うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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頭上の震える雷電

「ありがとう、ペイルライダー・キャバルリー」

 

 バトルを終え、最後まで死力を尽くして戦った相棒に感謝の言葉を述べながら、Dキューブ内から機体を回収する凛空。

 一方、漸く念願の決着がつき、少し満足げな表情を浮かべながら、同じくエンペラーM2を回収するジン。

 

「凛空君。戦ってくれて、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう」

 

 そして、回収を終えた所でジンから握手を求められる凛空。

 それに応じ、互いの健闘を称えるかの如く、凛空はジンと握手を交わす。

 

 こうして、二人が握手を交わし終えると、不意に、ジンが何かを思い出したかのように話を始める。

 

「そうだ、凛空君。今、君の友達がこの屋敷にやって来ているのは知っているかい?」

「え?」

「生憎と、招待した訳ではないので不法侵入になるけどね」

 

 どうやら、ジンとLBXバトルをしている間に、バン達は海道邸への潜入を決行した様だ。

 しかし、バン達の潜入は、既にジンたちの知る所であった。

 

「今は、お爺様が彼らの相手をしているよ」

 

 そう言うと、ジンは部屋の一角に設けられた大型モニターに視線を向ける。

 それにつられて、凛空も大型モニターに視線を向ける。すると、大型モニターに映し出されたのは、屋敷の大広間と思しき部屋の様子であった。

 

 

 

 

 その大広間にて、事前の情報では本日は不在の筈の海道 義光が、バン・カズ・アミの三人と対峙している。

 

「"月光丸"、このLBXに勝てたのなら、父親を返してやろう」

 

 海道 義光がバンに提示した条件、それは、シミ一つない白のテーブルクロスがかけられたテーブルの上に降り立った白銀のLBX。

 鎧を彷彿とさせる装甲、頭頂部の三日月を模した頭飾り、背面の日輪の様なブースターユニット。

 まるで日輪を背に佇む侍の如く外観、そして醸し出すその雰囲気は、異様な迫力。

 カメラ越しにでも、凛空は月光丸が従来のLBXとは一線を画す機体であると感じ取る。

 

 当然ながら、直接目にしているバン達三人も、直感的に危険を感じ取ってか、冷や汗を流し始める。

 

「どうした? 山野 バン。君達の得意なLBXバトルで勝てれば、父親を返してやると言っているのだ。異論はあるまい?」

「バン、これは罠だ……」

「そうよ。バン、ここは一旦退いてから……」

「やってやるさ! いくぞアキレス!!」

 

 カズとアミの制止を振り切り、バンは月光丸とのバトルに臨むべく、テーブルの上にアキレスを降り立たせる。

 

「三人一緒でも、構わんぞ」

 

 そして、海道 義光の言葉を聞き、カズとアミの二人も、意を決した様にハンターとクノイチをテーブルの上に降り立たせた。

 

 如何に危険な雰囲気を醸し出そうと、三対一ならば数の有利を生かして勝機を掴める。

 そう思っていたバン達三人だったが、バトルが始まると、それが甘い考えである事を思い知らされる。

 アキレスとクノイチの連続攻撃を軽々と躱し、更にはハンターの狙撃を、その鈍重な見た目に反した俊敏な動きで躱してみせる月光丸。

 

「それで終わりかね? では、こちらからいくぞ」

〈アタックファンクション、月華乱舞〉

 

 刹那、月光丸は手にした刀、ムラマサを構えると、ムラマサにエネルギーを集約させる。

 そして次の瞬間、ムラマサを振るうと、ムラマサに集約させたエネルギーを衝撃波として繰り出した。

 

 その威力は凄まじく、クノイチとハンターは、その衝撃波を受けて片脚と片腕を失い機能を停止する。

 一方、アキレスは間一髪の所でアキレスシールドを構えた事により直撃は免れたものの、機体の各所から火花が飛ぶほどのダメージを負ってしまう。

 

「ほぉ、あれを耐えたのか。……しかしその様子では、最早まともに戦えまい」

「く!」

 

 絶体絶命のピンチ、そう思った次の瞬間。

 

「バン! 大丈夫か!?」

「郷田!?」

「アミちゃん! 大丈夫!?」

「リュウ! それにミカも!」

 

 大広間の扉を勢いよく開け、ハンゾウ・リュウ・ミカの三人が姿を現す。

 テーブルの上に広がる惨状を目にした三人は、瞬時に状況を察すると、各々のLBXをテーブルの上に降り立たせた。

 

「ふ、よかろう。第二ラウンドの開始といこうじゃないか」

「いくぞミカ、リュウ!」

「了解!」

「や、やってやる!」

「海道、その余裕ぶった顔をしてられるのも今の内だ!!」

 

 威勢のいい台詞と共に、ハカイオーが月光丸に突撃し、その後をアマゾネスが続く。

 一方のブルド改は突撃する二機を援護するべく、装備したロケットランチャーを構える。

 

「おらぁぁぁっ!!」

 

 肉迫したハカイオーの破岩刃が月光丸に迫るも、月光丸はムラマサを使い破岩刃を受け止めると、そのまま押し返す。

 刹那、押し返された際に生まれた隙を突かれ、ムラマサの一閃がハカイオーを襲い、ハカイオーは機能を停止する。

 

「バカな!?」

 

 ハカイオー自慢のパワーが、月光丸に負けた事に驚愕するハンゾウ。

 一方、ハカイオーに意識が向かっている内に、死角に回り込んだアマゾネスは、死角からパルチザンによる一撃を月光丸に浴びせようとした。

 

「っ!」

 

 だが、月光丸は俊敏な動きでそれを躱すと、逆にアマゾネスに対してムラマサによる一撃を浴びせ吹き飛ばす。

 

「うわぁぁ、くるなくるな!」

 

 そして、最後に残ったブルド改を目指し、ゆっくりと歩み寄る月光丸。

 ブルド改はロケットランチャーを撃ち続けるも、月光丸は飛来する弾頭をいとも簡単に躱し、程なく、足がすくんでしまったブルド改に引導を渡すべく、ムラマサを振るった。

 

「ふん、他愛ない」

 

 こうして、圧倒的な力の差を見せつけた月光丸は、トドメを刺すべく、ゆっくりとアキレスに近づき始める。

 だがその途中、何かに気がつくと、月光丸はその足を止めた。

 

「まだ、終わってない」

「ほぉ……」

 

 それは、ふらつきながらもゆっくりと立ち上がったアマゾネスの姿であった。

 どうやら、先ほどの一撃、間一髪の所でハードバックラーを使い致命傷を避けたようだ。

 

「凛空なら、たとえ、どんなに困難な状況でも、最後まで諦めない。だから、私も、最後まで諦めない!」

「ふ、よかろう。では、かかってくるがいい」

 

 刹那、アマゾネスは月光丸目掛けて駆ける。

 そして、瞬時に懐に飛び込むと、パルチザンによる一撃を繰り出す。

 

 だが、月光丸は最早見切ったかのようにそれを躱すと、アマゾネスにその見た目通りの重たい蹴りをお見舞いし吹き飛ばした。

 

〈アタックファンクション、月華乱舞〉

 

 そして、再び幾つもの衝撃波をアマゾネス目掛けて繰り出す。

 次の瞬間、衝撃波により文字通り機体が切り刻まれたアマゾネスは、最後の輝きを放つのであった。

 

 

 

 

 勝負がついた所で、大広間に姿を現した、黒のスーツにサングラスという出で立ちの屈強な男達、海道 義光のボディーガードに身柄を拘束されるバン達。

 その際、各々のCCMも取り上げられ、最早バン達に抗う術は残されていなかった。

 

 だが、まだレックス達が助けに来てくれる。

 そんな 一縷の望みを抱いていたバン達だったが、その直後。

 

「レックス! そんな……」

 

 海道 義光のボディーガード達に連行されるレックス達の姿を目にし、それは脆くも崩れ去るのであった。

 

「まさか、こんな形で再会するとはね、檜山君」

「どういうことだ! お前は、政府の会合に出席してるんじゃなかったのか!?」

「くそ、裏をかかれたという訳か。……だが、どうして俺達の計画を!?」

 

 拓也の質問に答える事無く、海道 義光はボディーガードに誰かを連れてくるように指示する。

 程なく、ボディーガードに連行され、くたびれたワイシャツ姿の眼鏡をかけた男性が一人、大広間に姿を現した。

 

 バンは、その男性の姿を目にするや、目を大きく見開いた。

 

「山野博士!」

「え、山野博士!? という事は、あの人がバンのお父さん!?」

 

 レックスの言葉を聞き、その男性がバンの父親である山野博士であると知り、驚愕するアミ達。

 一方、山野博士はバンの存在に気がつくと、バンに声をかける。

 

「大きくなったな、バン」

「父さん……、父さんなんだね!」

 

 感動の親子の再会。

 だが、状況は再会の喜びを噛みしめられるようなものではなかった。

 

「さて、感動の再会も終えた所で。……君達には、この世から"永遠"に消えてもらうとしようか?」

 

 海道 義光の口から零れた言葉を聞き、バン達の間に緊張が走った。

 

「アキレス、いや、プラチナカプセルが手に入った今、もう君達は"用済み"なのだよ」

 

 刹那、ボディーガード達が険しい表情と共にバン達に迫る。

 それを見て、先ほどの海道 義光の言葉が、言葉の綾なのではなく、本気である事を知るバン達。

 

「いやだぁぁぁっ! 俺まだ死にたくねぇよぉぉっ!!」

 

 刹那、余りの恐怖に耐えかね、リュウが大粒の涙を浮かべて泣き叫ぶ。

 すると、そんなリュウにボディーガード達の意識が向けられた、その瞬間。隙を見たハンゾウと拓也が近くのボディーガードにタックルを仕掛ける。

 

 更に、拓也は一気に海道 義光のもとへと駆け寄ると、靴底に隠していた隠しナイフを海道 義光の首に突きつけた。

 

「海道先生!」

「全員動くな! さぁ、ゆっくりと離れてもらおうか」

 

 海道 義光を人質にした事で形勢はバン達の優勢となり、ボディーガード達は拓也の言う通りバン達から距離を取る。

 だが、そんな中、海道 義光は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「そのナイフを、下ろしなさい!」

 

 その意味を、バン達は直後に知る事となる。

 里奈が、拓也の背後に立ち、手にした自動拳銃の銃口を拓也に向けた事で。

 

「里奈! まさかお前が俺達の計画を海道に流したのか!? あの地図も、俺達をこの部屋に誘い込むためか!」

 

 まさかの裏切りにバン達が困惑する中、里奈は再び拓也に対して隠しナイフを捨てるように命令する。

 刹那、拓也は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべ隠しナイフを捨てると、ゆっくりと海道 義光から離れていく。

 

 こうして、状況は再び海道 義光の優勢となった。

 

「スパイを送り込むのは、君達だけかと思ったかね?」

 

 その時、拓也の胸ポケットに入れていた携帯電話に電話が入る。

 こんな状況で電話に出られる暇などないと思っていたが、海道 義光に促され、拓也は電話に出る。

 そして、電話の相手から伝えられたのは、衝撃的な事実であった。

 

 それは、シーカーの本部が謎の武装集団、おそらくイノベーターの実動部隊と思しき集団により占拠されたというものであった。

 だが、幸いと言うべきか、何者かの通報があり、シーカーの隊員達は無事であった。

 

 とはいえ、本部を占拠された事により、シーカーは事実上壊滅したも同然であった。

 

「里奈! どうしてだ、どうして裏切った!」

「私が代わりに答えよう。彼女には、君達を裏切ったとしても手に入れたいモノがあったのだよ。神谷重工の、いや、私達イノベーターの持つ"オプティマ"の技術だ」

 

 オプティマ。その単語が出た瞬間、拓也は全てを理解したかの如く目を見開いた。

 

「そうか、妹さんの治療に必要だったのか、オプティマが」

 

 オプティマ、それは神谷重工がアンドロイド用に開発した人工臓器技術。

 元々はアンドロイド用ながら、人間にも応用する事が可能で、それは、世界中で難病に苦しむ多くの人々の命を救う事につながる。

 だが、既にオプティマは完成しアンドロイド用に生産が行われているものの、現在までに、オプティマを医療機器として使用する認可は下りていない。

 

 それは、拓也曰く、金のなる木を独占するべく、海道 義光が関係機関に圧力をかけ、認可を止めているからだという。

 

「分かったかね? 彼女は君達ではなく、妹を選んだのだよ」

 

 つまり、妹の病気の治療の為にオプティマが必要である里奈は、妹の命を救うべく、海道 義光の側についたという事だ。

 人の命を弄ぶかのような海道 義光の行為に、バン達は憤慨する。

 だが、当の本人は、歯牙にもかけない様子で再び話を始めた。

 

「さて、無駄なお喋りはここまでにしておこう。……山野博士、いかがかね? ご自身の希望が潰えたご感想は? では、貴方には、絶望を味わいながらゆっくりと死んでもらおう」

「……ふ、それはどうかな?」

「今更強がりかね?」

「そうではない。残念ながら、お前の欲しがっているエターナルサイクラーの設計図は、プラチナカプセルを手に入れただけでは手に入らない」

 

 山野博士の発言に、海道 義光は眉を顰める。

 

「設計図を開くには、データを解読する為のコードが必要なのだ」

「解読コードだと?」

「そう。つまり、今のままでは鍵をなくした金庫と同じだ!」

 

 山野博士に出し抜かれたと知るや否や、海道 義光は顔を歪ませる。

 だが、直ぐに表情を元に戻すと、平静を装いながら再び話を始める。

 

「成程、考えましたね。……それで? その解読コードは何処にある?」

「……」

「答えぬつもりか? では、息子がどうなっても構わないのかね?」

 

 刹那、ボディーガードがバンの肩に手を置き、今にも危害を加えそうな素振りを見せる。

 それを見て、山野博士は観念したように答え始めた。

 

「解読コードは、世界で最も安全な場所にある」

「何?」

「そう、"LBX世界大会アルテミス"にな!」

 

 刹那、まさかの名前に、海道 義光のみならず、バン達も驚きを禁じ得ない。

 

「解読コードがアルテミスにあるだと、どういう事だ!?」

 

 海道 義光の問いに、山野博士はゆっくりと説明を始める。

 曰く、解読コードは、今年のアルテミスの優勝賞品である"メタナスGX"の中に隠したという。

 

 メタナスGX、それはクリスターイングラム社が開発したCPUであり。山野博士曰く、ゼタFLOPS級の高速演算子をコプロセッサ化し超並列演算を可能にした夢のCPU、との事。

 だが、メタナスGXはその高性能故に製造コストも高く、生産数が極端に少ない事から比例して希少価値も高くなり、その価格は、一つ数億クレジットは下らないものになる。

 とはいえ、その性能故に、LBXプレイヤーならば一度は手に入れたい垂涎の的。

 

 当然、アルテミスの優勝賞品に選ばれた事で、それを不正な方法で手に入れようとする不埒な輩も現れる。それを見越して、主催団体であるオメガダインにより徹底的な情報統制等、大会当日まで、厳重に保管される事となる。

 

 では、そんなメタナスGXの中に、山野博士はどうやって解読コードを組み込んだのか。

 山野博士曰く、クリスターイングラム社にハッキングをかけ、製造過程でメタナスGXの中に解読コードを組み込むようにAI回路に細工を施したとの事。

 

「ふざけた真似を! ……だが、解読コードの居場所が分かっただけでも十分だ。我々の力をもってすれば、アルテミスの優勝など容易い」

 

 自信満々に優勝を宣言した海道 義光は一拍置くと、ドスのきいた声と共に、再び死刑宣告を行う。

 

「ん?」

 

 今度こそ、本当に一巻の終わりかと思われた、次の瞬間。

 突如、窓のガラスが割れると、そこから大広間の中に何かが飛び込んできた。

 

 

 

 

「何だ、あれは!?」

 

 それは、既存のLBX、或いはドローンなどとも異なる異形の機械。

 緑を基調とした半球状の巨大な胴体、その中央部には巨大な砲口が設けられ、ザクⅡの頭部が設置されている。

 胴体の左右には飛行姿勢を安定させるための小翼、前後四か所には降着脚が収納され、球体下部には一回り小さな半球部分が存在している。

 

 その機械の名は、"アプサラス"。

 

 そんなアプサラスに取りついた機影がもう一つ。

 スカイブルーを基調としたザクよりも洗礼された外観、頭頂部の角に、両肩のアーマーに設けられた牛の角の様な反り返ったスパイク。そして、左腕に装備したガトリングシールド。

 その機体の名は、"グフカスタム"。その名の通り、プロジェクトMSにより生まれた、近接戦闘を重視したLBX"グフ"を、汎用性を高めるべく再設計した機体である。

 

 そんな二機の乱入に唖然とする一同を他所に、グフカスタムのモノアイがテーブルの上の月光丸を捉えると、グフカスタムは跳躍と共にスラスターを噴かせ、テーブルの上に降り立つ。

 

「ふ、今更助けが来たところで……」

 

 その様子を見て、海道 義光は二機を敵であると認識すと、先ずは向かってくるグフカスタムを排除するべく、自身のCCMを再び手に取り、月光丸の操作を再開する。

 刹那、グフカスタムがガトリングシールドの砲口を月光丸に向けると、月光丸は飛来する弾幕を躱すべく回避行動に移行する。

 

〈アタックファンクション、ヒート・ロッド〉

 

 だが、グフカスタムはガトリングシールドで攻撃する事無く、回避行動に移行した所に右腕に内蔵したワイヤー状の電磁鞭を射出した。

 刹那、先端の鈎爪が月光丸を捉えると、ワイヤーを伝って高圧電流が月光丸に流される。

 

「く! 小癪な真似を!!」

 

 CCMの画面に表示された、月光丸がスタン状態である事を示す、状態解除までのカウントダウンを目にし、海道 義光は眉間にしわを寄せる。

 

「……だが、月光丸を一時的に行動不能した所で、この状況からどうやって逆転しようというのかね?」

 

 月光丸を一時的に行動不能に陥れても、大広間には、まだ大勢のボディーガード達がいる。

 所詮は無駄な足掻きであると、海道 義光が口にした次の瞬間。

 

 空中で静止していたアプサラスが動き出した。

 アプサラスはその見た目に反した素早い動きでバン達の上空へと移動する。

 そして、次の瞬間。巨大な砲口が開口すると、砲口から勢いよく、色鮮やかな黄色の煙を勢いよく噴出し始めた。

 

「海道先生!」

「危険です! 早く避難を!」

 

 その黄色い煙を見たボディーガード達は、直感的に危険を感じ取り、主である海道 義光の安全を確保するべく彼のもとに駆け付ける。

 

「皆、今の内だ!」

 

 すると、それによりバン達の包囲に穴が開いたので、レックスの声と共に、バン達は包囲から脱出するべく動き出す。

 

「くそ、待て! ぬ!」

 

 それを見たボディーガードが慌ててバン達を捕えようとするも、煙を噴出しながら大広間を縦横無尽に飛び回るアプサラスに阻まれ、近づく事は叶わなかった。

 

「アキレス、よかった……。そうだ、CCMは?」

 

 混乱する大広間の中、テーブルの上からアキレスを無事に回収したバンは、取り上げられたCCMを探し始める。

 するとバンは、自身のCCMを手にしたジンの姿を捉える。

 

 CCMを返さないつもりかと思われた、次の瞬間。

 ジンは手にしていたバンのCCMを、バンのもとへと投げ返す。更には、残りの五人のCCMも投げ返した。

 

「早く行け」

「いたぞ! あそこだ!」

 

 どういうつもりなのか、ジンの真意を問いただしたい所ではあったが、今はボディーガード達の魔の手から逃れるべく足を進めた。

 

「父さん! 一緒に!」

「バン、すまないが、私にはまだやるべきことがある」

「そんな!」

「心配するな、何れ、また会える。それよりもバン、アルテミスでは、必ず優勝するんだ! いいな!」

 

 共に逃げる事を提案したバンだが、山野博士はそれを断ると、大広間の奥へと姿を消してしまう。

 山野博士の後を追いたい衝動に駆られたバンだが、自分達を捕まえんとするボディーガード達の姿を目にし、泣く泣く背を向けて走り出すのであった。

 

 

 大広間から脱出したバン達は、海道邸からの脱出を図るべく、レックスに先導されながら海道邸内の廊下を走っていた。

 幸いと言うべきか、邸内の警備に当たっていたボディーガード達は大半が大広間に集結していた為に、特に妨害に遭う事もなく、事は順調に進んでいた。

 

 しかし、やはりそうは問屋が卸さない。

 

「く!」

「おい嘘だろ、あともうちょっとだって言うのに……」

 

 バン達の行く手を阻むように立ち塞がったのは、数十機にも及ぶデクーカスタムRの大群。

 何とか突破したい所だが、アキレス達は生憎と、月光丸とのバトルで傷ついている為、とてもこの数を相手に戦える状態ではない。

 かといって、迂回ルートを通っている時間の余裕もない。

 

 意を決して、生身で強行突破するしかないのかと、そんな考えが頭を過った、次の瞬間。

 

「え!?」

 

 突如、一筋の閃光がデクーカスタムRの大群の一角に弾着すると、爆発に巻き込まれ、数機のデクーカスタムRが行動不能に陥る。

 この突然の出来事に、唖然とするバン達。

 そんな彼らの耳に、スラスターの噴射音が聞こえてくる。

 

 音の方に視線を向けると、そこには、空を飛びこちらに駆け付ける一機のLBXの姿があった。

 

 紺よりも更に濃い、黒に見える程の暗い藍色、勝色で彩られた装甲を身に纏い。

 頭部は額にV字型ブレードアンテナを有し、人の目を模したツインアイを備え。背部には、大型のビーム砲と六連装ミサイルポッドを備えた大型のバックパックを有する。

 そして両腕部には、外装部にシールドを備えた二連装式ビームライフルを装備し、バックパックのサブアームが保持している四枚のシールドと合わせ、合計で六枚ものシールドを同機は装備している。

 

 まさに高機動・重武装・高火力の化身とも言うべきその機体の名は、"フルアーマー・サンダーボルト・ガンダム"。

 モデルとなった機体が登場する作品名を冠し、独自の改良が加えられた機体だ。

 

「美しい……」

 

 何故かフルアーマー・サンダーボルト・ガンダムの姿を目にして心を奪われている拓也を他所に、デクーカスタムRの大群の前に降り立ったフルアーマー・サンダーボルト・ガンダムは、刹那、スラスターを噴かせて大群の上空に陣取ると、両腕部の二連装式ビームライフルを放ち、次々とデクーカスタムRを破壊していく。

 当然、デクーカスタムRの大群も、装備したスキャッターガンやロケットランチャー等で反撃を行うも、フルアーマー・サンダーボルト・ガンダムの機動力を前に捉える事が出来ず。運よく当てられたとしても、六枚ものシールドに阻まれ、直撃弾を与える事は叶わない。

 

〈アタックファンクション、ミサイルパーティー〉

 

 そして、ある程度数を減らした所で、フルアーマー・サンダーボルト・ガンダムは残ったデクーカスタムRを一掃するべく、機体の各部にある増加装甲内に収納したミサイルを露出させると、それらを一斉に発射する。

 飛来する無数のミサイル、残ったデクーカスタムRは迎撃を試みるも、その全てを迎撃する事は叶わず、無慈悲に弾着するミサイルの数々。

 次の瞬間、幾つのも爆発と共に、残ったデクーカスタムRは爆発音と共に断末魔をあげながら、破片を周囲に飛び散らさせた。

 

「すげぇ、あの数をたった一機で倒しやがった……」

「いつまでも見惚れてるんじゃない、今は急いで脱出するぞ!」

 

 その圧倒的な破壊力を目にし、ハンゾウも思わず見惚れてしまう。

 しかし、レックスの注意を受けて我に返ると、フルアーマー・サンダーボルト・ガンダムに見送られながら、脱出の為に再び走り始める。

 

「……ありがとう」

 

 その最中、ミカは一瞬フルアーマー・サンダーボルト・ガンダムに振り向くと、小さく感謝の言葉を述べるのであった。

 

 

 

 

 謎の三機の活躍により、無事にバン達が海道邸を脱出した頃。

 縦横無尽に暴れまわった三機は、とある部屋に移動し、持ち主のもとへと戻っていた。

 

「ご苦労様」

 

 三機の持ち主、凛空は三機に労をねぎらいながら、三機をバッグの中に収納していく。

 そして、三機を無事にバッグの中に収納し終えた所で、部屋の主であるジンが凛空に声をかける。

 

「凛空君。そちらの用事は終わったかい?」

「うん、終わったよ。そっちは?」

「お爺様なら、今し方、自室に戻られた。ひどくご立腹の様子でね」

「ふふ、そうか」

 

 怒りで顔を歪める海道 義光の姿を思い浮かべ、小さく笑みを零す凛空。

 しかし、孫であるジンの前である事を思い出すと、直ぐに表情を元に戻した。

 

「それにしても。凛空君、いや、サイバーランス社の技術力には、驚かされる」

「え?」

「あんなものを見せられては、以前受けたテストプレイヤーの件、真剣に考えたくもなってしまう」

 

 まさかの発言に、凛空はジンの事を見据える。

 

「だが、今はまだ、お爺様を裏切る事は出来ない」

「目的の為なら手段を選ばない、そんな人でも?」

 

 凛空の言葉に、ジンは暫し無言を貫く。

 ジンが見てきた海道 義光は、厳しい一面こそあれど、自身に対して本当の孫のように愛情を注いでくれる、そんな人物像だ。

 今夜見せた、あのどす黒い醜悪な一面。時間の経過と共に変化したのか、それとも、元々心の奥底に隠し持っていたのかは分からない。

 

 だが、それでもジンは、まだ海道 義光の事を見捨てる事は出来なかった。

 

「ジン君がそう言うなら、僕はもうそれ以上は言わない。……ただ、一つだけ言わせて。一人で抱え込んでいると心と体が疲れてしまう、だから、相談できるのなら、誰かに相談した方がいいよ」

「では、もし相談に乗ってほしいと言ったら、相談に乗ってくれるかい?」

 

 ジンの言葉に、一瞬呆然となる凛空だったが、直ぐに我に返ると、笑顔を浮かべながら答える。

 

「勿論!」

「そうか、ありがとう」

 

 その後凛空は、来た時同様に、ジンの執事に送られて自宅に戻るのであった。

 




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したアプサラスについての豆知識だ。

 OVA作品、機動戦士ガンダム 第08MS小隊に登場するこの機体は、モビルアーマー(MA)と呼ばれる大型機動兵器に分類される。
 同機の名を冠したアプサラス計画により開発された本機は、非武装のアプサラスI、機体中央に大口径ビーム砲を装備したアプサラスII、先行の二機の実験データを基に完成させた、完成形と言うべきアプサラスIIIの三タイプが存在するぞ。

 では! また。
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