うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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その名は、捜索者

 アングラビシダスがバンの勝利で幕を閉じ、大勢のギャラリー達や出場プレイヤーの多くが会場となった地下闘技場を後にした頃。

 閉店の看板が掲げられ、お客のいないブルーキャッツの店内に、アングラビシダスを終えた凛空達の姿があった。

 その目的は、ジンから教えてもらった情報をもとに、拓也が2in1パソコンでその位置を特定するのを見守るためであった。

 

「ポイント、579-934。か……」

「檜山さん、心当たりがあるんですか?」

「まぁ、な」

 

 特定作業を進める拓也を他所に、レックスからブルーキャッツのマスターに戻った檜山が零した言葉に反応するバン。

 

「特定出来たぞ」

「っ! 拓也さん、何処ですか!?」

 

 刹那、特定作業を終えた拓也の言葉に瞬時に反応したバンは、慌てて2in1パソコンのモニターを覗き込む。

 そこに表示されていたのは、トキオシティの高級住宅地の一つであるグレースヒルズ。災害など、有事の際は街全体を覆う透明な球体形状のドームがシェルターの役割を果たす事でも知られている街だ。

 そんな街の中、指し示されているのはその中心地に位置する、広大な敷地を有する豪邸であった。

 

「おいおい、なんだよこれ。この間お邪魔した凛空の家よりもデケェじゃねぇか」

「確かに、僕の家より大きいね」

「まさに豪邸ね」

「上には、上がいる……」

「拓也さん。ここ、何処ですか?」

海道 義光(かいどう よしみつ)、奴の屋敷だ」

 

 拓也の口から出た名前に、いまいちピンとこない様子のバンとカズ。

 そんな二人の様子を見て、凛空が説明を始める。

 

「海道 義光。高祖父(こうそふ)、つまりひいひいおじいちゃんによって設立された海道財閥の現会長であると共に、現役の国会議員。大学卒業後に財閥の中核企業である海道建設に入社、後に同社の社長に就任。その後、三八歳の時に初当選で政界入りを果たし、以降、落選する事無く、党や政府の要職を歴任し、現在はLBXを含めた先進技術を管轄とする"先進開発省"の大臣を務める。まさに政界の大物だよ」

「凛空、随分、詳しいね」

「まぁ、ね」

 

 凛空の説明を聞き、ミカがその詳しさに感心するのを他所に、バンとカズは、凛空の説明を補足する様に檜山が口にした、海道 義光こそがイノベーターの首領であるとの言葉に衝撃を受けていた。

 

「あの、拓也さん。海道って苗字はもしかして?」

「よく気がついたな。その通り、調べたところによると、海道 ジンは海道 義光の孫である事が分かった」

 

 そして、アミの着眼点を褒めた拓也の言葉に、バンとカズは更なる衝撃を受ける。

 

「えぇ!?」

「アイツが、海道 義光の孫……」

「でもそれなら、ジン君が戦闘機で登校できたのも納得がいくね」

「あー、確かに」

「ん」

「おいおい、今納得するとこかよ」

「あはは……」

 

 深刻な様子のバンとカズに対して、凛空・アミ・ミカの三人の暢気な様に、バンとカズの二人は少々気が抜けるのであった。

 

「海道 義光、そいつが黒幕なら、すぐに取っ捕まえましょう!!」

 

 そんな凛空達を他所に、同席していたハンゾウは、鼻息を荒くしてそう告げた。

 だが、そんなハンゾウの言葉を、檜山は無理だと切り捨てる。

 

「凛空の説明を聞いてなかったのか? 海道 義光は政界の大物、故に、その影響力は警察にも当然及んでいる。加えて、イノベーターの仲間が警察に潜んでいないとも限らん。下手に動けば、危ないのは俺達の方だ」

「……クソッ!」

 

 海道 義光の裏の顔を知っても、手出しできない現状に、ハンゾウはやり場のない怒りを覚える。

 一方バンは、そんな人物の屋敷に父親である山野博士が幽閉されていると分り、救出に暗雲が立ち込めるのを感じていた。

 

 イノベーターの首領である以前に、海道 義光は現職の大臣。当然、屋敷の警備は最高クラスのものが整えられているだろう。

 警備員を始め監視カメラや各種センサー、更にはドローン等々。まさに、蟻一匹通さない態勢。

 

 折角、苦労して判明した山野博士の居場所。このまま何もできずに過ごす事しかできないのか。

 そんな歯痒さを露わにするバン。

 アミ達も、少なからずそんな思いを募らせていた、そんな時であった。

 

「なら、このデータが役に立てるんじゃないかしら?」

 

 不意に、バンには聞き覚えのある女性の声が聞こえ、声の方へと視線を向ける。

 他の面々も視線を向けた、そこにいたのは、ブルーキャッツへと入店してきた眼鏡をかけた一人の女性。

 バンにAX-00を手渡したあの女性であった。

 

「貴女は……」

里奈(りな)!」

「どういうことだ?」

 

 どうやら、拓也と檜山の二人は、里奈と呼ばれた女性とは面識があるようだ。

 

「海道 義光の屋敷のデータよ」

「な! どうやってそれを!?」

「説明は後。兎に角、山野博士を救出したいんでしょ? だったら、一刻も早くこのデータを基に、救出の為の作戦を練りましょう!」

 

 里奈、本名石森 里奈(いしもり りな)は、ポケットから海道 義光の屋敷のデータが入っているとされるUSBメモリを取り出す。

 これには、拓也をはじめバン達も驚きを隠せない。

 だが、バンにとっては降って湧いたようなチャンス。里奈の提案に賛同すると、早速、里奈を交えて山野博士救出の為の作戦を練り始めるのであった。

 

 一方、そんなバン達を他所に、凛空は、里奈に対して少々訝しげな視線を向けるのであった。

 

 

 

 

 あの後、里奈と簡単な自己紹介を交えた凛空達は、里奈が屋敷を設計した海道建設の系列会社のネットワークに侵入し手に入れた海道 義光の屋敷の設計図を解析するべく、その解析を行える場所に移動する運びとなった。

 その場所に関しては、既にハンゾウは足を運んだことがあるようで、凛空達を連れて行く事に少々抵抗感を示す。

 だが、凛空達は既に大事な仲間であるとの檜山の言葉を受けて、ハンゾウも納得するのであった。

 

 そして、一行は、拓也の運転する車に乗りブルーキャッツを後にすると、一路とある場所を目指すのであった。

 

「そうだ、あの場所に着く前に、お前達に俺達の関係を話しておかなければならんな」

「はい、"レックスさん"!」

「レックスさんは固いな。俺の事は、気軽にレックスと呼んでいい」

「はい、レックス」

「他の皆も、俺の事はレックスと呼んでくれ」

 

 その道中、時と場合による時はあるものの、基本的にレックスと呼ぶことが決まった所で、レックスは拓也や里奈との関係性を話し始める。

 曰く、三人は元々タイニーオービット社の研究開発室で共に働いていたとの事。つまり、三人はLBXが生まれたその場所で働いていたのだ。

 そして三人は、当時在籍していた山野博士の助手を務めていたのだそうだ。

 

 これには、バンも驚きの声をあげた。

 

 更に驚くべきことに、レックスと里奈の二人は、五年前の山野博士誘拐の際、山野博士と共に誘拐されたとの事。

 そして、山野博士がイノベーターの研究所から逃走を図った際、レックスのみが逃走に成功した事も打ち明かした。

 

「すまなかったな。今まで黙っていて」

「いえ……」

「里奈、お前にも色々と苦労をかけてすまなかった」

「気にしないで」

 

 一拍置くと、レックスは山野博士の偉大さについて話し始めた。

 

「バン、お前の親父さんは天才だよ。エターナルサイクラーは、元々博士がLBXの効率化モーターの研究中に発想を思いついたものだからな」

 

 新型モーターの開発中に無限稼働機関を思いつく、おそらく常人では考えられない山野博士の頭脳に舌を巻くレックス。

 

「それはまさに、人類にとっての希望と絶望。プラチナカプセルをバン君、貴方に託したのは、世界中の誰よりも信頼できるのが、貴方だったからでしょうね」

「父さん……」

 

 父親である山野博士の想いを知り、気を引き締め直すバン。

 

「さ、もうすぐ目的地に到着するぞ」

「え? あれって……」

 

 ふと、レックスが目的の場所が近い事を告げると、凛空達は一様に車窓から流れる夜の景色に視線を向ける。

 そこで目にしたのは、夜の闇を眩く照らすかの如くライトアップされたとある施設。

 休日などは多くの家族連れで賑わいを見せる、トキオシアと呼ばれる巨大デパートであった。

 

 

 

 

 拓也の運転する車は程なく、トキオシアデパートの敷地に進入し、そのまま地下にある駐車場へと進む。

 そして程なく、一行を乗せた車は、駐車場の一角に駐車した。

 

「レックス、ここが言ってた場所?」

「まぁ待て」

 

 特に機密性の高い場所とは思えぬ場所に到着し困惑するバン。

 しかし、レックスは見ていれば分かると言わんばかりに、自身のCCMを操作する。

 

 すると、突如として、駐車したスペースがエレベーターの如く降下を始める。

 

「えぇ!? 何!?」

「デパートの地下の、更に下!?」

 

 まさか地下の更に地下に降りるとは想像もできず、アミやカズは驚きの声を漏らす。

 程なく、秘密の地下駐車場に到着すると、一行を乗せた車は秘密の地下駐車場に駐車するのであった。

 

「さ、行くぞ」

 

 レックスの合図と共に、車を降りた一行は、秘密の地下駐車場の一角にある厳重なゲートの前に立つ。

 

「郷田は来た事あるんだ!?」

「まぁな。だが、驚くのはまだ早いぜ。この先にあるものを見れば、もっと驚くぜ」

 

 ゲートのロックを解除した拓也を先頭に、ゲートの先に続く通路を歩いていく一行。

 程なく、通路の角に設けられた秘密の通路を進んでいく。

 

「さ、ここだ」

 

 そして、秘密の通路の先にある扉のロックが解除され、扉が開かれる。

 刹那、その先に広がっていたのは、まるで映画やアニメの中に登場する秘密基地の司令部かの様な光景であった。

 

「何、ここ?」

「拓也さん、ここは一体!?」

「ここは、イノベーターの様なテロリスト対策組織、"シーカー"の本部だ」

「すげぇ! まるでSF映画の世界だぜ!」

「分かる! いいよね、こういう地下の司令部!」

 

 呆気に取られるバンとアミを他所に、カズと凛空は興奮している様子。

 そして、そんな二人の様子を、ミカは羨ましそうな様子で見つめていた。

 

「ここにいる者達は、皆、イノベーターの陰謀を阻止するという志のもとに集まった仲間達だ」

「エターナルサイクラーの悪用を防ぐため」

「それだけじゃないわ。海道 義光は、LBXをテロの道具として利用し、世界を混乱の渦に巻き込もうとしている」

「財前総理暗殺の時みたいにですね!」

「そんなの、絶対に許せない!」

 

 憤慨するバンとアミを他所に、早速海道 義光の屋敷の設計図の解析を始めるレックスと里奈の二人。

 必ず父親を救出し、イノベーターの陰謀も阻止してみせると改めて心に誓うバン。

 

「あれ?」

 

 そんなバンは、ふと、別の入り口から姿を現した者達の存在に気がつき、声を漏らした。

 何故なら、その者達はバンにとって見知った者達であったからだ。

 

「よ! バン!」

「リュウ! それに、ゴウダ三人衆も!」

「え!?」

「な! 本当だ、何でここに!?」

 

 バンの声を聞き、アミとカズ、それに凛空とミカの二人も声のする方へと視線を向ける。

 そこにいたのは、リュウとゴウダ三人衆の面々であった。

 

 どうして四人がシーカーの本部にいるのか尋ねると、ハンゾウが代わりに、四人もシーカーの一員である事を答えた。

 そして、この四人を含め、何故自分達がシーカーの一員として選ばれたのかという質問に対しては、ハンゾウの代わりに拓也が答え始める。

 

 曰く、イノベーターとの戦いにおいてはLBXが主要な戦力となる。そこで、近年の研究において、LBXの操作は大人よりも子供の方が優れている場合が多いとの研究結果を鑑み、機体の性能と高い操作技術を有する少年少女達、つまり凛空達が選ばれたのだという。

 

「急にそんな事言われてもな……」

「カズ、覚悟を決めましょう! イノベーターの陰謀を知ってしまった以上、私達の手でそれを止めるのよ!」

(カズの反応はごもっともだな。テロを阻止するためとはいえ、そのやり方は、第三世界で少年少女に銃を持たせて戦わせるのとなんら変わらない。せいぜい、銃を使うか、LBXを使うかの違い程度だ)

 

 当惑するカズに活を入れるアミの様子を横目に、凛空はそんな事を思うのであった。

 

「大丈夫、できるさ! これだけの仲間がいれば!」

「って言っても、アタイ達、これからどんな事になるのか実感がわかないけどね」

「話を聞いた時は、ビックリしたでごわす!」

「それに、俺達はイノベーターって奴らとは戦っちゃいねぇしな」

「俺達だって、ただ夢中でやってきただけだよ」

「でも以外ね、リュウが選ばれるなんて」

「アミちゃん、実は隠してたが、俺、操作の方も相当──」

「リュウはメカの知識を買われたんだろ?」

「カズ、それを言うなよぉ……」

 

 それぞれの長所を生かす事で最高のチームとして機能する。

 拓也のそんな言葉を聞き、バンは改めて、自分達の手で山野博士を救出し、イノベーターの野望を阻止する事を宣誓するのであった。

 

 

 それから暫く、各々が屋敷の設計図の解析が終了するまでの間の暇つぶしを行い。

 程なくして、シーカー本部内が暗転すると、中央部分に海道 義光の屋敷の巨大ホログラムが映し出され、それと共に、モニターに屋敷の細部が表示される。

 避難用シェルターも兼ねた地下の巨大格納庫、敷地内や屋敷内の各所に設置された監視カメラやセンサー類。そして、要所要所に配置された大量の警備員。それはまさに、屋敷というよりも要塞と呼ぶに相応しい様相であった。

 

「見ての通り、海道邸に正面から侵入するのは不可能だ。だが、里奈の持ち込んだ設計図を解析した結果、潜入経路として利用できそうなものを見つけた、それがこれだ」

 

 刹那、モニターの表示が切り替わり、グレースヒルズ内にあるとあるショッピングモールが映し出される。

 

「このショッピングモールにある噴水には、海道邸につながる隠し通路がある事が判明した」

「何、それ?」

「おそらく、万が一の際の逃げ道として用意されたものだろう。その隠し通路を、今回は逆に利用する」

「お、ラッキー、潜入は案外簡単そうじゃん」

 

 ミカの疑問にレックスが答えると、事はそう簡単ではないと、レックスはリュウに注意を促すとさらに説明を続けた。

 

「残念ながら、隠し通路内も要所に警備員が配置され、カメラやセンサー、更には警備用のLBXが配備され、警備体制に抜かりはない」

「まさに鉄壁か……」

「でも、これだけ情報があるなら、現地に行ってみましょう! もしかしたら、上手く潜入できるかもしれない!」

「おいおい、焦るなバン」

 

 一通りの説明を聞き終えたバンは、一刻も早く山野博士を救出したい、そんなはやる気持ちを抑えられずに、今すぐ現地に行く事を懇願する。

 だが、そんなバンに、里奈が待ったをかけた。

 

「バン君、落ち着いて。海道邸に潜入するのなら、明日の夜を狙うべきよ」

「明日の夜?」

「明日の夜なら、海道は政府の会合に出席する為屋敷を留守にするわ。だからその時なら、屋敷の警備も手薄になり、潜入し易くなる筈よ」

「……分かりました」

 

 こうして、バンがはやる気持ちを抑えた所で、海道邸への潜入決行日が明日の夜に決定した。

 

 その後、改めて作戦の概略が説明され、決行日時と集合場所、更に細かな確認事項などを経て、海道邸潜入のブリーフィングが終わりを告げ、その日は解散する運びとなり、各々が帰路につくのであった。




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