うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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スレイブ・プレイヤーにしてバトルさせる気でしょ? Wみたいに! Wみたいに!

 アキレスのアーマーフレームをバンが手に入れた翌日。

 いつも通り学校に登校した凛空が教室に足を踏み入れると、既にバン・アミ・ミカ、それにリュウが何やら集まって話をしていた。

 

「皆、おはよう」

「凛空、おはよう」

「おはよう凛空」

「おはよう」

「おぉ凛空! なぁ、お前も見てくれよ! 俺の新しいLBX!」

 

 挨拶を交わし終えると、リュウが手にしたLBXを自慢げに見せてくる。

 

「じゃーん! 俺の新しいLBX、"ブルド改"だ!!」

「リュウ、新しいLBX買ったんだ」

 

 リュウの新たなLBX、モノアイ式に変更されたカメラセンサー、よりマッシブになった機体フォルム。そして、一番の変更点は、脚部が装軌式から四輪の装輪式に変更された点。

 その名の通りブルドの改良型、パーソナルカラーであるオレンジ色に塗装されたブルド改であった。

 

「この重厚感、どんな武器でも搭載できる圧倒的な積載量、それに抜群の安定性! やっぱりパンツァーフレーム内じゃブルドが一番だな!」

「確かに。僕がこういうのもあれだけど、パンツァーフレームにおいては、プロメテウス社に一日の長があるからね……」

 

 サイバーランス社も、プロジェクトMSの一商品として、ガンタンクと呼ばれる装軌式のLBXを販売している。

 両肩にキャノン砲を二門装備し、両前腕部に近接戦闘にも対応可能な四連装機関砲を備えた武器腕となる等、かなりの火力を誇っている。

 しかし、サイバーランス社初のパンツァーフレームという事もあり、同フレームの代表機であるブルドに比べると機動力に劣り。また武装が全て固定式の為に汎用性に欠けるからか、想定していたよりも売り上げは芳しくなく。

 それを知った凛空は、汎用性を付与するのではなく、あえてコンセプトを突き詰めたガチタン()ならば、売り上げが伸びるかもしれないと密かに画策するのであった。

 

「それにしても、本当にリュウってブルド好きだよね」

「ブルド、バカ一代」

「いやぁ、それ程でも」

 

 こうして、ブルド改のお披露目が一区切りついた所で、バンが凛空にカズについての話題を振る。

 

「凛空、カズの事なんだけど」

「うん。僕も少し気になってたんだ」

「休み時間に、様子を見に行こうと思うんだ」

「分かった、僕も一緒に行くよ」

「ありがとう」

 

 それから程なく、朝のホームルームを経て一時限目の授業が始まり、無事に授業を終えて休み時間を迎えた所で、凛空達はカズのクラスに足を運んだ。

 

「カズ? カズなら今日、学校休んでるよ」

「えぇ!?」

 

 しかし、教室にカズの姿は見当たらず、クラスメイトに声をかけてカズの居場所を尋ねると、返ってきたのは学校を休んでいるという驚きの答えであった。

 程なく自分達の教室に戻った凛空達は、どうするかを話し合い始める。

 

「どうしよう……」

「そうだ。だったら放課後、カズの家に行ってみない?」

「そうだね、行ってみよう」

「ん」

 

 アミの提案に他の三人も賛同の意を示したので、凛空達は放課後、カズの家に足を運ぶ事となった。

 

 

 

 

 そして、放課後。

 学校からカズの家に向かった凛空達だが、そこで対応してくれたカズの母親から、予想外の事実を聞かされる。

 

「折角来てくれたのに、ごめんなさいね。カズヤ、少し前に出かけちゃったのよ」

「え、そ、そうなんですか」

「何処に行くか、聞いていませんか?」

「ごめんなさい、何処に行くかは聞いてないのよ」

「そうですか、ありがとうございました」

 

 お礼を述べて家の中へと姿を消したカズの母親を見送ると、凛空達は、これからどうするのかを話し合い始めた。

 

「もしかしたら、気分転換にキタジマに行ったのかも」

「なら、キタジマに行ってみよう」

「まって。今は、LBXの事、あまり考えないようにしてるんじゃない? なら、別の場所かも」

「うーん、確かにミカの言う通りかも……」

「だったら、皆で手分けしてカズを探してみない?」

「あ、それいいかも!」

「いいアイデア」

「じゃ、カズを見つけたら連絡して、見つからなかったらキタジマに集合で」

「分かった!」

 

 こうして、凛空の提案により、四人は手分けしてカズを探す事になる。

 しかし、後に凛空は、この時の自身の提案を後悔する事になるのだが、今はまだ、そんな事になるなど、知る由もなかった。

 

 

 

 

 三人と別れた凛空がまず足を運んだのは河川敷。

 しかし、サッカーを楽しむ少年たちや散歩する人々などの姿はあれど、肝心のカズの姿は何処にも見当たらなかった。

 

(まだいない……。という事は、高架下か?)

 

 そこで凛空は、今度は高架下へと向かって足を進めた。

 やがて、高架下へとやって来た凛空は、原作においてカズに声をかけた例の露天商がいないかを探し始めるが、特に怪しい露天商は見当たらなかった。

 

 もしかしてと思い、駅前にあるゲームショップにも足を運んでみたが、そこにも、カズの姿はなかった。

 

(行き違いか……。となると、バンと合流しておいた方がいいかもな)

 

 結局、カズを見つける事の出来なかった凛空は、それ以上探すのを諦め、集合場所であるキタジマ模型店へと向かうのであった。

 

 

 一方その頃。

 カズを見つけるべくミカが足を運んだのは、ミソラタウン憩いの場の一つ、緑豊かなミソラ公園。

 家族連れやペットの散歩で賑わう公園内を探し回るものの、結局カズを見つける事は出来ず、キタジマ模型店に向かおうとしたその矢先の事。

 

「ちょっと、そこのお嬢さん」

「?」

 

 ふと声をかけられ、足を止めるミカ。

 声のした方に視線を向けると、そこには、大きな木の下でミニテーブルや照明を用意し営業している占い師の姿があった。

 

「お嬢さん、貴女、悩みを抱えていますね? 大切な人の力になりたい、でもどうすればいいのか分からない」

「っ!」

「もし答えを知りたいのなら、さぁ、どうぞお掛けなさい」

 

 神秘的な黒のローブで身を包み、フェイスベールで顔の大部分を隠してはいるが、声や目元等から、占い師が女性であることは間違いない。

 そんな占い師に誘われるように、ミカは、椅子に腰を下ろした。

 

「本当に、分かるの?」

「えぇ、分かりますとも。この水晶は、何でも答えを知っている」

 

 女性占い師はミニテーブルに置かれた大きな水晶玉に両手をかざすと、暫し水晶玉を覗き込み、やがて水晶玉の中に見えたビジョンを語り始める。

 

「あぁ、駄目。もう少しで明確な答えのビジョンが見えそうなんだけど、力が足りないわ」

「……」

「でも安心して。貴女の力を借りれば、答えのビジョンは見る事が出来る」

「どうすればいいの?」

「貴女も私と一緒に、この水晶玉を覗いて欲しいの」

「分かった」

 

 そして、再び女性占い師が大きな水晶玉に両手をかざすと、ミカも言われた通り、水晶玉を覗き込む。

 すると、水晶玉の中に光が見えた、刹那。

 ミカは、気を失いそうな感覚に襲われ、程なく意識を手放すのであった。

 

「さぁ、答えは見えたでしょう? なら、早く彼のもとに向かいなさい」

 

 そして、女性占い師がそう言うと、虚ろな目となったミカは立ち上がると、その場を後にする。

 そんなミカを見送った女性占い師は、フェイスベールの下に不敵な笑みを浮かべ始めた。

 

「こっちは終わったよ、そっちはどうだい? ……そうか、なら第二段階に移行するよ」

 

 誰かと連絡を取り終えた女性占い師は、手際よく片付けると、足早にミソラ公園を後にするのであった。

 

 

 

 

 ミカが怪しげな女性占い師と出会っていたなど知る由もない凛空は、キタジマ模型店で先に到着していたバンと合流していた。

 

「そっか、凛空もカズ、見つけられなかったのか」

「うん」

「カズの奴、何処にいるんだろう……」

「バン、カズなら心配ない。必ず立ち直るさ」

「そうそう、心配ないって」

 

 相変わらず気に病むバンに対して、バンからカズの一件の話を聞いていた北島夫婦が励ましの言葉をかける。

 

「バン、また明日になれば、いつものカズに会えるよ」

「うん、そうだな」

 

 そして、凛空の言葉を受けて、バンの気持ちが少し楽になった時の事。

 

「バ~ン! 凛空ぅ~!」

「リュウ!」

 

 不意に、リュウがキタジマ模型店に姿を現したのだ。しかもその目に涙を浮かべて。

 

「どうしたの、リュウ?」

「お、俺のブルドが……」

「ブルドって、今朝見せてくれたあの?」

「一体何があったんだよ?」

 

 一体リュウの身に何が起こったのか、それを知るべくリュウに理由を尋ねるバンと凛空。

 すると、リュウは鼻水をすすりながら、自身の身に起こった事を話し始める。

 

「壊されちまったんだよぉ! うわぁぁぁん!」

「壊されたって、一体誰に!? 何処で!?」

「ぐす。河川敷でアミちゃんに声をかけられて、そしたら、カズとミカの二人も一緒で……」

(河川敷でカズとアミとミカの三人が一緒!?)

「バトルしようって言われたから快く受けたんだ。そしたら、アミちゃん達三人がかりで襲ってきて……」

 

 リュウの説明を聞き、信じられない様子のバン。

 一方、凛空も驚きの表情を浮かべていたが、それは、彼の記憶の中にある、原作との相違から表れたものであった。

 

(どういうことだ? 操られるのはカズだけの筈じゃないのか!?)

「凛空、凛空! どうしたんだよ?」

「え、あ、その……。三人がそんな事するなんて、信じられなくて」

「嘘じゃねぇょ! 本当に三人にブルドを壊されたんだ!」

「凛空、兎に角河川敷に行ってみよう!」

「うん、そうだね」

 

 こうして、リュウをキタジマ模型店に残し、バンと凛空の二人は、一路河川敷を目指した。

 

 

 

 程なく、河川敷へと到着したバンと凛空が目にしたのは、周囲の視線も気にせず、設置したDキューブの前で挑戦者を待つかの如く佇む、カズ・アミ・ミカの三人の姿であった。

 急いで三人のもとへと駆け寄ったバンと凛空は、三人にブルドを破壊した真意を尋ねた。

 

「カズ! リュウのブルドを破壊したって本当か?」

「ミカ、アミ。二人も協力したって言ってたけど、本当なの?」

 

 しかし、三人は二人の質問に対して無言を貫く。

 

「なぁ、答えてくれよ!」

「そんな事はどうでもいい。バン、凛空。俺達とバトルしろ!」

「そんな事って……」

「いいから勝負だ!!」

(三人とも様子がおかしい……。これってやっぱり……)

 

 一方的に勝負を挑むカズの態度に困惑するバン。

 一方、凛空は三人の様子がいつもとは異なる事に気がつく。アミとミカの目は虚ろで、カズに関しては目つきも鋭く、口調も荒々しい。

 

 そして、凛空は心の中で苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 

(くそ! まさかミカとアミの二人まで催眠状態になるなんて! おのれディテク──、じゃなかったイノベーターめ!)

 

 危うく一年程時系列を勘違いしそうになった凛空を他所に、カズは一方的に勝負しろと要求を続ける。

 

「バン、このままじゃ埒が明かない。ここは、カズの言う通りバトルに応じよう」

「え、……よし、分かった!」

「ふ、漸く応じたか。さぁ、こい! このエジプトで、切り刻んでやるよ!」

 

 カズがバトルの為に取り出したLBX、エジプトの姿を見て、早速バンが興味を惹かれる。

 

「カズ、そのLBXどうしたんだよ!? それより、見た事ないけど機体だけど、もしかしてそれも超レア物!?」

「バン、今はそんな場合じゃないだろ」

「あ、そうだった」

 

 エジプトの姿を目にして目を輝かせていたバンだが、凛空に窘められ、本来の目的を思い出すと、気持ちを切り替えアキレスを取り出す。

 

「バン、今回のフィールドは、砂漠だ。アキレスだと、相性が悪いかもしれないから気をつけて」

「分かった」

「おい、早くしろ!」

 

 バトルを前に、凛空はDキューブ内に広がる砂の世界、中央に鎮座するピラミッドや風化した石造建築物が砂の大地に存在する、見た目通りの砂漠のフィールドに対してバンにアドバイスを送る。

 そんな二人を急き立てるカズに、凛空は内心舌打ちするのであった。

 

「お待たせ。それじゃ、バトルを始めようか」

「ふ、いくぞ! エジプト!」

「クノイチ!」

「アマゾネス!」

「いくぞ! アキレス!」

「ザイフリート・カスタム、発進!」

 

 五機のLBXが砂漠に降り立つ。

 河川敷でのバトルの幕が切って落とされた。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したガンタンクについての豆知識だ。

 機動戦士ガンダムに登場するこの機体は、地球連邦軍がV作戦によってはじめて開発に成功したモビルスーツで、戦車の下半身に人間の上半身の様な外観が特徴的な機体。
 本体下部に姿勢制御バーニアが設けられており、これとスラスターなどを併用する事で宇宙空間での活動も可能だが、地上と比べ行動に制約が多い。
 連邦軍モビルスーツ黎明期の機体故、モビルスーツとしては些か不完全である。しかしそのコンセプトは、かなり後の時代まで引き継がれていくことになる。
 ガンダム本編では、ホワイトベースの艦載機として様々な活躍が描かれているぞ。

 では! また。
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