うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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始まりを告げる白き戦士

 あれから数か月。

 時に、西暦2050年。原作の物語の幕が上がるこの年、凛空は無事に小学校を卒業すると、春から晴れて、ミソラ第二中学校に通う事となった。

 更に幸いと言うべきか、中学校での凛空のクラスの割り振りについては、バン達と同じクラスとなった。

 

 そして、中学校生活が始まると共に、既に会った事のあるバンを介して、バンの近所に住む女の子、川村 アミ。そして、クラスは違えどバンとアミの親友でありカズの愛称で呼ばれる青島 カズヤ。

 更に、クラスメイトの一人である大口寺(だいこうじ) リュウといった、原作の登場人物達との親睦を深め始めた凛空。

 因みに、同じクラスのミカとは、あの一件の後も地下闘技場で出会う等、交友関係を続けていた為、この中では何気に付き合いが一番長い。

 

 学校に登校するとバンやアミ、それにリュウやミカ等のクラスメイトと談笑し。

 各々の机に備え付けられたパソコンに教材が配信され、指名された生徒の解答は、電子黒板に映し出され、課題の提出は補助記憶装置を用いる等。時折前世の記憶の中にある授業風景が、まさしく遠い過去の風景だと実感せずにはいられない、スマートな授業を受け。

 そして放課後になると、バン達の紹介で足を運ぶことになったミソラ商店街にある模型店、キタジマ模型店にて皆でLBXバトルを楽しむなど。

 中学校生活を謳歌していた。

 

 しかしその一方で、原作の開始の指標となるLマガの販売日が近づくと身構える等。

 刻一刻と迫っている原作開始のその日に向けて、凛空は、静かに準備を進めるのであった。

 

 

 

 

 それから更に、幾日もの時間が経過した頃。

 その日の夜、止まっていた時計の針が、静かに動き始めた。

 

 緊急を告げるアナウンスが流れるのは、何処かの施設の通路。

 緊急事態の発生を知らせる赤いランプが点滅する中、通路に響き渡るのは、幾つもの足音。

 

「いたぞ! あそこだ!」

「脱走者を逃がすな!!」

 

 足音の正体は、銀色のアタッシュケースを大事に抱えて走る、眼鏡をかけ白衣を纏った女性。

 そして、そんな女性を追いかける複数の男性達。

 

 やがて、施設を飛び出し森の中へと出た女性は、そこで追手の男性達を撒くと、夜の闇に乗じて何処かへと姿を消した。

 

八神(やがみ)司令、いかがいたしましょう」

 

 女性を見失ったとの報告を、施設内にある司令室で受け取った八神と呼ばれた男性は、険しい表情を浮かべた。

 

「もしも、あのアタッシュケースの中身が公にでもなれば……」

「そんな事は分かっている! 直ちに、エージェントを総動員して回収の任に当たらせろ! 何としてでも、アレを回収するんだ!」

 

 そして、八神の指示により、司令室内は慌ただしさを増していくのであった。

 

 

 

 

 その翌日。

 本日もいつもの通りに学校に登校し、バン達と談笑したり授業を受けたりして学校生活を送っていた凛空。

 そして放課後となり、最早習慣となった、キタジマ模型店でのLBXバトルに参加するべく、凛空はキタジマ模型店を目指してミカと共に学校を後にするのであった。

 

「皆、お待たせ」

「よ、来たな」

「これで後はバンだけね」

「その本人は?」

「それがまだなのよ……」

「バンの奴、何処で道草食ってんだか」

 

 LBXのみならず、様々な模型などの商品が並ぶキタジマ模型店の店内。

 そこで先にやって来ていた、カズとアミの二人と合流した凛空とミカは、残りのメンバーであるバンの到着を待つことに。

 

(そういえば今日ってLマガの発売日だっけ、だったらバンは書店に寄ってから……。あれ、この流れ……、もしかして)

「凛空、どうしたの?」

「え? あぁ、何でもないよ!」

 

 原作でも描かれたようなこの一連の流れに、まさか今日がと、凛空は胸騒ぎを覚える。

 すると、そんな凛空の変化に気がついたミカが心配そうに声をかけるも、凛空は平静を装い誤魔化すのであった。

 

「皆ーっ! 遅れてごめん!」

 

 そして、何とか誤魔化し終えた所で、最後の一人であるバンが店の自動ドアを潜って姿を現した。

 

「さぁ、バトルやろうぜ!」

「その前にバン、どーして遅れたんだよ」

「そうよ、何してたの?」

「気になる」

「もしかして、書店に寄ってたとか?」

 

 遅れてやって来たバンに、カズ・アミ・ミカ・凛空が一言ずつ発言する。

 すると、凛空の発言にバンが反応を示した。

 

「そうなんだ、今日ってLマガの発売日だろ。だからほら」

 

 そう言うと、バンは自らのバッグから買ったばかりのLマガを取り出した。

 

「しまった! 今日発売日だっけ!」

「なーんだ、そう言う事だったのね」

「ふーん」

 

 遅れた原因が判明し、カズ・アミ・ミカの三人は各々の反応を示す。

 一方凛空は、何かを予期するかのように、店のカウンターの奥の方に視線を向けていた。

 

「皆、いらっしゃい」

「お、今日は遅かったな、皆」

 

 すると、カウンターの奥の扉から、このキタジマ模型店を営む二人の男女が姿を現した。

 日焼けした肌にキタジマ模型店オリジナルのエプロンを着用した男性、このキタジマ模型店の店長でもある北島 小次郎(きたじま こじろう)

 そして、その妻で、男勝りな雰囲気を醸し出す女性、北島 沙希(きたじま さき)

 

 二人は、面白いものを見せてやると、凛空達をカウンターの方へと呼び寄せる。

 そして、期待に胸を弾ませる凛空達を前に、北島店長は手に持っていた箱をカウンターに置いた。

 

「見て見ろ。今日入荷したばかりの新商品だぞ」

 

 カウンターに置かれた箱は、LBXの箱であった。

 箱のパッケージには、"アキレス"と呼ばれる名を冠した、白を基調としたカラーリング、古代ギリシャの騎士を彷彿とさせる頭部の鶏冠状や各種パーツの造形、そして赤いマントにランスとシールドを装備したLBXの躍動的なイラストが描かれ。

 パッケージの脇には、製造メーカーであるタイニーオービット社のロゴが描かれていた。

 

「「おぉー!」」

 

 箱を開けて中身を確認すると、そこには、丁寧に成形された各パーツが、丁寧に色分けされたランナーごとに袋詰めされていた。

 

「白いLBXか、スゲー、イケてんじゃん!」

「素敵なデザインね!」

「カッコイイ」

「……」

 

 箱の中身を目にして各々が感想を零す中、凛空は重々しい表情を浮かべる。

 

「お? でもこれ、アーマーフレームのみのパッケージか」

「そうなの? なら、コアスケルトンがないと使えないな」

 

 パッケージに書かれた注意書きを見て、カズとバンが感想を零す。

 LBXは、人間の骨格などに相当するコアスケルトンと、人間の筋肉や皮膚に相当するアーマーフレーム、それにコアスケルトン内に内蔵するコアパーツ等で構成される。

 そして、市販されているLBXのパッケージには、初心者向けに上記の内容物全てを纏めたフルセットパッケージと、既にコアスケルトンを所有している上級者向けのアーマーフレームのみのパッケージが存在する。

 今回のアキレスは、後者のパッケージとなる。

 

 因みに、コアスケルトンが含まれている分、フルセットパッケージの方が販売価格は高い。閑話休題。

 

「凛空、どうしたの?」

 

 皆の視線がアキレスのパッケージに向けられる中、不意にミカの口から漏れた言葉に反応し、皆の視線が凛空へと向けられる。

 

「どうしたんだよ凛空?」

「このLBXがどうかしたの?」

「えっと……。そう、このLBX、ネットで見たタイニーオービットの新商品情報の中になかったなって思って」

 

 物語の開始を告げる、小さな戦士の鎧を目の前にして緊張が走った、などと素直に言える筈もなく。

 凛空はその場を切り抜けるべく誤魔化す。

 

「そう言えば。今日発売のLマガの新製品情報にも、アキレスなんて新商品の名前、載ってなかったな」

「そうなんだよ。問屋から新製品だってウチに回って来たんだが、おかしなことに、どのカタログにも載ってないんだ」

「不思議」

「本当ね」

 

 その誤魔化しが上手くいき、皆の話題は再びアキレスに戻る。

 

「あ! という事はつまり! 超レア物って事!? スゲーッ、欲しい!!」

 

 そして、バンは自身の解釈によって、気分を高揚させる。

 だが、そんなバンに対してカズが水を差す言葉を放つ。

 

「無理無理。凛空なら兎も角、バン、どうせお前のお財布事情じゃ買えないし、お前の母ちゃんだって、LBXやるの許してくれないだろ?」

「う、うぅ……。そうなんだよなぁ」

 

 カズヤの言葉に、がくりと肩を落とすバン。だが、直ぐに気持ちを切り替えると、宣誓の如く言葉を続けた。

 

「でも! 近いうちに必ず手に入れてやる!!」

「健闘を祈るぜ」

 

 こうしてカズとバンのやり取りが一区切りついた所で、バンの合図で本来の目的であったLBXバトルの準備が開始された。

 

 

 

 

「それじゃ、先ずは二対二のチーム戦だな」

「組み分けはどうする?」

「公平に、じゃんけん、でどう?」

「ならそうしよう」

 

 公平なじゃんけんの結果、バンと凛空、そしてカズとミカのチームで戦う事が決まった。

 

「じゃ、アミ、審判よろしくな」

「もー、しょうがないわね」

 

 惜しくもチーム入りが叶わなかったアミが審判を務める事が決まり、いよいよバトルが始まろうとしていた。

 

「ステージのDキューブはバッチリ、調整済みだよ」

「レギュレーションはいつも通り、スタンダードレギュレーションだ」

「分かってるさ! フィニッシュは破壊なし、だね」

「こっちも了解!」

「分かった」

「分かりました」

 

 店内のバトルスペースに設置されたDキューブの前に佇む凛空達四人。

 北島夫婦、そしてアミが見守る中、いよいよバトルの幕が切って落とされる。

 

「バン! 悪いが今日のバトル、勝たせてもらうぞ!」

「こっちこそ!」

「負けない」

「それは僕も同じだよ」

 

 四人は各々のBXを手にすると、Dキューブ内に投下していく。

 

「いけ、ウォーリアー!」

「ムシャ!」

「アマゾネス……」

「高機動型ザクII、発進!」

 

 Dキューブ内の草原に降り立ったのは、タイニーオービット社が誇る、初心者から上級者まで幅広く愛され、今やLBXを代表する機種の一つと言っても過言ではない、戦士型LBX。名をウォーリアー。

 市販されている標準塗装は銀色だが、カズの機体は暗めの緑色で塗装されている。

 そして同じくタイニーオービット社製、アミも愛用しているサイバーランス社のクノイチに対抗して開発された、女性に愛用者の多い女戦士型のLBX。名をアマゾネス。

 こちらも、市販品は黄色が標準塗装だが、ミカの機体は青色に塗装されている。

 

 一方、そんな二機と対峙するのは、キタジマ模型店でレンタル可能なLBXの内の一つ、バンが操るムシャ。

 そして、プロジェクトMSの第二弾として販売されたザクⅡ(ザク・ツー)、その派生型の一つで、背面や脚部に増加したスラスターを用いて、短時間ながらストライダーフレームに迫る機動力を得る事に成功したLBX。その名を高機動型ザクⅡ。

 

 

 この四機が、アミの合図と共に、Dキューブ内の草原を駆け始めた。

 

「バン、僕が援護するから迎撃をお願い!」

「分かった!」

「ミカ、援護するから頼んだぞ!」

「了解」

 

 後衛を務めるウォーリアーのアサルトAR3、高機動型ザクⅡのM-120A1。両マシンガンが火を噴く中、前衛を務めるムシャとアマゾネスが、中央付近で激突し刃を交える。

 

「しまった! 凛空、そっちに行ったぞ!」

「く!」

 

 かと思われた。だが、アマゾネスはムシャの装備した斬馬刀の一振りを軽々と躱すと、ムシャを無視して後方の高機動型ザクⅡ目掛けて一目散に駆ける。

 

「今援護に……、っ!」

「おーっと、バン、お前の相手はこの俺だ!」

 

 直ぐに援護に向かおうとするムシャに、アサルトAR3から放たれた弾丸が降り注ぎ、足を止められる。

 そして、ムシャはウォーリアーと刃を交え始めた。

 

「ここ」

「っ!」

 

 一方、接近するアマゾネスを迎撃するべく、装備したM-120A1を発砲し続ける高機動型ザクⅡ。

 だが、アマゾネスは持ち味の機動力を生かして、飛来する弾丸を掻い潜り徐々に距離を詰めていく。

 そして、間合いに入るや否や、装備した槍、パルチザンを高機動型ザクⅡ目掛けて突く。

 

 だが、パルチザンの穂先は、咄嗟に構えた高機動型ザクⅡの右肩に備えられているL字型のシールドにより、高機動型ザクⅡの装甲を捉える事は出来なかった。

 

「まだ」

「く!」

 

 しかし、それで終わるアマゾネスではなかった。

 続けて二撃三撃と、続けざまに攻撃を仕掛ける。

 

 一方、アマゾネスの攻撃を、スラスターを用いて躱す高機動型ザクⅡは、隙を見て銃撃を行うも、アマゾネスは左腕に装備した小型の盾であるハードバックラーを巧みに使い、距離を取る事なく攻撃を続けた。

 

「だったら」

 

 このままで、何れ躱しきれないと悟った凛空は、防戦から攻戦へと転換を図るべく、行動に出た。

 

「え?」

 

 その行動とは、高機動型ザクⅡが装備していたM-120A1を、上空へと放り投げる事であった。

 この予期せぬ突然の行動に、アマゾネスは一瞬不意を突かれて動きを止めてしまう。

 

「今だ!」

「っ!」

 

 その一瞬の隙をつき、増加したスラスターの推力を得て威力を増したショルダータックルをアマゾネスへとお見舞いする高機動型ザクⅡ。

 刹那、ショルダータックルを受けたアマゾネスは受け止めきれずに吹き飛ばされる。

 

「もらった!」

 

 吹き飛ばされたアマゾネスは、体勢を崩しながらも何とか着地に成功する。

 だが、着地直後の硬直時を狙い、スラスターを噴かして一気に間合いに入り込んだ高機動型ザクⅡの装備したヒートホークが、アマゾネスの頭部を襲う。

 

 ショルダータックルにより受けたダメージに加え、ヒートホークの一撃が決定打となり、アマゾネスはブレイクオーバーとなるのであった。

 

「負けちゃった……」

 

 こうして、高機動型ザクⅡとアマゾネスの戦いに決着がついた所で、もう一方の戦いにも決着がついたのか、明暗分かれる二人の声が響いた。

 

「うわ、マジかよ!」

「へへーん、やったね!」

 

 どうやら、ムシャが勝利を収め、ウォーリアーが敗北を喫したようだ。

 

 

「やったな、凛空!」

「うん!」

 

 勝利のハイタッチを交わすバンと凛空。

 一方のカズとミカは、少々恨めしそうに言葉を零した。

 

「にしても、やっぱ凛空は強いよな」

「うん」

「そんな、僕なんてまだまだだよ」

「ちょっとカズ、俺だっているんだぞ」

「バンのは店長がチューニングした機体のお陰だろ」

「酷いなぁ。確かに、店長のチューニングした機体は最高だけど、その性能を最大限に引き出せるように、作戦を練ったり立ち回ったり、俺だって色々考えて戦ってるんだぞ」

「だったら、早く自分のLBXを手に入れるんだな」

「だね」

「うぅ、ミカまで……」

 

 痛い所を突かれ、返す言葉が見つからず肩を落とすバンであった。

 

 その後、気を取り直したバンを含め、五人は夕方までバトルを楽しむのであった。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場した高機動型ザクⅡについての豆知識だ。

 この機体は雑誌での初出時、形式番号のみで固有名称はなかったが、後にプラモデルを中心としたメディアミックス企画"MSV"にて詳細な設定等が作られた機体だ。
 ジオン公国軍のザクIIを宇宙戦用に特化した本機は、背部と脚部に増設された大型の推進器が特徴で、稼働時間こそザクIIよりも短くなったが、それ見合う性能の高さから熟練のエースパイロット達が多く搭乗している。
 機動戦士ガンダム THE ORIGINのアニメ作品にて初めて映像化された黒い三連星専用の本機は、地球連邦軍の艦隊旗艦アナンケを撃沈し、乗艦していたいレビル将軍を捕虜にするなどの活躍が描かれているぞ。

 では! また。
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