うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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バトルでケリつけるぜ!

 秘密の協力関係が結ばれた日から数日。

 凛空はいつもと変わらぬ様子で過ごし、バン達と共にアルテミスに向けての準備を行っていた。

 

 そしてこの日も、放課後ライフをスラムにあるハンゾウ達の部屋で過ごしていた凛空。

 その理由は、ミカが使用するアマゾネスの後継機の製作の一環だ。

 仮の機体を使用して、ミカの詳細なバトルデータを収集し、それらを反映させて最高の機体を作る為。

 

「甘い」

 

 部屋に設置されたDキューブにて、ミカの操作する仮の機体。

 増加装甲やシェキナーを装備していない以外はペイルライダー・キャバルリーと性能に差がない、ミカのパーソナルカラーである青を基調としたカラーリングが施された機体。

 その名を、"ペイルライダー・デュラハン"。

 

 同機は、ヒート・ランス、そして巨大な盾であるガーディアン・シールドを装備して、今回のバトルの相手である、テツオの操作するナズーに挑んでいた。

 

「ぬぅ、やるでごわす」

 

 戦いの舞台となったジャングルのフィールド内。

 ナズーは、川に身を隠して接近し、川から飛び出してナズーアームの水の弾丸による襲撃を仕掛けようとした。

 しかし、ナズーアームから放たれた水の弾丸は、ガーディアン・シールドに阻まれ、テツオの思惑は外れてしまう。

 

 だが、テツオは勢いそのままに、ナズーアームによる猛攻を加える。

 ペイルライダー・デュラハン目掛けて、幾多もの水の弾丸が放たれるも、スラスターを用いたペイルライダー・デュラハンの回避行動により、それらはペイルライダー・デュラハンの装甲をかすめる事もなく彼方に消える。

 

「っ! 何処でごわすか!?」

「もらった」

 

 その素早い動きでナズーを翻弄したペイルライダー・デュラハンは、ナズーの視界から姿を消す。

 次の瞬間、ナズーの背後に姿を現したペイルライダー・デュラハンは、装備したヒート・ランスの穂先を、ナズー目掛けて突き立てた。

 

 刹那、無防備な背面にヒート・ランスの一撃を受けたナズーは、程なく機能を停止させるのであった。

 

「負けたでごわす……」

「はぁ、情けないねぇ。あんたもゴウダ三人衆の一人なら、もっとガッツを見せな、ガッツを!」

「ま、テツオじゃこんなもんだろう」

 

 バトルを終え、項垂れるテツオと、観戦していたバトルの感想を零すリコとギンジ。

 一方ミカは、早速凛空にバトルの感想を伝える。

 

「やっぱり、槍系の武器は、使い慣れてるから使いやすい」

「そっか。なら、メインの武器は槍系にする?」

「でも、他の系統のものも、使えなくはないよ。あと、盾は、もう少し取り回しのしやすい方がいい。機動性は、今位あった方がいい」

「分かった」

 

 こうして、凛空がミカから様々な感想を聞き終え、それをメモ帳にメモし終えた所で、不意に、部屋の扉が開かれる。

 刹那、凛空にミカ、それにゴウダ三人衆の面々が、一斉に扉の方へと視線を向ける。

 

 五人が見つめる中、扉を潜り姿を現したのは、カズであった。

 

「あれ? カズ、バンとアミと一緒に、キタジマに特訓しに行ったんじゃなかったの?」

 

 凛空が口にした通り、カズは、アルテミスに向けての特訓を行うべく、バンやアミと共に、この数日は毎日のようにキタジマ模型店に足を運んでいた。

 そして今日も、放課後になると同時に一目散にバンとアミの二人と共にキタジマ模型店に向かった筈なのだが、何故かこうして凛空達の前に姿を現した。

 

 すると、カズはその理由を説明し始める。

 

「本当はキタジマで特訓する筈だったんだが、今日は他の客がやけに多くて、特訓できなくてよ」

「そっか。あれ、でもバンとアミの姿が見えないけど?」

「あぁ、二人ならまだキタジマにいるぜ。店長との話の流れで、アキレスのコアパーツの編成の話になって、それが切っ掛けで鬼教官のアミに指導されてるよ」

「あぁ、成程」

 

 カズが珍しく一人で行動していた理由を聞き、凛空は納得したかのような表情を浮かべる。

 量産機であるアミのクノイチが、一点物にも引けを取らぬ強さを持つ秘密は、アミの操作の腕前もさることながら、事細かに行うコアパーツの編成の見直しやチューニング等。絶えずアップデートを行ってきたことにある。

 その為に必要な造詣の深さは、凛空も一目置くほどだ。

 

 故に、一度熱が入ると、ちょっとやそっとの事では止まらなくなる。

 

「ありゃ一時間、いや、下手すりゃ二時間コースだな」

「うわぁ……」

「ご愁傷様」

 

 一応、バンもある程度知識を持っているとはいえ、やはり経験値で言えばアミの方が圧倒的に高く。

 今頃、四苦八苦しながらチューニング等をしているバンの姿を想像して、凛空とミカは憐みの言葉を零すのであった。

 

「という訳で。凛空、ミカ、二人とも俺の特訓に付き合ってくれよ!」

「うん、いいよ」

「ん」

 

 こうして、カズの特訓に付き合う運びとなった凛空とミカは、早速準備に取り掛かる。

 だが、その矢先。

 

「あ、リーダー!」

「よぉ」

 

 不意に、再び部屋の扉が開かれると、扉を潜ってハンゾウが姿を現した。

 所用で不在であったハンゾウがやって来た事に、嬉しげな声をあげるゴウダ三人衆。

 

「凛空、ミカ、それにカズ。お前らも来てたのか」

 

 部屋にいた三人の姿を見るや、三人に声をかけるハンゾウ。

 そのまま、定位置であるソファーに向かうのかと思いきや、ハンゾウは何故か凛空を呼び寄せた。

 

「凛空、ちょっといいか」

「どうしたんですか、郷田先輩?」

「ちょっとお前に相談したい事があるんだ」

 

 相談事と聞き、相談し易い筈のゴウダ三人衆ではなく自分が選ばれた事に疑問符を浮かべながらも、凛空はハンゾウのもとへと向かう。

 そして、ここでは相談しにくいとの事で、二人は部屋を後にすると、人気のない場所に移動した。

 

「ここならいいだろ。で、相談したい事なんだが」

「はい」

「ん」

「……っ! ミカ!」

 

 そして、ハンゾウが相談を始めようとした刹那。

 こっそり付いてきていたミカの存在に気がつき、驚く凛空とハンゾウ。

 

「凛空だけ、郷田さんの相談に乗るの、ズルい」

「えぇ……」

「……ったく、仕方ねぇな」

 

 ミカの我儘を聞き戸惑う凛空。

 一方のハンゾウは、意を決したかのような言葉を零すのであった。

 

「ミカ、口は堅いか?」

「ん!」

「なら、お前も一緒でいい」

 

 こうして、ミカにも相談に乗ってもらう事を決めた所で、ハンゾウは再び、自身の相談を話し始める。

 

「相談って言うのは、今度の日曜日に行われるLBXの大会に出る事になったからなんだ」

「今度の日曜日、それって明後日の事ですよね!? ……あれ? でも、その日にLBXの大会なんて開催されてたっけ?」

「因みに。こいつが、俺が出る事になった大会だ」

 

 刹那、ハンゾウは以前バン達にも手渡した事がある、将棋の駒に見立てたケースが目を引くタブレットPCを見せる。

 その画面に表示されていたのは、LBXはLBXでも、トレーディングカードゲームである"LBX・カードバトル"の大会に関する大会情報であった。

 

「あの、郷田先輩。見間違いじゃなければ、LBX・カードバトルって書いてあるんですけど」

「あぁ、その通りだ。間違いなく、俺はその大会に出る」

 

 何かの冗談か、そんな考えが凛空の脳裏を過る。

 実機を用いるLBXバトルは、操作が下手でも、力押しで勝利することは可能だ。

 だが、カードゲームであるLBX・カードバトルは、単に強いカードでデッキを組めば勝てる程、力押しが通用するものではない。

 

 バトルの中で、相手の妨害に遭いながらも、如何に自身に有利な状況を継続して作り出し、相手に不利な状況を継続して強いる事ができるか。

 バトルの中で、相手の行動を予測し、如何に自身の勝利のビジョンを組み立てることができるか。

 勝利の為には、頭脳が求められる。

 

 その為、ハンゾウとLBX・カードバトルの相性で言えば、まさに悪いとしか言いようがなかった。

 

「あの、郷田先輩。どうしてこの大会に出る事になったんです?」

「お前やバン達が、アルテミスに向けて頑張る姿を見て、俺も、自分なりに頑張ろうって気になってな。それで俺なりに考えた結果、大会に出て腕を磨こうと思ってな」

「でも、この大会は……」

「それが、恥ずかしい話なんだが。LBXやアルテミスって単語に目がいって、カードゲームの大会だって気付かなくてな。気付いたのは、大会にエントリーした後なんだ」

 

 ハンゾウの言う通り、今回のLBX・カードバトルの大会、何と優勝者には、第三回LBX世界大会アルテミスへの特別出場権が与えられる事が記載されていた。

 

「あの、郷田先輩。今からでも辞退するというのは」

「駄目だ! 一度決めた事を途中で曲げちゃ男が廃る!!」

 

 自身の提案を頑なに拒むハンゾウの姿を見て、説得は無理だと諦める凛空。

 

「分かりました。つまり、郷田先輩の相談は、LBX・カードバトルの大会に出場するにあたって、LBX・カードバトルの事を教えて欲しい。という事ですね」

「あぁ、その通りだ! 凛空なら、LBX・カードバトルについて詳しく知ってると思ってな!」

「と言われても。僕も、人並に知ってる程度ですけど」

「それでも構わねぇ! 頼む、教えてくれ!」

 

 こうして、ハンゾウの頼みを引き受ける事になった凛空。

 大会に出場するというのに、必要不可欠なLBX・カードバトルのカードすら買い揃えていないという事で、先ずは、カードを買いに行く事に。

 

「確か、ミソラ駅の近くに、LBX・カードバトルを取り扱っているカードショップがあった筈なので、そこで買いましょう」

「恩に着るぜ、凛空」

「言っておきますけど、購入代金は郷田先輩が出してくださいよ。大会には、郷田先輩が出るんですから」

「わ、分かってるって。今日はちゃんと、忘れず財布を持ってきてるから安心しろ」

 

 こうして一行は、ミソラ駅近くにあるカードショップに足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 ハンゾウにとっては縁のない店だったのだろう。

 カードショップに足を踏み入れるや否や、店内に設置されたショーケース、その中にアクリルフレームに収められ丁寧に並べられた、様々なタイトルの高額カードを目にして、興味深げに見るハンゾウ。

 そんな目移りしているハンゾウに、初心者であってもとりあえずこれを買っておけば始められる、スターターセット。更に、大会に出るという事で、スターターセットだけでは物足りないので、拡張パックも紹介する凛空。

 

 こうして、必要なものを買い揃えると、早速実際に遊びながらルールなどを覚えるべく、再びスラムに向かう一行。

 

 いつもの部屋に向かうかと思いきや、ハンゾウが案内したのは、ハンゾウが一人になりたい時などに利用している、スラム内でもハンゾウしか知らないという秘密の部屋。

 秘密の部屋に足を踏み入れ興奮を抑え切れないミカを他所に、凛空は早速、購入したスターターセットに入っていたプレイヤーズガイドを手に、内容物をハンゾウに一つ一つ説明していく。

 

「先ずこれが、プレイマットと呼ばれるフィールドです。中央にあるマスが、プレイヤーの分身である"コマンダー"のカードを置くエリアで、その左右にある二×二マスのエリアに"ユニット"と呼ばれるLBXをモチーフにしたカード、他のタイトルで言う所のモンスターカードを置くエリアになります」

「この端にあるエリアはなんだ?」

「そこは四十枚からなるプレイヤーのデッキを置くエリアと、その下が、"廃棄場"と呼ばれる、使い終わったカードや、破壊されたユニットカード等を置くエリアになります」

「成程な。……所で、この宝石みたいな石は何だ?」

「それは"エネルギーストーン"と呼ばれるもので、ユニットカードをエリアに出したり、"支援カード"、他のタイトルで言う所の魔法カードを使用する際などに消費される他。コマンダーのLPの値を表現するのにも使用されます」

「へぇ、重要な石って訳か」

 

 さらにその後は、各カードについての説明を行っていく。

 ユニットのカードは、販売されている各LBXをモチーフとしたもので構成され、同じLBXをモチーフにしたカードでも、説明文に書かれた、或いは描かれた武器により、目の前のマスのみを攻撃できる近接攻撃型と、一マス或いは二マス飛びに、離れたマスのみ攻撃できる遠距離攻撃型の二種類のタイプが存在している。

 更に、ユニットカードには物理属性と自然属性の二種類の属性が設定されており、相手のカードとの相性次第では、バトルを有利に進める事もできる。

 

 支援カードは使い切りながら、自分に有利な効果を発揮したり、相手の行動を妨害する効果のあるもの等がある。

 

 コマンダーカードは、直接攻撃と呼ばれるエネルギーストーンを消費し、敵味方問わず隣接するユニットカードに攻撃を行える他、退却命令と呼ばれる、一LPを失う代わりに味方ユニットカードを一枚消す事の出来る特技を持つ他。

 コマンダーシールドと呼ばれる、一定のダメージを無効化するシールドも有している。

 

「では郷田先輩。実際にプレイして、バトルの流れを把握しましょう」

「よし! やってやるぜ!」

 

 こうして、凛空から一通り説明を聞き終えた所で、実際にプレイし始めるハンゾウ。

 その後、ハンゾウが渋い顔を浮かべながら、初めてプレイするLBX・カードバトルに悪戦苦闘するのは、また別のお話。

 

 

 

 

 翌日も、時間の許す限りバトルを行い、現状で出来る最適なデッキやコンボの作成など、凛空の指導のもと、付け焼刃ながらも何とかLBX・カードバトルをものにしたハンゾウ。

 そして、迎えた大会当日の日曜日。

 

 大会が開催されるのはトキオシアデパート。

 地下にあったシーカーの本部跡がどうなっているのか、確認したい衝動に駆られるもそれを抑え、会場である五階のイベントブースへと足を運ぶ凛空・ミカ・ハンゾウの三人。

 イベントブースには、既に多くのギャラリー達で賑わいを見せていた。

 

「いよいよですね」

「おう! あとは、全力で挑むだけだ!」

「郷田さん、頑張れ……」

「頑張ってください、郷田先輩!」

「おう! それじゃ、いってくるぜ!」

 

 凛空とミカの声援を受けて、気合を入れ直したハンゾウは、受付の方へと足を運ぶ。

 そんなハンゾウの姿を見送った凛空とミカは、観戦するのにちょうどいい場所を見つけると、大会が始まるまで雑談をして時間を潰した。

 

 そして、間もなく大会が始まろうとしたその時であった。

 不意に、凛空は強烈な尿意を感じる。

 

「ミカ、ごめん。ちょっとトイレに行ってくる」

「ん、分かった」

 

 こうして、凛空は一言言い残すと、トイレに向かって小走りに向かい始める。

 だが、何と五階には、女性用のトイレしか設置されておらず、男性用のトイレを利用するには一つ下の四階に降りなければならなかった。

 

 尿意を我慢しつつ、少しでも早く四階に向かうべく、階段を駆け下りる凛空。

 そして、四階に降り立った凛空は、程なく男性用トイレの看板を見つけると、もう一段階走るスピードを上げ、トイレの入り口を目指す。

 漸くゴール、と思った、次の瞬間。

 

「っ!?」

「うわぁ!?」

 

 トイレから出てきた利用者とあわやぶつかりそうになり、寸での所で急ブレーキをかける。

 

「す、すいません!」

「僕の方こそ、不注意でした!」

 

 互いに謝るが、そんな中、凛空はぶつかりそうになった人物の姿を目にして、息を呑んだ。

 ピンと跳ねた短い毛に瓶底眼鏡、地味な色合いのシャツにジーパンという身なり、まさに、オタクという言葉が似合う少年。

 

 それは、誰であろう、原作主人公の一人、大空(おおぞら) ヒロその人であった。

 最も、彼が主人公として描かれるのは、約一年後からであり、現在の彼は、特撮ヒーローである"宇宙英雄センシマン"をこよなく愛する、一介の小学六年生だ。

 

「? あの、大丈夫ですか?」

 

 そんなヒロと、まさかこんな場所で出会う事になる等想像もしていなかった凛空は、驚きのあまり暫し固まってしまう。

 だが、そんな凛空を我に返したのは、更に主張を増した尿意であった。

 

「あ、だ、大丈夫! それじゃ!!」

 

 我に返るや、凛空は我慢の限界を迎える前にこの危機から脱するべく、慌ててトイレに駆け込む。

 程なく、無事に危機を乗り越え、晴れやかな顔を浮かべた凛空がトイレから出てくる。

 

「あれ?」

 

 刹那、凛空は、トイレの前で、まるで自分が出てくるのを待っていたかのように佇んでいたヒロの存在に気がつき、声を漏らした。

 すると、ヒロの方も、凛空がトイレから出てくると、凛空に声をかける。

 

「僕に何か?」

「はい。これ、さっき落としてましたよ」

「あ!」

 

 ヒロが手渡したのは、凛空がポケットに入れていた自身のCCMであった。

 どうやら、ヒロとぶつかりそうになった時、急ブレーキをかけた反動でポケットから落としてしまったようだ。

 

「本当にありがとう! ひ──、えっと……」

「僕、大空 ヒロです!」

「ありがとう、ヒロ君!」

 

 危うく、初対面なのにヒロの名前を口にしてしまいそうになる凛空。

 だが、何とか寸での所で止まると、ヒロの自己紹介を経て、ヒロに感謝の言葉を伝えるのであった。

 

「そうだ、自己紹介しないとね。僕、西原 凛空、よろしく」

「西原……。もしかして、サイバーランス社の社長、西原 蔵土さんのご家族の方ですか!?」

「う、うん。そうだよ」

「くぅぅ! まさか、そんな有名な方とこんな所で会えるなんて、僕、感激です!」

 

 凛空が自己紹介を行うと、ヒロは名前から凛空の素性に気がつき、嬉しそうな様子を浮かべた。

 

「サイバーランス社と言えば、ズバリ、プロジェクトMSですよね! ザクやジム等、従来のLBXとは一線を画すデザイン、現実感と非現実感を絶妙な塩梅で体現させたあれは、まさにエポックメイキング!! 本当に、素晴らしいの一言です!!」

「あ、ありがとう……」

 

 プロジェクトMSにより生み出されたLBXを熱く語るヒロ。

 発起人である凛空は、嬉しい反面、ヒロの熱量の高さに、内心若干引くのであった。

 

「ヒロ君は、LBXが好きなんだね」

「はい! と言っても、今はまだLBXは持ってないんですけどね。けど、"LBXバトルオペレーション"の操縦なら、誰にも負けない自信があります!」

 

 LBXバトルオペレーション、それはLBXを題材としたアーケードゲームである。

 大型筐体に乗り込み、自身が小さくなってLBXを操縦しているような体験が出来るとあって、LBXプレイヤーのみならず、LBXを持たぬ人々にも人気となっているゲームだ。

 

「そうだ! 実は今日、このトキオシアデパートでLBXバトルオペレーションの大会が開かれるんですけど、僕、それに出場するんです!」

「へぇ、そうなんだ(成程、それでヒロがここにいた訳か)」

「凛空さん、もしよければ、見に来ませんか!?」

 

 ヒロがトキオシアデパートにいた理由が判明した所で、ヒロから観戦のお誘いを受ける凛空。

 自信満々のヒロのゲームの腕前に興味が湧いた凛空だが、ふと、大事な事を思い出し声をあげた。

 

「あぁ! しまった!」

「どうしたんですか?」

「ごめん! 実は僕、LBX・カードバトルの大会に出場する友人の応援に来てたんだ」

「えぇ、なら、急いで戻らないと! もう大会は始まってる頃ですよ!」

「うん、そうするよ。それじゃヒロ君、またね」

「はい!」

 

 最後にヒロと固い握手を交わすと、凛空は駆け足で五階のイベントブースへと戻るのであった。

 

 

 

 

 五階のイベントブースへと戻ると、既に大会は始まっている様で、ギャラリー達の歓声が響き渡っていた。

 そんなギャラリー達をかき分け、ミカのもとへと戻った凛空は、先ずは遅れた事をミカに謝ると、現在の戦況をミカに尋ねる。

 

「試合も終盤、このままいけば、郷田さんの勝ち。でも、相手が彼女だから」

「っ! まさか!?」

 

 ミカの説明を聞き、凛空はステージ上にいるハンゾウに視線を向けた。

 そこで目にしたのは、ステージ上でハンゾウと対峙する、対戦相手のキヨラの姿であった。

 

(キヨラ、彼女もこの大会に出場してたのか。いやそれよりも、まさか郷田先輩の一回戦の相手が彼女なんて、何て因縁だ)

 

 まさかの対戦相手に内心驚愕する凛空だったが、直ぐに二人のバトルの戦況に意識を向け直す。

 残りLPは、互いに二つずつながらも。

 バトルの戦況は、ミカの言う通り、ハンゾウの場の左側二マスには、前衛に近接攻撃型のタイタン、後衛に遠距離攻撃型のロケットランチャー装備のブルド、更に二枚ともレベルアップしており、コマンダーにダメージを与える事の出来る状態のユニットカードが置かれていた。

 一方、キヨラの場には、一体もユニットカードが置かれていない。

 

「これで俺はターンエンドだ!」

 

 自身のターン終了を宣言するハンゾウ。

 次のターンで、場に置かれた二体のユニットカードを使い勝負を決めれるとあって、その表情は、既に勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。

 

「ふ、お気楽なものね」

「あ!? んだと!」

「いい、勝負は、試合が終わる瞬間まで分からない。そういうものよ」

「は! 負け惜しみか!? 今更どう足掻こうが、俺の勝ちは揺るがねぇ!」

「さぁ……。それはどうかしら?」

 

 一方、追い込まれたキヨラだが、その顔には、自身の不利を感じさせぬ、余裕めいた笑みを浮かべていた。

 

「見える、見えるわ。郷田、お前が敗北感に打ちひしがれる姿がね!」

「これはお得意のタロットカードじゃねぇんだ、そんな負け惜しみ、怖くはないぜ」

「そう、なら、その目でしっかりと見ておきなさい! 私のターン、ドローッ!!」

 

 威勢のいい声と共に、デッキエリアに置かれたデッキから、一枚カードをドローするキヨラ。

 そして、ドローしたカードを確認した刹那、キヨラが不敵な笑みを浮かべた。

 

「やっぱり、勝負は試合が終わる瞬間まで分からないものね」

「あ?」

「私の魔術が、Dキューブの中だけじゃないって事、今から見せてあげるわ!」

 

 刹那、キヨラは自身の手札からカードを一枚選択すると、そのカードを、右側の後列のマスに準備状態で出す。

 

「ここで支援カード、"スクランブル(緊急発進)"の効果発動!」

 

 スクランブル(緊急発進)、エネルギーストーンを二個消費して、指定した準備中のユニットを即時登場させる効果を持つ。

 この支援カードの効果により、先ほど出したユニットカードが使用可能となり、その姿を現す。

 

 姿を現したのは、キヨラも実際に使用している、ジョーカーズソウルを装備した"ジョーカー"のユニットカードであった。

 

「おいおい、近接戦闘型のジョーカーを後ろに置いたら、役に立たねぇじゃねぇか」

「ふ、本番はここからよ」

 

 ハンゾウの言う通り、ジョーカーズソウルを装備したジョーカーは前方一マスが空いている為、この状態では攻撃できず、役に立たない。

 だが、キヨラが新たなる支援カードを手札から出して使用した事で、その配置の意味を、ハンゾウは身をもって知る事となる。

 

「更に支援カード、"陣地変換"の効果発動!」

 

 陣地変換、エネルギーストーンを三個消費して、場にいる全てのユニットカードの配置を、時計回り或いは反時計回りに、一マスずつスライドさせる効果を持つ。

 この支援カードの効果により、両者の場にいたユニットカードは反時計回りに一マスずつスライドさせられ、ジョーカーは前衛に進出し、対して、タイタンは右の前衛マスにスライドさせられ、後衛のブルドがジョーカーの前のマスにスライドさせられてしまう。

 

「っ! 何だと!? くそ、これじゃブルドでコマンダーを攻撃出来ねぇ!」

「あら、何勘違いしているの? 私のターンは、まだ終わってないわよ!」

 

 刹那、キヨラはジョーカーを使い、目の前のブルドを攻撃する。

 ジョーカーに対して相性の悪いブルドは、ジョーカーの攻撃を受けて破壊され、これにより、ジョーカーはレベルアップを果たし、コマンダーにダメージを与える事の出来る状態となる。

 

「やるじゃねぇか。だが、ターンの巡りで言えば、先に二巡する俺の方が有利な事に違いは──」

「さっきの私の言葉、聞いてなかったの? 私のターンは、まだ終わってないわよ!」

「何言ってやがる、ジョーカーはもう行動して──」

「ジョーカーはね、LPが低い反面、一ターンに"二回"行動が出来るのよ!」

「っ!? だ、だが。二回目の行動で俺にダメージを与えても、俺にはまだ一つLPが──」

「そこで、さっき引いたこのカードよ!」

 

 まだ、勝利の可能性がある次のターンが残っているとハンゾウが思った刹那。

 キヨラは、先ほどデッキから引いたカードをハンゾウに見せつけながら、そのカードの名を叫んだ。

 

「支援カード、"出力上昇"の効果を発動! このカードの効果により、ジョーカーの攻撃力は上昇し、コマンダーに二ダメージ与える事が出来る!」

「な、何だと!?」

「さぁ、トドメよ!!」

「ぬぉぉぉっ!!」

 

 そして、ジョーカーの一閃が炸裂し、ハンゾウのLPがゼロになった所で、審判により、キヨラの勝利宣言が出されるのであった。

 

 

 こうして、一回戦敗退という結果に終わったハンゾウ。

 それに対して、キヨラはその後危なげなく勝ち進み、見事、優勝の二文字と、第三回LBX世界大会アルテミスへの特別出場権を獲得するのであった。




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