うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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戦場はジャングル

 バトル開始と共に先制攻撃を仕掛けたのはバン達であった。

 AX-00の高い機動力を生かして一気に間合いを詰めると、クイーン目掛けて装備した鋼鉄棍を振るう。

 

「うぉぉっ!」

「っ! コイツ早い……。なーんてね!」

 

 しかしクイーンは、同機の特徴でもあるスカートを模した脚部のホバーユニットより生み出される高い機動性を生かし、寸での所で攻撃を回避する。

 そして、お返しとばかりに、がら空きとなったAX-00の背面目掛けて、装備したマシンガンのクイーンズハートを撃ち込む。

 

「っ!(一撃のダメージでLP(ライフポイント)がこんなに……。やっぱり、アーマーフレームがない分ダメージが大きい)」

 

 攻撃を受け、CCMに表示されたAX-00のLPの減少量を目にしたバンは、カバーパッドの状態でバトルを行う事が如何に難しいかを痛感する。

 

「バン! 今の状態でダメージを受けると、直ぐにブレイクオーバーで負けちゃうよ!」

「わ、分かってる!」

「アタイ達をなめてるから、こうなるんだよ!」

「バン、クイーンの相手は私が……」

「おっと、そうはさせんでごわす!」

 

 機動力の高いクイーン相手にAX-00では分が悪いと判断したアミは、直ぐにクノイチを差し向けようとする。

 だがその直後、突如、川の中から姿を現したのは、ナズー。

 十字型のクローと、内蔵された水圧銃が特徴的な武器腕のナズーアーム。そこから放たれる、圧力を加えられた水の弾丸がクノイチに襲い掛かる。

 

「どうでごわす! おいどんのナズーは水陸両用でごわす!!」

 

 機体の特徴を生かしたナズーの奇襲攻撃を受けて、クノイチは堪らず後方に下がる。

 

「リュウ! アミのフォローを頼む!」

「ち、ちょっと待て! 早すぎてついていけぇねよ……」

 

 その様子を見てバンがリュウに指示を出すも、リュウは展開の速さについていけず右往左往する。

 

「ぬわぁ!」

「ちょっとリュウ! 三倍の追尾機能はどうなってるのよ!?」

「ホバーは想定してなかったんだよぉ!」

 

 クイーンからの攻撃を受け泣き言を漏らすリュウ。

 すると、その様子を見て、リコとテツオが獲物を見つけたかの如く動き出した。

 

「最初の獲物は決まったよ、テツオ!」

「了解でごわす!」

「ひ、ひぃ!」

 

 ブルドを挟み込むクイーンとナズー。

 その様子を見て、AX-00とクノイチはブルドのもとに駆け付けようとする、だが。

 

〈アタックファンクション、グレイスミサイル〉

 

 クイーンのホバーユニットから垂直発射されたミサイルの数々が、AX-00とクノイチの両機の前に降り注ぎ行く手を遮る。

 

「そらそらそら!」

 

 そして、その間に、クイーンとナズーの攻撃が容赦なくブルドに降り注ぐ。

 攻撃から逃れる術を持たないブルドは、やがて耐えられなくなり、音と共に爆散する。

 

「そんな……」

「いっちょ上がり!」

「で、ごわす!」

「上手い連携だ」

「伊達に四天王って呼ばれてる訳じゃなさそうね」

 

 鮮やかな連携でブルドを葬ったその手際を見て、敵ながら見事と感想を漏らすバンとアミ。

 そんな二人を他所に、リュウは散らばったブルドの残骸を手に取ると、震えた声で戦線離脱を宣言し、その場から逃げるように去っていった。

 

「お前らも帰ってもいいんだぜ?」

「っ! 帰るもんかぁ!」

 

 リュウが離脱し、数的にも、そしてフィールドであるジャングルでの戦闘経験の差でも、ゴウダ三人衆に対して苦戦を強いられるバンとアミ。

 それでも、バンは最後まで諦める事無く戦い続ける。

 すると、そんな努力が実を結んだのか、AX-00の投げた鋼鉄棍が、運よく射線上に姿を現したナズーに直撃し、見事ナズーを撃破する。

 

「な、なんで……」

「テツオ! なにしてんのよ!」

「ふ、またテツオがドジったか」

(敵の行動を予測する戦闘補助機能。あれも、テストプログラムの一端なのか……)

 

 不幸な偶然と判断するゴウダ三人衆に対して、一連の戦闘を観戦していた凛空は、AX-00の秘めたる性能の片鱗を垣間見、静かに驚嘆する。

 

「仕方ねぇなぁ……。久しぶりに俺も暴れてやるとするかぁ!」

 

 静かに分析を行う凛空を他所に、バトルは新たな局面を迎える。

 それまで静観していたマッドドッグが、AX-00に、その鋭利な三本のクローが特徴的な武器腕、マッドドッグアームを携え襲い掛かる。

 

 AX-00は鋼鉄棍を振るい迎撃を試みるも、次の瞬間、マッドドッグの姿が、忽然と目の前から消えてしまう。

 

「っ! 消えた!?」

「どーこだ?」

 

 マッドドッグを見失い、周囲を必死に探すAX-00。

 しかし見つからない焦りから、注意力が散漫になった、次の瞬間。

 

「バン! 後ろ!」

「っ! しまった!」

 

 振り下ろされたマッドドッグアームがAX-00に襲い掛かり、無情にもAX-00のLPを減少させる。

 

「このままじゃ……っ!」

「バン! 危ない!」

「おっと! あんたの相手はこっちだよ!」

 

 そして、追い打ちをかけるかの如く、マッドドッグがAX-00の前に姿を現し、マッドドッグアームを振り上げる。

 助けに向かおうとしたクノイチだが、その行く手をクイーンに阻まれる。

 最早、絶体絶命のピンチ。と、思われた次の瞬間。

 

「え!?」

「あのウォーリアーは!?」

「チッ!」

 

 振り下ろされたマッドドッグアームを、左腕に装備した盾、ライトバックラーで受け止める暗めの緑色で塗装されたウォーリアー。

 突如姿を現しAX-00のピンチを救ったウォーリアー。

 その持ち主に心当たりのあるバンとアミは、ふと後ろを振り向く。すると、案の定、そこにはCCMを手にしたカズの姿があった。

 

「カズ!」

「来てくれたのね!」

「まぁな」

 

 こうして、カズが新たに参戦した所で、バンが簡単な状況説明を行う。

 

「カズ、気をつけろ! あいつのLBXは姿を消せるんだ」

「確かあれ、サイバーランスのだろ? 本当、サイバーランスは面白いLBXを作るよな」

 

 ふと、カズの視線が凛空に向けられると、凛空は含みのある笑みを返すのであった。

 

「ふん、今更助けが来たって、青い奴はあと一撃で終わりだよ!」

 

 形勢が逆転したかのように見えるが、まだ自分達の方が有利だと意気込むリコ。

 しかし、クイーンの攻撃を躱し反撃に打って出たAX-00の一撃を食らい、クイーンはバトルから落伍した。

 

「やるな、バン!」

「これで残りはあと一機」

「でもどうするの? 残る相手は姿を消せるのよ」

「ここは俺に任せろ!」

 

 意気込みを見せたカズはウォーリアーを前進させると、程なく立ち止まる。

 

「何だ? マッドドッグを感じようって魂胆か?」

 

 まるで気配を感じ取るかの如くウォーリアーに対し、マッドドッグは死角から姿を消しながら接近し、一気に叩き潰す魂胆であった。

 だが、接近の際にジャングルの木々に接触し、音を発した事から自身の位置が特定されてしまう。

 更に、畳み掛けるようにウォーリアーが投擲した磁場爆弾、透明化したLBXの効果を無効にする爆弾により、その姿が露見してしまう。

 

「よし、決めるぞ! いっけーっ!!」

 

 そして、一気に間合いを詰めたAX-00の鋼鉄棍がマッドドッグの腹部に突き刺さり、程なく、マッドドッグは爆散するのであった。

 

 

 

 

 バトルが終了し、開始前の威勢はどこへやら、意気消沈するゴウダ三人衆。

 そんな三人に、バンが声をかける。

 

「さぁ、約束通り、郷田の所に通してもらうぞ!」

「……分かったよ、ついてきな」

 

 バトルの前に交わした約束を反故にする事もなく、ゴウダ三人衆の後をついていくバン達。

 その間、凛空は先ほどの観戦したバトルの感想をバン達と話し合っていた。

 

「凄いね、バン。矢沢先輩達に勝つなんて」

「でも、今回の勝利は俺だけじゃ掴めなかった、カズとアミがいたからこそ掴めたんだ」

「よせよバン、照れるぜ」

 

 こうしてバン達が勝利の余韻に浸っていると、やがて、先頭歩いていたゴウダ三人衆の足が止まる。

 そこは、スラムでもかなり奥まった場所、日の光も少なく、スラムの中でも特に不穏な雰囲気の漂っている場所であった。

 

「リーダーはこの先にいるよ」

「よし、皆行こう!」

 

 道を譲り、その先にある扉を指し示すゴウダ三人衆。

 意を決したバンを先頭に、扉を開けて中へと足を踏み入れる凛空達。

 

 そこでバン達が目にしたのは、テーブルやソファ等、家具が置かれている他、中央にDキューブが設置された、生活感の溢れる空間。

 そして、大きく穴の開いた壁の方を向き、バン達にその逞しい背中を向ける人物の姿であった。

 

「よく来たな……、山野 バン!」

「っ!? どうして俺の名前を!?」

 

 バン達の方へと振り返ったその人物、郷田 ハンゾウは、その肩に相棒のハカイオーを乗せながら、バン達を見据え始める。

 

「んな事はどうでもいい! バン、お前、俺に話があるんだろ?」

「そ、そうだ! 俺、アキレスのアーマーフレームがどうしても欲しいんだ! 頼む、譲ってくれ!」

「悪いな、そりゃ無理な相談ってもんだ」

「そこを何とか!」

「だから、そりゃ無理だって言ってんだろうが」

「お金が欲しいって事か!?」

「金の問題じゃねぇ。俺には、コイツを守る使命があるんだよ。汚い大人たちや、お前みたいなガキに使われないように守るっていう使命がな」

「ガキって、貴方だって私達と同じ中学生でしょ!」

 

 ハンゾウと交渉を続けるバンだか、話はいつまでたっても平行線を辿る。

 

「ふ、そうだな、なら」

 

 このまま交渉は決裂かに思われた、次の瞬間。

 不敵な笑みを浮かべたハンゾウが、不意にアキレスの箱をバンの方へと放り投げる。

 それを受け取ったバンは、このハンゾウの突然の行動に動揺を隠せなかった。

 

「お前の熱意はよーく分かった。だから、お前の熱意に免じてチャンスをやる」

「チャンス?」

「そのアーマーフレームを使って俺と戦え。もし、お前が俺のハカイオーに勝てたら、そいつはお前のもんだ」

「本当に!」

「ただし! もし負けたら、お前のLBXはコアスケルトンごと俺がいただく! どうだ、面白れぇだろ?」

 

 ゴウダ三人衆が嘲笑うのを他所に、バンはハンゾウの提案を受けるか否か、思考を巡らせる。

 

「バン、どうする? 相手はあの地獄の破壊神だぞ。使い慣れていないLBXで勝てるような相手じゃないぜ」

「相手のLBX、装甲も攻撃力も、さっきの三人の比じゃないわよ」

「だけど、ここまで来て諦めるなんて……」

「おっと、言い忘れてたが、ハンディとして、お前らはそこの三人で戦ってもいいぜ」

 

 すると、ハンゾウがカズとアミを指名しながら、三対一でのバトルという追加の条件を提示してくる。

 それを聞いて暫し葛藤したバンだが、やがて意を決した様に口を開いた。

 

「分かった、そのバトル、受けて立つ!」

「はぁ、やれやれ」

「仕方ないわ、カズ。ま、三対一ならなんとかなるでしょ」

「僕達も応援してるから、三人とも頑張ってね!」

「頑張れ」

「……はぁ。凛空とミカは気楽でいいよなぁ」

 

 こうして、ハンゾウとのバトルを承諾したバンは、カズとアミと共に、早速アキレスのアーマーフレームを組み立てる等、バトルの準備を始めた。

 

 一方、再び観戦する運びとなった凛空とミカは、ゴウダ三人衆と共に部屋に置かれたパイプ椅子やソファを集めて観覧席を作ると。

 テツオが用意したお菓子やジュースを広げて、さながらスポーツ観戦の如くパーティーの準備を進めた。

 

「あの、郷田先輩」

「ん? どうした凛空? もしかして、ダチとのバトル、手加減してくれって言うんじゃねぇよな?」

「そんな事言いませんよ。郷田先輩は、いつでもバトルは全力投球だって事は分かってますから」

「なら、何だ?」

「バン達は強いですよ。油断してると、郷田先輩でも痛い目を見るかもしれません。と、伝えようと思いまして」

「は! そいつは面白れぇ」

 

 それから、小休止を挟みつつ準備を終えたバン達三人は、設置されたDキューブの前に立つ。

 三人とも、作戦会議を経て入念な準備を行ってか、バトルを前に自信満々の様子。

 一方、ハンゾウの方も、同様に自信を見せている。

 

「ウォーリアー、投下!」

「クノイチ、出陣!」

「出撃だ、アキレス!」

「いけぇ、ハカイオー!」

 

 地中海の風を、かつての栄華を感じさせる、白亜の大理石で建造された巨大遺跡。

 ドーリア式建築物の最高峰と称される、古代ギリシアの象徴とも言うべきパルテノン神殿をモチーフとした神殿のジオラマ。

 Dキューブ内に広がる神殿に降り立ったのは、小さな四人の戦士。

 

 そして、小さな戦士達による戦いの火蓋が切って落とされた。




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