うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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スラムの番人

 凛空達が学校へと登校し、授業を受けている頃。

 トキオシティの一角に悠然と佇む、アルファベットのTとOを模ったデザインが特徴的な建造物。

 それは、業界を牽引するリーディングカンパニー、タイニーオービット社の本社ビル。

 

 その本社ビル内にある会議室では、現在、経営者や上位管理職等、所謂役員たちによる役員会が行われていた。

 

「以上を持ちまして、本日の役員会のプログラムは全て終了いたしました」

 

 進行役を務める悠介社長の秘書が、役員会の閉会を告げ、滞りなく役員会が終了した、その直後の事であった。

 不意に、一人の役員が挙手と共に発言を求めると、間髪入れずに悠介社長に対して質疑を求めた。

 

「悠介社長! お聞きしたい事があります! 私が聞いた所によると、社長は、先日突然送られてきた正体不明の設計図からアーマーフレームを作らせたとの事」

「……」

「しかも、同封されたメッセージの指示通りに、そのアーマーフレームを出荷したとか。社長、これは事実なのですか?」

「その通りだ」

 

 悠介社長の返答に、役員たちの間にざわめきが走る。

 

「悠介社長! 幾ら何でも、独断専行が過ぎるのではありませんか!」

「いかにも、せめて、我々役員に一言位相談してからでもよかったのでは?」

「まぁ、サイバーランス社の様な後発企業が近年、魅力的な商品開発プロジェクトを立ち上げ、我が社の地位を脅かす存在となりつつある。との危機感を抱くのは、我々も十分に理解しています。だからと言って、焦るあまり、リーディングカンパニーであるタイニーオービット社が、素性も分からぬ素人が書いた設計図を基にアーマーフレームを作るなど──」

 

 刹那、突然室内が薄暗くなると、中央に設置された巨大空中ディスプレイが起動し、とある設計図の映像を映し出す。

 

「では問うが、貴方達には、この設計図が素人の作ったものに見えるのかね?」

 

 そこに映し出されていたのは、アキレスのアーマーフレームの設計図であった。

 

「コードネーム"アキレス"。私はこれを目にした時、これは一種のアートであると感じた」

「これは、凄い……」

「もしこれを大量生産化できれば、タイニーオービット社の新たな看板商品となる事間違いなしだ」

「た、確かに、これはとても素人の書いたものとは思えませんが……、一体、何者なのですか?」

「私もこの設計者の素性は分からない。本人が"J"と名乗っている以外は。……だからこそ、Jの正体に迫るべく、私はアキレスを作ってみるしかないと判断した」

「ですが、やはり一言相談されてからでも……」

 

 そして、映像が消え、室内の照明が明るさを取り戻すと、悠介社長は席を立ち。

 

「今一度断っておくが、タイニーオービット社の社長はこの私である事をお忘れなきよう。では、失礼する」

 

 そう言い残すと、秘書を引き連れ会議室を後にするのであった。

 

 

「社長! 大変です!」

「ん、どうした?」

 

 社長室へと戻った悠介社長のもとに、開発部の社員と思しき男性が血相を変えてやってくる。

 

「またJと名乗る人物から、新たな設計図が届きました!」

「何!?」

「こちらになります」

 

 社長机に設けられたパソコンのモニターに表示されたのは、アキレスとは異なる、ワイルドフレームらしく獣の様な外観をしたアーマーフレームであった。

 

「コードネームは、"ハンター"か……」

「遠距離における高精度照準機能を搭載した、長距離射撃を得意とするLBXの様です」

 

 一通りハンターの設計図に目を通した悠介社長は、今回も同封されていたメッセージに目を通すと、微笑を浮かべた。

 

「面白い」

 

 そして、悠介社長は、直ちにこのハンターのアーマーフレームの製造に着手する様に指示するのであった。

 

 

 

 

 さて、タイニーオービット社の本社ビルでそんな一幕があった事など全然知らない凛空達は、無事に本日の授業を全て終え、放課後ライフを堪能していた。

 

「よかったな、バン! LBX手に入れられて!」

「ありがと、カズ」

「なら早速、今からキタジマに行って、俺のウォーリアーとバトルしようぜ!」

 

 別のクラスのカズにもAX-00をお披露目した所で、バンはカズの提案に断りを入れる。

 

「でも、その前に」

「郷田 ハンゾウか……」

「うん。郷田に会って、アキレスのアーマーフレームを譲ってもらえるように説得したいんだ」

「俺も、郷田 ハンゾウの事は聞いた事がある。地獄の破壊神と呼ばれ、戦った相手のLBXを必ず破壊するって話だ。そんな無茶苦茶な奴を説得できるとは、俺は思えねぇけど……」

「それでも、俺はアキレスのアーマーフレームを手に入れたいんだ! なぁカズ、カズも一緒に来てくれないか?」

「相手が悪すぎる。バン、今回は諦めた方がいい」

「あ! カズ!!」

 

 ミソラ第二中学校の番長であるハンゾウ、関わりの少ない者からすれば、そのあだ名や噂も相まって、畏怖の念から関与したくないと思うのも無理はない。

 教室を後にするカズの背中を見送ったバンは、今回カズを誘う事を諦めるのであった。

 

「仕方ないわよバン」

「うん」

「アーミちゃーん!」

 

 バンを慰めるアミ、そんなアミの名を呼びながら近づいてきたのは、誰であろうクラスメイトのリュウであった。

 

「何、リュウ? 私今忙しいんだけど?」

 

 そんなリュウに対して若干素っ気ない返事を返すアミ。

 しかしリュウは、そんな事を気にする素振りもなく上機嫌で話を続けた。

 

「俺とLBXバトルやろうぜ!」

「だから……」

「見てよ! 今度のカスタマイズ!!」

 

 眉をしかめるアミの様子など気にも留めず、リュウは自身のLBX、オレンジ色に塗装されたブルドを取り出してみせた。

 すると、LBXとあって、バンが興味を示した。

 

「おぉ! リュウ、ブルドの何処変えたの!?」

「よくぞ聞いてくれました! 何と、追尾機能を三倍にしたいんだ! これでクノイチがどんなに早くても、動きを見切ってやるぜ」

「へぇー凄いね」

 

 まったく興味を示さないアミに対して、バンは興味津々の様子。

 

「ならリュウ、俺とバトルしようよ!」

「バン、お前自分のLBX持ってないだろ」

「それがあるんだよねぇ」

「うっそぉ!? 見せろよ!」

「ちょっとバン! バトルしてる場合じゃないでしょ!」

「あ、そうだった……」

 

 アミの注意を受けて、バンは本来の目的を思い出す。

 

「凛空! 案内頼む!」

「分かった、それじゃ行こうか」

 

 そして、凛空にハンゾウのもとへ案内を頼んだバンは、アミとミカと共に、教室を後にしようとした。

 だが、バンは不意に足を止めると、見送るリュウに声をかけた。

 

「そうだ、リュウも一緒に来ないか?」

「へ?」

「今から私達、番長の所に行くの」

「何かよく分からねぇけど、アミちゃんが行くなら俺もついてく!」

 

 こうして、メンバーにリュウも加わった所で、凛空の案内でハンゾウのもとへと向かう一行。

 そんな中、凛空は、流れが若干変化した事により、一抹の不安を覚えるのであった。

 

 

 

 

 校舎を後にした一行が足を運んだのは、体育館の裏に存在する一角。

 そこはかつて、この辺り一帯の再開発の折に最後まで反対し居座り続けていた人々の住居。主亡き後は、解体される事もなく廃屋群となり、現在では不良達の根城となった場所。

 その名を、スラム。

 

 フェンスや有刺鉄線で封鎖されたスラムの入り口、その前に立つ凛空達一行。

 

「ここが、スラム」

「郷田先輩はこの先だよ、さ、行こう」

 

 躊躇する事もなく入り口を潜る凛空とミカ。そんな二人の後に続き、残りの三人も意を決して入り口を潜り、スラムに足を踏み入れる。

 壁に描かれた落書き、日の光が当たらない薄暗い通路、朽ち果てて放置された自動車やバイクなどの廃車等々。

 バン達三人は同じ学校の敷地内とは思えぬそんなスラムの雰囲気に、身を震わせるのであった。

 

「何か、出そうだな……」

「あ、アミちゃん、俺がついてる。こ、怖くなったら、俺にしがみついてくれてもいいんだぜ?」

「別に、全然怖くないけど」

「あぁ、そう」

 

 かっこいい所を見せようとして失敗に終わったリュウを他所に、一行は凛空を先頭にスラムを進む。

 すると、少し開けた場所で、そんな一行を出迎えるかのように人影が現れた。

 

「なーんだ、誰かと思ったら、凛空じゃない」

「また会ったでごわすね」

「矢沢先輩、亀山先輩、鹿野先輩、こんにちは」

 

 現れたのは、今朝会ったゴウダ三人衆の面々であった。

 

「それよりも、後ろの連中は誰だ?」

「彼らは僕のクラスメイトで友達のバン、アミ、リュウです」

 

 ゴウダ三人衆にバン達三人を紹介する凛空。

 すると、廃車のボンネットに腰を下ろしていたリコが更に質問を飛ばす。

 

「実は、バン達は郷田先輩に用がありまして」

「郷田くんにでごわすか? 一体、どんな用でごわす?」

「郷田先輩に今朝プレゼントしたアキレスのアーマーフレーム、あれを譲ってもらえるように説得したいそうなんです」

「ふぅーん、成程ねぇ……」

 

 事情を理解したリコは、何やら不敵な笑みを浮かべると、ギンジとテツオを呼び寄せて、三人で内緒話を始めた。

 

「にひひ、そいつはいいな」

「確かに、いいアイデアでごわす」

「だろ」

 

 そして、程なく内緒話を終えた三人。代表して、リコが口火を切った。

 

「いいよ、リーダーの所に通してやる。……と、言いたい所だが。バンとか言ったね!」

「あ、あぁ」

「リーダーに会いたかったら、アタイ達とLBXバトルして、その実力を示すんだね!」

「えぇ!?」

「矢沢先輩! そんな──」

「凛空、俺達は話し合って決めたんだよ。そいつらが郷田くんに合わせるに相応しい実力の持ち主かどうかを、俺達で判断してやろうってな」

「そんな訳で、凛空は助太刀厳禁でごわす。勿論、そちらの彼女も同様でごわす」

 

 LBXバトルはないものと思っていた凛空、だが実際には、LBXバトルを行う流れとなり、驚きを隠せない。

 しかも、実力を測る事を口実に、既に実力を知っている凛空、そしてミカはバトルに参加できない事となってしまった。

 

 この流れを何とか変えようとする凛空だったが。

 

「ま、アタイ達とのバトルが怖かったら、とっとと尻尾撒いて逃げてもいいんだよ」

「にひひ! そうだぜぇ、不幸な目に遭いたくなかったら、とっととお家に帰んな」

「その代わり、アーマーフレームは諦めるでごわす」

「分かった! そのバトル、受けて立つ!」

 

 ゴウダ三人衆の挑発に乗ったバンにより、凛空の苦労が水泡に帰するのであった。

 

 

 

 

 バン達のバトルを観戦する為、近くのベンチに腰を下ろす凛空とミカ。

 

「凛空、大丈夫?」

「あ、うん、大丈夫だよ。ありがとう」

 

 凛空の見立てでは、バン達はハンゾウとのバトルはあれど、ゴウダ三人衆とのバトルはないものと考えていた。

 所が、実際にはバトルをする事となり、そこには参加者の一人としてリュウの姿もある。

 勿論、原作通りになるとは限らないが、凛空はリュウに対して心苦しい気持ちで一杯であった。

 

「それじゃ、バトルの前に、景気付けに自己紹介やっちゃう!?」

「いくでごわす!」

「げ、アレをやんのかよ……」

 

 リコの号令と共に、ゴウダ三人衆は各々のLBXを取り出すと、決めポーズを取り始めた。

 

「クイーンのリコ!!」

「ナズーのテツオ!!」

「マッドドッグのギンジ!!」

「四天王、ゴウダ三人衆!」

「「見参!!」」

 

 決めポーズと共に名乗りを上げたゴウダ三人衆。

 一方、既に見た事のある凛空とミカとは異なり、初めて見るバン達三人は、どう反応していいか分からず、微妙な空気が流れる。

 

「だからこれやるの嫌だったんだよ!!」

「鹿野先輩、今度何か奢りますよ」

「く、すまねぇな……。やっぱ俺の苦労を分かってくれるのは、凛空だけだぜ」

 

 それに耐えかねたギンジに優しく声をかける凛空。

 すると、そんな二人の会話を遮るようにリコが声をあげた。

 

「兎に角バトルを始めるよ!! Dキューブ、展開!!」

 

 リコが勢い良く投げたDキューブが展開すると、内部に広がったのは、横断する様に流れる川、朽ち果てた古代遺跡、鬱蒼とした木々。

 ジャングルと呼ばれるフィールドが広がっていた。

 

「いけ、クイーン!」

「ナズー、投下!」

「マッドドッグ、にひひ……」

 

 先にジャングルに降り立ったのは、ゴウダ三人衆のLBX。

 

「リュウ、行くわよ! クノイチ、出陣!」

「ブルド、発進!」

「いっけーぇっ!」

 

 それに続き、ピンク色に塗装されたアミのクノイチ、リュウのブルド。そして、バンのAX-00がジャングルに降り立つ。

 対峙する両チーム、しかし、その中でもAX-00は、他の五機とは一線を画す存在感を放っていた。

 

「そのLBX、カバーパッドのままじゃん!」

「にひひ、そんなペラッペラの保存用装甲で戦うつもりかよ」

「なめられたもんでごわす」

「な、なぁ。そんなLBXで大丈夫か? バン」

「大丈夫さ!」

 

 バトル用ではないカバーパッドの状態でバトルを行う事など、正気の沙汰ではない。

 これには、味方のリュウも不安を感じずにはいられなかったが、バンは問題ないと言い放つ。

 

「このバトル、俺達が勝ったら郷田の所に通してもらうからな!」

「勝てたらね」

「バトルのレギュレーションは?」

「何でもありでごわす」

「分かった、アンリミテッドだな」

 

 そして、両チームが各々のCCMを構えた所で、バトルの幕が切って落とされた。




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