うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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コーヒーの香りと狩人

 不可思議な河川敷でのバトルから数日後。

 あの日以来、特に不審な出来事に巻き込まれる事もなく日常を過ごしていた凛空達。

 そんな凛空達だが、実は、今彼らの間で話題となっている事があった。

 

「それで、カズ。次に買うLBXはもう決まった?」

「いや、まだだ」

 

 それが、カズの新しいLBXに関する事であった。

 ウォーリアーを失い、更に河川敷でのバトルでエジプトを失った事で、現在自分のLBXを持っていないカズ。

 そんなカズがお小遣いを貯めて新しいLBXを購入する際の参考意見として、他の面々が参考意見を出しているのだ。

 

 因みに、当初は凛空が、親切心から自身が使っていた高機動型ザクⅡをカズに譲ろうとしたのだが。

 当の本人が頑なにそれを拒んだため、新しいLBXを購入するまでの間貸す、という妥協案で落ち着いていた。

 閑話休題。

 

「ウォーリアーはナイトフレームだったから、今度は気分を変えて、クノイチと同じストライダーフレームなんてどうかしら?」

「う~ん」

「ブロウラーフレームが、いいと思う」

「うーん」

「ブルドにしろよ、ブルド!! 二足歩行にはない、装軌式の独特な重厚感! それに、重武装でも抜群の安定感!」

 

 放課後の教室、バンから借りたLマガに目を通しながら、集まった面々から参考意見を聞くカズ。

 

「だったら、また使い慣れたナイトフレームなんてどうだ?」

「なら、ワイルドフレームっていうのもありかもね」

「ブロウラーフレーム」

「ブ・ル・ドーッ!!」

 

 バン・アミ・ミカ・リュウからの参考意見を聞くが、当の本人はいまいちピンときていない様子。

 

「だったら、一度キタジマ模型店に行って、実物を見て見るのはどうかな? 何なら、レンタル用LBXでそれぞれの使い勝手を試してみるのもいいんじゃない」

「うーん、そうしてみるか」

 

 凛空の提案に乗り、キタジマ模型店で実物を見て見る事にしたカズ。

 それに同行するべく、凛空達もカズと共にキタジマ模型店へと向かう。

 因みに、リュウは用事があるとの事で、校門で凛空達、特にアミとは涙の別れとなったが、当のアミ本人はリュウの事などさして気にも留めていなかったのはここだけのお話。

 

 

 程なくして、キタジマ模型店へと到着した一行は、各々分かれて行動する。

 カズとバンは陳列されているLBXの吟味、アミとミカは沙希と三人で女子トーク。そして凛空は、北島店長と河川敷でのバトルの一件に対して、改めて情報整理を行っていた。

 

「そうだ凛空、この間見せてもらったバトルの映像。あれを参考にして、こっちでも色々と調べてみたんだが」

「何か分かったんですか?」

「いや、そう言う訳じゃないんだが。ちょっと気になる噂を耳にしてな」

「噂?」

「凛空は、神谷重工って知ってるか?」

「えぇ。国内でも有数の重機メーカー、ですよね」

 

 神谷重工、その名の通り建設機械メーカーとして国内でも有名な大手企業。

 そして、原作でも描かれていたように、大手企業故の様々な噂も散見されている。曰く、国に隠れて兵器の開発を行っている。曰く、製造した兵器を国外に輸出し富を得ている等々。

 しかし、噂の大半は荒唐無稽なものとされ、真に受けている者は少ない。

 

「その神谷重工が、近々LBX業界に本格的に参入するって噂があってな。で、神谷重工製のLBXの予想図の中に、あのエジプトに似たものがあったんだ」

「成程……」

「まぁ、多分偶然だとは思うがな」

 

 所詮は裏付けも何もない噂話とあまり信じていない様子の北島店長。

 一方、原作という未来の可能性を知る凛空は、それがいずれ真実になる事を確信しており、密かに、事が本格的に動き出す前に可能な限りの準備を進めるよう、改めて心に誓うのであった。

 

「あぁ、いらっしゃい!」

「どうも。ここは、いつきても子供たちの笑顔で賑やかですね」

 

 こうして北島店長と凛空の話に一区切りがついた頃。

 不意に、キタジマ模型店に新しいお客が入店してくる。

 その人物は、香ばしいコーヒーの香りを纏い、赤いストライプのベストに黒の蝶ネクタイという出で立ちの男性。

 

「ん? 君達もいたのか」

「こんにちは、マスター」

「こんにちは」

「何だ、凛空もミカも、檜山(ひやま)さんと知り合いだったのか」

 

 檜山、そしてマスターと呼ばれた男性。

 この人物こそ、喫茶店ブルーキャッツのマスターである檜山 蓮(ひやま れん)その人であった。

 

 因みに、凛空とミカの二人が檜山と面識があるのは、ブルーキャッツの地下闘技場に通っているのもさることながら、時折、ブルーキャッツで檜山の淹れたコーヒーを味わっていたからである。

 

「店長、この人だれ?」

「凛空とミカも、面識があるみたいだけど?」

 

 一方、檜山と面識のないバンとアミは、檜山の登場に対して頭に疑問符を浮かべていた。

 

「バン、アミ、カズ。この人は檜山さんと言って、商店街にある喫茶店ブルーキャッツのマスターだ」

「よろしくな、みんな」

「ブルーキャッツ……。確か、LBXを飾っている喫茶店ですよね!」

「成程。それで店長とも知り合いに!」

「その通り。北島さんとは、コーヒーとLBXの話で気が合ってね。仲良くさせてもらってるんだ」

「この人ったら、余程ブルーキャッツのコーヒーが好きなのか、時間があれば店を閉めた後でも飲みに行く事もあるのよ」

 

 沙希の補足を受けて、北島店長は檜山の淹れたコーヒーは格別だと、称賛の言葉を口にする。

 それを聞き、凛空も賛同する様に軽く頷くのであった。

 

「所で、失礼とは思ったが、先ほど話が聞こえてね。LBXを探しているようだが?」

「え?」

「実は、イイ物があるんだが、興味はあるか?」

「イイ物? それって、LBX?」

「もし興味がるなら、今からブルーキャッツに実物を見に来ないか?」

 

 突然の檜山からの申し出に、バン達は一瞬躊躇してしまう。

 

「あの、俺、見に行きます!」

 

 しかし、カズが意を決すると、他の面々もそれに同調し、一行はブルーキャッツへと足を運ぶ事となった。

 

 

 

 

 檜山の先導のもと、ブルーキャッツに足を踏み入れた一行。

 ブルーキャッツの店内には、カウンター席の端にスーツを着た男性客が一名いるだけで、従業員やその他のお客の姿は見られなかった。

 

「あの、檜山さん。イイ物って一体……」

「その前に、一杯どうだ?」

「え?」

「安心しろ、奢りだ」

 

 定位置であるカウンターで、リクエストのコーヒーやジュースの準備を始める檜山。

 凛空達は空いているカウンター席に腰を下ろしながら、準備が整うのを静かに待つ。

 

 程なく、リクエストした飲み物が各々の目の前に差し出され、各々が最初の一杯を口にし終えた所で、檜山が話を切り出した。

 

「イイ物を見せる前に。君」

「え、俺?」

「君の持ってるLBXを見せてくれないか?」

 

 まさかのお願いに、バンは一瞬戸惑うものの、無下にする事無く、自身のバッグからアキレスを取り出すとカウンターに置いた。

 

「白いLBX……。これ、触ってもいいかな?」

「うん、いいけど」

 

 許可を得て、檜山はアキレスを手に取ると、まじまじと観察を始める。

 

「アキレスって言うんだ」

「これは、素晴らしいLBXだ」

「え!? 見ただけで分かるの!」

「分かるとも。パーツは最新式、機体のバランスも良好で、それに、メンテナンスも充分にしてあるようだ」

 

 檜山の感想を聞き、バンはアキレスを返してもらいながら嬉々として話を始める。

 

「こいつは凄いんだ! やっと手に入れた、俺だけのLBX、アキレス!」

「好きなんだなLBX」

「うん! 大好きだよ!!」

「そうか。……所で、君達のLBXも見せてはもらえないかな?」

 

 アキレスの拝見を終えた檜山は、他の面々のLBXも拝見したいと願い出る。

 それに応えて、アミ・ミカ・凛空は各々のLBXを取り出してカウンターの上に置く。

 

「クノイチ、アマゾネス。どちらも隅々までカスタマイズが施された素晴らしい機体だ」

「ありがとうございます!」

「ありがとう」

「ほぉ……、これは」

 

 白とダーク・ブルーを基調としたカラーリング、直線的な機体のデザイン、頭部の二本のブレードアンテナにバイザーの奥に見えるツインアイ。

 更に目を引くのが、右前腕部に装備された巨大な複合型特殊武装、その名をシェキナー。

 

「なかなか面白そうな機体だ。こいつの名前を教えてもらってもいいかな?」

「ペイルライダー・キャバルリーです」

「こいつも、素晴らしいLBXだな」

 

 死を司る第四の騎士、そして騎士団の名を冠した機体を目にして、檜山は感嘆の声を零した。

 一方、端の席に座っていたスーツ姿の男性も、気になるのか、横目でチラチラとペイルライダー・キャバルリーの事を見ていた。

 

 

 こうして、一行のLBXを拝見し終えた所で、檜山が漸く本題を切り出した。

 

「さて、さっき言ってたイイ物だが。その前に紹介しておこう」

 

 そう言うと、檜山は一行の視線を端の席に座っていたスーツ姿の男性に誘導させる。

 それを受けて、スーツ姿の男性が徐に自己紹介を始めた。

 

「はじめまして。俺の名は、宇崎 拓也(うざき たくや)だ」

 

 自己紹介を終えた拓也は、席を立ちあがると、凛空達一人一人と握手を交わしていく。

 

「はじめまして、拓也さん。……所で、変な事をお聞きしますけど。以前、何処かでお会いした事がありますか?」

「いや、初めての筈だが」

 

 そして、凛空の番が回ってきた際、凛空は不思議な質問を拓也に投げかけるのであった。

 

「では、檜山の言っていたイイ物をお見せしよう」

 

 凛空達と握手を交わし終えた拓也は、自身が座っていたカウンター席の下に置かれた大型バッグからとある箱を取り出すと、徐にカウンターの上に置いた。

 

「これって、LBX」

「おぉ……」

 

 それは、ワイルドフレーム特有の狼を連想させる外観を有し、その手に大型の狙撃銃を装備した、ハンターという名のLBXの箱であった。

 

「名前はハンター、パーツも装備も最新式のLBXだ。当然、その性能もかなりのものだ」

「スゲェ……」

「今ここで組み立ててみるかい?」

「え!? いいの!」

「勿論」

「やる!!」

 

 パッケージに描かれたハンターのイラスト、更にはランナーの頭部パーツに見入られていたカズは、拓也からの提案を二つ返事で答えた。

 

「でもカズ。これ、アーマーフレームのみのパッケージよ」

「コアスケルトンがないと、組み立てられない」

「あ! しまった!」

「安心してくれ、コアスケルトンもちゃんと用意してある」

 

 アミとミカの指摘を受けて水を差されたカズだが、拓也の用意周到さにすぐに表情を明るくする。

 

「あ、でも工具は?」

「っ! しまった……」

 

 だがその直後、拓也の詰めの甘さが露呈し、カズの表情が再び暗くなる。

 

「大丈夫だよ、カズ。はい、これ使って」

 

 しかし、そんなカズに救いの手が差し伸べられた。

 手を差し出したのは凛空。凛空は自身のバッグから黒いケースを取り出して、カズに手渡した。

 ケースを開けると、中にはニッパーやカッター、それに金属製や紙製のヤスリに接着剤やピンセット等々。LBX制作に欠かせない工具の数々が収納されていた。

 

「サンキュー、凛空!」

 

 凛空から愛用の工具ケースを受け取ったカズは、早速ハンターの組み立てを始める。

 一方、そんなカズの様子を見守りながら、アミはふとした疑問を凛空にぶつける。

 

「ねぇ、凛空。あの工具ケースって、いつも持ち歩いているの?」

「うん、そうだよ」

「そ、そうなんだ、へぇ……(凛空って普段はあまり分からないけど、LBXの事になるとバンと一緒ね)」

 

 何かおかしなこと、とでも言いたげな凛空に対して、アミは凛空の感覚に、内心若干引くのであった。

 

 

 そんな一幕も挟みつつ、やがて、ハンターが組み上がると、その往々しい姿をカウンターの上に現す。

 

「カッコイイね」

「うん」

「獣と狙撃手、異なる二つのイメージが、いい塩梅で融合してる」

「ん」

 

 組み上がったハンターの姿に凛空達が見惚れているその間、檜山と拓也の二人は、視線でやり取りを行う。

 

「見ているところすまないが。君達にブルーキャッツへ来てもらったのは、単にそのハンターを見せる為じゃない」

「これから話す事は他言無用。絶対に秘密にしてくれ。分かったな」

 

 そして、突然緊張した面持ちで語り始める檜山と拓也の二人。

 それを受けて、凛空達の間にも緊張が走る。

 

「明日、新総理の就任記念パレードが、明日行われる事は知っているな?」

「確か、財前 宗助(ざいぜん そうすけ)内閣総理大臣、ですよね」

「え? そうなの?」

「ちょっとバン、知らないの? 常識でしょ」

「やっぱり、無頓着」

「うぅ……」

 

 アミとミカのツッコミを受けて項垂れるバン。

 そんなバンを他所に、拓也は更に話を続けた。

 

「その財前新総理の命が、明日のパレードで狙われている。ある組織によって」

「「えぇ!?」」

「ある組織って……、まさか、宇宙人!?」

「いや、少なくとも宇宙人ではない。まだ正確な事は言えないが、俺達は、それを阻止したいんだ。そして、その為には、君達の協力が必要なんだ」

 

 凛空の突拍子もない発言も気にする余裕がなくなる程、拓也からの協力要請に対して、当惑せずにはいられないバン達。

 一介の中学生である自分達で対応できる範疇を越えている。と、バン達は警察への相談を勧めるも、拓也は警察に話して安心できる状況ではないと話す。

 

「あの、どうして俺達が?」

「総理暗殺には、LBXが使用される」

「「えぇ!?」」

「そんな事、信じられない……」

「残念ながら本当だ。だからこそ、相手のLBXに対抗できるLBXと、それを操る優秀なLBXプレイヤーが必要なんだ。山野 バン、川村 アミ、青島 カズヤ、三影 ミカ、西原 凛空。君達の力が」

 

 目には目を歯には歯を、LBXにはLBXを。

 拓也は一拍置くと、更に話を続けた。

 

「勿論、事が事だけに、非常に危険を伴うものだ。断られても仕方がないとは覚悟している」

 

 拓也の話を聞く凛空達は、皆一様に口を閉ざしている。

 そんな中、バンは静かに自身の拳を握っていた。それは、バンにとって大切なLBX、人々を笑顔にするものと信じてやまないそれを、人を傷つける道具として使用される事が我慢ならなかった為だ。

 

 そして、それは凛空も同じであった。

 

「俺、やる!」

「僕も!」

 

 同時に名乗りを上げたバンと凛空。

 それに対して、アミ・カズ・ミカが驚きの色を示す。

 

「二人とも、やってくれるのか? 本当に、危険な任務だぞ」

「それでも俺、LBXを使って悪い事をするのは許せないんだ!」

「LBXは人や社会にとってよき相棒、それを人殺しの道具に使うなんて、僕も許せません!」

「……、私もやります! バンと凛空の二人が危険な所に行くのを、ただ見てるだけなんて出来ない」

「私も」

「アミ」

「ありがとう、ミカ」

「……」

 

 更にアミとミカの二人も名乗りを上げ、未だ名乗りを上げていないカズは複雑な表情を浮かべる。

 

「カズヤ君、君は?」

「俺は……、その。俺のLBX、今使ってるのは借り物で、自分のLBXを持ってないし……」

「ではこうしよう。協力してくれたら、報酬の前払いとしてこのハンターを君にあげよう」

「え! これを!?」

 

 拓也の言葉に、それまで揺れ動いてたカズの心が大きく傾き。程なく、カズも名乗りを上げるのであった。

 一方、二人のやり取りを見ていた凛空は、これが"騙して悪いが"というものか。と、大人の汚さをしみじみと実感するのであった。

 

「ありがとう、皆。では、明日の朝九時に、ここブルーキャッツに集合してくれ」

「分かりました」

「それと、繰り返しになるが、今日君達に話したことは他言無用で頼む。例え家族であってもだ。危険に巻き込まれる可能性があるからな」

 

 こうして、凛空達は明日の本番に向けて各々準備をするべく、解散する運びとなった。

 

 

 

 

 暁色に染まった河川敷。

 人気の少なくなったこの場所に、カズと凛空の二人の姿があった。

 その目的は、ハンターの試運転と共に、ワイルドフレームに慣れていないカズが、ワイルドフレームのハンターに慣れる為の訓練を行う為だ。

 

「凛空、こいつ凄いぞ! ウォーリアーなんて比じゃない、凄い反応速度で思い通りに動いてくれる!」

 

 河川敷にある公園の遊具を動き回るハンター。その機体性能に感動するカズ。

 

「でもカズ。ハンターの真骨頂は、卓越した長距離射撃能力だよ」

「あぁ、そうだった」

「それじゃ、そろそろ狙撃の訓練に入ろうか。先ずは、ここから五十メートルの距離に設置した空き缶の標的を狙ってみて」

「え? いきなり五十メートル!?」

「大丈夫。そのハンターなら狙えるよ」

 

 自身が予想したよりも遠い距離からのスタートに面食らうカズ。

 しかし、覚悟を決めてハンターを操作すると、五十メートル先に設置された空き缶に、ハンターの持つハンターライフルで狙いを定める。

 

 次の瞬間、発砲音が河川敷に響き、標的の空き缶に──、変化は起こらなかった。

 

「カズ、ウォーリアーとは想定されている戦闘距離が違うから、同じ感覚じゃ駄目だ」

「よ、よし、分かった。早速調整してみる」

 

 調整後、再びハンターライフルが火を噴くも、標的の空き缶に変化は訪れない。

 

「カズ、システムだけじゃなく、ハンター本体の調整も行ってみたらどうかな?」

「オッケー」

 

 凛空の助言を受けて、ハンター本体の調整も行うカズ。

 程なく、調整を終えたカズはCCMを操作し、ハンターで狙いを定める。

 

「これで、どうだ!」

 

 刹那、ハンターライフルが火を噴くと、次の瞬間、標的の空き缶が吹き飛ぶ。

 それは、見事標的に命中した事を意味していた。

 

「や、やったー!」

「おめでとう、カズ。でも、喜ぶのはまだ早いよ」

「え」

「一発だけだと偶然って事もあるから、今度は標的を増やしてやってみよう」

 

 その後、標的を増やして狙撃を行った他、百、百五十と、距離を伸ばしての狙撃訓練も行う。

 そして、ハンターが安定して標的を狙い撃ち、カズも自信をつけてきた所で、訓練は次の段階へと進む。

 

「それじゃ次は……」

「え? まだやるのかよ!?」

「むしろ、ここからが本番だよ。次は、僕が操作する、この"ブグ・スナイパーカスタム"を標的にして狙撃してみよう」

 

 その内容とは、モノアイ中央部の支柱を廃して視界を確保、更に背中のバックパックを大型の物に換装し、膝部分に特殊ギアを装備し、左膝にシールドを装着する等の改良が施された機体。ブグ・スナイパーカスタムを狙い撃つというものであった。

 

「く、くそ!」

「カズ。動いている相手を狙撃する時は、相手の行動を予測して撃たないと!」

 

 先ほどの空き缶と異なり、動く標的を狙うとなると、その難しさは空き缶の比ではない。

 前後左右、更に跳躍や障害物を利用しての射線切りなど、動き回るブグ・スナイパーカスタムを捉えられないハンター。

 

「うぉ!? う、撃ってくるのかよ!」

「相手が反撃してこないとは限らないからね!」

 

 しかも、ブグ・スナイパーカスタムは装備した大型狙撃銃、ASR-78を使用してハンターに対して反撃を行い、狙撃はますます困難を極める。

 それから暫く撃ち合いが続き、その瞬間は訪れる。

 

 公園の滑り台の上に位置取ったブグ・スナイパーカスタムの肩に、ハンターライフルから放たれたペイント弾が着弾し、肩を緑色に染めた。

 

「よし、やった!!」

「おめでとう、カズ」

「凛空、サンキューな。これなら、明日の本番でも何とかなる気がするぜ」

「ん? 何言ってるのカズ。まだ訓練は終わってないよ」

「……、え?」

「感覚を掴むためにも、後二・三回は繰り返すよ」

「じょ、冗談じゃ……」

 

 顔を引きつらせるカズを他所に、鬼教官と化した凛空の訓練はその後も続き。訓練が終わったのは、すっかり日も落ちて、周囲が夜の闇に包まれた頃であった。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したペイルライダー・キャバルリーについての豆知識だ。

 漫画、機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンクにて初登場となったこの機体は、ペイルライダー計画の集大成として開発されたペイルライダーの量産検討機だ。
 基となったペイルライダーを一般の兵士でも扱えるように、安定性とコストダウンを主軸に再設計が行われている他、ペイルライダーの特徴でもあるHADESと呼ばれる戦闘補助機構も搭載されている。
 作中では、基となったペイルライダーと死闘を演じる等、様々な活躍が描かれているぞ。

 では! また。
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