うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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ご注文はアキレスですか?

 翌日。いつものように準備を済ませて学校に登校する凛空。

 しかしこの日、凛空が登校を開始したのはいつもよりも早い時間であった。

 

 何故、いつもよりも早く登校したのか、その理由は、彼が足を運んだ場所にあった。

 

「よぉ。誰かと思えば、凛空じゃねぇか」

「おはようございます、郷田先輩」

 

 凛空が足を運んだ場所、それは、キタジマ模型店。そして、そんなキタジマ模型店の前で遭遇したのは、郷田 ハンゾウその人であった。

 

「矢沢先輩に鹿野先輩、それに亀山先輩もおはようございます」

 

 そして、ハンゾウの他にも連れの三人。

 ハンゾウを通じて知り合った、背が低く注連縄で縛った長いポニーテールと長ランが特徴的な女性、矢沢(やざわ) リコ。

 顔色が悪く不気味な雰囲気を醸し出す男性、鹿野(しかの) ギンジ。人一倍の体格を持ちたらこ唇が特徴的な男性、亀山(かめやま) テツオ。

 

 番長であるハンゾウをリーダーとしたミソラ第二中学校の四天王にして、ゴウダ三人衆を名乗る三人にも挨拶を行う凛空。

 

「珍しいですね、皆さん揃って、買い物ですか?」

「用があるのはリーダーで、アタイらはその付き合いだよ」

「にひひ、そう言う事」

「でごわす」

「それよりも、凛空もこの店に用があっるのか?」

「はい、ここで友達と待ち合わせをしていまして」

「そうか」

 

 凛空の言葉に納得するハンゾウ達。だが、実は凛空が朝早くからキタジマ模型店に足を運んだ理由は、もう一つ存在していた。

 それが、原作で描かれたバンの試練の一つ、アキレスのアーマーフレームを巡るハンゾウとの因縁。それを見届ける為であった。

 

「おはようございます、沙希さん」

「ふぁ……、あら凛空じゃない、今日は早いわね。ん? 後ろの人たちは?」

「こちら、僕の中学の先輩方です」

「そうなの」

 

 ハンゾウ達と共にキタジマ模型店に入店した凛空は、朝早くでまだ眠たそうな、カウンターで店番をしている沙希に声をかけると、暫し雑談を交わす。

 

「所で、沙希さん。郷田先輩が買いたいものがあるみたいなんですけど」

「そっちの彼? 何が欲しいの?」

「昨日、珍しいアーマーフレームを入荷したって聞いてな。俺はそいつは欲しいんだ」

「あぁ、アキレスの事ね。……ちょっと待ってて、今持ってくるから」

 

 一旦カウンターを離れて、店の奥へと姿を消す沙希。

 彼女がアキレスの箱を取りに行っている間、凛空は一応理由は知っているが、知らない体でハンゾウに理由を尋ねる。

 

「郷田先輩、ハカイオーからアキレスに乗り換えるんですか? それとも、何方かへのプレゼント?」

「ん? ちげぇよ」

「それじゃコレクターアイテム……、でもないですよね」

「よく分かってるじゃねぇか、俺にはそんな趣味はねぇ。……詳しくは言えねぇが、ある人物に頼まれたんだよ、白いアーマーフレームを回収してほしいってな」

 

 地獄の破壊神と恐れられている郷田先輩にお使いを頼めるなんて、一体どこの喫茶店マスター兼テロリスト兼伝説のLBXプレイヤーなんだ。

 と、冗談交じりに、脳内で独り言ちる凛空であった。

 

「お待たせ―」

 

 そして、そんな事をしている内に、沙希がアキレスの箱を持ってカウンターへと戻ってきた。

 

「それじゃ、お会計ね」

 

 沙希が慣れた手つきでレジを操作し金額が表示されると、ハンゾウは自身のポケットに手を入れた。

 

「……ん?」

 

 だが、ハンゾウは別のポケットに手を入れたり、長ランの裏ポケットにも手を入れる等。まるで何かを必死に探すような動作を行い始める。

 

「ち、ちょっと待ってくれねぇか!」

「え? いいけど」

 

 そして、沙希に支払いを待ってもらうように頼むと、ハンゾウは店の一角でゴウダ三人衆を集めると、何やらコソコソと話を始めた。

 その様子が気になった凛空は、彼らにこっそりと近づき、彼らの話に耳を傾ける。

 

「どうしたのさ、リーダー?」

「不味い。家出る時に慌ててたもんで、財布、家に忘れてきちまった」

「えぇ!? どうするんだよ、郷田くん!」

「急いで家に財布を取り戻るでごわすか?」

「いや、もしもその間に他の誰かにアレを買われちまったら不味い」

「ならどうするのさ、リーダー?」

「お前ら、今、手持ちはどれ位だ?」

 

 どうやら、自宅に財布を忘れた様子のハンゾウ。そんなハンゾウを助けるべく、ゴウダ三人衆の面々は今所持しているクレジットを提示する。

 しかし、三人の提示したクレジットを合わせても、レジに表示されている金額には届かなかった。

 

「くそ、どうすれば……」

「あのー」

「っ! 何だ凛空か、ビックリさせるな。で、どうしたんだ?」

「郷田先輩、お金が無くて困ってるんですよね?」

「俺達の話を聞いてたのか? ……あぁ、全く情けねぇが、財布を家に忘れてきちまってな」

「だったら、僕が代わりにお支払いしましょうか?」

 

 凛空からの提案に、ハンゾウを始めゴウダ三人衆も驚きのあまり目を見開く。

 

「郷田先輩には、今まで色々とお世話になりましたから、今回の事はそのお礼という事で」

「いや、けどな。後輩のお前におごってもらうのは……」

「いいじゃんかリーダー。折角凛空がこう言ってくれてるんだしさ」

「そうだぜ郷田くん、ここはお言葉に甘えようぜ」

「折角の好意を無下にすることないでごわす」

「……分かった。なら、今回は凛空の言葉に甘えさせてもらう」

 

 こうして、アキレスの購入代金を凛空が代わりに支払う事が決まった所で、凛空がカウンターへと赴く。

 

「皆で何話してたの?」

「実は、郷田先輩には色々とお世話になってたので、感謝の意味を込めて、僕が代わりにお支払いする事にしたんです」

「へぇー、そうだったの」

「という事で沙希さん、これでお支払いの方、お願いします」

 

 そう言うと、凛空は自身の財布から一枚のカードを取り出し沙希に手渡す。

 カードを受け取った沙希は、そのカードを目にするや否や、先ほどまでの眠そうな眼を見開くと、何故か固まってしまった。

 

 そんな沙希の異変に気がついたハンゾウ達は、カウンターへと近づくと、彼女が受け取ったカードに視線を向ける。

 

「「え、ぇぇぇーっ!!」」

 

 そして次の瞬間、ハンゾウ達は驚きの声をあげた。

 沙希が受け取ったカード、それは、シンプルながら優美なデザインが施された黒を基調としたカード。クレジットカードの最上位に位置し、招待制故に希少性も高いそのカードの名は、ブラックカード。

 そんな滅多にお目にかかれないブラックカードを目にし、ギンジやテツオ等は本当に存在していたのかと感想を零した。

 

 こうして、一同を驚愕させつつも無事に支払いを済ませると、受け取ったアキレスの箱を小脇に抱え、ハンゾウはゴウダ三人衆の面々を従え店を後にした。

 

 

 

 

 それから暫くすると、ミカやアミと言ったお馴染みの面々がキタジマ模型店に姿を現し始める。

 そして、北島店長を交えて、凛空がブラックカードを持っている事を話題に談笑していると、バンが店内に姿を現した。

 

「店長、沙希さん、おはようございます。皆もおはよう!」

「バン、おはよう」

「おはよう」

「おはよう、バン」

 

 そして挨拶もそこそこに、バンは皆のいるカウンター付近へと駆け寄ると、自身のバッグからAX-00を取り出すと、カウンターの上に置いた。

 

「あれ、それって?」

「もしかして! とうとうバンも買ったんだ、LBX!」

「いや、買ったというかなんというか……」

「よかったね、バン! 自分のLBXを持つの、夢だったもんね」

「あ、ありがと、 沙希さん」

「お母さん、よく、許可してくれたね」

「う、うん……」

 

 以前からバンが手に入れたいと公言していた自分だけのLBX、それを手に入れた事を自分の事のように喜ぶアミや沙希。

 凛空も、原作の流れを知っているとはいえ、この世界ではどうなるか分からなかったので、バンが母親から許しを得た事に内心安堵する。

 しかし一方で、バン本人は、何処か歯切れが悪い。

 

「うーん。にしても、こんなLBX、見た事がないぞ」

 

 そんな中、AX-00を観察していた北島店長が零した感想を聞き、アミ達の意識も自然とAX-00へと向けられる。

 

「え、店長知らないの!?」

「メーカー何処?」

「AX-00……、聞いた事ない型番だな、何処のメーカーだろう?」

「そっか、店長も知らないのか……。あ、そうだ! 凛空、昨日聞きそびれたけど、凛空は何処のメーカーのか分かる?」

 

 バンに尋ねられ、凛空は何処の誰が作ったものなのかを言いたい衝動にかられながらも、知らない体で返事を返す。

 

「ごめん、僕にも分からない。少なくとも、サイバーランス社のものじゃないのは確かだよ」

「そっか、凛空でも知らないのか……」

「なぁ、バン。これ、何処で買ったんだ?」

「実は、知らない女の人に貰ったんだ」

 

 まさかの入手経路に、凛空を除く面々は驚きを隠せない。

 

「昨日、店を出た後に何かあったのか?」

「うん、実は──」

 

 そしてバンは、昨日キタジマ模型店を出た後に、自身の身に何が起こったのかを説明し始めた。

 自身の名を知る、眼鏡をかけスーツを着た謎の女性に河川敷で声をかけられ、AX-00の入った銀色のアタッシュケースを渡された事。その際、AX-00の事を人類の希望と絶望などと説明された事。

 それに関係してか、帰宅後に謎のLBXの襲撃を受けた事などを話した。

 

「人類の希望と絶望ねぇ……」

「ねぇ、店長。俺、どうしたらいいと思う」

「うーん、そうだなぁ」

 

 どう答えたものかと頭を悩ませる北島店長。

 すると、そんな北島店長に助け舟を出すかのように、凛空が声をかけた。

 

「バン。ならさ、その女の人から預かっていると思うのはどう?」

「それ、いい考えだと思う」

「そうよバン」

「そうだな、預かってるつもりで大切に使ってもいいんじゃないか?」

「そうそう」

 

 凛空の意見に、ミカやアミ、北島夫婦が賛同の意を示す。

 

「皆……。うん、そうだね! お前は今日から、俺のLBXだ!」

 

 そして、AX-00を手にしたバンは、顔を綻ばせながら、AX-00が自身のLBXになった事を宣言する。

 

「それじゃ、バンのLBX解禁のお祝いに、昨日入荷したアキレスのアーマーフレームをプレゼントしてやろう」

「え、本当!? やったーっ! 俺、あのアーマーフレーム欲しかったんだ!」

 

 北島店長の好意に、バンは全身を使って喜びを表現する。

 しかし、その直後、水を差す一言が沙希の口から漏れる。

 

「アレ、売れちゃったわよ」

「え……、そ、そんなぁ……」

「あぁ、すまんな、バン」

 

 喜びから一転、肩を落とすバン。

 

「あ、でも。そんなに欲しかったんなら凛空に相談したら?」

「え、凛空に?」

「えぇ、バン達がウチに来る前に凛空がやって来て、アレを買って、お世話になってる先輩にプレゼントしたのよ」

 

 レジ対応した沙希の言葉を聞き、バンは直ぐに凛空に問い詰め始めた。

 

「凛空! お世話になってる先輩って誰なんだ!? 教えてくれ! その先輩と会って、あのアーマーフレームを譲ってくれるように交渉してみる! お金が必要なら、お金も用意する!」

「お金で譲ってくれる人じゃないと思うけど……」

「俺、あのアーマーフレームを一目見た時から、どうしても欲しくて欲しくてたまらないんだ!」

「本気なんだね、バン?」

「うん!!」

「分かった、なら教えるよ。僕がアキレスのアーマーフレームをプレゼントしたのは、三年生の郷田 ハンゾウ先輩だよ」

 

 郷田 ハンゾウの名前が出た刹那、アミが驚きの声をあげる。

 

「郷田 ハンゾウって、あの郷田 ハンゾウ!!?」

「アミ、知ってるの?」

 

 ハンゾウを知らない様子のバンに、アミがハンゾウの説明を始める。

 

「ウチの学校で番長を張ってる人よ」

「郷田さん、ミソラ第二中学校の四天王のリーダー。LBXの腕前も凄い。そして、凛空と同じで背中で語る男」

 

 アミの説明を補足する様に、ミカが説明を加えた。

 それを聞いて、凛空が疑問符を浮かべていたのはここだけのお話。

 

「えぇ、ミカまで知ってるの!?」

「バン、LBX以外は、無頓着よね」

「あ、それ分かるかも」

「酷いなぁ二人とも……」

 

 そして、一笑いが起こった所で、凛空が再び話を始めた。

 

「それじゃ、今日の放課後、郷田先輩の所に案内するよ」

「あぁ、よろしく頼む!」

 

 こうして、放課後にハンゾウと合わせる事を約束した所で、凛空達は北島夫婦に別れの挨拶をすると、店を後に学校へと向かった。

 その道中、バンが昨日目にしたザイフリート・カスタムについて凛空を質問攻めにしたのは、ここだけのお話。




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