うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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皇帝と第四の騎士

 翌日、いつも通りに学校に登校した凛空達は、いつも通りに授業を受け、昼休み。

 いよいよ今夜に迫った海道邸への潜入に向けて、凛空達は屋上に集まり、それぞれの意気込みを語り合っていた。

 

「いよいよ今夜ね」

「おう、頑張ろうぜ!」

「そうだね。皆で力を合わせて、山野博士を助けよう」

「ん」

 

 意気込みを語る凛空達を他所に、バンは一人、真剣な面持ちで何かを考えている。

 

「そう言えばさ、考えてみると、バンがアキレスを手に入れてから面白れぇ事ばかりだったな」

「本当」

「ま、乗り掛かった船って言うにはヤバすぎるけどな」

「あらカズ、降りるの?」

「んな訳ねぇだろ! ここまで来たんだ、最後まで付き合ってやるよ!」

「そうよね、そうこなくっちゃ!」

「むしろ、ここで降りたら針のむしろだしね」

「視線が、刺さりまくる」

「皆……」

 

 そして、凛空達に真剣な様子で声をかけるバン。

 それを受けて、凛空達は正直な胸の内を語り始めた。

 

「こんな事でも言ってないと、正直怖いのよ」

「だよな」

「そうだね、何せ今回潜入するのは表向きには現職大臣の屋敷。下手をして捕まれば、ね……」

「札付き」

 

 本当は怖さもある、そんな胸の内を聞いたバンは、意を決したように語り始めた。

 

「皆……。所で、今夜はどうやって家を抜け出すつもり?」

 

 刹那、真剣な面持ちで海道邸への潜入に対して思考を巡らせていたのかと思いきや、今夜自宅を抜け出す口実を考えていたと知り、凛空達は思わず吹き出した。

 

「ったく、真剣な様子で何考えてたのかと思えば……」

「でも、バンらしいよね」

「酷いなぁ、カズ、アミ」

「バン、適当な口実が思いつかいないのなら、また僕の家に遊びに行く事にするのはどうかな?」

「ありがとう、凛空!」

 

 こうして、バンの悩みも解消された所で、昼休みの終了を告げる予鈴が鳴り、凛空達は各々の教室に戻るべく屋上を後にするのであった。

 

 

 

 

 そして、午後の授業を終え迎えた放課後。

 凛空達は前日に決めた集合場所に向かうべく、先ずは準備を整える為に各々一目散に帰宅する。

 

 凛空も、一目散に帰宅すると、自室で必要なものをバッグに詰めていき準備を整える。

 そして、両親には友達の家に遊びに行き夕食もそこでご馳走になると言って、自宅を後に集合場所を目指した。

 だが、その矢先。

 

「ん?」

 

 不意に、凛空の行く手を遮るかのように、黒塗りの高級車が路肩に停車すると、その高級車から、白い燕尾服を身にまとった見知った人物が降りてくる。

 

「貴方は、ジン君の執事さん?」

「突然のご訪問、困惑の事とは思います」

 

 ジンの執事は、丁寧に頭を下げると、次いで突然凛空のもとを訪ねた理由を話し始めた。

 

「実は、凛空様の事をジンお坊ちゃまがお呼びなのです」

「え?」

「ですので、どうかご同行いただけないでしょうか?」

 

 その理由を聞き、凛空は当惑する。

 海道邸への潜入決行を間近に控えたこのタイミング、しかも、対面場所となるのは、ジンにとっては自宅となる海道邸。

 しかも、もしここで断れば、潜入の際に悪影響を及ぼすかもしれない。

 

 想定していなかったこの事態に、凛空は考えた末、ジンの執事に同行する旨を伝えた。

 

「それでは参りましょう」

(皆、ごめん……)

 

 こうして、ジンの執事が運転する黒塗りの高級車に乗り込んだ凛空は、一路海道邸を目指すのであった。

 

 

 数十分後、無事に海道邸に到着した凛空は、ジンの執事に案内されてジンのもとを目指していた。

 和洋折衷、独特のセンスが随所に光り、まるでサイバーでパンクな世界に登場する日本をイメージしたかのような海道邸の内装に目移りしつつ、ジンの執事についていく凛空。

 

 そして、歩く事数分。

 漸く、ジンの執事に案内されて、凛空はとある部屋に足を踏み入れた。

 その部屋も、和と洋が混ざり合った独特のセンスが光り、部屋の中央には、Dキューブが設置されている。

 

「お坊ちゃま。凛空様をお連れいたしました」

「そうか、ご苦労」

 

 その部屋の主であるジンは、早速執事に労をねぎらうと、次いで凛空を迎え入れる。

 

「凛空君、先ずは少し話をしないか?」

「え、うん、いいよ」

「そう身構えなくても大丈夫さ。お爺様には、君が来ることは既に伝えてある。君は僕の大切な客人、危害を加えるつもりはない」

 

 一瞬何かの罠かと勘ぐった凛空だったが、ジンの言葉に嘘偽りはないと判断すると、ジンに促されるがままに椅子に腰を下ろす。

 対面に座るジンを見据えていると、ジンの執事が用意した紅茶が出される。

 

「ハーロッズのアールグレイ、ストレートでございます。ご利用とあれば、ミルクもご用意いたします」

「ありがとうございます」

 

 アールグレイ特有の柑橘類の香りが立ち込める中、凛空は出された紅茶を一杯口にする。

 そして、ジンも紅茶を一杯口にした所で、ジンがゆっくりと話しを始めた。

 

「凛空君。君は、僕の事を何処まで知っているんだい?」

「海道大臣の孫、というぐらいかな」

「ふ、そうか。では、少し昔話をしよう。……九年前、トキオブリッジ崩壊事故、君は覚えているかい? いや、君は覚えている筈だ! 何故なら、君は僕と同じく被災者の一人だから」

「っ!」

「そして、僕と君は、出会っていたんだ。搬送された先の病院で」

「え!?」

「尤も、君は僕の事を覚えていないだろう。別の病室にいた君の事をチラリと見た程度だからね。だが、僕はその時の事をよく覚えている。被災した君の無事を心の底から喜び涙を流す両親に抱きしめられる君の姿をね」

 

 同じトキオブリッジ崩壊事故の被災者である事は原作の知識からも知っていたが、まさか搬送された病院が同じだったとは思わず、凛空は驚愕する。

 

「話が少し逸れてしまった。……あの事故を切っ掛けに、僕の人生は大きく変わった。本当の両親を失った僕はお爺様、海道 義光の養子となり、海道家の人間として恥ずべきことが無いよう、特別な教育。君もサイバーランス社の御曹司ならば分かるだろ、所謂帝王学を受けてきた」

 

 そして、ジンは再び紅茶を口にして一拍置くと、再び話を続きを始める。

 

「勿論、LBXプレイヤーとしても一流であるべく、辛い練習を行ってきた。勿論、途中で逃げ出したくなる衝動に駆られた事もある。だがそんな時は、僕に優しい手を差し伸べてくれたお爺様の気持ちに応える為と奮起し、乗り越えてきた」

「お爺さん……、海道大臣が大好きなんだね、ジン君は」

「今の僕にとっては、お爺様だけが唯一の家族だからね」

 

 そして、再び紅茶を口にするジン。それにつられて、凛空も紅茶を口にする。

 互いに紅茶を口にし終えた所で、今度は凛空が口を開いた。

 

「所で、どうして僕にそんな話を?」

「僕にも、正直な所分からない。ただ、君になら、僕の身の上話を話してもいい、そんな気がした」

「……」

「さて、話はここまでにしておこう。今日、君を呼んだのは、僕の身の上話を聞いてもらう為じゃない」

 

 すると、ジンは徐に、テーブルの上に一機のLBXを置く。

 外観こそジ・エンペラーと同様、更には武器もティターニアと、一見すると何の変化もないように思える。

 しかし、内部のコアパーツ、特にCPUが最高クラスの物に変更されている為、総合的な性能ではジ・エンペラーを凌駕する。

 原作知識から、そんな目の前の機体こそジ・エンペラーの改良型、"エンペラーM2"であると判断する凛空。

 

「バトルの決着をつける! その為に、今日君を呼んだんだ」

「決着? 決着ならアングラビシダスの準決勝で……」

「僕が言っているのは、エンジェルスターでのバトルの決着だ!」

 

 凛空は何となく予想はしていたが、やはり、ジンはアングラビシダス準決勝でドムを使用したあのバトルでは、決着がついたものと納得はしていなかった様子。

 

「っ! それってまさか、君が……、マスク──」

「言っておくが、あの趣向は僕の本意ではない! あれは名呉社長、神谷重工側が用意したもので、僕はただ従っただけだ!」

 

 気づいていなかった体で話を進めると、食い気味に反論するジン。

 どうやら、ジンにとってはマスクJの事はあまり掘り下げてほしくないようだ。

 それを察した凛空は、マスクJの話題を切り上げる。

 

「成程。ペイルライダー・キャバルリーと決着をつけたいんだね」

「その通りだ!」

「分かった。その勝負、受けて立つよ!」

「ふ、そう言ってくれると思ったよ」

 

 そして、互いに残った紅茶を飲み干すと、凛空とジンの二人は部屋の中央にあるDキューブへと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 Dキューブの前に立つ凛空とジン。

 お互いのLBXを用意し終えた所で、審判を務めるジンの執事の合図により、Dキューブに広がる草原のフィールドに、ペイルライダー・キャバルリーとエンペラーM2が降り立つ。

 

「バトルスタート!」

 

 そして、開始の合図と共に、シェキナーのジャイアント・ガトリングが唸りをあげて火を噴くと、僅かに遅れて、ハッチ開放と共にマイクロ・ミサイルが放たれる。

 開始直後からの全力攻撃、だがエンペラーM2は、襲い来る弾幕やマイクロ・ミサイルを躱しながら、ペイルライダー・キャバルリーへと迫る。

 だが、ペイルライダー・キャバルリーも間合いに入りこませまいと、スラスターを使って後退しつつ攻撃を続ける。

 

(く、前よりも動きが早い! これがエンペラーM2!)

 

 コアパーツを変更しただけだが、そのお陰で処理能力が向上し、ジンの持つ卓越した操作技術に対して機体側が追い付けることで、機体の動きが目に見えて向上している。

 その動きを持って弾幕を軽々と掻い潜るエンペラーM2の姿を目にし、凛空の体が一瞬小刻みに震えた。

 

(だけど! 負けるわけにはいかない!)

 

 刹那、距離を取るべく後退を続けていたペイルライダー・キャバルリーが一転、前進を始める。

 

「何!?」

 

 シェキナーが唸りをあげながら、エンペラーM2に突っ込んでくるペイルライダー・キャバルリーの姿を目にし、ジンは咄嗟にエンペラーM2を跳躍させると上空に退避させる。

 だが、それこそ凛空の狙いであった。

 

「空中なら、避けられまい!」

〈アタックファンクション、メガ・ビーム・ランチャー〉

 

 次の瞬間、シェキナーに備わった銃口から、空中のエンペラーM2目掛けて巨大な閃光が走る。

 直撃、かと思われた次の瞬間。

 

「っ!?」

 

 エンペラーM2は突如、ティターニアを振り回すと、遠心力を利用して、メガ・ビーム・ランチャーの射軸線上から退避してみせた。

 この芸当に、凛空は一瞬目を見開くが、直ちに気持ちを切り替えると、再びシェキナーによる攻撃を再開させる。

 

「やはり、その火力は厄介だな」

 

 衰える気配のないシェキナーの火力を前に、エンペラーM2が動く。

 多少の被弾を覚悟したのか、その深紫(こきむらさき)の装甲に火花を散らしつつ、最短距離でペイルライダー・キャバルリーに迫るエンペラーM2。

 それを見て、ペイルライダー・キャバルリーも後退しようとしたが、僅かにエンペラーM2の方が早かった。

 

「もらった!」

「く!」

 

 振るわれたティターニアの刃がシェキナーに襲い掛かると、悲鳴にも似た破壊音が響き、シェキナーをひしゃげさせる。

 最早使用不能となったシェキナーをパージすると、ペイルライダー・キャバルリーはバックパックから円筒形の物を掴み取る。

 以前目にしたビームサーベル、かと思われた次の瞬間、柄の部分が伸張すると、先端に、球状に三叉のついた槍状のビームが形成される。

 

 これこそ、ビームジャベリンと呼ばれる武器であった。

 

「ふ、バン君同様、君も僕を楽しませてくれるね。……では、僕もそれに応えよう!」

 

 刹那、エンペラーM2が一旦距離を取ると、ティターニアを地面につける。

 その構えは、アングラビシダス決勝戦で見せたそれであった。

 

「さぁ、地獄の業火で灰となれ!」

〈アタックファンクション、インパクトカイザー〉

「むざむざやられてたまるか!」

〈アタックファンクション、ライトニングランス〉

 

 刹那、エンペラーM2が高らかにティターニアを掲げると、それを勢いよく地面に叩きつけ、発生した凄まじいエネルギーが、ペイルライダー・キャバルリー目掛けて襲い掛かる。

 同時に、ペイルライダー・キャバルリーもビームジャベリンの先端にエネルギーを集中させると、青白く輝く光のランスを形成させると、エンペラーM2目掛けて放つ。

 

 次の瞬間、お互いの必殺ファンクションがぶつかり合い、巨大な爆発を引き起こす。

 そして、大量の爆煙により、Dキューブ内が視界不良となる。

 

「っ!?」

「な!?」

 

 程なく、爆煙が晴れて二人が目にしたのは、お互いの必殺ファンクションがぶつかり合い生じた巨大なクレーター。

 そして、そのクレーターの両端に倒れる、ペイルライダー・キャバルリーとエンペラーM2の姿であった。

 

 相打ち、かと思われたが、二機はゆっくりと立ち上がると、互いの得物を構え直す。

 

 そして、暫し睨み合った次の瞬間、二機は駆け出すと、互いの得物を交えさせる。

 ティターニアとビームジャベリンによる鍔迫り合い、更には、蹴りやタックルを交えた近接戦闘を繰り広げる二機。

 

(決着は、次の一撃……)

 

 深紫(こきむらさき)の装甲の各所に、ビームジャベリンによる斬撃痕を残すエンペラーM2。

 一方、シールド、並びに白い装甲の各所に、ティターニアによる打撃痕を残すペイルライダー・キャバルリー。

 

 少しでも身軽にするべく、最早ひしゃげすぎて使い物にならないシールドを捨てるペイルライダー・キャバルリー。

 

 再び、暫し睨み合う二機。

 次の瞬間。ペイルライダー・キャバルリーがスラスターを噴かせ、エンペラーM2が大地を駆ける。

 刹那、ビームジャベリンとティターニアが交差した。

 

 

 ビームジャベリンはエンペラーM2の頭部を捉えたものの、直撃する事無く、頬をかすめるにとどまった。

 一方ティターニアは、ペイルライダー・キャバルリーの胴体を捉え、見事、ペイルライダー・キャバルリーを機能停止に追い込むのであった。




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