うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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Eマシ、ハンドレールガン。……う、頭が!

 誠司と別れ、バン達と合流するべく地下闘技場を後にした凛空は、一路キタジマ模型店を目指した。

 やがて、キタジマ模型店に到着し、入店した凛空が目にしたのは、アングラビシダスに向けて早速特訓を行っているバン達の姿であった。

 

「あぁ、一撃で!」

 

 特訓の相手でもあり指南役も務める北島店長。

 彼が操作するLBX、ウォーリアーの後継機としてタイニーオービット社が世に送り出した機種。そのマッシブな外観から分かる通りブロウラーフレームに分類される同機は、ウォーリアー譲りのバランスの良さと耐久力を兼ね備えている。その名を、グラディエーター。

 標準的なカラーリングは青を基調としたものだが、北島店長の操作する機体は、赤を基調としたカラーリングに変更され、コアパーツ等も、北島店長の手によるカスタマイズが施された機体である。

 

 そんなグラディエーターの一撃を受け、アキレスのアーマーフレームがメンテナンス中の為、カバーパッド状態のAX–00は膝をつくと、草原のフィールドに倒れ込むのであった。

 

「どうした、バン。こんなものか?」

「く! もう一回!」

 

 特訓を続けるバンと北島店長を他所に、凛空は残りの面々に声をかけると、自身もアングラビシダスに出場する運びとなったと報告する。

 

「アングラビシダスに出場経験のある凛空も参加するなら、心強いわね」

「よし凛空、早速俺と特訓してくれよ!」

「うん、いいよ!」

 

 カズの誘いを受け、凛空は一旦休憩に入るバンと北島店長と入れ替わるようにDキューブの前に立つ。

 

「ゴーッ、ハンター!」

「高機動型ザクII、発進!」

 

 Dキューブ内の草原に降り立つ二機。

 すると、カズは凛空がペイルライダー・キャバルリーを使用しない事に対して、違和感を口にする。

 

「凛空、ペイルライダー・キャバルリーは使わないのか?」

「アングラビシダスに出場するプレイヤーの多くは、一点ものではなく市販品のカスタマイズ機を使っているからね。それに合わせて、僕も高機動型ザクIIを使う事にしたんだ」

「成程な。流石は出場経験者、為になるぜ」

 

 こうして凛空が高機動型ザクIIを使用する理由が判明した所で、特訓バトルの幕が切って落とされる。

 まず動いたのはハンター、逆関節故の高い跳躍力を生かし、高い岩の上まで一気に登ると、自身に有利な位置を陣取る。

 そして、ハンターライフルで高機動型ザクIIに狙いを定めると、間髪入れずに引き金を引いた。

 

 だが、飛来する弾丸はスラスターを噴かせる高機動型ザクIIの装甲を捉える事無く空を切る。

 

「くそ!」

 

 機動力を生かし、そして点在する岩などの物陰を利用してハンターの狙撃を躱し続ける高機動型ザクII。

 一方、撃てども撃てども当たらず、カズの顔に焦りの色が現れ始める。

 そんなカズの様子をちらりと目にし、凛空が動き始めた。

 

「それじゃ、そろそろいくよ!」

 

 岩陰から姿を現した高機動型ザクIIは、装備した四連装ミサイル・ランチャーを構えると、間髪入れずに発射する。

 発射された四発のミサイルは、ハンターのいる高い岩に着弾すると、爆炎ではなく、周囲一帯の視界を遮る煙幕を発生させた。

 

「な! 何だよこりゃ!?」

「特製の発煙ミサイルだよ」

「っ! そんなのアリかよ!?」

 

 一瞬にして視界を奪われたハンターは、この煙幕に乗じて襲ってくるであろう高機動型ザクIIに対応するべく、周囲に気を張り巡らせ警戒を続ける。

 だが、何故か高機動型ザクIIは襲ってくる様子もなく、徐々に煙幕が晴れ始めると、ハンターの警戒も緩くなる。

 

「もらった!」

「っ! 上!?」

 

 しかし、その瞬間を待っていたと言わんばかりに、スラスターを噴かしてハンターの直上を位置取った高機動型ザクIIが、装備したヒートホークの刃先をハンターに向けた。

 刹那、自由落下により一気に懐に入り込むと、自由落下のスピードと組み合わさったヒートホークの一撃をくり出す。一撃を受けたハンターは糸の切れた人形の如く倒れ込み、その瞬間、バトルの決着がついた。

 

「くそー、負けた」

 

 Dキューブ内からハンターを回収したカズは、悔しさを零す。

 

「にしても、発煙ミサイルなんて卑怯だろ?」

「カズ、アングラビシダスはルール無用。あれ位の改造を施してるプレイヤーなんてごまんといるよ」

「ま、マジかよ……」

 

 自身の想像よりも厳しい戦いになる事が予想されるアングラビシダスに、カズは少々気が滅入る。

 一方、そんなカズと交代する様に、今度はアミが特訓を行うべくDキューブの前に立つ。

 

「凛空」

「ん?」

「凛空は、少し休んでて。アミの相手は、私がする」

「分かった。それじゃミカ、よろしくね」

「ん」

 

 ミカの心遣いに感謝し、一旦休憩に入った凛空は、ミカとアミの特訓バトルを眺めつつ、北島店長とバン達の特訓メニューについて意見を交わすのであった。

 

 

 それから、時間の許す限り特訓を続けた凛空達。

 気がつけば、外もすっかり日没後の薄明りに差し掛かり、北島店長の終了を告げる声と共に、この日の特訓は終了した。

 

「伝説のLBXプレイヤー?」

 

 各々が帰り支度をする中、不意に、沙希と話をしていたアミが声をあげ、他の面々が二人の話に興味を示し始める。

 

「沙希さん、伝説のLBXプレイヤーって?」

「"レックス"って言う伝説的な強さを持つLBXプレイヤーで、第一次LBXブームの頃に出場した大会全てで必ず優勝を飾った事から、一躍有名になったそうよ」

「俺、その名前ならネットの情報で見た事あるぜ。確か、海外のブックメーカーの一部が、レックスが出場した大会は対象から外す程、出場すれば優勝間違いなしと言われる程の腕前だとか」

「そのレックスが、どうかしたんですか?」

「どうやら、バン達が出場するアングラビシダスを主催してるのは彼みたいなの」

「伝説のLBXプレイヤー、レックスか……」

 

 一体どんな人物なのか、アングラビシダス当日にその姿を拝む事が出来るかもしれない、と、既に正体を知っている凛空を除く面々が期待に胸弾ませる。

 

「さ、話はここまで。皆、早く帰らないとご両親が心配するよ」

「皆、気をつけて帰れよ」

「「はーい」」

 

 そして、北島夫婦に別れの挨拶をすると、凛空達は各々の帰路につくのであった。

 

 

 

 

 それから数日。

 凛空達はアングラビシダスに向けて、学校が終われば一目散にキタジマ模型店に足を運び、時間の許す限り特訓に明け暮れていた。

 そしてこの日も、凛空達はキタジマ模型店にて特訓を行っていた。

 

「うぉ、躱した!?」

「ミカ、アキレスの動きを止めるわ!」

「ん、分かった」

 

 凛空の、複数機を同時に操作するテクニックを持つプレイヤーも出場する事が予想される、との助言を受けて、一対多数を想定した特訓バトル。

 メンテナンスを終えたアキレスと対峙するのは、ハンター・クノイチ・アマゾネスの三機。

 普段からバトルをして熟知している相手とは言え、三対一のバトルは初めて。

 その為、初戦こそ見事なまでに完敗したアキレスだが、バトルを重ねていく内に徐々にコツを掴み始めたか、三機を相手にしても互角に戦えるようになりつつあった。

 

「うぉぉぉっ!」

「しまった!?」

 

 クノイチ・アマゾネスの攻撃を躱し、一気にハンターの懐に飛び込んだアキレス。

 アキレスランスの穂先がハンターの胴体を貫くと、ハンターはその機能を停止させた。

 

「よし、……っ!」

「もらった」

〈アタックファンクション、ファランクス〉

 

 しかし次の瞬間、アキレスの背後を取ったアマゾネスが、装備したパルチザンを使い次々と突き攻撃をくり出す。

 無防備な背後から連続の突き攻撃を食らい、アキレスは瞬く間に倒れ込むと、機能を停止させた。

 

「また負けた……」

「だけど、最初の頃よりも確実に戦えるようになってきたよ」

「そうだな。この数日で、バン、お前は確実に強くなってるぞ」

 

 勝利は飾れず悔しさを滲ませるバンだったが、凛空と北島店長の言葉を聞き、気持ちを切り替える。

 

「バン、今のお前なら、確実にアレを使いこなせるだろう」

「店長、アレって?」

 

 意味深な北島店長の言葉に疑問符を浮かべたバン。

 一方、北島店長はカウンター奥の棚に置いていたモーターらしきコアパーツを手に取ると、それをバンに見せ始める。

 

「これは?」

「"シグマDX9"。タイニーオービット社製の最新高速モーターだ」

「凄い!」

 

 最新鋭のモーターを目にし、目を輝かせるバン。

 一方、その様子を見ていた凛空は。

 

(スロット10、高消費……、う、頭が……)

 

 謎の頭痛に襲われていたが、北島店長はそんな事に気付く様子もなく話を続けた。

 

「ほれ、受け取れバン」

「え? もしかして、くれるの!?」

「あぁ、俺からのプレゼントだ。その代わり、アングラビシダスでは必ず優勝しろよ!」

「店長……、ありがとう!!」

 

 北島店長からシグマDX9を受け取ったバンは、早速シグマDX9を装備するべく、作業スペースを借りて作業を始める。

 程なく、無事にシグマDX9をアキレスに装備し終えたバンは、早速、どの程度パワーアップしたのかを確かめるべく、凛空達とバトルをしたいと申し出る。

 凛空達も快く了承し、早速バトルを始めようとした、その矢先。

 

「いらっしゃい!」

 

 不意に、キタジマ模型店に新しいお客が入店してくる。

 北島店長の声に反応し、今し方入店してきたお客の方に視線を向けると、そこには、見知った三人組の姿があった。

 

「お前らは!」

「四天王、ゴウダ三人衆!」

「よ、久しぶり」

「おぉ、凛空とミカの二人もいたのか」

「それならそれで、好都合でごわす」

 

 それは、リコ・ギンジ・テツオのゴウダ三人衆であった。

 

「矢沢先輩達、僕達に何か用ですか?」

「ちょっとな。リーダーが顔貸せって言うから、アタイ達がわざわざ呼びに来てやったんだよ」

「特に、バンに用があるでごわす」

「郷田がバンに?」

「一体何かしら?」

「……、悪いけど、時間がないんだ、また今度に──」

 

 ゴウダ三人衆が自分達のもとを訪ねた理由を聞き、バンは特に緊急性がないと判断して断りを入れようとした。

 だが、その直後。背後から突き刺すような視線を感じ恐る恐る振り返ると、そこには、鋭い眼光で自身を見つめるミカの姿が。

 

「バン、郷田さんのお願い、断るの?」

「え、いや、その……」

「断る、の?」

 

 ミカから溢れ出る威圧感にのまれそうになったバンは、堪らず凛空に視線を向けて助けを求めるも、凛空は、こうなっては諦める他ない、と言わんばかりに無言で首を横に振った。

 

「行かせていただきます」

 

 こうして、凛空達はゴウダ三人衆に案内され、ハンゾウのもとへと向かうのであった。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したシグマDX9を紹介するぞ!!

 ご存知、タイニーオービット社製の最新高速モーターだ。皆の憧れ、LBXのコアボックスに収めることで、搭載したLBXのスペックを向上させるぞ。
 これを搭載したアキレスは、文字通り無敵の戦士だ!


 ……何? 初期モーターのハニカムB600の方が優秀? 姉妹品のイプシロンEX99の方が断然使いやすい? アニメと全然違うじゃねぇか?
 ははは、理想と現実のギャップは往々にして起こるものさ。
 では! また。
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