キタジマ模型店を後にした凛空達は、ゴウダ三人衆に案内され、用があるというハンゾウのもとへと向かっていた。
特訓を中断させられ少々不機嫌なアミ、考えようによってはパワーアップしたアキレスの相手にうってつけと言うカズ、そんなカズの考えに賛同するバン。
そして、この後何が起こるのかを既に知っている凛空と、ハンゾウに会えるので嬉しそうなミカ。
それぞれの反応を見せる五人と、意気揚々と五人を案内するゴウダ三人衆。
しかし、そんな彼らの行く手に、三つの人影が立ちふさがった。
「おっと、悪いけど、ここから先は行かせないよ」
立ちふさがったのは金髪のグラマラスな女性、背の高い痩せ型の男性、背の低い肥満型の男性、の三人組。
何れも黒のスーツを身に付け、ピエロの様な仮面を被っている為、その素顔を窺う事は出来ない。
「何だこいつら?」
「まーた変なのが出てきた」
その奇妙な出で立ちを目にし、カズとアミが訝しがるのを他所に。
バンは、三人組の姿を以前目撃していた事を思い出し声をあげた。
「凛空、あの女の人の声、私、聞いた事がある」
「え?」
「前に、ミソラ公園で出会った、占い師の声に似てる」
一方ミカも、以前自身を催眠術に掛けた女性占い師の声と、目の前にいる仮面の女性の声が似ているとの言葉を零した。
「何だよ、ひょっとこ野郎ども!」
「俺達を誰だか知らねぇのか? そんな所に突っ立ってたんじゃ通れねぇだろ!」
「さっさと退くでごわす!」
そんな三人組に臆することなく立ち向かうゴウダ三人衆。
しかし、男性二人が素早い身のこなしでゴウダ三人衆の背後に回り込むと、仮面に指を当て、仮面の表情を変化させる。
それを目にした刹那、先ほどまでの威勢は何処へやら、ゴウダ三人衆は怯えた様子でその場から逃げ出してしまった。
「ふん。あんた等に用はないんだよ、引っ込んでな!」
邪魔者のゴウダ三人衆を退けた三人組は、残された凛空達の事を見据える。
「さぁ、これで邪魔者はいなくなったよ。痛い目を見たくなかったら、大人しく、私達に付いてきてもらおうか」
相手は三人とは言え得体の知れない者達、下手に逆らえば、どんな目に遭うか分からない。なので、凛空達は大人しく三人組の後についていく。
こうして凛空達が足を運んだのは、細い路地を一本入った所にある、人目に付きにくい小さな空き地。
「ここなら邪魔が入る事はないよ。さぁ──」
「その前に、お前達、イノベーターの一員だな!」
「えぇ、こいつらが!?」
「イノベーター!?」
「っ!?」
女性の話を遮り、バンが発した一言に、カズ・アミ・ミカの三人は驚愕する。
「だったら、どうだって言うんだい?」
「お前達に聞きたい事がある!」
「あ? 聞きたい事?」
「お前達は、俺の父さんが今どこにいるのかを知ってる筈だ! それを教えてもらうぞ!」
イノベーターの一員である三人組を前に、臆することなく詰め寄るバン。
だが、そんなバンに対して、三人組はくつくつと笑い始めた。
「何を言うかと思えば、偉そうに」
「分かってるんですかねぇ? 自分の立場ってものが?」
「まったく、誰に物言ってるんっすかねぇ?」
「俺は、俺はイノベーターだからって怖くないぞ!」
「「あぁ?」」
バンは自身の言葉を表すかのように一歩前に出る。
「生意気なお子様だねぇ! でも、私達を前に逃げる事無く立ち向かってくるその勇気だけは褒めてやるよ。だから……」
刹那、女性は折り畳まれたDキューブを取り出すと、徐にバンの前に放り投げ展開させる。
そして、Dキューブの展開が終わると、今度はLBXを取り出した。
「私達とバトルして勝ったら、教えてあげなくもないけどね。……けど、あんたに勝てるかしら? この私の"デクーエース"と!」
「「俺達の、デクー改!!」」
「生まれ変わった私達のLBXに?」
デクーエースと呼ばれた、ワインレッドと金色に彩られた機体は、高速戦闘に対応するべく、ストライダーフレームらしいスラリとし、その色合いやアクセントである頭部の角と相まってお洒落な外観を誇る。
一方デクー改と呼ばれた機体は、色合いが青を基調としたものに改められた他、肩と膝にスパイクが追加され、更に細部のデザインが変更されている。
何れも、基となったデクーよりも大幅に性能が向上している事が窺えた。
「どんな奴が相手だって、俺は負けない!」
「は、言うじゃない! あぁ、そうそう、言い忘れてたけど、このバトル、戦うのはあんた一人だよ」
「っ!?」
「つまり、三対一って訳さ? どうする、それでも私達にバトルを挑むかい?」
バン一人でイノベーター三人組とバトルを行うと知り、カズは相手のLBXの性能も分からないのに戦うのは無茶だとバンに忠告する。
しかし、バンはそんなカズの忠告を無視し、三人組とのバトルに改めて応じる旨を告げた。
「大丈夫だよ、皆。父さんを助ける為なら、俺は、どんな相手とだって戦う!」
「は、泣かせるねぇ~。だからって、手加減なんてしてやらないけどね! やれ、デクーエース!!」
「ほら行け、デクー改!」
「やれ行け、デクー改!」
Dキューブ内に広がる、港湾都市をモチーフとしたジオラマ。
そこに先ず降り立ったのは、デクーエースと二機のデクー改。
「アキレス、いっけーっ!!」
それに続いてアキレスも降り立ち、対峙する四機の小さな戦士達。
ここに、アンリミテッドレギュレーションでの、バンにとって負けられないバトルの幕が切って落とされた。
まず先に仕掛けたのは、数の優位がある三人組。
「さっさと片付けて吠え面をかかせてやるよ! クロスファイア・フォーメーション!」
「「ラジャーッ!」」
合図と共に散開した三機は、アキレスを包囲する様に動くと、スナップリボルバー、オートマシンガン、ロケットランチャーという、各々が装備した武器で十字砲火の如く攻撃を仕掛ける。
だが、アキレスは自身に飛来する弾丸や弾頭を軽々と躱すと、逆に相手を翻弄する。
「アキレスの動き、以前よりも格段に良くなってる」
「凄い、これもシグマDX9のお陰ね!」
「あぁ」
その様子を見て、凛空・アミ・カズの三人は、このバトルに期待を持つ。
「何やってんだいお前達!」
「だってボスぅ、アイツ早いんですよ」
「そうッスよ」
「何フォーメーションって言ったっけ?」
「お黙り小娘!!」
アミと女性が場外乱闘を繰り広げるのを他所に、バンは、シグマDX9によりパワーアップしたアキレスの性能に感動の声を漏らしていた。
「こいつ! やりやがったな!」
その後も、アキレスは三機を翻弄しつつ、隙を見てアキレスランスによる攻撃を浴びせていく。
こうして、三対一ながら互角の戦いを繰り広げていたが、遂に、戦局が大きく動き始めた。
「よし、この技でいくぞ!!」
バンがCCMを操作した刹那。
〈アタックファンクション、ライトニングランス〉
機械音声が流れると共に、アキレスランスの穂先にエネルギーが集約する。
そして次の瞬間、放たれたエネルギーは青白く輝く光のランスとなり、ターゲットとなったデクー改を貫くと、巨大な爆発の中にデクー改の姿を隠した。
その圧倒的な威力を目の当たりにして、三人組は言葉を失い。特に、背の高い痩せ型の男性は驚きのあまり自身のCCMを落としてしまう程であった。
「スゲー! 今の、アキレスの必殺ファンクションか!?」
「凄いじゃない!」
一方、カズやアミは、ライトニングランスの威力に興奮を隠しきれない様子。
「や、やってくれるじゃないのさ!」
「なら、間合いを取るまでッス!」
味方が一人倒され、暫し唖然としていた残りの二人だったが、我に返ると、二人は早速ライトニングランスを警戒する動きを見せる。
アキレスから距離を取り、ビルやコンテナ等の物陰に身を潜めるデクーエースとデクー改。
「隠れたって、もう一発、ライトニングランスだ!」
〈アタックファンクション、ライトニングランス〉
刹那、再び青白く輝く光のランスが放たれると、デクー改が身を潜めていたビルに直撃する。
無駄な攻撃、かと思われた次の瞬間。
爆煙が晴れて姿を現したのは、ライトニングランスにより大きく抉られたビルの姿と、ライトニングランスが直撃したデクー改の無残な姿であった。
「何てパワーだ!?」
「こんのぉ! いつまでも調子に乗ってるんじゃないよ!」
二機のデクー改をライトニングランスで撃破したアキレス、そんなアキレスに、死角から一気に懐に飛び込んだデクーエースがゼロ距離射撃を加えようとする。
だが、スナップリボルバーを構えた刹那、アキレスの蹴りが炸裂し、スナップリボルバーは遥か後方に飛んでいく。
「何っ!?」
そして、攻撃手段を失い無防備となったデクーエースに、アキレスランスが襲い掛かる。
アキレスランスによって胴体を貫かれたデクーエースは、次の瞬間爆散し、それが、バトル終了の合図となるのであった。
「よっしゃ!」
「やったー!」
「おめでとう、バン!」
「おめでとう」
「ありがとう、皆」
勝利に沸き立つバン達。
一方、三人組はこの結果が信じられないのか、呆然とした様子。
「勝負はついた、さぁ、約束通り父さんの居場所を教えてもらおうか!」
しかし、バンの言葉に我に返った三人組は、咄嗟に顔を見合わせ視線で会話を行う。
「ヤダね!」
「知りたきゃ自分で何とかするんですね!」
「と、言う訳で……」
そして、約束を反故にすると、再び折り畳まれたDキューブを回収し。
「撤収!!」
「「ラジャーッ!!」」
一目散にその場から逃げ出した。
それを慌てて追いかけるバン達だったが、三人組の逃げ足の速さを前に、途中で追いかけるのを諦めるのであった。
約束を反故にされ怒り心頭のバン。
一方、そんなバンを宥める凛空は、とある推察を口にする。
「多分、あの三人は最初から山野博士の居場所を知らなかったんじゃないかな?」
「確かに、今思えば、あの口振りはそんな感じだったな」
「そうね」
三人組に一杯食わされ、更に怒りを滲ませるバン。
そんなバンの様子を目にしたアミは、機転を利かせて、バンにアキレスの話題を振った。
「それにしてもバン、アキレスがあんなに凄い必殺ファンクションを使えるようになるなんて、凄いね」
「あぁ、これもシグマDX9のお陰さ。このパワーアップしたアキレスなら、アングラビシダスで勝てる!」
それが功を奏し、バンの表情は一気に明るくなるのであった。
「おーい、お前ら!」
足音を響かせながら、バン達のもとへと近づいてきたのは、ゴウダ三人衆であった。
「本当に、お前らってよく平気だよな、あんな連中と関わってて」
「まぁね。なんていうか、もう慣れてきちゃったって感じ」
「そういやそうだな」
「あはは、かもね」
「ん、慣れた」
イノベーターを前にして果敢に挑んだバン達に、リコは賞賛の言葉を贈った。
「それじゃ、さっさとリーダーの所に行くよ」
そして、邪魔者が消えた所で、バン達は再びゴウダ三人衆に案内され、ハンゾウのもとへと向かうのであった。
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