うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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音速の転校生

 翌日、いつものように登校した凛空は、校門前で待っていたバン達と合流すると、そのまま校門をくぐる。

 そして、教室に向かうのかと思いきや、凛空はバン達と共に敷地内の人気のない場所へと移動すると、そこでバン達から昨日何があったのかを詳しく聞く事となった。

 

 昨日、凛空と別れた後、バン達はアミがクノイチを使って録音した拓也と檜山の二人の会話からヒントを得て、更にリュウの助言も相まって、山野博士がエンジェルスターに監禁されている事を突き止め。

 学校を後にするとその足でエンジェルスターへと向かい、警備の穴を掻い潜ってエンジェルスター内部へ潜入。

 途中、頭部の形状やカラーリングが異なるものの、自宅の襲撃や総理暗殺阻止の際に目撃したデクーに酷似した機体。その正体は、デクーの派生型の一つで警戒監視型である、その名をデクーカスタムR。

 更に、ワイルドフレーム特有の逆関節に、鋭いクローを備えた武器腕、そして、装甲に特殊合金を使用し高い防御力を誇り、不気味な雰囲気を纏った自律型LBX、その名をインビット。

 

 これらの敵LBXと道中遭遇し戦いながらも、施設の最深部を目指して進み続けたバン達。

 そして、幾多もの障害を乗り越えて到着した最深部でバン達を待っていたのは、山野博士ではなかった。

 先端の三本爪をマニピュレーターとして使用可能な他、ドリルのように回転する事も出来る、そんな大型アームを備え。更にドーザーブレードや、頭部にはカメラの他、レーザー溶断機も備えた赤い重機。その名をイジテウス。

 

 敵意をむき出しにしてバン達に襲い掛かってきたイジテウスに、バン達は自らのLBXを使って戦いを挑むも、やはり重機とLBXでは、LBXの方が圧倒的に分が悪く、絶体絶命かと思われた。

 しかし、そこに"パンドラ"と名乗る白いLBXが加勢した事で形勢は一気に逆転。資材用のコンテナを落下させ、見事イジテウスを撃破した。

 

 最後の門番を撃破し、遂に山野博士と対面できると思ったのも束の間。

 謎のアナウンスが流れ、山野博士が既にエンジェルスターから移送されここにはいない事が告げられると、バンを名指しして、山野博士を返してほしければ次のアングラビシダスに出場し優勝せよと条件を提示してきた。

 

 その後、地下の配線管理用通路を使って助けに来た檜山に連れられ、エンジェルスターから脱出。その後、あの道の駅で拓也とも合流して、お灸を据えられていた。

 これが、昨日のバン達の一連の行動であった。

 

「昨日ミカから聞いたんだけど、凛空も、アングラビシダスに出場した事があるんだって?」

「うん、あるよ」

 

 父親を助けるべく、アングラビシダスの出場を決意したバンは、出場経験のある凛空にアングラビシダスがどの様な大会なのかを尋ねる。

 

「アングラビシダスは文字通り、ルール無用のLBX大会。通常の大会では禁止されている武器の改造の他に、禁止行為となる戦法も使う事が許されている」

「ルール無用……」

「そして、参加者の多くは皆腕に覚えのある者ばかり。身近な人で言えば、郷田先輩も過去に参加してるよ」

「え、郷田も!?」

 

 ハンゾウが過去に大会に出場した事があると聞き、バンは、ハンゾウレベルのプレイヤー達が大会に出場するという実感を得て、気持ちが萎えそうになる。

 しかし、優勝して必ず父親である山野博士を取り戻すと、今一度気持ちを奮い立たせるバンであった。

 

「何れにしても、アングラビシダスに出場して、尚且つ優勝を狙うとなると、大会当日までに相当訓練を積んで腕を磨かないとね」

「よし! 俺、必ず優勝してみせる!」

「その意気だよ、バン」

 

 こうして、改めてバンがアングラビシダス優勝を決意した所で、凛空達はそれぞれの教室に向かうべく足を進めるのであった。

 

 

 

 

 カズと廊下で別れ、自分達の教室に足を踏み入れた凛空達が目にしたのは、クラスメイト達に囲まれているリュウの姿であった。

 

「何かあったの?」

「あ! アミちゃーん!」

 

 一体何事かと、囲んでいたクラスメイトに尋ねたアミの存在に気がつき、リュウがクラスメイトの輪から抜け出して凛空達のもとへと駆け寄る。

 

「リュウ、何かあったの?」

「あ、そうそう、聞いてくれよ、大ニュースだぜ大ニュース!!」

 

 凛空の質問に、リュウは興奮した様子で大ニュースと呼ばれた中身を語り始める。

 

「実は今日、このクラスに転校生が転校生が来るんだよ!」

「「転校生!?」」

「へぇ」

「ふーん……」

 

 転校生との単語が出た瞬間、バンとアミが驚きの声をあげ、凛空も興味深げな声を零す。一方対照的に、ミカはあまり興味なさげな声を漏らす。

 

「なぁリュウ、転校生ってどんな奴なんだ?」

「ん~、それはちょっと分かんねぇんだ」

「男の子なの、女の子なの?」

「んー、ごめんアミちゃん、先生が教頭先生と話しているのを盗み聞きしただけだから、詳しい事はよく分からないんだ」

「何それ……」

 

 転校生、それは学生生活の中でも稀に起こるビックイベント。

 一体どんな子が、何処からやって来るのか、それはまさに、最も身近な異文化からの来訪者。迎え入れる側は期待に胸を膨らませずにはいられない。

 おそらく先ほど囲んでいたクラスメイト達は、リュウからの転校生情報を聞いて、更に詳しい情報を得ようとリュウに詰め寄っていたのだろう。

 

「はーい皆、朝のホームルームを始めるから、席について!」

 

 こうして、凛空達も転校生が来ることを知った所で、凛空達のクラスを受け持つ女性の先生が教室に姿を現す。

 

「それじゃぁ先ずは、出席を取ります」

 

 教卓に立った先生は、転校生の紹介を始める事無く、いつものように朝のホームルームを進めていく。

 その様子を見て、リュウは焦りを覚え始める。しかも気がつけば、リュウの周囲の席にいるクラスメイト達から、リュウに対して疑いの眼差しが向けられていた。

 このままでは嘘つき呼ばわりされる。そう危機感を覚えたリュウは、慌てて先生に転校生について尋ね始めた。

 

「先生! 今日、転校生が来るんじゃなかったんですか!?」

「ん?」

「えぇ! だって先生、教頭先生と廊下で……」

「リュウ君、盗み聞きしたのね」

「あぅ! す、すみません……」

「はぁ。リュウ君、今度から、大人の大事な話を盗み聞きなんてしちゃ駄目よ」

「は、はい」

 

 先生はリュウに注意を促し終えると、一拍置いて、転校生の件に話を始めた。

 

「もう皆知ってしまったと思うけど、今日はこのクラスに、転校生がやってきます。ただ、ちょっと遅れているみたいなので、皆には到着次第紹介するとして、先に朝のホームルームを──」

 

 刹那、突然教室内が小刻みに揺れはじめ、その突然の異変に教室内に動揺が走り始める。

 と、次の瞬間、何処からともなく轟音が響き渡ると、クラスメイトの一人が窓の外を指さして叫んだ。

 

「戦闘機だ!」

 

 その声に反応し、他の皆も一斉に窓の外に視線を向ける。

 するとそこには、大空の中を、轟音と共に風を切り駆ける、一機の戦闘機の姿があった。

 

「あれ、本物?」

「何でこんな所に?」

「何だ何だ?」

 

 近隣に戦闘機を運用する基地もなく、まして肉眼で細部を確認できるほどの超低空飛行をする戦闘機の出現に、凛空達のクラスだけでなく、他のクラスや別の学年の生徒達も窓の近くに集まると、その行方を見守る。

 

「っ! こっちへくる!」

「なぁ、これってヤバくねぇか!」

「ぶ、ぶつかる―!」

 

 大空で翼を翻した戦闘機は、機首を校舎に向けると、減速する様子もなく突っ込んでくる。

 その様子を目にして、一斉に窓の近くから逃げる生徒達。

 

 衝突する、と誰もが思った次の瞬間、戦闘機は制動装置を作動させると急制動を行い、更に排気ノズルの向きを変更すると、機体をホバリング(空中停止)状態にして、ぴたりと校舎の横に付けた。

 次の瞬間、戦闘機のキャノピーが開き、搭乗していた人物が姿を現す。

 

「パーフェクトですな」

 

 複座式のコックピット、その前席に乗り込んでいるのは、白い燕尾服を身にまとった老年男性。

 自らの操作技術を自画自賛する老年男性の後ろ、後席に乗り込んでいたのは、ヘルメットで素顔は分からないが、背格好から凛空達と同年代と思しき少年。

 不意に、ヘルメットを脱ぎ露わになったのは、前髪の一部が白髪の綺麗な黒髪に、整った顔立ち。そして、大人びた雰囲気を醸し出す、そんな少年の素顔であった。

 

 刹那、少年は唖然とするクラスメイト達、その中にいたバンの顔を暫し見据える。

 次いで、凛空の顔も、暫し見据えるのであった。

 

「いってらっしゃいませ、おぼっちゃま」

 

 前席の老年男性の見送りを受けながら、少年は軽い身のこなしで後席から主翼を伝って窓から教室に入ってくる。

 

「遅れて申し訳ありませんでした」

 

 そして、少年は先生の姿を見つけるや、そんな言葉を口にした。

 

「もしかして、リュウが言ってた転校生って……」

「この子?」

「しかも……、せ、戦闘機登校かよーっ!!!」

 

 まさかの登校方法に、リュウの絶叫にも似た驚きの声が校舎内に響き渡るのであった。

 

 

 それから暫くして、騒動が収まり、教室では転校生の紹介が行われていた。

 

「それじゃ紹介します。今日からこのクラスで、皆と一緒に勉強する事になった、海道 ジン君です」

 

 教卓の横に立ち、先生がジンの紹介を行う。

 クラスメイト、特に女子生徒の何人かが黄色い声をあげる中、バンは、自らの顔を見据えたジンの事を気にかける様子で見据えていた。

 

 

 

 

 それから時は流れて昼休み。

 廊下でカズと合流した凛空達は、早速学校内で注目の的となった転校生、ジンの話題で盛り上がる。

 

「へぇ~、海道 ジンって言うのか、あの転校生。あ、俺らの教室からも見えてたぜ、戦闘機登校」

「でもカズ、あの子何だか変わっててさ、クールって言うか……。先生が皆に自己紹介してって言っても『別に話す事はありません』って感じでさ」

「へぇ」

「休み時間に凛空が声をかけたんだけど、返事しなくってさ」

「あ~、それでミカの奴、不機嫌なのか」

 

 口をへの字にして目を半目にしたミカの表情を目にし、カズが納得した様子を浮かべる。

 

 とある休み時間、親睦を図るべく、凛空はジンに声をかけた。

 LBXの話題で取っつき易さを図ったのだが、結果は、ジンが凛空の顔を暫し無言で見据える、というものであった。

 

 因みに、同じくリュウも声をかけていたのだが、アミの記憶からはすっかり忘れ去られているようだ。

 

「兎に角、私達の事なんて全く興味ありませんって感じでさ。ね、バン」

「え、う、うん……。あ」

「あ、噂をすれば、ほら」

 

 刹那、廊下を歩くジンの存在に気がついた凛空達。

 小さく唸り声をあげるミカをなだめる凛空を他所に、バン・ミカ・カズの三人は暫しジンの姿を目で追う。

 

「ほらね」

「ま、転校してきたばっかりだし、そういう奴もいるんじゃねぇか」

 

 暢気なカズにアミが心配するのを他所に、バンは、ジンの後姿を目で追っていた。

 しかし、カズの声に我に返ったバンは、カズ達と放課後にブルーキャッツに行く事を話し合う。

 それは、凛空からアングラビシダスについては檜山の方が詳しいと聞いたからだ。

 

 こうして、放課後の予定を話し合うバン達。

 そんなバン達の事を、少し離れた場所からジンが見つめていたとは、バン達は知る由もなかった。




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