バトルが始まると共に先に仕掛けたのは、バン達三人。
三機の中で一番機動力の高いクノイチが飛び出すと、一気にハカイオーの懐に飛び込む。
ハカイオーも破岩刃を振るうも、その刃がクノイチを捉える事は出来ず、いいように翻弄される。
と、隙を見て、今度はウォーリアーが構えたアサルトAR3が火を噴き、放たれた弾丸がハカイオーを襲う。
寸での所で、飛来する弾丸を破岩刃をシールドとして使用し直撃を免れるハカイオー。
「今だ! 突っ込めアキレス!!」
そして、ハカイオーが釘付けとなった所で、満を持してアキレスが動き出した。
これこそ、バン達が準備の最中に立てた作戦。各々の機体の特徴を生かし、クノイチが撹乱、ウォーリアーが中距離射撃で突撃するアキレスを援護すると言うもの。
まさに、数の有利とチームワークで勝利を掴み取る作戦であった。
「何!?」
ハカイオーの横合いに回り込んだアキレスは、装備した長柄のランス、アキレスランスの鋭い突きをハカイオーにお見舞いする。
すると、重厚感のあるハカイオーの巨体が突き飛ばされ、これにはハンゾウも目を見開き思わず声を漏らした。
「えぇ、吹き飛ばした!? 凄いパワー」
「それに、早い!」
それはアミとカズの両名も同様で、アキレスの予想以上の性能に、二人は舌を巻く。
一方、観覧席で観戦している凛空は、興味深い様子でそれを眺めていた。
「しゃらくせぇ!」
「止めろ、アキレス!」
態勢を立て直したハカイオーの破岩刃がアキレスに迫るものの、アキレスの構えたアキレスシールドに受け止められ、致命傷は与えられない。
「こいつ、ハカイオーの攻撃を受け止めたって言うのか!? 面白れぇ……、その力、もっと見せてみろ!」
アキレスの性能を垣間見、ハンゾウは嬉々とした表情を浮かべる。
だが、アキレスばかりに意識が向けられていた刹那、弾丸が飛来し、ハカイオーは再び弾丸を防ぐべく動きを止めた。
その下手人は言わずもがな、アサルトAR3を装備したウォーリアーだ。
「成程、ヒットアンドアウェイ。距離を取って戦おうって魂胆か」
「考えたでごわすね」
「だけど、所詮は浅知恵。どんな小細工を使っても、地獄の破壊神からは逃れられないよ」
お菓子やジュースを片手に観戦しているゴウダ三人衆は、ハカイオーが防戦一方の展開にも拘わらず、特に焦る様子も見せずに観戦を続ける。
一方凛空は、真剣な眼差しで観戦し。ミカは、いつの間に用意したのかデジタルカメラを構え、バトル中のハンゾウの撮影を始めていた。
「いい感じ。距離を取って正解ね」
「カズ、お前の作戦、大当たりだ」
「よし、このまま押し切るぞ!」
作戦が見事に決まり、バン達の脳裏に勝利の二文字が脳裏に点滅し始める。
「三対一なんて、私達をなめ過ぎたようね!」
「は! 分かってねぇな! 三対一なら、一度に三機まとめてぶっ壊せるじゃねぇかよ!」
吠えるハンゾウ。しかし、バン達はそれが強がりではないかと、バトルが有利に進んでいるが故に勘違いしてしまう。
だがそれは、地獄の破壊神の本領発揮の合図であった。
「始まるよ、リーダーの破壊のショーが」
「にひひ」
「でごわす」
「くらえっ!!」
そして、ハンゾウがCMを操作した次の瞬間。
〈アタックファンクション、
ハカイオーの胸部砲口から収束したエネルギーが束となり放たれると、着弾と同時に周囲一帯を爆発の影響で発生した煙で覆い尽くす。
「何だよこれ、これじゃ何も見えない!」
「気をつけろ、バン! ……く、奴は何処だ?」
煙の影響で視界が遮られ、ハカイオーの姿を見失うバン達。
互いに背中を預け、煙の中で周囲を見渡すアキレス達。
そんな中、ハカイオーは煙に紛れ、アキレスの背後へと忍び寄っていた。
「くらいやがれ!」
「っ! よけろバン!!」
そして、十分な距離にまで忍び寄った所で、ハカイオーは頭部のスラスターを使用し、一気にアキレスの懐に飛び込んだ。
だが、寸での所で気がついたウォーリアーがアキレスを救うべく、アキレスを突き飛ばした。
「吹っ飛べ!!」
しかし、アキレスの代わりに、ウォーリアーがハカイオーの強烈なタックルを受けて吹き飛ばされる。
「泣き叫べ!!」
更に、畳み掛けるようにハカイオーの豪快な蹴りが直撃し、ウォーリアーが宙を舞う。
「ウォーリアー!」
「砕け散れぇっ!!」
そして、トドメとばかりに、身動きが取れなくなったウォーリアー目掛け、破岩刃による横一閃をくり出すハカイオー。
次の瞬間、機体が限界を迎えたウォーリアーは爆散し、周囲に破片を飛び散らせるのであった。
「「あぁ……」」
「嘘、だろ……」
「その目に刻め! これが地獄の破壊神、ハカイオーだ!」
「ハカイオーの面目躍如でごわす」
「木っ端みじんに壊されて、泣いちゃう位悲しいよな、にひひ」
「ご愁傷様」
ふと、カズの様子が気になり、視線をカズの方へと向けるバン。
だが、バンがバトルから目を離した瞬間であった。
「クノイチ!」
アミの悲鳴にも似た声に気がつき、再びバトルに視線を戻すと、ハカイオーがクノイチの頭部を鷲掴みにしている光景が目に入った。
(俺のせいで……)
「バン!」
「……カズ」
「まだ、戦いは終わってないぞ。バトルに集中するんだ」
自分が不甲斐ないばかりにと、気持ちが折れかけていたバンに、カズが声をかける。
ギンジが口にしていたように、自分の大切なLBXを破壊されれば、大抵のプレイヤーは絶望を浮かべ涙を流すもの。
だが、カズはそんな様子など微塵も感じさせなかった。
「分かった。アキレス!」
そんなカズの様子に勇気づけられたバンは、再びアキレスを操作しハカイオーへと挑み始める。
「よくもカズのウォーリアーを!」
アキレスのタックルで自由の身となったクノイチも、ウォーリアーの仇を取らんと再び接近戦を試みる。
だが、既に動きを見切られていたのか、破岩刃による突きを受け吹き飛ばされる。
「アミ! このぉ!!」
それを見て、アキレスも再びハカイオーに対してアキレスランスを振るう。
だが、その攻撃は破岩刃に受け止められる。
「何だこのなまっちょろい打ち込みは! とんだ期待外れだぜ!! おらぁ!!」
程なく、鍔迫り合いを制したハカイオーの攻撃を受けて、アキレスもクノイチの近くに吹き飛ばされる。
「近づけば破岩刃で」
「離れれば我王砲で」
「ハカイオーに死角はないよ」
「さぁ、そろそろぶっ壊れちまいな!」
刹那、ハカイオーの胸部の砲口に再びエネルギーが収束すると、機械音声と共に、我王砲が発射される。
「いいぞぉ、郷田くん!」
「やったでごわす!」
「流石はリーダー!!」
「いい、表情」
「……」
アキレスとクノイチにエネルギーの束が襲い掛かり、両機の姿を爆発の中へと消すと、観戦していたゴウダ三人衆が歓喜の声をあげた。
そして、ミカも構えたデジタルカメラのシャッターを一心不乱に切るのを他所に、凛空は言葉を零す事もなく観戦を続けている。
直撃こそ免れたものの、余波を受けたからか、地面に倒れたまま動く気配のないアキレスとクノイチ。
そんな両機のもとへ、引導を渡すべく、ハカイオーが、一歩また一歩と近づいていく。
「さぁて、トドメといくか!」
「アキレスっ!!」
ハカイオーの振り下ろした破岩刃の刃が、アキレスを粉砕した、かと思われた次の瞬間。
「何!?」
まるで生への執着を見せるかのように、アキレスはアキレスシールドを構えて破岩刃を受け止めた。
その様子に、ハンゾウのみならずバン達も驚きの表情を見せる。
更に、アキレスはお返しとばかりにハカイオーに強力な蹴りをお見舞いして、ハカイオーを吹き飛ばした。
「馬鹿な! こいつ、何処にこんなパワーが!?」
「アキレス……。まだ、戦えるのか」
「ち、しゃらくせぇ! この、くたばり損ないが!」
「っ! また受け止めた!」
まだ諦めていないかの如くアキレスの姿勢を目にして、バンは、三度ハカイオーへと挑み始める。
そこに、再び立ち上がったクノイチも加わり、バトルの行方は最後まで予断を許さないものとなった。
「くそ! とっとと諦めてくたばりやがれ!!」
〈アタックファンクション、
放たれた我王砲を何とか躱すアキレスとクノイチ。
その様子を見ていたカズは、バトルから落伍してもなお、バンとアミの為に勝利の鍵となる重要な情報を話し始めた。
「二人とも、奴の弱点が分かったぞ」
「「え!?」」
「あれ程強力な我王砲だが、あれは恐らく、発射する毎に大量の、機体全てのエネルギーが必要なんだ。その証拠に、さっき発射した際も、頭部カメラの光が失われていた」
「じゃぁ、あの我王砲を撃つ一瞬の隙は……」
「ハカイオーは無防備になるって事か!」
「その通りだ。だから……」
すると、カズは自身のCCMの画面をバン達に見せながら、自身が立てた作戦を二人に伝え始めた。
「よし、その作戦でいこう!」
「分かったわ!」
「は! 作戦は決まったか? ま、こいつの前にはどんな小細工も無意味だがな! いくぜ!」
我王砲の発射態勢へと移行するハカイオー。
すると、発射の際の勝機を狙うべく、クノイチが左右にステップを踏みながらハカイオーに迫る。
「馬鹿が、俺がそんな事に気付いてないとでも思ったのかよ!」
しかし、クノイチが攻撃を行う直前、発射を一時中断したハカイオーはクノイチのコダチを紙一重で躱すと、懐に飛び込んできたクノイチを拘束する。
「吹っ飛べ!」
「……吹っ飛ぶのは、あんたよ!」
ゼロ距離でクノイチに我王砲をお見舞いしようとしたハカイオーだが、巧みに拘束を解いたクノイチは、大きく距離を取る。
「今よ、バン!」
そして、アミの合図に合わせ、アキレスはその手に構えたアサルトAR3を、ハカイオー目掛けて発射した。
放たれる弾丸の雨。刹那、その内の一発が砲口内に飛び込み、収束していたエネルギーに誘爆を引き起こさせる。
「何!?」
誘爆したお陰で砲口周囲に幾つもの亀裂が生じ、我王砲が使用不能となったハカイオー。
その様子を見ていたリコは、寸前のクノイチの行動を思い出して、アキレスがいつの間にアサルトAR3を所持していたのかを気がつく事になる。
「クノイチのハカイオーへの攻撃はフェイク。本当の狙いは、ウォーリアーの銃をアキレスに渡す事だったのか……」
「何だってぇ!?」
「ぬぅ、やるでごわすねぇ」
先ほど立てたカズの作戦を理解したゴウダ三人衆は、感嘆の声を零す。
「こんのぉ……。我王砲を使えなくなった位で俺様が、負けるかぁっ!!」
一方、ハンゾウはまだこれで勝敗が決した訳ではないと、闘志をむき出しにしてハカイオーを操作する。
「そのコアスケルトンもアーマーフレームも、全部ぶっ潰してやるぜぇっ!!」
「俺達は、俺のアキレスは負けない!!」
アキレス目掛けて駆けるハカイオー、対してアキレスも、ハカイオーに真っ向から立ち向かう。
「うぉぉぉっ!!」
「貫けぇっっ!!」
交差するアキレスランスと破岩刃、交差する両機。
最後の一撃を放った両機、そのどちらが先に膝をつくのか、その行方を見届けるべく、皆が固唾をのんで見守る。
次の瞬間、ハカイオーが膝をつき倒れるのであった。
「馬鹿な……、ハカイオーが、やられただと」
「勝った……、勝ったんだ!」
対照的な反応を示すハンゾウとバン。
そしてそれは、観戦していた面々も同様であった。
「まさか、リーダーが負けるなんて」
「し、信じられねぇ」
「ぬぅ……」
「嘘……」
驚愕するゴウダ三人衆とミカ。
一方の凛空は、あまり表情を変える事無く見据え続けていた。
「……、俺の負けだ。約束通り、そいつはお前のもんだ」
そして、約束通りアキレスのアーマーフレームをバンに譲ったハンゾウは、Dキューブ内からハカイオーを回収すると、壁に開いた大きな穴の方へと足を運ぶ。
「縁があったら、また会おうぜ。……あぁ、それから、凛空!」
「はい?」
「お前の言った通りだったぜ! 俺もまだまだ、修業が必要なようだ」
「もし必要なら、相手になりますよ、郷田先輩」
「そうか。……じゃぁな!」
そう言い残すと、大きな穴から部屋を後にするハンゾウ。その後を追うように、ゴウダ三人衆も部屋を後にするのであった。
「ミカ、片付け手伝ってくれる?」
「ん、分かった」
ハンゾウ達が去り、部屋に残された凛空達。
凛空とミカが空になったお菓子の袋や紙コップなどを片付けている一方、バン達三人は勝利の余韻に浸っていた。
「よかったな、バン」
「あ……」
しかし、Dキューブ内から飛び散ったウォーリアーの破片を拾い集めるカズの姿を目にし、バンとアミの二人は申し訳ない表情を浮かべる。
「そんな顔するなよ。俺は自分からバトルに加わったんだ、気にするなって……」
そう言い残すと、カズは一足先に部屋から立ち去ろうとする。
そんなカズの背中を見送る事しかできないバンとアミ。
「カズ!」
「ん?」
「もし力になれる事があれば協力するから」
「あぁ、サンキュー……」
一方、立ち去る間際に声をかける凛空。
だが、そんな凛空の声も、あまり慰めにはならなかった様だ。
カズが浮かべたのは、哀愁漂う笑顔であったから。
アキレスのアーマーフレームを巡るハンゾウとの因縁が、その幕を下ろした頃。
何処かの研究開発室の一角、モニターに表示されたLBXの設計図を眺めながら、八神と呼ばれた男性は何者かと電話で話をしていた。
「博士は相変わらずです。新たなテクノロジーに携わる者こそ、人間の良心を忘れてはならない。と、そうおっしゃられるばかりで。……はい、我々の思想に賛同していただけるまでには、まだ時間がかかりそうです」
その口調などからして、八神の上司らしき電話の相手。
「分かっております、AX-00の事はお任せください。あのシステムが如何に特殊なものであれ、バトルの最中に破壊してしまえば済む事です」
不敵な笑みを浮かべる八神、どうやら電話の相手も、吉報が届く事を期待しているようだ。
「では、失礼いたします」
そして、電話を切った八神のもとへ、三人の人物がタイミングを見計らい近づく。
三人とも黒のスーツで身を包み、その顔はピエロの様な仮面を被り素顔は分からない。
「お前達、次の作戦の準備は進んでいるか?」
「はい、既にあの少年の身辺調査は完了いたしました」
「合わせて、障害となるであろうもう一人の少年についても同様です」
「それに、"エジプト"のプレイヤーも目星をつけたッス」
仮面の三人組からの報告を聞き、八神は満足そうな笑みを零した。
程なく、八神が見守る中、モニターに表示されていた設計図のLBXが完成し、その姿を現す。
黄色を基調として、機体の各所に青いラインが入り、頭頂部の湾曲した形状や、ピエロを彷彿とさせる肩アーマー。
何処か不気味な雰囲気を醸し出すそのLBXの名は、エジプト。
バン達が知らぬ所で、新たな陰謀の幕が上がろうとしていた。
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