うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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捜索、闇の暗殺者

 翌日のパレード当日。

 前日に約束した通り、集合時間にブルーキャッツに集まった凛空達。

 そこから、拓也の運転する車に乗り、パレードが行われるパレードストリートへと向かう。

 

 パレードストリートへと到着すると、そこには、休日という事もあり財前新総理の姿を一目見ようと、大勢の見物人が沿道に集まっている他。

 パレードの様子を中継するべく集まった報道関係者たち。そして、パレードのルート上に等間隔で配置された大勢の警察官に、警察航空隊の警察ヘリが上空を旋回監視している。

 

「こちら神田310から本部へ、ルート上、異常なし」

「こちら神田320から本部へ、沿道に不審物、並びに不審者確認できず」

「はやぶさ7号から本部へ、上空からも異常は確認できず」

 

 蟻一匹も通さぬ程の厳戒態勢の中、凛空達は、車の中で拓也からパレードの予定を交えたブリーフィングを受けていた。

 

「よく聞いてくれ、これが、今回行われるパレードのルートだ」

 

 必要に応じてノートにもタブレットにもなる、そんな2in1パソコンのモニターに表示されたのは、パレードストリート周辺の地図情報。

 パレードの出発地点であるエクセレントビルから、財前総理の乗った車に見立てた赤い光点が出現すると、その赤い光点はルートに設定された幹線道路を進み、終点であるアルファビルで止まった。

 

「これが、今回のパレードのルートだ。当然ながらルート周辺の狙撃ポイントとなり得るビルや歩道橋などには警察官が配備されており、暗殺者が容易に入り込む事は出来ない」

 

 モニターに表示された地図情報を凝視する凛空達を他所に、拓也は一拍置くと、さらに説明を続けた。

 

「それと、総理の乗った車には勿論、会場の至る所には私服警官、並びにSP(セキュリティポリス)が配備されている」

「一見すると、暗殺は難しそうだけど」

「でも、使われるのがLBXなら」

「その通りだ。これを見てくれ」

 

 モニターの表示が切り替わり、そこに表示されたのは、頭部にある三つのセンサーミラー、逆関節に張り出した肩や背面のパーツ、逆三角形を彷彿とさせるLBXの図面であった。

 

「情報によれば、今回の暗殺に際して暗殺者が使用するのは、長距離狙撃能力に秀でた"アサシン"と呼ばれるLBXだ。勿論、護衛に他のLBXが同行している事も予想されるが、俺達は、この機体の撃破を最優先として暗殺を阻止する」

 

 一通りの説明を聞き終えた所で、今回の暗殺阻止に関して重要な役割を担うであろうカズが疑問を口にする。

 

「でも、会場はこんなに広いんだぜ。この中からどうやってこのLBXを見つけるんだ?」

「射程距離とストリートへの角度から、敵の狙撃ポイントをコンピューターで予測し、特定出来次第指示を出す」

「それまでは?」

「それまでは、ルート上の各ポイントで探してくれ」

「よし、それじゃ行くか!」

「あぁ!」

「うん!」

「絶対に、暗殺を阻止してみせよう!」

「ん!」

 

 ブリーフィングを終え、それぞれの捜索ポイントを決めた凛空達は、作戦を開始するべく車を降りて会場の各所へと散らばった。

 

 

 

 

 

「多くの国民から支持を集める若きリーダー、財前 宗助氏の総理就任記念パレード。その開始まで、残り僅かとなりました。沿道には、財前新総理の姿を一目見ようと、多くの人々の姿で賑わっています」

 

 生中継を行っているテレビクルー達を横目に、凛空は、自身の捜索ポイントであるルート中央付近の歩道橋で捜索を行っていた。

 

「皆、現状を報告してくれ」

 

 そんな中、車の中で狙撃ポイントの特定作業を進めていた拓也から、捜索状況の報告を求める連絡が入る。

 

「こちらパレード中央地点のバン。アサシンは、まだ見つからない」

「パレード開始地点のアミ。こっちも同じ、まだ見つからないわ」

「パレード終了地点のカズ。こっちもいねぇ」

「パレード中央付近、歩道橋の凛空。こちらも、まだ発見できていません」

「パレード、十字路付近のミカ。皆と同じ」

 

 それに対して、各々が捜索状況を報告するも、何れも発見には至っていない。

 

「そうか、引き続き捜索を続けてくれ。……く、あと少しでパレードが始まってしまうというのに!」

 

 パレードの開始が刻一刻と迫り、拓也にも焦りの色が見え始める。

 一方、報告を終えた凛空は、歩道橋の欄干に置いたペイルライダー・キャバルリーのカメラモードを使用して、とある方角に建てられた高層ビルを見ていた。

 

「はぁ……。こんな人の多い中で、小さなLBXを見つけるなんて、無茶だぜ」

「ちょっとカズ。弱音を吐かないの」

「んな事言ってもよぉ。全然見つからねぇし」

「焦りは、禁物」

 

 そんな中、焦りが伝達したのか、弱音を吐くカズとそれを戒めるアミとミカ。

 

「ミカの言う通りよ。ね、バンもそう思うでしょ?」

「……」

「バン?」

「皆、それに拓也さん。ちょっといい?」

 

 何やら考え事をしていたのか、バンが突然自身の考えを述べ始める。

 

「俺達が暗殺者なら、何処から狙う?」

「そうね……。狙撃ポイントになりそうな所は、当然警備が厳しいからパス」

「だよね。だから暗殺者も、警備がいない場所を狙撃ポイントに選ぶんじゃないかな?」

「確かにそうね」

「なら、バンは、暗殺者が何処から狙うと思うの?」

「あ、もしかして、沿道沿いのビルの、更に奥のビルからは?」

「会場周辺はビルが乱立している。それは不可能だ」

 

 バンの考えを聞き、アミが新たな可能性を提示するも、拓也は直ぐに否定する。

 

「でも拓也さん。暗殺者は、そういう思い込みを利用するのかも?」

「なら、どうやって?」

「うーん。銃弾をビルの壁に跳ね返らせて狙う、とか」

「跳弾か。だがそれも、角度や威力的には無理だ」

 

 跳弾は文字通り、発射された弾丸が壁や岩などに当たり跳ね返る現象だ。

 跳弾は、弾丸の進入角度や、当たる物体の硬度や形状などにより発生の有無が変化する他、当然ながら跳ね返る事により、その威力が減少してしまう。

 人間が使用するサイズの物よりも小さな、LBX用の銃の威力では、一度の跳弾でもその威力が大幅に減少してしまう事は大いに考えられた。

 

「うーん。……あ!」

 

 すると、バンが何かを発見したかのように声を零す。

 

「なら、ビルを貫通して狙撃する事は?」

「ちょっとバン、ビルを貫通って……」

「おいおい、幾ら何でもLBXの武器でビルを貫通させるのは無理ってもんだろ」

 

 それこそ、究極のプロトタイプでもない限り。と脳内でツッコミを入れる凛空を他所に、拓也もバンの考えを否定する。

 

「拓也さん、貫通させるのがコンクリートじゃなく、ガラスだけなら可能でしょ?」

「何、ガラスだけ?」

「うん。今、俺の目の前にそういうビルがあるんだ」

「……、ちょっと待て」

 

 バンの説明を聞き、拓也は急いでバンの言うガラス張りのビルを検索する。

 すると、パレード中央地点の沿道沿いに、中央部分に高い吹き抜けを設けたビルの存在を確認した。

 

「これか! アミ・カズヤ・ミカ・凛空。四人とも、急いでバンと合流してくれ」

 

 拓也の指示を受けて、急いでバンのもとへと向かう四人。

 

「皆、このビルのガラスの奥、更にビルが見えるだろ。アサシンは、あのビルの何処かにきっといる」

 

 やがて、バン達と合流した四人は、アサシンの捜索を開始する。

 

「なら、ハンターの照準機能を使おう」

 

 カズが操作するハンターが、吹き抜けのあるビルの柱を登り、アサシンの捜索を開始する。

 それと同時に、遠くから人々の歓声が聞こえてくる。どうやら、財前総理のパレードが始まった様だ。

 

「皆、パレードが始まったぞ! アサシンの確認を急げ!」

「分かってるって」

 

 焦りながらもハンターを使用して捜索を行うカズ。

 すると程なく、ビルの屋上に小さな黒い影を発見する。

 

「いたぞ、アサシンだ!」

 

 カズのアサシン発見の報告を受けて、皆の間に緊張が走る。

 

「拓也さん、どうしますか?」

「よし、直ぐに屋上に行って阻止してくれ」

「でも、その間に狙撃されたら」

「アサシンのいる狙撃ポイントからだと、総理の乗る車が正面まで来ない限り狙撃する事は出来ない。だから、まだ僅かだが時間が残されている」

 

 バンの懸念に、シミュレートした結果を交えて時間が残されている事を説明する拓也。

 それを聞いて、バン達はアサシンの狙撃を阻止するべく、アサシンのいるビルへと向かおうとした。

 

「ちょっと待って!」

 

 だが、そんなバン達に、凛空が待ったをかける。

 

「凛空、どうしたの?」

「何だよ凛空?」

 

 この凛空の行動に、ミカやカズがどういう訳かを尋ねる。

 

「幾ら何でも簡単すぎると思うんだ」

「え、どういうこと?」

「LBXを使用しているとはいえ、相手はプロの暗殺者だ。そんな相手が、素人の僕達でも分かる様な狙撃ポイントを選ぶとは思えない」

「だけどよ、現にアサシンはあのビルの屋上にいたぜ?」

「もしかしたら、あのアサシンはデコイ。つまり、本物と錯覚させるための偽物かも知れない」

 

 そこで凛空は一拍置くと、更に話を続けた。

 

「それに、あの狙撃ポイント。射角が狭く狙撃できる時間が少ないから、初弾を外したら次弾の修正はほぼ出来ない。それに、ガラスとは言えそれなりの厚さがあるから、貫通の際に弾丸の威力はかなり減衰する筈。そうなると、仮に目標に命中できたとしても、致命傷になる可能性は低いと思うんだ」

 

 勿論、殺害にまで至らずとも、狙撃されたという事実、それに伴う警備体制の甘さの追及や、ひいては政権の運営に支障をきたせ、財前総理の影響力を削ぐ。

 負傷させるだけでも十二分に効果はあるのだが、凛空はそこまでは公言しなかった。

 

「だから、暗殺者はビルを挟まず、直接狙撃を行えるポイントを選ぶと思うんだ」

「でも、そんな場所には警備の目が……」

「だから、警備が手薄な場所、警備の範囲外から狙撃するんだと思う。例えば、このビル」

 

 そう言うと、凛空は自身のCCMを操作し、先ほど歩道橋で撮影したとあるビルの画像を皆に送信する。

 

「このビルは……、ヘリポートのあるホリデービルディングか。確かに、そこは主だった警備対象から外れているが、LBXで狙撃するには距離があり過ぎる」

 

 画像を受け取った拓也は、直ぐにビルの場所を把握すると、ビルからパレードルートまでの距離を割り出し、狙撃が不可能だと断言する。

 

「拓也さん、アサシンが通常のLBX以上、例えば、ハンター並みの長距離狙撃能力を有していたとしたら、どうでしょうか? 相手は暗殺に際して、既存のものとは異なるLBXを用意する程ですよ」

 

 凛空の言葉を聞き、拓也は設定していた数値を変更して再びシミュレートを開始。

 程なく、導き出された結果を目にし、拓也は驚きの声をあげた。

 

「確かに、狙撃は可能だ!」

「「えぇっ!?」」

「じ、じゃぁ、さっき見つけたアサシンはデコイだって言うのか?」

「いや、もしかしたら、本物かも知れない。ホリデービルディングにアサシンがいると確認できたわけじゃないからね」

 

 新たな狙撃ポイントの可能性を提示しておいて、どちらが本命かを断定できない凛空に対して、カズはいい加減だなと零す。

 

「だから、ここは二手に分かれて行動しよう」

「二手に?」

「僕とカズで、さっき見つけたアサシンを対処する。バン・アミ・ミカの三人は、ホリデービルディングに向かって、アサシンを探して欲しいんだ」

「確かに、距離を考えれば、二手に分かれて対処するのが得策ね」

「分かった」

 

 凛空の提案に、アミとミカが賛同し、残りのバンとカズも賛同の意を示す。

 

「よし、では皆、任せたぞ!」

「カズ、凛空、そっちは任せたぞ!」

「頑張ってね」

「おう、そっちもな」

「凛空、気をつけて、ね」

「うん、ミカもね」

「ん」

 

 こうして二手に分かれた凛空達は、暗殺を阻止すべく、それぞれのビルへと向かう。

 なお、原作知識により本物のアサシンの狙撃ポイントを知る凛空が、本命であるホリデービルディングではなく、あえてデコイのビルへ向かうように皆を誘導したのは、デコイとはいえアサシン本体を回収したいとの思惑からであり。そんな思惑がある等、他の面々が知る由もなかったのは、ここだけのお話。




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