うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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黄金の戦士と蒼き竜殺しの戦士

 バトル開始早々、アキレスとエジプトは互いの武器で鍔迫り合いを演じ。

 一方、ザイフリート・カスタムとクノイチ・アマゾネスの戦いも、スラスターとガトリングシールドから放たれる弾幕が砂埃を発生させ、弾幕を掻い潜りくり出す二機の攻撃が火花を散らすなど。

 激しい攻防が展開された。

 

「く、砂に足を取られて思うように動けない」

 

 固い地盤の草原などとは異なり、砂地という不安定な砂漠のフィールドでは、機体の接地圧や重量などが機動力に大きく影響する。

 接地圧とは、接地面に作用する単位面積当たりの荷重の事で、接地面積が広い程接地圧は小さくなり、逆に接地面積が狭い程接地圧は大きくなる。

 それを踏まえると、クノイチやアマゾネスは、他の三機に比べ接地面積が狭い為に深く食い込んで足を取られやすい事になる。しかし、両機は草原と遜色ない機動力を発揮している。

 

 ここで更に重要になってくるのが、機体重量だ。

 当然ながら、重量が重ければ重い程、接地面積が広くとも接地圧は大きくなる。

 一例を挙げると、接地面積が広い装軌式の戦車でも、重量の軽い軽戦車と、重量の重い重戦車とでは、砂漠や沼地などの所謂不整地(オフロード)における機動力に雲泥の差が生じる。

 

 この為、重量の軽いクノイチやアマゾネスは砂漠でも高い機動力を発揮し。

 また、アキレスと同じナイトフレームに分類されるエジプトも、砂地での運用を想定してか、同種の中では比較的軽量の為、砂漠でも機動力を損じる事無く動けるのだ。

 

 因みに、重量のみで言えば五機の中で最も重いザイフリート・カスタム。同機は、脚部に増加されたスラスターユニットを用いて、機動力の低下を強引に補っているのである。

 

「バン、砂の上じゃ不利だ! 建物の上に一旦避難するんだ!」

「分かった。だけど、エジプトの攻撃が激しくて……」

 

 砂に足を取られながらも、エジプトの猛攻を防ぐアキレス。しかし、防ぐので精一杯で、距離を取る為の隙を見いだせない。

 そこでザイフリート・カスタムに援護を期待するが、こちらも、クノイチとアマゾネス、二機の猛攻を前にアキレスの援護にまで手が回らない。

 

「やれ、エジプト!!」

「あぁ!?」

 

 そして、エジプトの繰り出した一閃が、アキレスの構えたアキレスシールドを真っ二つに切り裂く。

 

「アキレスの盾が……、凄いパワーだ」

「バン。あのパワーから繰り出される攻撃をまともに喰らったら、数発でブレイクオーバーだ」

 

 その光景を目にして、エジプトの想像以上のパワーに驚くバンと凛空。

 そんな二人を他所に、エジプトはアキレス目掛けて装備した彎刀、ナイルブレードを振るう。

 それを、間一髪の所で躱し続けるアキレス。

 

「このままじゃ、躱しきれない……」

(カズ、以前にも増して近接戦が強くなってる。それにミカとアミの二人も。……これも、催眠効果なのか)

 

 先ほどから防戦一方の状況に、凛空は流れを変えるべく動き出す。

 

 隙を見て脚部のスラスターユニットを使用し、ザイフリート・カスタムを一気に後退させ、クノイチとアマゾネスから距離を取る。

 そして、十分に距離を取った所で、アタックファンクションを発動させる。

 

〈アタックファンクション、ミサイルパーティー〉

 

 脚部の六連装式ミサイルポッドからミサイルが次々と発射され、クノイチとアマゾネス目掛けてミサイルの雨が降り注ぐ。

 しかし、二機とも自慢の機動力を生かし、ミサイルの雨を回避してしまう。

 だが、ミサイルパーティーはあくまでも牽制。回避されても、凛空にとっては問題ではなかった。

 

 ミサイルパーティーで二機を牽制し終えると、ガトリングシールドの銃口を、すかさずエジプトに向ける。

 次の瞬間、銃身が回転すると共に放たれた幾多もの弾丸が、エジプト目掛けて飛来し始めた。

 

 しかし、エジプトは付近の石造建築物を利用し、弾丸の嵐を逃れる。

 

「バン、今のうちに!」

「助かった」

 

 あわよくばエジプトを倒したい所だったが、アキレスをエジプトの猛攻から一旦退避させる事に成功し、とりあえずは態勢を立て直せたことに安堵する凛空。

 

「三人とも、何だかいつもより強い。このままじゃ埒が明かない」

「バン。ここは一機ずつ、各個撃破していこう」

「よし、それでいこう」

「僕が援護するから、先ずは──」

 

 改めて作戦を練って仕切り直しといこうとしたが、そんな暇を与えぬ様に、クノイチとアマゾネスの両機がアキレスとザイフリート・カスタムに襲い掛かる。

 クノイチとアマゾネスの攻撃により、合流したアキレスとザイフリート・カスタムは再び分断される。

 

「くそ!」

 

 何とかアキレスと再び合流するべく、襲い掛かるアマゾネスのパルチザンを躱しながら隙を伺うザイフリート・カスタム。

 

「アキレス!!」

 

 だが、クノイチの機動性に翻弄されている隙に、背後に回ったエジプトの攻撃を受けるアキレスの様子に気を取られ、一瞬の隙を作り出してしまう。

 その隙をアマゾネスは見逃さす、繰り出したパルチザンの穂先が、ガトリングシールドのガトリング砲を貫いた。

 

「く!」

 

 使用不能となったガトリング砲をパージし、代わりにヒートサーベルを両手に装備すると、アマゾネスとの鍔迫り合いを行い始める。

 更に、アキレスにはエジプト一機で事足りると判断したクノイチも加勢し、ザイフリート・カスタムは二機への対応で釘付けとなる。

 

 

 

 

 一方、再びエジプトと対峙しているアキレスは、暫し鍔迫り合いを演じていたが。

 やがて、エジプトのパワーを前にアキレスランスを弾き飛ばされると、再び強力な攻撃を受けて砂漠に倒れてしまう。

 

「く、完全に抑え込まれて逃げられない……」

 

 更に、アキレスを逃がさぬ様に押さえつけながら攻撃を続けるエジプト。

 逃げる事もできず、装甲に次々と叩きつけられるナイルブレードにより、アキレスのLPはどんどん減少していく。

 

「このままじゃ……、アキレス!!」

 

 そして、バンの悲痛な叫びと共に、アキレスのLPが一定量を下回った、その時であった。

 突如、アキレスのカメラセンサーが赤く光を放ち、機体全体が金色(こんじき)に光り輝き始めたのだ。

 

 しかも、変化はそれだけではなかった。

 バンの手にしていたCCMも、呼応するように変形し、大きく姿を変えたのだ。

 

「何だ、これ……。Vモード?」

(く、Vモードが発動してしまった!)

 

 突然のこの変化に戸惑うバン、更に、対戦相手のカズ達も、この変化には少なからず動揺している様子。

 一方、アキレスの、正確に言えばAX-00のこの特殊な機能を知っている凛空は、この機能が発動した事に対して苦々しい思いであった。

 

 そんな一同を他所に、Vモード状態となったアキレスは、押さえつけていたエジプトを突き飛ばすと、先ほどまで苦戦していたのが嘘のように、砂の上を滑る様に移動しエジプトの懐に飛び込むと、強烈なパンチをお見舞いする。

 それだけにとどまらず、蹴りをくり出し、頭部を鷲掴みにしてピラミッドに叩きつける等。無茶苦茶な攻撃を行い始める。

 

「あれ、そんな、コントロールが効かない!?」

 

 しかも驚いた事に、それはバンが操作して行っているのではなく、まるでアキレスが自我を持ったかの如く、自動で行っているという。

 

「あぁ、駄目だアキレス! それ以上は!」

 

 そして、先ほどエジプトに弾き飛ばされたアキレスランスの付近にエジプトを殴り飛ばすと、アキレスはアキレスランスを手に取り、倒れるエジプト目掛けて手にしたアキレスランスの穂先を突き付ける。

 次の瞬間、アキレスランスがエジプトの胴体に力の限り突き刺さると、やがてエジプトは爆散する。

 

「そんな……」

(っ! 不味い、このままじゃアマゾネスとクノイチも!)

 

 意図せずカズのLBXを破壊してしまい、呆然とするバン。

 一方の凛空は、バンに慰めの言葉をかける間もなく。

 エジプトが倒された事でアキレスに対する危険度が高まったからか、アキレスに攻撃目標を変更したクノイチとアマゾネスを、アキレスに破壊される前に倒すべくザイフリート・カスタムの操作を続ける。

 

 だが、自慢の機動力でヒートサーベルを躱し、アキレスに迫るクノイチとアマゾネス。

 

「っ! 駄目だアキレス!」

 

 そして、降りかかる火の粉を払うかの如く、アキレスランスでクノイチとアマゾネスを薙ぎ払うアキレス。

 その力強い薙ぎ払いを受けて倒れる両機のもとへ、トドメを刺すべく、処刑人の如く近づくアキレス。

 

〈アタックファンクション、ミサイルパーティー〉

 

 だが、そんなアキレスの目の前で、降り注ぐミサイルの雨により、クノイチとアマゾネスの両機は機能を停止するのであった。

 

「よし、これでアキレスは、アマゾネスとクノイチを攻撃対象とは認識しなくなるはずだ」

 

 凛空の読み通り、動かなくなったクノイチとアマゾネスへの攻撃を停止したアキレス。

 しかし、その代わりに、フィールド内で自分以外に唯一動いている、ザイフリート・カスタムへの攻撃を開始するアキレス。

 

「えぇ、味方なのに!? くそ、駄目だ! やっぱりコントロールが!」

(自分以外は全て敵、まさに暴走状態か。それにしても、何て性能なんだ)

 

 次々とアキレスランスによる突きを繰り出すアキレス、ガトリング砲をパージしたシールドとスラスターを使用して、ザイフリート・カスタムは何とか直撃を免れる。

 しかし、その素早く繰り出す連続攻撃に、徐々に回避し続ける事が困難となり。遂に、アキレスランスの穂先が、ザイフリート・カスタムの右肩アーマーを捉えた。

 次の瞬間、アキレスランスがザイフリート・カスタムの右肩アーマーをコアスケルトンごと貫き、ザイフリート・カスタムの右腕を使用不可能にする。

 

(このままじゃザイフリート・カスタムが……。だけど、ここでアキレスを破壊でもしたら……。いや、悩んでる暇なんてない!)

 

 ザイフリート・カスタムが片腕を失い、追い詰められる中。

 凛空は、意を決すると、自身のCCMを操作し、とあるシステムの起動を始めた。

 

〈メインシステム、EXAMモード、起動します〉

 

 凛空のCCMから聞き慣れない機械音声が流れた、次の瞬間。

 ザイフリート・カスタムのモノアイが一際赤く輝いた、刹那。

 

「えぇ!?」

 

 それまでアキレスの攻撃を躱すので精一杯だったザイフリート・カスタムが、アキレスに勝るとも劣らぬ動きでアキレスの背後を取ると、左手のヒートサーベルによる一振りをアキレスに与えた。

 ザイフリート・カスタムの突然の動きの変化に戸惑うバンを他所に、凛空はアキレスを倒すべく操作を続ける。

 

「(あまり長時間使用すると機体の負荷が限界を超える……。だから)この一撃で!」

 

 ザイフリート・カスタムの攻撃を受けて、最早立っているのもやっとな程、満身創痍なアキレス。

 そんなアキレスに引導を渡すべく、ザイフリート・カスタムが懐に飛び込むと、左手のヒートサーベルを振るった。

 

 次の瞬間、アキレスの纏っていた金色の光が消えると、糸の切れた人形の如く砂上に倒れ、爆発する事無く機能を停止した。

 

「ふぅ……。何とか、倒せたな」

 

 アキレスを破壊する事無く倒せた事に安堵する凛空。

 一方バンも、アキレスが機能を停止した事で、変形していたCCMが元の姿に戻り、一安心する。

 

 しかし、安堵したのも束の間。

 カズ・アミ・ミカの三人が小さなうめき声をあげると、三人同時に倒れ込んだ。

 

「カズ! アミ! ミカ!」

「バン、とりあえず三人を安静にさせよう」

「わ、分かった」

 

 こうして、奇妙なバトルを終えたバンと凛空は、倒れた三人を近くのベンチに運ぶと介抱を始めるのであった。

 

 

 

 

 それからニ十分ほどが経過した頃。

 

「ん?」

「よかった、気がついたんだね」

 

 倒れた三人が次々と目を覚まし始める。

 

「……ねぇ、凛空」

「何?」

「もう少し、このままでもいい」

「え、いいけど」

「ん、ありがとう」

 

 そんな中、目を覚ましたミカは、自身の状況、ベンチに座る凛空に膝枕をしてもらっている。との状況を把握すると、もう少し、この状況を堪能するのであった。

 

「カズ、アミ。二人とも気がついたんだ」

「あれ? 俺、何してたんだ?」

「私……。どうしてこんな所に?」

「え? 二人とも、覚えてないの!?」

「覚えてないって?」

「私達、何かしてたの?」

 

 一方、目を覚ましたカズとアミは、先ほどのバトルの事を一切覚えている様子がなく。そんな二人に、バンは先ほどのバトルの件を説明する。

 

「俺達、そんな事してたのか……」

「カズ、本当に何も覚えてないのか?」

「あぁ。確か、気分転換に出かけて、高架下でLBXを売ってる露天商に寄った所までは覚えてるんだけど……」

「私も、カズを探す為に住宅街を探し回っていた時に、目の前でお婆さんが助けを求めていたから駆け寄った所までは覚えているんだけれど」

 

 説明を聞いた二人は自身の記憶を辿るものの、不思議と、バトルの際の記憶は一切覚えていない様子。

 そしてそれは、凛空から説明を受けたミカも同然であった。

 

「バン。もう少し休んだら、キタジマ模型店に行って店長と沙希さんに今回の事を相談してみよう」

「そうだな」

 

 凛空は真相を知っているものの、それを伝える事をしない為。

 結局、バン達だけでは、今回の一件の全容を把握する事が出来ない為、助言を求めるべく、キタジマ模型店へと向かう事になった。

 

 

「うーん」

「成程ねぇ」

 

 キタジマ模型店へと到着し、早速北島夫婦に先ほどのバトルと三人の記憶障害の一件を相談する。

 

「その、三人が最後に覚えてる場所は調べてみたのか?」

「はい。高架下の露天商、住宅地でお婆さんに出会った場所、それにミソラ公園の占い師。それぞれがいた場所を探してみたんですけど、もう誰もいなくて」

「それってもしかして、三人とも催眠術にでもかけられたのかもしれないわね」

「催眠術?」

「前にテレビで見たのよ。確か、意識のレベルを判断能力のない潜在意識に誘導して思いのままに人を動かせるの」

「それを利用して、カズ達にバン達とのバトルを行うように命令したか」

 

 バン達から説明を受けた北島夫婦は、そんな仮説を立てる。

 

「でも、誰がそんな事を」

「うーん、流石にそこまでは分からないな」

 

 しかし、結局核心に迫る情報が少ない為、それ以上の究明は困難となってしまうのであった。

 

 

 

 

 その後、解散した面々は各々の帰路につき。

 凛空も、自宅に帰るべく、途中で迎えの車に乗車すると、自宅へ向かうものと思われた。

 

「すいません。自宅に帰る前に、本社に寄ってもらえますか?」

「本社にですか? 畏まりました」

 

 だが、運転手に寄り道をしてもらうように頼んだ凛空。

 それを受けて、凛空の乗った車は、一路針路を変更し、目的の場所へと向かった。

 

 それから程なくして、凛空の乗った車が到着したのは、二つの高層建造物が並んで佇んでいるのが特徴的な、サイバーランス社の本社ビル。

 本社ビル内の一角、プロジェクトMSの開発チームが使用している開発ルームへと足を運んだ凛空は、ルーム内で目的の人物を見つけると駆け寄りながら声をかけた。

 

(れい)部長!」

「ん? 凛空君じゃないか、こんな時間に珍しい」

 

 声をかけたのは、眼鏡をかけ白衣を着込み職人気質な雰囲気を醸し出す中年男性。プロジェクトMSの開発チームのリーダーである嶺部長。

 凛空の使用しているザイフリート・カスタムを含め、プロジェクトMSの成功は彼の頭脳なくしては成し得なかった、と言っても過言ではない程の人物である。

 

「どうしたのかね?」

「実は、嶺部長に見ていただきたいものがあるんです」

「ふむ。では、私のデスクに行こう」

 

 嶺部長と共に彼のデスクに足を運んだ凛空は、徐に自身のバッグからザイフリート・カスタムを取り出し、嶺部長のデスクの上に置いた。

 

「な! これは、どういう事だ!? ザイフリート・カスタムがここまで損傷するなんて!?」

 

 河川敷でのバトルを終えてから修理を行っていたかった為、未だにバトルの痛々しい傷が残るザイフリート・カスタム。

 そんな同機の姿を目にした嶺部長は、同機をまじまじと見つめながらこの様な状態となった原因を凛空に問いただす。

 

「その前に、これを見てほしいんです」

 

 すると凛空は、自身のCCMを取り出し、嶺部長のデスクに置かれていたパソコンに接続すると、とある映像をパソコンのモニターに表示させる。

 

「こ、これは!?」

 

 表示されたのは、河川敷でのバトルの映像。

 当然ながら、映像にはエジプト等との戦闘も映っているが、とりわけ嶺部長は食い入るように見つめのは、Vモード状態となったアキレスとの戦闘映像であった。

 

 やがて、映像が終了すると、嶺部長はぶつぶつと独り言を口にし始める。

 

「あれ程の動きとなると、当然排熱も相当の物になる筈。それを解消するとなると、内部のチップ構成もさることながら、……そうか! 金色に変化したのは、あの機体全体に施された排熱機構が展開した事によるものか! しかし、あれ程の高度な排熱機構は見た事が……」

 

 そして、暫し独り言を呟き終えると、嶺部長は興奮気味に、凛空に矢継ぎ早に質問を始めた。

 その勢いを見て、凛空は一旦嶺部長を落ち着かせると、彼が落ち着いた所で、質問に答え始める。

 

「あの機体はアキレスと言って、アーマーフレームはタイニーオービット社製らしいんですけど、コアスケルトンはAX-00という型番以外、何処の誰が製作したのかは不明なんです」

「ほぉ……」

「そして、アキレスが金色に変化したと同時に、アキレスの所有者でもあるバンの操作を一切受け付けなくなりました」

「という事は、あれは自律稼働していたというのかね!」

 

 凛空の説明を聞き、嶺部長は今一度バトルの映像を見直す。

 

「成程。確かに、動きの節々に、プログラム故の単調な部分が見られる」

「ですけど、プログラムによる一定の行動パターンで動いているとしても、あれ程の性能ならば並のプレイヤーなら負ける事はないと思うんです。それに、もし仮に、Vモードと呼ばれる状態を、プレイヤーが操作可能になったとしたら」

「まさに神話の如く、無敵の戦士の誕生、か」

 

 デスクの椅子に深々と腰を下ろした嶺部長は、暫し考えに耽ると、やがて再び口を開き始める。

 

「そのVモード。おそらく方向性としては、私達の開発したEXAMモード、更に改良型のHADESと同じ、機体のリミッターを解除して機体性能を最大限まで引き出すものだろう」

 

 そこで一拍置くと、嶺部長は更に言葉を続けた。

 

「そして、懸念すべきは、同様のシステムがアキレスにのみ搭載しているとは考えづらい事だ。おそらく、他にも同様のシステムを、或いは改良型を搭載している機体が存在していもおかしくはない」

 

 刹那、嶺部長は不気味な笑みを浮かべ始める。

 

「ふふふ。まさか、私と同じシステムを、それも機体を含めかなりの完成度を誇るものを開発した者がいようとは……」

「嶺部長?」

「何処の誰がこれを製作したかは知らんが、こんなものを見せられては、作らずにはいられんよ。このアキレスを、いや、その先をも凌駕する、究極の機体を!」

 

 どうやら、アキレスの性能を目にし触発された為か、技術者魂に火がつき、次世代機の開発に意欲が掻き立てられる嶺部長。

 

「先ずは予算の増額と人員の増員を上にかけ合わねば。それに、シフトの変更も……」

 

 そして早速、次世代機開発の為の計画を立て始める嶺部長。

 一方、自身の思惑通りに事が運んだことに、凛空は小さく笑みを零すのであった。

 




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