うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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G線上の照準

 バン達と別れ、アサシンを発見したビルへと向かった凛空とカズ。

 ビルに足を踏み入れ、屋上に向かうべく施設案内板を確認してエレベーターへと向かう。

 

「な! 何だよあれ!?」

「あれは……」

 

 角を曲がり、エレベーターまで一直線かに思われた、刹那。

 まるで門番の如く、エレベーターの前に小さな六つの影が待ち構えていた。

 

 その正体は、以前バンの家を襲撃したのと同じLBX、デクーであった。

 

(原作では三機だった筈だが、ここでも倍に増えている……)

「凛空。あれ、見た事ないLBXだけど、暗殺者の仲間か?」

「おそらく、そうだろうね」

「どうする? あれじゃエレベーターには乗れないぜ」

 

 一旦角に身を潜め、六機のデクーを突破する方法を考える凛空とカズ。

 すると、凛空は通路にあったトイレの入り口を暫し見つめると、自身が考えた作戦をカズに話し始める。

 

「カズ。僕があのLBXを引き付けておくから、その間にエレベーターまで走って」

「どういうことだ?」

「つまり──」

 

 凛空の作戦を聞き、カズは大きく頷くと、トイレの入り口に向かう。

 それを見届けると、作戦を実行するべく、凛空はペイルライダー・キャバルリーを取り出し、通路の床に置き操作を始めた。

 

 刹那、角から飛び出し、エレベーター前の通路に姿を現したペイルライダー・キャバルリーは、その右前腕部に装備したシェキナーを大きく振るう。

 すると、六機のデクーもペイルライダー・キャバルリーの存在に気がつき、装備したスキャッターガンをペイルライダー・キャバルリーに向けて発砲し始める。

 

 飛来する弾丸を躱し、反撃を行うペイルライダー・キャバルリー。

 シェキナーの武装の一つ、ジャイアント・ガトリングが唸りをあげて火を噴き、弾幕が六機のデクーを襲う。

 単機とは思えぬ弾幕量を前に、先頭に位置していた一機のデクーが瞬く間に蜂の巣となり、無残な姿を通路の床に晒す。

 

 味方のそんな姿を目にして逆上したのか、残った五機のデクーは熾烈な銃撃を行いつつ、角を曲がって姿を消したペイルライダー・キャバルリーの後を追い始める。

 

「よし、今だ!」

 

 味方の仇を取るべく、執拗にペイルライダー・キャバルリーの後を追いかける五機のデクー。

 その様子を、トイレの入り口からこっそり窺っていたカズは、五機のデクーがエントランスまで移動し、エレベーター前の通路がクリアとなった所で、一気にエレベーターに駆けこむ。

 

「凛空、頼んだぜ」

 

 そして、凛空の健闘を祈りつつ、カズはエレベーターに乗り込むと、屋上を目指した。

 一方、無事に囮の役割を果たし、カズを見送ったペイルライダー・キャバルリーを操作する凛空は、自身もカズに追いつくべく、対峙する五機のデクーの撃破に動いていた。

 

「これで!」

 

 四機のデクーからの銃撃を躱しつつ、シェキナーのジャイアント・ガトリングで一機、また一機とデクーを蜂の巣にしていくペイルライダー・キャバルリー。

 そして、シールドバッシュで怯んだ所にゼロ距離からのジャイアント・ガトリングをお見舞いし、残すデクーはあと一機となる。

 

「くらえ!」

 

 流石に一対一では分が悪いと分かっているのだろう、タイディシールドで身を守りながら、じりじりと後退していく最後のデクー。

 しかし、そんなデクーに対して、ペイルライダー・キャバルリーはシェキナーの武装の一つ、マイクロ・ミサイルランチャーを使用する。

 ハッチ開放と共に放たれたマイクロ・ミサイルは最後のデクーに降り注ぎ、デクーの断末魔の如く爆発音を響かせながら、デクーの姿を爆煙の中へと消した。

 

「よし」

 

 こうして全てのデクーを撃破し終えた凛空は、ペイルライダー・キャバルリーを回収すると、自身も屋上に向かうべくエレベーターに乗り込む。

 程なく、最上階の八階へと到着すると、そこからは屋上に出るべく、階段を使って屋上へと出る扉を目指す。

 

 そして、屋上へと出る扉を潜り、屋上に設置された空調施設の隙間から凛空が目にしたのは、しゃがみ込み何かを拾い上げるカズの姿であった。

 

「カズ!」

「よぉ、凛空。そっちは無事に片付いたみたいだな」

 

 その姿を見て、急いでカズのもとへと駆け寄る凛空。

 

「それより、アサシンは!?」

 

 凛空の質問に、立ち上がったカズは、先ほど拾い上げたものを見せて答える。

 

「凛空の言った通り、こいつは、デコイだ」

「見せて!」

 

 回収を行うべく、凛空は自然な流れでカズの手からアサシンを受け取ると、まじまじと観察を始める。

 

「確かにこれは、ただのデコイだ」

「くそ! まんまと相手の罠にはまったって事かよ!」

「カズ、落ち着いて。兎に角、こちらのアサシンがデコイだって確認できたんだ。その事を、早くバン達に知らせよう」

「そ、そうだな」

 

 カズの八つ当たりでデコイのアサシンが破壊される事を回避させた凛空は、カズがバン達に連絡している間に、こっそりと自身のバッグにデコイのアサシンを入れるのであった。

 

 

 

 

 バン達は間もなくホリデービルディングに到着する。

 そこで、拓也の指示により、凛空とカズは今いるビルの屋上から、ホリデービルディングにいるであろうアサシンを捜索する事となった。

 

「っ! いたぞ、アサシンだ!!」

 

 ハンターの照準機能を使用して捜索していたカズが、ホリデービルディングのヘリポートにアサシンの姿を確認する。

 

「バン、アサシンはヘリポートだ!」

「分かった! だけど、到着までにはまだ時間がかかる」

「カズヤ、聞こえるか! 間もなく総理の乗った車が射程内に進入する! バン達では間に合わない。カズヤ、君がその場所からアサシンを狙撃するんだ」

「えぇ! ここから!?」

 

 まさかの展開に、カズは責任の重大さから気後れする。

 そんなカズに、凛空は自身の手をカズの肩に置くと、励ましの言葉をかけ始める。

 

「大丈夫、カズ、君ならできるよ。昨日の河川敷での訓練を思い出して!」

「昨日の訓練……」

「それに、僕もスポッターとして全力で手助けするからさ! スナイパーとスポッター、二人一組、チームの力で戦おう」

「ふぅ……、分かったよ。やってやるぜ!」

 

 やる気を取り戻したカズは、早速ハンターを操作しアサシンの狙撃準備を始める。

 一方凛空も、ペイルライダー・キャバルリーを取り出してハンターの手助けを行おうとした、その時。

 

「ん?」

 

 ふと、屋上へと出る為の扉の方から、幾つもの機械音が聞こえてくる。

 それが気になった凛空は、ペイルライダー・キャバルリーを扉の方へと向かわせ、状況を確認する。

 

「っ!」

 

 そして、そこで目にしたのは、扉へ続く階段を上る、一階で対峙した数の五倍はいるであろう、デクーの大群であった。

 

「どうしたんだ、凛空?」

「カズ、不味い事になった。さっき見たLBXの大群が迫って来てる」

「えぇ!?」

 

 八階建てのビルの屋上、地上への出入り口は扉の先の階段のみ。

 まさかの二段構えの罠に、凛空は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「……、凛空」

「何、カズ?」

「俺は、お前を信じてる」

 

 だが、カズの言葉を聞き、凛空の表情に変化が訪れる。

 覚悟を決めたかのように、表情が引き締まる。

 

「分かったよ、カズ。僕も、カズを信じる! 護衛は任せて、スナイパーの護衛も、スポッターの大事な役割だからね」

「おう、頼んだぜ、相棒!」

 

 そして、凛空とカズは互いに深呼吸を行うと、それぞれの役割を果たすべく、自身のCCMを操作し始める。

 

 

 階段に響き渡る銃声、更には爆音、そして立ち込める煙。

 普段は何気ない階段も、今や、立派な戦場と化していた。

 

「くそ、やっぱり数が多いな……」

 

 味方の残骸を蹴散らしながら階段を上るデクーに対して、ペイルライダー・キャバルリーはシェキナーのジャイアント・ガトリングをお見舞いする。

 既に数機を撃破したとはいえ、デクーの大群はまだまだその威容を保持しており。攻撃を受ければ、お返しとばかりに、スキャッターガンを始め、コマンドハンドガンやロケットランチャー等。

 装備した火器の数々が火を噴き、ペイルライダー・キャバルリーが布陣している扉の周囲を穴だらけにしていく。

 

「だけど、ここは何としても死守しないと」

 

 カズの期待に応える為にも自身を奮い立たせると、凛空はCCMを操作し、アタックファンクションを発動させる。

 

〈アタックファンクション、メガ・ビーム・ランチャー〉

 

 刹那、シェキナーに備わった銃口から巨大な閃光が走る。そしてそれは、ヘヴィソードを装備して近接戦闘を挑まんと接近を試みた二機のデクーを貫き、着弾点に巨大な爆発を発生させた。

 その威力を目の当たりにして、残ったデクーたちは一時的に積極的な行動を控える。

 

「よし、これで少しは時間を稼げる」

 

 態勢を整える為の時間を稼げたと、凛空が安堵した刹那。

 屋上に、一発の銃声が響き渡った。

 

「ったぜ!」

「カズ!?」

「やったぜ、凛空!! アサシンの狙撃銃を破壊したぜ!」

 

 歓喜の声をあげるカズ。どうやら、ハンターの狙撃でアサシンの狙撃銃を撃ち抜き破壊したようだ。

 これで、暗殺者は財前総理の暗殺を行えない。そう安堵した、次の瞬間。

 

「カズヤ! ハンターが狙われている!」

「え!?」

 

 どうやら予備の狙撃銃を用意していたらしく、ハンター目掛けて次々と弾丸が飛来する。

 コンクリート片が飛び散る中、慌てて回避するハンターと、物陰に身を隠すカズ。

 

「くそ、勘弁してくれよ……。バン、アミ、ミカ。三人ともまだ着かないのか?」

「カズ、今頼りになるのは、お前とハンターだけなんだ!」

「そうよカズ、頑張って!」

「頑張れ」

「……」

「カズ、皆カズの事を信じてる、だから」

「……よし!」

 

 バン達の言葉を聞き、意を決したカズは、再びハンターを狙撃位置に移動させるとCCMを操作し狙いを定める。

 幸い、ハンターばかりに構っていられないのか、アサシンからの狙撃はなく、順調に狙いを定められる。

 

 そして、再び響き渡る銃声。

 次の瞬間、険しかったカズの表情が一変し笑顔に変わる。

 

「やったぜ!」

「流石カズ!」

「あとは俺達に任せてくれ」

「大丈夫、仕留める」

「おう、任せたぜ!」

 

 予備の狙撃銃も無事に破壊し、同時にバン達がヘリポートに到着した事で、カズは安堵の表情を浮かべる。

 だが、それも一瞬の事、直ぐに差し迫ったもう一つの危機を思い出すと、表情を引き締め再びハンターを操作し始める。

 

「凛空! 援護するぜ!」

「ありがとうカズ! よし、一気に畳みかけよう!」

「オッケー!!」

 

 ハンターが新たに戦線に加わり、防勢から一転して攻勢へと出るペイルライダー・キャバルリー。

 ハンターの援護を受けて、自慢の火力と機動力を用いて次々とデクーを撃破していくのであった。

 

 

 

 

 やがて、階段にデクーの残骸の山が形成され、自分達に降りかかった火の粉を払い終えた所で、凛空とカズのCCMにバン達からアサシンを撃破したとの連絡が入る。

 こうして、無事に財前総理の暗殺を阻止した凛空達は、拓也の乗る車へと戻り、パレードストリートを後にしてブルーキャッツへと戻った。

 

「やったなカズ!」

「本当、凄いじゃない!」

「少し、見直した」

「よせよ、照れるぜ。……でも、俺がアサシンの狙撃銃を破壊できたのは、凛空のお陰さ」

「そんな、カズの実力の賜物だよ」

「いや、凛空が訓練してくれたお陰さ。サンキューな」

「うん」

 

 ブルーキャッツへと向かうその道中、凛空達五人は互いの健闘を称え合った。

 因みにその最中、死線をくぐり抜けた戦友(相棒)の如く凛空とカズの姿を目にして、ミカが、羨ましそうに見ていたのはここだけのお話。

 

「でも信じられないよな、俺達が総理大臣の暗殺を阻止したなんてさ」

「本当よね。友達に話しても、誰も本当の事だって信じてくれなさそう」

「でも、国の一大事を人知れず救った影のヒーローって言うのも、ちょっとカッコイイよね」

「中二病」

「……」

 

 その後、財前総理の暗殺を阻止という、文字通り日本という国の行く末を左右する重大任務を無事に成し遂げた事に対して感慨に浸る凛空達。

 ミカの一言にグサリと来ている凛空を他所に、カズがぽつりと言葉を零した。

 

「俺、何か今更だけどさ、怖くなってきた」

「カズ?」

「戦ってるときは夢中で気づかなかったけど、相手は暗殺用のLBXで、護衛してた連中も、敵意をむき出しで。下手すりゃ俺達……」

「そういえば……」

「そう、だよね……」

 

 緊張の糸が切れた事で、任務の最中は気がつく事のなかった、自身の死の可能性の実感が沸いてくる凛空達。

 一介の中学生が日常生活の中で直面する事の少ない、生と死の重た過ぎる課題に直面し、一様に沈んだ表情を浮かべる凛空達。

 

「でも、私達は、こうして生きてる」

「うん、そうだね。今は、皆が無事に生きてることに感謝しよう」

 

 ミカと凛空の言葉を聞き、少しは気持ちが楽になったのか、バン・カズ・アミの三人の表情も、少し明るくなる。

 

「あの、拓也さん!」

「何だ?」

 

 こうして、生と死の話題を切り上げた所で、バンが意を決して運転する拓也に質問を投げかけた。

 

「教えてください。何で俺達が……。いや、どうして俺達じゃなければいけなかったんですか?」

 

 バンの問いかけに、拓也は暫し沈黙を貫く。

 やがて、車が赤信号で停まった所で、バックミラー越しにバンを見据えると、ゆっくりと口を開き始めた。

 

「バン、君に伝えておくことがある。飛行機事故で行方不明となっている、君のお父さんについてだ」

「俺の父さんの事?」

 

 バンの父親、山野 淳一郎(やまの じゅんいちろう)

 天才的なエンジニア、或いは工学博士として知られている彼は、かつてタイニーオービット社に研究員として在籍していた際、LBXを開発させたことで一躍有名となった。

 文字通り、彼の存在なくしてダンボール戦機は存在し得ないと言っても過言ではない人物である。

 だが、五年前の西暦2045年、その年のネオテクノロジーサミットに参加するべく搭乗していた特別チャーター便が太平洋上空で行方不明となり、山野博士を含めた同便の搭乗者の安否は絶望的とされていた。

 

 そんな父親の事と、今回の一件がどう関係しているのかと疑問を浮かべるバンを他所に、拓也は更に言葉を続けた。

 

「実は、君のお父さんは生きている」

「……えぇ!」

「詳しい事は、ブルーキャッツに到着してから話そう」

 

 死んだと思われていたバンの父親が実は生きていた。

 あまりにも突然の事に、困惑するバン達。そんな彼らを乗せた車は、程なくブルーキャッツへと到着した。




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