うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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決着、箱の中の魔術師

 小休止を挟み、アングラビシダス二回戦の開始を告げるアナウンスが流れる。

 バンの二回戦不戦勝が告げられ、次いで、Aグループからキヨラの、そして、Bグループからはカズと凛空による二回戦の開始が告げられた。

 

 アナウンスが終わると四人のプレイヤーがステージに姿を現し、各々指定されたDキューブの前に立つ。

 

「Ready……」

「いくぜ、凛空! ゴー、ハンター!」

「望む所さ! ドム、発進!」

 

 カズと凛空、二人の手からDキューブ内に広がる世界、中央部に台形型の大型マンションが存在し、ビルや工場が建ち並ぶ、鉱山都市と呼ばれるフィールド。

 そこに降り立つ、ハンターとドムの二機。

 

「バトルスタート!」

 

 そして、合図と共に、戦いの幕が切って落とされる。

 

「先ずはこいつだ!」

〈アタックファンクション、スティンガーミサイル〉

 

 先ず仕掛けたのはハンター、しかも、初撃から必殺ファンクションによる攻撃。

 これには、対峙する凛空、そして観戦していたバン達も驚く。

 

 機械音声と共に、ハンターの背中に装備された六発のスティンガーミサイルが発射され、ドム目掛けて飛来する。

 対して、ドムはスラスターを噴かせてビルの間を滑るように駆ける。

 そして、ドムを追尾し飛来したスティンガーミサイルの内半数がビルに衝突し無力化されると、残る三発のスティンガーミサイルも、ドムが装備したマシンガン、MMP-80により撃ち落とされてしまう。

 こうして、虚を突いた折角の必殺ファンクションも無駄に終わってしまったかに思えたが、実は、スティンガーミサイルが命中するか否かは関係なかった。

 

「いい位置取ったぜ!」

 

 ドムがスティンガーミサイルに気を取られている内に、ハンターは自慢の脚力を生かし、中央部にある大型マンションの屋上に陣取る。

 そう、スティンガーミサイルは、ハンターが狙撃位置に移動する時間を稼ぐのが目的だったのだ。

 

「いただき!」

 

 そして、ハンターが構えたハンターライフルが火を噴き、ドムに襲い掛かる。

 その見た目通りの重装甲とは言え、ハンターライフルの攻撃を正面から何発も受けきれるものではない。

 ドムは鉱山都市内を駆け、ビルや工場の影を利用し、ハンターの狙撃を躱し続ける。

 

(向こうには、有効な長距離攻撃の手段がない。近づけさせなければ、勝機はある!)

 

 地理的有利、更には射程の有利を考慮し、勝ち筋を見出すカズ。

 一方のドムも、防戦一方な状況を打開するべく、隙を見てMMP-80をハンター目掛けて発砲するも、位置関係や射程の関係からハンターへの有効な攻撃とはならなかった。

 

「貰った!」

 

 そして遂に、ハンターライフルから放たれた一発の弾丸が、ドムの左肩のアーマーに直撃する。

 

「よし、いけるぞ!!」

 

 カズは自身の勝利を確信する。

 だが、一方の凛空は、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「カズ、以前僕が、スナイパーとスポッターは二人一組だって言った事、覚えてる?」

「? あぁ、覚えてるぜ」

 

 突如として、凛空がスナイパーとスポッターの話を切り出した事に、関係のない話で自身の集中力を削ぐ作戦かと勘ぐるカズ。

 

「なら、スポッターの大事な役割の一つに、スナイパーの護衛が含まれている事も覚えてるよね」

「当たり前だろ」

「では問題、どうして、スポッターはスナイパーの護衛を務めるのか?」

「え?」

「正解は、スナイパーは狙撃に集中する為に周囲への警戒が疎かになる。だよ」

 

 刹那、甲高い音と共に、ハンターの背後から何かが飛来すると、次の瞬間、ハンターの背中に命中した何かは、爆発を起こしてハンターを吹き飛ばす。

 

「ハンター!」

 

 カズの悲鳴混じりの叫び声の中、吹き飛ばされたハンターは、十字路の真ん中に叩きつけられる。

 何かが直撃したダメージと、叩きつけられたダメージも重なり、ハンターのLPは一気に削られ、機体の状態も各部が悲鳴を挙げていた。

 

 そんなハンターの前に、悠然と、MMP-80を装備したドムとは別に、ジャイアント・バズと呼ばれるバズーカを装備した"もう一機"のドムが姿を現した。

 

「っ!! う、嘘だろ!」

「えぇ!? ドムが二機!?」

「ど、どうなってるの!?」

 

 信じがたい光景を目にし、カズは勿論、観戦していたバンとアミも驚愕の表情を浮かべる。

 

「単純な事だよ。"二機のドムを同時に操作していた"、それだけさ」

「なん……、だと……」

 

 LBXの複数機同時操作、それは操作技術の中でも群を抜いて難易度の高い技術の一つである。

 当然、同時に操作する機数が増える程更に難易度は高くなり。また、各々が別々の動き、それも一人一人が操作しているかの如く滑らかな動きで動かそうものなら、その技術の習得は一朝一夕で身につくものではない。

 

 そんな高度な操作技術を、凛空がいつの間にか習得していた事に、カズは、信じられないとばかりに目を見開き言葉を絞り出した。

 

「だって、そんな事一度も……」

「なかなかお披露目する機会もなかったからね」

「だからって……」

「サポートメンバーの同行は許可されていないけど、プレイヤーが使用する機体数の制限については、何の規定もないよ。だから、同時に操作できるのなら、二機だろうと三機だろうと、何の問題もない。アングラビシダスはそう言う大会だよ」

「ハハッ……」

 

 友人である凛空から、アングラビシダスという大会の恐ろしさを教えられ、乾いた笑みを零すカズ。

 

「俺の完敗だ」

 

 そして、カズが自らの敗北を呟いたと同時に、ハンターに引導を渡すべく、MMP-80の銃声がDキューブ内に鳴り響いた。

 

 

 

 

 キヨラ、そして凛空の準決勝進出が決定し、観戦していたギャラリー達の熱気も更に盛り上がりを見せる中。

 二回戦を終えたカズと凛空は、バン達のもとへと戻る。

 

「凛空、お疲れ様」

「ありがとう、ミカ」

 

 ミカからジュースの入った紙コップを受け取り、それを口にして二回戦の疲れを癒す凛空。

 そんな凛空に、バンが目を輝かせながら声をかける。

 

「それにしても凛空、二機同時操作なんていつの間に身に付けたんだ!?」

「少し前にね」

「誰かから教わったの?」

「複数機同時操作の高い技術を持つ、知り合いの人からだよ」

「それってどんな人?」

「うーん。ごめん、今はまだ秘密。けど、何れバンも、その人と会う事になると思うよ」

「??」

 

 凛空の意味深な言葉を聞き、頭に疑問符を浮かべるバン。

 一方、凛空に複数機同時操作の技術を教えたとされるその人物は、とある場所にある薄暗い部屋の中、大きなくしゃみをすると、『ハ! まさかこれは、可愛いおにゃのこがワシの噂でもしてるデヨ!?』等と、勘違いを引き起こしているのであった。

 

「続きまして、Bグループの二回戦、第二試合を行います。出場プレイヤーは、直ちにステージへ」

「よし、今度は私の番ね! 頑張らなくちゃ!」

 

 アナウンスが流れ、自身の二回戦に向けて気合を入れるアミ。

 一方、アミの二回戦の相手がジンであると知り、少々不安な様子のバン達。

 

「大丈夫よ、私今日調子いいから。案外、楽勝だったりして」

 

 そんなバン達の不安を和らげるかのように、アミは意気揚々とステージへと向かった。

 

 

 ステージ上、Dキューブを挟んで対峙するアミとジン。

 Dキューブ内に広がるジャングルのフィールド、そこに降り立つクノイチとジ・エンペラー。

 

「バトルスタート!」

 

 開始の合図と共に、先に仕掛けたのはクノイチ。

 その機動力を生かして、ジ・エンペラーの懐に飛び込むべく駆ける。

 

(いける!)

 

 そして、初撃で勝負を決めるべく、クノイチが装備したコダチをジ・エンペラー目掛けて振るった、次の瞬間。

 クノイチの踏み込みよりも早く、ジ・エンペラーが素早い動きでクノイチの背後に回り込むと、クノイチの無防備な背中に向けて、装備したティターニアを突いた。

 

 ティターニアの一撃を受け、クノイチは機能を停止した。

 

「三秒一八。こんなものか……」

 

 それはまさに、あっという間の出来事。

 五秒と掛からずに二回戦を終えて、特に満足した様子もなくステージを後にするジン。

 一方、ジ・エンペラーに一撃も与えられず二回戦を終えたアミは、少々項垂れながらバン達のもとへと戻ってきた。

 

「ごめん、皆……」

「アミ、気休めかも知れないけど、クノイチの仇は僕が取るよ」

「ありがとう、凛空」

 

 ティターニアの一撃を受けて背中に出来た傷、クノイチのそんな痛々しい姿を目にして意気消沈となるアミに、凛空は優しく励ましの声をかける。

 

「アミ、クノイチの修理、私も手伝う」

「ありがとう、ミカ」

 

 そして、ミカもアミを励ますように声をかけ。

 二人のお陰で、アミは少し元気を取り戻すのであった。

 

 

 

 

 再びの小休止を挟み、遂に、アングラビシダスも準決勝と決勝を残すのみとなった。

 そして、準決勝の開始が告げられると、第一試合に臨むバンとキヨラの二人がステージ上に姿を現す。

 

 準決勝に臨むバンの姿を目にし、各々が準決勝の行方を固唾を呑んで見守る。

 

「いくぞ!」

「何? その無様な姿は?」

「形で判断するな! パーツ交換は、LBXバトルの醍醐味だろ!」

「ふ、ハカイオーの右腕ねぇ……。弱い者同士がいくら力を合わせた所で無駄よ」

 

 バトル開始を前に舌戦を繰り広げるバンとキヨラ。

 刹那、キヨラは一枚のタロットカードを取り出す。そこに描かれていたのは輝きを放つ星。そして、逆位置となったそれは、失望やあきらめ等不吉な事を暗示するものであった。

 

(スター)の逆位置。お前の未来は暗黒と出ている……。つまり、お前は負ける」

 

 不吉な暗示を受けるバン、しかし、バンの目には諦めという文字は微塵も感じられなかった。

 

「Ready……」

「ジョーカー!」

「アキレス!!」

 

 Dキューブ内に広がる、草原のフィールドに降り立つアキレスとジョーカー。

 

「バトルスタート!」

 

 そして、合図と共に、戦いの幕が切って落とされる。

 

 合図と同時に早速アキレスが仕掛ける。だが、アキレスランスによる突き攻撃を、ジョーカーは易々と躱してみせた。

 残念ながら攻撃は当たらなかったが、パワーのあるハカイオーの右腕のお陰か、アキレスランスが突き刺した地面には大きな穴が開けられていた。

 

「これならいけそうだ!」

 

 これにより、攻撃力が上昇している事を確信したバンは、畳み掛けるように攻撃を繰り出し始める。

 しかし、ジョーカーはアキレスが次々と繰り出す攻撃を、俊敏な動きで躱し続ける。

 

「いいぞバン! 相手は躱すので精一杯だ!」

 

 観戦しているリュウの声援通り、一見するとジョーカーが防戦一方に思える。

 しかし、実際の所はそうではなかった。

 

 それを証明するかのように、キヨラは新たなタロットカードを取り出した。

 そこに描かれていたのは雄々しきライオン。そして、正位置となったそれは、強い意志や勇気等、やり遂げる強さを示す筈であった。

 

(ストレングス)の正位置。力を持て余しているようね」

 

 しかし、キヨラの解釈は少々異なるものであった。

 

「そんな事はない!!」

「ふ、気付いてないのね。お前のLBXには、致命的な弱点があるのよ」

「そんなの出鱈目だ!」

 

 バンはキヨラの言葉を振り払うと、再びバトルに集中し、ジョーカーへの攻撃を続ける。

 だが、繰り出す攻撃の数々をジョーカーは軽々と躱し、一方のアキレスは、攻撃を繰り出す度に右方向に引っ張られるように重心が傾いてしまう。

 そんなアキレスの姿を目にし、バンは漸く先ほどのキヨラの言葉を理解した。

 

「っ! バランスが!?」

「漸く気付いたのね」

「く! なら、このバランスの悪さを利用するまでだ!」

 

 ハカイオーの右腕はパワーもあるがその分重量もあり、それが故にアキレスの機体バランスが悪くなっている事に気付いたバン。

 するとバンは逆転の発想で、アキレスランスを石突付近まで長く持ち替えると、右腕の重さを軸にしてアキレスをコマのように回転させ、遠心力を利用したアキレスランスの攻撃を繰り出し始める。

 

 しかし、そんな攻撃も、ジョーカーは軽々と躱していく。

 

「いくら攻撃力が上がった所で、当たらなければどうということはないわよね」

「く!(駄目だ……、どうすれば)」

 

 逆転の発想で勝負を仕掛けたものの、結局は裏目に出てしまい、焦りを隠しきれないバン。

 

「さて……。そろそろ躱すのも飽きたし、仕掛けさせてもらうわよ」

 

 刹那、身軽な動きで岩肌を下りると、装備したジョーカーズソウルをアキレス目掛けて振るい始める。

 一転して攻勢に出たジョーカーの攻撃を前に、今度はアキレスが一転して防戦一方となる。

 

「ここまで私が攻撃をせずに躱すだけだったのは、お前の攻撃が私には通用しないという事を思い知らせる為だったのよ」

「っ! 何!?」

「そして、攻撃が通じないと思い知り、絶望したお前を大勢のギャラリーの前でたっぷりといたぶり倒す。どう、素敵でしょ?」

「くっ!」

 

 嬉々とした様子で語るキヨラの言葉を聞き、苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるバン。

 

「それじゃ、思い出してもらいましょうか、私のジョーカーの恐ろしさを!」

「っ!」

 

 刹那、ジョーカーの移動速度が上昇すると、特有の俊敏性を生かしてアキレスを翻弄し始める。

 そして、突如跳躍した次の瞬間、空中のジョーカーが三機に分身した。

 

「っ! あれはゲームセンターで見た!」

「箱の中の魔術師!」

 

 以前のバトルでも見せたジョーカーの分身術、観戦していたカズとアミはそれを再び目にすると、驚きの声をあげる。

 一方のバンも、ゲームセンターでのバトルの記憶が蘇り、冷や汗が流れ始める。

 

「さぁ、いくわよ!」

 

 着地を終えた三機のジョーカーは、一斉にアキレス目掛けて攻撃を仕掛ける。

 アキレスは、何とかアキレスシールドを巧みに使い攻撃を防ぐものの、全ての攻撃を防ぐ事は出来ず、死角から繰り出される攻撃を受けて徐々にLPを減らしていく。

 

(落ち着け……、分身しているように見えてるだけだ。本物は一機だけ)

 

 何とかジョーカーの分身術を見破ろうとバンは目を凝らすも、本物と残像を見分ける事は出来ない。

 その間にも、三機に分身したジョーカーの攻撃は苛烈さを増していく。

 

「っ! そうか、これなら!」

 

 その最中、バンはある予想を立てると、CCMの操作を始めた。

 それは、アキレスランスを地面に突き刺し、そのまま地面をえぐるように回転させる事により土煙を発生させる。

 そして、その土煙を突き破って攻撃している機体こそ、残像ではなく実体を持った本物のジョーカーである。というものであった。

 

 程なく、予想通りに、一機のジョーカーが土煙を突き破りアキレスへと迫る。

 それを見て、アキレスはそのジョーカーに対して攻撃を仕掛けるも、あえなく躱され、ジョーカーは土煙の向こうへと姿を消した。

 

 だが、その瞬間。

 アキレスの横合いから別のジョーカーが土煙を突き破って飛び出すと、ジョーカーズソウルを振るい、アキレスに手痛いダメージを負わせた。

 

「そんな!? 確かに本物を見極めた筈なのに!?」

「ふふふ、そんな浅知恵で見破れる程、箱の中の魔術師は甘くはないわよ」

(強い……。でも、俺は負けるわけにはいかない! 父さんの為にも、負けられないんだ!)

 

 最後まで諦める事無く挑み続けるバン。

 しかし、そんなバンを他所に、ジョーカーが繰り出す分身攻撃は無情にもアキレスのLPを削り取っていく。

 

「自分のLBXが切り刻まれていくのをただ見ている事しかできない。気分はどう?」

「く、どうすれば……」

「では、そろそろフィナーレといきましょう!!」

 

 そして、キヨラの宣言と共に、ジョーカーが最後の一撃を繰り出そうとした、次の瞬間。

 突如、バンが手にしていたCCMが変形すると、それに呼応するようにアキレスの機体も金色(こんじき)に光り輝き始めたのだ。

 

「何!?」

「発動したか……」

 

 この突然の出来事に、キヨラを始めカズ・アミ・ミカ、更には観戦していたギャラリー達も驚きのあまり目を見開く。

 しかし凛空は、このVモードの発動を冷静に観察していた。

 そして、凛空はふと、観戦していたギャラリーの中にとある人物の姿を確認すると、安心したように意識をバトルに戻すのであった。

 

 

 そんな凛空を他所に、ジョーカーは高く跳躍すると再び三機に分身し、三方からジョーカーズソウルの一撃をアキレスにお見舞いしようとした。

 だが、Vモードとなったアキレスは、自らに降りかかる火の粉を払うかの如く、アキレスランスを振るうと、三機のジョーカーを吹き飛ばした。

 

「何、今のは!?」

 

 先ほどまでと同じ機体とは思えぬ変化に困惑キヨラ。

 一方のバンも、目の前の光景を目にして、困惑を隠せないでいた。

 

「えぇ!? ジョーカーが三機のまま!?」

 

 そこで目にしたのは、吹き飛ばされ岩肌に叩きつけられた事で分身が解けたと思っていたジョーカーが、分身が解ける事無く、三機のまま存在している光景であった。

 

「何、あれ?」

「おそらく、ジョーカーは最初から三機同時に存在していたんだ。そして、三機の絶妙な連携で、分身していたように見せていたんだ」

「何だよそれ、つまり、ハッタリ魔術かよ!」

「ううん、魔術なんかよりも凄いわ。カズだって、さっき凛空と戦って感じたでしょ、複数機を同時に操作する凄さを」

「う、確かに……」

 

 箱の中の魔術師の種が明かされ、キヨラの操作技術の高さに感嘆の声を漏らす凛空達。

 一方、それはバンも同じであった。

 

「強ければ何でもあり、それがアングラビシダスよ!」

 

 種が明かされたとは言え、それはルールに違反するものではない。

 態勢を立て直した三機のジョーカーは、再びアキレスへの攻撃を再開する。

 

 しかし、アキレスは先ほどとは異なり、その攻撃を的確に防ぐと、隙を見てアキレスランスによる突き攻撃を一機のジョーカーに叩き込んだ。

 

「っ!?」

 

 防戦一方だった筈が、ジョーカーの攻撃を防ぐだけでなく、隙を見て反撃にまで出るアキレス。

 この明らかな変化に、キヨラは再び困惑する。

 

「何なの、このスピードとパワー? さっきまでとは桁違いじゃない。……あのCCMが変化した事と、何か関係しているの?」

「くそ、駄目だ。全然コントロールが効かない」

 

 一見するとCCMを操作しているように見えるバン。

 しかし、そんなバンが零した言葉を聞き、キヨラは、アキレスが現在、自律稼働状態である事を知る。

 

「勝手に動いている……。へぇ、面白いじゃない」

 

 そして、キヨラは不敵な笑みを浮かべると、とある仮説を検証するべく、三度アキレスへの攻撃を行う。

 ジョーカーの攻撃をアキレスシールドで防ぎ、アキレスランスによる反撃を行うアキレス。

 その様子を見て、キヨラはの仮説は確信へと変わった。

 

「あ、躱された!」

「理解したわ。そいつは一定の法則で動いている。そのパターンさえ分れば、攻撃を躱すのは勿論の事──」

 

 刹那、再びジョーカーが攻撃を仕掛けると、プログラムの虚を突き、三機の連携攻撃でアキレスに傷を負わせた。

 

「攻撃を当てるのも簡単な事」

「くそ! お願いだアキレス、言う事を聞いてくれ!」

 

 そして、膝をついたアキレスに、ジョーカーの更なる攻撃が加えられる。

 

「見せてあげる! これがジョーカーの必殺ファンクション!」

〈アタックファンクション、デスサイズハリケーン〉

 

 刹那、ジョーカーはジョーカーズソウルから溢れ出る黒く輝く帯で螺旋を描きながら上昇し、黒く輝く巨大なハリケーンを生み出すと、次の瞬間、その黒いハリケーンをアキレス目掛けて放つ。

 アキレスはアキレスシールドを構えて何とか凌ごうとするが、デスサイズハリケーンの威力を前に吹き飛ばされ、近くの岩肌に打ち付けられた。

 

「アキレス!!」

 

 バンの悲鳴にも似た声に応える事もなく、アキレスの残りLPは一割ほどにまで減少した。

 このまま、敗北してしまうのか、そう思われた次の瞬間。

 

 不意に、バンのCCMにメッセージが送信される。

 

「これはPANDORAからの贈り物だ。……パンドラ」

 

 送り主とされるパンドラの名前を見たバンは、エンジェルスターに潜入し、最深部でのイジテウスとの戦いの最中に加勢した、あの白いLBXの事を思い出す。

 そのパンドラが一体何を贈ってきたのか、バンは早速確かめてみると、それは、何らかのプログラムであった。

 

「……よし、一か八かだ!」

 

 パンドラの真意を測りかねてはいたものの、追い詰められ、藁にも縋る思いのバンは、謎のプラグラムを実行する。

 

「デストロイファンクション解除。コントロール可能。……これって!」

 

 すると、CCMの画面に表示されたのは、今のバンにとっては紛れもなく希望のメッセージであった。

 

 

「何!?」

「やった! コントロールできる、できるぞ!」

 

 トドメの一撃をお見舞いすべく攻撃を仕掛けたジョーカー、それを、バンの指示した通りに防ぎ躱すアキレス。

 先ほどまでの単調な動きではない、バンの意思を反映したアキレスの動きを見て、キヨラは眉をひそめた。

 

「へぇ、コントロールできるようになったのね。でも、アキレスの残りLPはほんの僅か。もう一度攻撃を食らえばお前はゲームオーバー、つまり私の勝ちよ」

 

 しかし、状況が自身に有利である事に変わりはないと、キヨラは自身に満ちた表情を浮かべる。

 刹那、アキレスを取り囲んだ三機のジョーカーが、三方から一斉攻撃を仕掛ける。だが、アキレスはその一斉攻撃を躱してみせた。

 

 更に、続く連続攻撃もアキレスは躱していく。

 

「へぇ、見事な躱しっぷりね。けど、それじゃ私には勝てない!」

(確かにそうだ……、けど、一機を攻撃している間に、残りの二機の攻撃を受ければお終いだ)

 

 何とかこの状況を打破する、一発逆転の手はないものかと思考を巡らせるバン。

 だが程なく、バンはある作戦を思いつくと、それを実行するべく、ジョーカーに目もくれず、アキレスを山岳方面に走らせた。

 

「愚かね! その先は行き止まり。前もって地形を頭に叩き込んでおかなかったの?」

 

 左右に聳え立つ岩肌、キヨラの言う通り、袋小路に逃げ込んだアキレス。

 そして、それを追いかける三機のジョーカーは、道幅の狭さから、一列に並んで追いかけていた。

 

「そうか! 一本道なら、三機同時じゃなく、一機ずつと戦う事が出来る!」

「そうくると思ったわ!」

 

 バンの作戦を予測していたのか、三機のジョーカーは跳躍する。

 

「高さを変えれば、三方向から攻撃できる!」

 

 バンの作戦は失敗した、かと思われた刹那。

 アキレスは突如移動し、三機のジョーカーが直線上に重なる位置に移動すると、次の瞬間。

 

〈アタックファンクション、ライトニングランス〉

 

 アキレスの放ったライトニングランスは、ハカイオーの右腕でパワーが増大した事も相まって、直線上にいた三機のジョーカーを貫き、見事、三機同時に撃破してみせた。

 バンの勝利に沸き立つカズやアミ。観戦していたギャラリー達も、バンの劇的な勝利に大いに盛り上がる。

 

 一方、あと一歩の所で勝利を逃したキヨラは、苦々しい顔を浮かべた。

 

「まさか、空中で三機が重なる瞬間を狙っていたとはね……」

「仙道、お前なのか?」

「何の事?」

「お前がアイツらの刺客かどうか聞いてるんだ」

「私が誰かの指図を受けてるとでも? 馬鹿言わないで、私は誰の指図も受けない。私に命令できるのは、私だけよ」

 

 そう言い放つと、キヨラはジョーカーの残骸を回収した後、ステージを後にする。

 そんな彼女の背中を見送ると、バンもアキレスを回収した後、凛空達のもとへと戻った。

 

 

 

 

「凄いわ、バン!」

「やったな!」

「おめでとう、バン」

「少し、見直した」

 

 凛空達のもとへと戻ったバンに、凛空達から祝福の言葉が送られる。

 

「よぉ、バン!」

「郷田、戻ってたの!」

「今し方な。それよりも、礼を言うぜ、ハカイオーの仇を取ってくれて」

「お礼を言うのは俺の方さ! ハカイオーの腕だったから、三機まとめて撃破できたんだ!」

「嬉しい事言ってくれるじゃねぇか。だが、次は決勝戦だ。そのままじゃ、やはり駄目だ。だから、ほら」

 

 そう言うと、ハンゾウはバンにあるものを手渡す。

 それは、一回戦で切り落とされたアキレスの右腕、新品同様に直ったそれであった。

 

「ありがとう!」

「決勝戦、頑張れよ!」

「うん!!」

 

 バンとハンゾウの友情。

 そんな光景が繰り広げられる一方で、その光景を目にしたキヨラが、苦々しい顔を浮かべて地下闘技場を後にするのを気に留める者はいなかった。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したドムについての豆知識だ。

 機動戦士ガンダムに登場するこの機体は、ジオン公国軍の陸戦用量産型重モビルスーツで、重量級ながら熱核ホバー・ユニットによる高い機動性を有した機体だ。
 当初は局地戦用のモビルスーツとして設計されていたが、その性能の高さから、グフに替わる主力機として多く扱われているぞ。
 作中では、黒い三連星が搭乗し、主人公機のガンダムにジェット・ストリーム・アタックを仕掛けた事でも有名だ。

 では! また。
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