

「……ん?」

 

 こうして露天商を後にした凛空が、高架下を後にしようとしたその時であった。

 ふと、人気の少ない細い路地の方から言い争う様な声が聞こえてきて、気になった凛空は、声のした細い路地へと近づいていく。

 

「あれは……」

 

 そして、凛空が目にしたのは、高校生或いは大学生と思しき男性三人が、誰かに対して声を荒らげている光景であった。

 単に言い争っているような様子ではなく、大声をあげて威圧する等、明らかに恐喝まがいの行為に及んでいる男性三人。

 しかし、その対象となっている人物に関しては、凛空のいる位置からでは男性三人が邪魔で確認が出来ない。

 

「あ……」

 

 だが、程なく一人が動いた事で出来た隙間から、その人物の顔を窺う事ができたが。

 その顔に、凛空は見覚えがあった。

 青いリボンにツインテールが特徴的で、寡黙な雰囲気を醸し出す女の子。原作の登場人物の一人でもある三影(みかげ) ミカ、その人であった。

 

 そんな彼女が、年上の男性三人から恐喝まがいの行為を受けている事に驚いた凛空は、次の瞬間、堪らず声をかける。

 

「何してるんですか!?」

「あぁ? 何だ?」

「誰だ?」

「オイガキ! 今俺達に声かけたのはテメェか?」

 

 すると、男性三人は凛空の存在に気がつき、振り返るや否や、男性三人は凛空に対してガンを飛ばす。

 一瞬、たじろぎそうになる凛空であったが、臆することなく対峙を続ける。

 

「女の子一人にいい大人が、寄ってたかって恥ずかしくないんですか!」

「おいおい、何か勘違いしてるんじゃねぇのか?」

「そうそう。俺達はただ、この子にLBXバトルを申し込んでただけだ」

「きしし」

「バトルの申し込みって、どう見てもそんな雰囲気には見えませんでしたよ!」

「どう頼もうが俺らの勝手だろうが!」

「「そうだそうだ!」」

 

 あくまでもストリートバトルを申し込んでいたと言い張る男性三人。

 しかし、先ほど聞こえた声の内容はどう考えてもバトルの申し込みではない、と凛空が指摘しても、男性三人は一向に主張を変える素振りはない。

 

 こうして両者の意見が平行線を辿り始めた、次の瞬間。

 男性達が凛空に気を取られている隙を見て、ミカが男性達の包囲から脱出すると、素早く凛空の背中に隠れた。

 

「あ、え!」

「君の言う通り、私、あいつらに無理やりバトルしろって脅されてた」

「そうなの?」

「うん。それに、私がバトルに負けたら、有り金全部よこせって」

「な! 金銭をかけてのバトルは違法行為ですよ!」

「ち! バレちゃしょうがねぇ」

「弱えぇ奴が金持ってても仕方ねぇだろ。だから、俺達が代わりに有効活用してやろうって事だよ」

「きしし」

 

 ミカの口から真相が告げられると、男性三人は謝るどころか開き直る。

 そんな男性三人の様子を目にした凛空は、これ以上彼らに関わるべきではないと、合図と共に急いでこの場から逃げ出そうとミカに提案を持ちかける。

 

「おーっと、俺達の目的を知って素直に逃がすと思ってるのか?」

「っ!」

 

 だが不意に、背後にミカ以外の気配を感じて振り向くと、そこには、男性達の仲間と思しき二人の男性が、細い路地の出入り口を塞ぐように佇んでいた。

 逃げ出す為の退路を断たれ、若干焦りの表情を浮かべる凛空。

 それに対して、男性達は愉快とばかりに更に言葉を続けた。

 

「っはは! さぁさぁ、どうするよ、ヒーロー気取りの僕ちゃん?」

「おいおい、あんまり言ってやるなよ、僕ちゃんが泣いちまうぞ」

「きしし、だな」

 

 嘲笑う男性達、しかし凛空は、諦め顔を浮かべるどころか逆の表情を浮かべる。

 それが男性達の癪に障ったのか、リーダー格の男性が舌打ちすると、先ほどとは打って変わって不機嫌そうな様子で語り始めた。

 

「気に入らねぇな、その余裕ぶった顔。女の前だからって余裕ぶっこいてんじゃねぇぞ!」

 

 そして、リーダー格の男性は徐にズボンのポケットから折りたたまれたDキューブを取り出すと、凛空の前に放り投げて展開させる。

 

「おい、ガキ。持ってんだろ、LBX? だったら、バトルしようぜ? お前が勝ったら、お前ら二人を逃がしてやるよ」

「僕が負けたら?」

「分かってんだろ? 当然、お前の有り金を全部よこすんだよ!」

 

 リーダー格の男性の提案に、凛空は暫し考え、程なく承諾すると、凛空はDキューブの前に立つ。

 

「バトルのレギュレーションは?」

「俺達がお行儀よく(スタンダードレギュレーション)バトルすると思ってるのか?」

「分かりました、アンリミテッドですね」

「それじゃ、準備はいいか!?」

「はい」

「そのすかした顔、ぐちゃぐちゃにしてやるよ! いけ、オルテガ!」

「やるぜ、ブルド!」

「きしし、ブルド!」

 

 Dキューブ内に広がる草原に降り立ったのは、サイバーランス社が販売している、三角形の機体デザインに脚部の逆関節、その手に装備したジェット推進器つきの三角形の斧、ギガントアックスを持つ姿は処刑人を彷彿とさせる不気味なデザインながら人気も高いLBX、オルテガ。

 そして、ロケットランチャーを装備した二機のブルド。

 

「ザイフリート、発進!」

 

 一方、凛空の手から離れ草原に降り立ったのは、青を基調としたカラーリングの施された機体。

 頭部にはザクIやブグと同じモノアイを有し、頭頂部には角、肩や肘のアーマー部分にはトゲ、頭部や腰部にパイプを有するその姿は、何処か侍を彷彿とさせる。

 その名を、ザイフリート。プロジェクトMSによって開発された試作LBXである。

 モデルとなったのは、ザクIの登場するロボットアニメを原点とした一連の作品群に登場する、イフリートと呼ばれるモビルスーツ。

 しかし、ダンボール戦機の世界では、同名のLBXが後に登場する事もあって、ザイフリートの名が付けられる事になった。

 

 因みに武装は、ショットガンのZUX-197とヒートサーベルというシンプルなもの。

 

「あ? 見慣れねぇLBXだな。……ま、何でもいい、どうせ俺達にぶっ壊されるんだからな!!」

 

 そして、戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

「いくぜ!」

「きしし、吹っ飛べ!」

 

 まず先に仕掛けたのは二機のブルド。

 装備したロケットランチャーを構えると、ザイフリート目掛けて引き金を引く。

 

 刹那、放たれた二つの弾頭が白煙を引きながらザイフリート目掛けて飛来する。

 だが、ザイフリートは軽々とした左右のステップでそれを躱すと、ブルド二機の砲撃を掻い潜りながら三機の方へと接近していく。

 

「な、何だよコイツ! こんな砲撃の中を突っ込んできやがる!」

「こ、これやべぇんじゃ……」

「何弱音吐いてんだ! どんどん撃ちまくれ!」

 

 砲撃を掻い潜るザイフリートの姿を見て戦慄を覚える二人に、リーダー格の男性は喝を入れる。

 すると、砲撃は更に激しさを増し、やがて、放たれた弾頭がザイフリートを捉え、爆発を起こす。

 

「ははは! やったぜ!」

「きしし! 吹き飛んだ吹き飛んだ!!」

「は! よくやった!」

 

 その様子を目にした男性達は、ザイフリートが爆散したものとばかり思っていた。

 だが、次の瞬間、爆煙の中から、ザイフリートが跳躍し飛び出してきたのである。

 

「な! なにぃ!?」

 

 倒したと思っていた男性達は驚きのあまり反応が遅れ、その隙に、ザイフリートは一気に距離を詰めると再び跳躍する。

 そして、その着地点となったのは、一機のブルドであった。

 

「な、こ、こいつ! そこから降りやがれ!!」

 

 ブルドの上に着地したザイフリートは両足で払い落とされぬ様にブルドの両腕を押さえつけると、手にしたZUX-197の銃口を、ブルドの頭部へと向ける。

 その武骨な外観に違わぬ装甲を有するブルドであっても、零距離からショットガンを撃たれてはひとたまりもない。

 

「きしし、今助けてやるよ」

「な! お前まさか!?」

 

 そんな味方のピンチを助けるべく、もう一機のブルドがロケットランチャーの砲口をザイフリートの方に向ける。

 しかし、それが自身のブルドを助ける為ではなく、自身のブルドを巻き込んでザイフリートを葬るつもりであると見抜いた男性は、直ちに制止しようとするも、最早手遅れであった。

 

〈アタックファンクション、ナパームボム〉

 

 引き金が引かれると共に、放たれた弾頭はブルドとザイフリート目掛けて飛来し、途中複数に分裂した弾頭は、程なく、着弾し巨大な爆発を発生させ、二機の姿は爆発の中へと姿を消した。

 

「きしし、お前の犠牲は無駄にはしねぇよ」

 

 味方を巻き込み次こそ仕留めてみせた、と思った次の瞬間。爆煙の中からほぼ無傷のザイフリートが姿を現し、またしても男性達の度肝を抜く。

 しかし、一度同じ状況を体験している為、男性達の切り替えは先ほどよりも早かった。

 オルテガが一気に駆け出すと、手にしたギガントアックスでザイフリートの横合いから斬りかかる。

 

「な! 俺のオルテガを踏み台にした!?」

 

 だが、ザイフリートはギガントアックスの一撃を躱すと、オルテガを踏み台にして大きく跳躍し、一気に残るブルドに迫る。

 

「ひぃぃ!」

 

 そして、空中でZUX-197を発砲し、ブルドにダメージを負わせたザイフリートは、ブルドの目の前に着地すると、ZUX-197の銃口をブルドの頭部に向け、引き金を引いた。

 

「この野郎! 調子に乗るんじゃねぇ!!」

 

 こうして、最後の一機となったオルテガは、体勢を立て直すと、ザイフリート目掛けて再び駆け出す。

 一方のザイフリートも、装備をヒートサーベルに持ち替えると、向かってくるオルテガを迎え撃つ。

 

「ぶっ壊れやがれ!」

「っ!」

 

 交差する二機。そして、暫しの静寂の後、倒れたのはオルテガの方であった。

 

 

「な……、馬鹿、な」

 

 三対一という数のアドバンテージもあり、勝利は必須と思われていた。

 だが、結果はまさかの敗北。その事実に、リーダー格の男性は信じられないと言わんばかりの様子。

 そんな彼に、凛空が声をかけた。

 

「さぁ、勝ちましたよ。約束通り、僕達はこれで失礼します」

「……」

 

 こうして、バトルに勝利した凛空は、ミカを連れてその場から立ち去ろうとする。

 だが、細い路地の出入り口を塞ぐように佇んでいる二人の男性は、その場から退く素振りがない。

 

「そこを通してください!」

「っ、ははは! おい聞いたか? 通してくれってよ?」

「えー、どうしよっかな?」

「僕がバトルに勝ったら、逃がしてくれる約束でしょ!」

 

 すると、リーダー格の男性が不敵な笑みを浮かべながら話を始めた。

 

「くくく、そうだな。確かに俺は約束したが、そこの二人も約束を守るとは言ってねぇぞ」

「な!」

「そうだなぁ……。そこの二人ともう一度バトルして勝ったら、今度こそ逃がしてくれるかもな」

「「はははは!!」」

 

 男性達の態度を見て、最早自分達を逃がす気がないと判断した凛空。

 しかし、強行突破しようにも、数も体格も、圧倒的に相手の方が有利。

 この状況をどう打破するか、凛空が思考を巡らせていた、その時であった。

 

「よぉ。なーに面白そうなことやってんだ?」

「っ! この声!」

 

 不意に、聞き覚えのある声が聞こえ、声の方へと視線を向けると、そこには、見覚えのある人物の姿があった。

 

「郷田先輩!」

「よ、凛空」

 

 そこにいたのは誰であろう、ハンゾウであった。

 

「な! お、お前は、郷田 ハンゾウ!」

「なぁ、兄さんたち。さっきの事、一部始終見させてもらったが、俺のダチを大層可愛がってくれたようじゃねぇか」

「な、何の事だ……」

「そうそう、俺達はただ、ちょっと遊んでほしかっただけだ」

「そうか。だったら、今度は俺が遊んでやるよ!!」

「「ひ、ひぃぃぃっ!!」」

 

 どうやら男達はハンゾウの事を知っていたらしく、ハンゾウの気迫を前に恐れをなしたのか、その場から逃げるように立ち去っていくのであった。

 

「凛空、それにそっちの嬢ちゃんも、無事か?」

「はい。郷田先輩、助けていただいてありがとうございました!」

「ありがとう、ございます」

 

 ハンゾウにお礼を述べる凛空とミカ、その際、ミカの頬が少々赤らんでいる事に凛空は気づく事はなかった。

 

「所で郷田先輩」

「ん? 何だ?」

「さっき一部始終見せてもらったって言ってましたけど、一体いつから僕達の事に気が付いてたんですか?」

「あぁ、そりゃ凛空がそっちの嬢ちゃんを助けるために飛び込んでった位だな」

「えぇ! だったら、もっと早く助けに来てくれてもよかったんじゃ……」

「ははは、そりゃ悪かったな。ま、いいじゃねぇか、そっちの嬢ちゃんにお前のかっこいい姿を見せられたんだしよ」

「ち、茶化さないでくださいよ!」

 

 こうして凛空とミカの危機を救ったハンゾウは、気をつけて帰れよと言い残すと、その場を後にするのであった。

 そして、その場に残された凛空とミカの二人。

 

「そ、それじゃ、僕ももう行くね」

「あ、あの。助けてくれて、ありがとう」

「う、うん」

「私、三影 ミカ」

「僕は西原 凛空、よろしく」

 

 互いに自己紹介を行い握手を交わす二人。

 

「それじゃ三影さん、僕は……」

「ミカでいい」

「え?」

「ミカって、呼んでもいいよ。その代わり、私も凛空って呼ぶから」

「あ、うん。分かった」

 

 その後、凛空とミカの二人は、少しばかり雑談を交わすのだが。

 そこで、ミカが原作同様に既にハンゾウのファンらしく、その関係でブルーキャッツの地下闘技場へも足を運んでいるとの事。そして、地下闘技場でバトルする凛空を目撃していた事を知るのであった。

 

 こうして、雑談を終えた二人は、その後それぞれ家路につくのであった。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したザイフリートについての豆知識だ。

 ザイフリートは原作となるガンダムシリーズではイフリートと呼ばれ、スーパーファミコン用ゲーム、機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079が初出となる。
 機体は、機動戦士ガンダムに登場したグフとドム、両機の特徴を兼ね備えた近接格闘用の試作機という立ち位置で、試作機故、その生産数はたったの八機のみ。
 しかし、その高性能試作機という設定から、後のゲーム作品やアニメ作品では、特殊な装備を搭載した改造機や、より近接戦闘用に特化した改修機などが登場し、その活躍が描かれているぞ。

 では! また。
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