うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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新たなる道標

 翌日、いつものように学校に登校していた凛空は、通学路であるミソラ商店街の出入り口にて、バン・カズ・アミ・ミカの四人と出会う事となった。

 四人に挨拶を交わすと、四人は早速、昨日の海道邸潜入作戦に凛空が不参加であった理由を尋ねてくる。

 

「実はね……」

 

 下手に誤魔化すよりも正直に話した方がいいだろうと判断した凛空は、ジンに誘われ海道邸のジンの部屋にてLBXバトルをしていた事を話した。

 因みに、何故バトルする為に誘われたのかと四人から疑問が生じたが、マスクJの事は、ジンの尊厳を守る為に触れる事無く、適当な理由をでっち上げて誤魔化すのであった。

 なお、脱出の際に手助けしていた事も、バン達には伏せる。

 

「そうだったのか」

「ごめんね、バン。参加できなくて」

「ううん。凛空も凛空で戦ってたんだ、それを知れただけでも、俺、嬉しいよ!」

 

 こうして、凛空が不参加であった理由が判明した所で、今度はバン達が、昨日の海道邸での出来事を話し始める。

 シーカーの本部が占拠された事や山野博士との出会い、解読コードがメタナスGXの中に組み込まれている事、そして最後に、バンはアルテミスに出場し、優勝する事を宣言した。

 

「そうだ、折角だからブルーキャッツの様子を見に行かない?」

「そうだな、行こうぜ!」

 

 一通り話を終え情報を共有した所で、アミの提案により一行はブルーキャッツへと足を運ぶ。

 

「凛空」

「何、ミカ?」

「昨日は、助けてくれて、ありがとう」

 

 その最中、ミカがバン達三人に聞こえないように、小さな声で凛空に感謝の言葉を述べる。

 どうやら、ミカには凛空が脱出の際に手助けしていた事はお見通しのようだ。

 

 

 ミソラ商店街にある各店舗の店先、更には商店街の掲示板にも、一か月後に迫った第三回LBX世界大会アルテミスの開催を告げるポスターや出場する有名選手の応援ポスターが張られ。また、上空を飛ぶ飛行船も告知映像を流し、更には行き交う通行人達も一様にアルテミスの話題で盛り上がる等。

 まさに、ミソラ商店街、いや日本中がアルテミスで盛り上がりを見せる、そんな中。

 ミソラ商店街の一角にあるブルーキャッツは、そんな世間の盛り上がりとは対照的に静まり返っていた。

 

「ブルーキャッツ、閉まってるね」

「いつもなら、もう開店している時間」

「シーカーの本部が潰されたんだ、ここも多分、連中に監視されてるからじゃねぇか」

「そうね」

「はぁ……。何だか、今更になって昨日の事が現実だったって実感が湧いてきた」

 

 凛空・ミカ・カズ・アミの四人が、閉店状態のブルーキャッツの様子を目にし、各々感想を零す。

 そんな中、バンは、昨夜海道邸から脱出した後、シーカーの本部再建の為に奔走を始めた拓也とレックスの事を気にかけていた。

 

「バン、拓也さん達なら、きっと大丈夫よ」

「そうそう、何せ伝説のLBXプレイヤーとその相棒だもんな」

「ん、大丈夫」

「バン、今は二人を信じよう」

「うん、そうだな」

 

 そして、凛空達はブルーキャッツを後にすると、学校へと向かうのであった。

 

 

 

 

 無事に遅刻する事無く学校に登校した凛空達。

 授業が始まる前の朝のホームルームで、凛空達は衝撃的な事実を知る事となる。

 

 先生の口から伝えられたのは、ジンが両親の都合で転校することになったというものであった。

 当然、凛空達はそれが表面上の理由である事は気づいていたが、それを口にすることはなく。惜しむクラスメイト達に同調するのであった。

 

 そんな一幕を経て、その後は特に問題もなくその日の授業を全て受け終え、迎えた放課後。

 リュウも加えてスラムにあるハンゾウ達の部屋に足を運んだ凛空達は、そこでハンゾウ達との情報交換を始めた。

 

「あの、拓也さんから連絡は……」

「ねぇよ」

「アタイ達にも、レックスからの連絡はまだないよ」

「全く音沙汰なしでごわす」

「便りが無いのは良い便りって言うが、今回ばかりは気が気じゃねぇよな」

 

 リュウの質問に、ハンゾウは少々投げやりな態度で答え、ゴウダ三人衆もそれに続いて答える。

 二人からの連絡がない事に、リュウやハンゾウ、それにゴウダ三人衆は不安を覚えている様子。

 それを裏付けるかのように、強大な敵であるイノベーターの力を前に、自分達の無力さを痛感するかの如く言葉を呟くリュウ。

 

 だが、そんなリュウに対して、部屋の一角でメンテナンスを行っていたバン・アミ・カズの三人は、今の自分達でもできる事があると言う。

 

「アルテミス大会規定第二条、本大会への参加資格を持つプレイヤーは、最大で二人までのサポートメンバーをエントリーできるものとする」

 

 そして、アミが徐にアルテミスの大会規定を説明し始める。

 それを聞き、リュウは勘付いたかの如く言葉を零した。

 

「私達、話し合って決めたの。アルテミスには、私達三人で出るわ!」

「な、バン」

「あぁ!」

 

 やる気に満ち溢れる表情と共に、三人はアルテミスに出場する事を発表する。

 

「勿論、厳しい戦いになるのは分かってる。だけど、プラチナカプセルとメタナスGXを、イノベーターに渡すわけにはいかない!」

「そんな訳で、バン一人に全部背負わせる訳にはいかないからさ」

「それに、私達、仲間だしね」

 

 三人の言葉を聞き、その勇壮さに感服するリュウ。

 また、リコも、三人の様子を大好きな演歌に例えて感心するのであった。

 

「そうだよね、バン達だけに、全て背負わせる訳にはいかない」

「凛空?」

 

 刹那、凛空が零した言葉を聞き、その場にいた全員の視線が凛空に向けられる。

 

「バン。僕も出るよ、アルテミスに!」

「本当!?」

「そりゃ心強いぜ!」

「あれ、でも……。凛空って参加資格、持ってたっけ?」

 

 アミが口にした疑問に対して、凛空は少し気恥ずかしそうに答える。

 

「アルテミスにはサイバーランス社も大会スポンサーとして契約しているから、スポンサー枠の公式宣伝チームとして、僕にも参加資格が与えられているんだ」

 

 凛空の答えを聞き、他の面々は納得したように頷く。

 そんな中、不意に、ミカが凛空に声をかけた。

 

「凛空、サポートメンバー、もう決めてるの?」

「まだ、だけど?」

「なら、私を、サポートメンバーにして!」

 

 凛空の目をまっすぐに見据えながら、内に秘めた熱意を伝えるミカ。

 そんなミカの熱意を感じたのか、凛空は微笑むと、承諾する旨を伝えるのであった。

 

「でも待って、ミカのアマゾネスは……」

 

 その矢先、アミが昨夜の海道邸での月光丸とのバトルで、ミカのアマゾネスが無残に破壊された事を伝えようとする。

 しかし、凛空は心配ないとアミの言葉を遮る。

 

「ミカには、アルテミスまでに最高の機体を用意するよ。ミカの為の、渾身の機体をね」

「凛空が、私の為に、私だけの……」

 

 凛空の言葉を聞き、何やら勝手に脳内変換している様子のミカ。

 程なく、まるで湯気でも吹き出すかの如く顔を真っ赤にしたミカは、慌てる一同を他所に、夢の世界に意識を旅立たせるのであった。

 

 

 

 

 その後、バン達三人は早速アルテミスに向けて特訓を行うべく、キタジマ模型店に向かい。

 凛空も、ミカの看病をハンゾウ達に任せると、ミカの新しい機体を用意するべく、自宅に向かうのであった。

 

「ちょっと、すいません」

 

 だがその道中、不意に、凛空は見知らぬ男性に声をかけられ足を止める。

 

「何か?」

「あぁ、失礼。私、こういうものです」

 

 身なりや容姿には取り立てて怪しい箇所は見当たらず、その外見は、何処にでもいそうなサラリーマン。

 しかし、凛空は何処となく、そのサラリーマン風の男性に影を感じるのであった。

 

「フリージャーナリストの、田中さん?」

 

 受け取った名刺に記載された情報を目にして、男性の素性を知る凛空。

 だが、それでも凛空は内に秘めた警戒感を緩めない。

 

「そうです、お見知りおき下さい。……所で、君はサイバーランス社の御曹司である西原 凛空君、ですよね」

「そうですけど」

「実は、今度Lマガにコラムを掲載するんですよ。ズバリ、プロジェクトMSによりサイバーランス社は覇権を握るか否か。というタイトルのね」

「……」

「それで、そのコラムを書くにあたって、サイバーランス社の御曹司である凛空君、君に取材が出来ればと思いまして、こうしてお声がけさせていただいた所存です」

「確かに僕はサイバーランス社の御曹司ですけど、父親の会社のプロジェクトに関して僕は……」

 

 刹那、無関係を装うとした凛空の言葉を田中は制止すると、周囲を見渡し他に人がいない事を確認すると、声を潜めながら話を始めた。

 

「ご謙遜を。貴方が、プロジェクトMSの中心的人物である事は、既に承知しているんですよ」

「っ!!」

 

 一体何処から漏れたのか、田中の言葉を聞き、凛空は目を見開く。

 

「それに、昨夜は派手に暴れたそうじゃありませんか。海道 義光大臣のお屋敷で」

 

 更に、テレビやネット等、何れのメディアでも報道されていない為、当事者しか知り得ぬ筈の昨夜の海道邸での一件が田中の口から漏れるや、凛空は内に秘めた警戒感を露わにした。

 

「おっと、そう怖い顔をしないで、折角の色男が台無しですよ?」

「貴方、何者ですか?」

「ですから、先ほどお渡しした名刺に……」

「昨夜の一件は、表沙汰にはなっていませんよ」

「おやおや、私とした事が、少しお喋りが過ぎましたね」

 

 わざとらしく自身の失敗を認める田中。

 そして、一拍置いた後、田中はゆっくりと語り始めた。

 

「少なくとも、私は今貴方が考えている組織の一員ではありません」

 

 自分達以外で昨夜の海道邸の一件を知っているとなると、イノベーターの一員かと考えていた凛空だったが、それを、田中は自ら否定した。

 

「なら、貴方は一体何者ですか?」

「そうですね。……敵の敵は味方、というものです。最も、直接的に対立しているのは、私の上司ですけどね」

 

 敵の敵、更には上司という単語を聞き、凛空は推理を働かせる。

 そして、一つの答えに辿り着くと、その答え合わせを行うべく、田中の上司である人物の名を口にする。

 

「財前 宗助総理」

「ふ、……流石ですね、凛空君。ですが、出来ればそこから先のお話は、人目につきにくい場所で行いたい。という訳で、ご同行願いますね」

「……分かりました」

 

 こうして、凛空は田中の後に続き、移動を開始した。

 

 

 歩くこと数分、二人が足を運んだのは、ミソラ駅のほど近くにある裏路地、落ち着いた店構えの喫茶店であった。

 時間帯、更には店の立地も絡んでか、店内は、二人以外にお客の姿はなかった。

 

「本当なら、この近くにギムレット(カクテル)の美味い店があるんで、そこで話をしたかったんですが。凛空君は未成年ですからね」

「はぁ……」

「でも、この店のサンドイッチも美味いんですよ。お、きたきた!」

 

 先ほど二人が注文したメニューの品が、マスターの手によって二人のいるテーブルに運ばれる。

 凛空が注文したのはコーヒー、一方の田中は、分厚いパンと分厚い厚焼き玉子のサンドイッチとコーヒーのセットであった。

 

「話の前に、先に食べてもいいかな? 実は、今日昼食を食べ損ねてね、もうお腹と背中がくっつきそうで」

「ど、どうぞ」

 

 凛空の了解を得た所で、田中は厚焼き玉子のサンドイッチを食べ始める。

 本当にお腹が空いていたのだろう、お皿に盛られたサンドイッチは見る見るうちに田中の口の中へと消えてゆき、あっという間に平らげるのであった。

 

「ふぅ……。さて、それでは腹も満たされた所で、お話の続きを行いましょうか」

「その前に、一つ質問、よろしいですか? 田中さんの上司が財前総理という事は、田中さんは総理直轄の情報機関の人間ですか?」

「……凛空君、君は私達の想像以上の人物のようだね。本人を前にしてこんな事を言うのも失礼だが、末恐ろしさを感じたよ」

 

 そして、田中は一拍置くと、自身の本当の姿を話し始めた。

 

「詳しくは言えませんが、凛空君の言う通り、私はそういう組織の人間。あぁ、因みに田中という名前は、当然偽名ですよ。あぁそれと、映画や漫画のような伊達男じゃなくても残念がらないでくださいね。そういう組織の人間は、大抵、私のようにどこにでもいる普通のサラリーマンのような見た目の者が多いものです」

「それで、そんな人が、どうして僕に接触を?」

「言ったでしょう。敵の敵は味方だと」

 

 再び田中は一拍置くと、凛空に接触を図った理由を話し始める。

 

「若く雄弁なだけで総理大臣という椅子に座れるのなら、若手の議員は誰だって苦労はしませんよ」

「それはつまり、財前総理には、自らの信念を実現させる政治的手腕がある、という事ですか?」

「その通り。しかし、そんな総理の信念を実現させるには、大きな壁が立ちはだかっている」

「海道 義光大臣、ですね」

「その通り。ご存知の通り、海道大臣は大物議員のお一人、前峰島政権が"海道政権"等と一部で揶揄されていた事からも分かるように、その影響力は強大です。そして、その影響力こそ、財前総理にとっては最大の障害。故に、財前総理としては、その影響力を削ぎ、自らの影響力を高めたい」

 

 そして、田中は一拍置くと、さらに説明を続けた。

 

「しかも、既にご存知の通り、海道大臣は強力な私設軍隊を有しています。そんな大臣と財前総理自らが表立って事を起こせば、政界のみならず、日本全体に混乱が広がるのは必定。故に、表沙汰にせず、事は秘密裏に行いたい」

「そこで、僕達に接触した……。ですか」

「えぇ、そうです」

(民間である僕達ならば、成功すれば御の字。万が一失敗しても、自分には関係ないと白を切り、トカゲの尻尾きりの如く切り捨てるのは容易。政争の具としてはまたとないものだ。加えて、シーカーとイノベーターとの対立が決定的となったこのタイミングでの接触。……財前 宗助、成程、魑魅魍魎が跋扈する政治の世界で総理大臣の椅子に座れる訳だ)

 

 凛空は、今回接触を図ってきた財前総理の考えを推測すると、恐れ入るのであった。

 

「でも何故僕に? 僕は確かにシーカーの一員ですけど、それだけ。首謀者でも、幹部でもない」

 

 すると、田中は不敵な笑みを小さく浮かべた。

 

「貴方が、シーカーの中でも一際賢明である、と判断したからです。勿論、必要な時期が来れば、私達からシーカーに直接接触を図ります。しかし今は、まだその時ではない。ですから、貴方に、私達とシーカーのパイプ役になっていただきたいのです」

「話を聞いていると、そちら側ばかりに利がある話に思えるのですけど」

「ふふ、分かっていますとも。これはディール(取引)。当然、必要とあれば情報の提供等、可能な限りの協力は惜しまない。と、上司からは言付かっています」

「取引、という割には、そちらの出すカードは、少し弱いように感じるんですが」

「……、ははは! これはこれは、社交界でお父様を見て学んだのですか? よい駆け引きのセンスだ」

「それはどうも」

 

 そして、田中は一拍置くと、新たなカードを出す。

 

「あぁ、思い出しました。プロジェクトMS、実は上司があれに大層感銘を受けた様子でしてね。サイバーランス社とは、これを機に、"末永く"お付き合いできれば、と。考えているご様子でした」

 

 新たなカードを出し終え、小さく笑みを零す田中。

 一方、提示されたカードの内容を確認した凛空は、暫し思考を巡らせると、程なく、不敵な笑みを浮かべる。

 

「それはよいお考えですね」

「えぇ、そうでしょう」

「分かりました。今回のご提案、喜んでお受けさせていただきます」

「おぉ、ありがとうございます!」

 

 刹那、固い握手を交わす凛空と田中。

 ここに、バン達の与り知らぬ所で、一つの協力関係が生まれる事となった。

 

 果たして、この関係が今後どの様な影響を与えるのか、それは、神のみぞ知る。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したグフカスタムについての豆知識だ。

 OVA作品、機動戦士ガンダム 第08MS小隊にて初登場となったこの機体は、グフを再設計した機体で、高い白兵戦能力を保ちつつ問題点を改善している。
 火器を全てオプション化し、フィンガーバルカンもオミット。ヒートロッドの形状も一新され、近距離だけでなく中距離でも高い戦闘力を発揮する優れた機体として生まれ変わったぞ。
 作中では、ノリス・パッカード大佐の搭乗機として、鬼神の如き強さを見せたぞ。

 では! また。
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