うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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第三回LBX世界大会アルテミス

 エンジェルスターでの内覧会の騒動から一週間後。

 遂に、第三回LBX世界大会アルテミスの開催当日を迎えた。

 

 この日は、既に朝早くから会場となるお台場ビッグスタジアムに向けて、日本中、いや世界中の人々が訪れているのではないかと思われる程、周辺の歩道などは人で溢れかえっている他。

 会場へと続く主要な道路も、会場に向かう多くの車で既に渋滞が発生していた。

 

 当然、そんな状況の中で公共交通機関の一つである鉄道が混雑していない筈もなく。

 お台場ビッグスタジアム前の駅に到着した電車の車内は、平日の通勤ラッシュを彷彿とさせる満員状態であった。

 そんな車内から、押し出されるようにホームに降り立ったのは、バン・カズ・アミの三人。

 人波にもまれながら、何とかお台場ビッグスタジアム方面の出入り口に到着した三人は、くたくたになりながら一息ついた。

 

「はぁ……、すげぇ人だな」

「本当、移動だけでも相当疲れるわ」

「でも、俺達遂にここまで来たんだ!」

「あぁ、いよいよだな」

「そうね!」

「行こう、カズ、アミ! 凛空とミカが待ってるかもしれない!」

 

 そして、呼吸を整えた三人は、お台場ビッグスタジアム目指して再び歩み始めた。

 実は、事前のやり取りで、凛空とミカの二人とは会場の正面出入り口前で待ち合わせの約束を行っていたのだ。

 

 程なく、お台場ビッグスタジアムの正面出入り口付近に到着した三人は、出入り口付近に出来ていた人だかりに気がつき、そちらに視線を向けた。

 

「おい、あれって、北米エリアチャンピオンのジョンとポールじゃないか!?」

「あぁ、間違いない!」

 

 インタビューを求める記者やサインを求めるファンなどで構成された人だかりの中心、そこにいた男性二人組の顔を目にするや、バンはそれが現北米エリアチャンピオンのジョン・ハワードとポール・ゴードンであると気がつき、弾んだ声をあげた。

 だがその直後、アミが何かを見つけ、弾んだ声を飛ばした。

 

「ねぇ! あっちにいるのって、ヨーロッパエリア三連覇中のシュナイダーじゃない!?」

 

 アミが指さした方向にいたのは、サインを求める多くのファンに囲まれ、快くそれに応える二人の男性。

 ヨーロッパエリア最強と名高い、ヴィンセント・シュナイダー率いるチームであった。

 

「流石、世界一のLBXプレイヤーを決めるアルテミス!」

「あぁ、他にも世界中から、とびっきり強いLBXプレイヤー達が集まってるんだろうな!!」

 

 何れも雑誌やネット等で取り上げられている有名LBXプレイヤー達。

 そんなプレイヤー達を目の当たりにして、バン達の興奮は最高潮に達しようとしていた。

 

「ん? うわ! 何だこのスゲェ車!?」

 

 その時、不意にバン達の近くに、まるでSF映画の中から飛び出してきたかの如く先進的なデザインの高級車が停車し、カズが声をあげた。

 刹那、高級車の自動ドアが開き降車したのは、何処か不気味な雰囲気を纏った、バン達と同年代と思しき少年。更に、連れと思しき、髪で目元が隠れている少年二人。

 

 雑誌やネットなどで見た事はないが、おそらく彼らもアルテミスの出場者であろうとバン達が認識した、その時。

 不意に、バン達の耳に何処か聞き慣れた轟音が聞こえ、音のする方に視線を向けた。

 そこで目にしたのは、見た事のある一機の戦闘機。

 

 周囲にダウンウォッシュを巻き起こしながら、ギリギリまで降下する戦闘機。

 そんな戦闘機のコクピットから、ジンが飛び降り、バン達の目の前に見事に着地を果たした。

 

「海道 ジン……」

「間違いなく、最強の敵ね」

「ったく、相変わらずスカしてる奴だな」

「俺は、お前と戦って、今度こそ勝ってみせる!」

 

 特に声をかける事もなく、バン達を一瞥して正面出入り口へと向かうジンの姿を追いながら、バンは改めて決意を口にするのであった。

 

 

 そして、気付けばジンのみならず、他の有名LBXプレイヤー達や、先ほどの少年三人組も会場入りを果たした所で、カズが不意に声をあげた。

 

「そういや、凛空とミカの二人は、まだ来ねぇのか?」

「そういえばそうね」

 

 待ち合わせの約束をしている筈の凛空とミカがまだ到着した様子がない事を呟いた、刹那。

 不意に、ヘリコプターのローター音が聞こえてくる。

 アルテミスの取材の為に飛行している取材ヘリかと思われたが、ローター音は、徐々にバン達の方へと近づいているかのように大きくなっていく。

 

 次の瞬間、周囲にダウンウォッシュを巻き起こしながら、超低空飛行を行う一機の中型ヘリが姿を現した。

 

「な、何だ!?」

「おい、見ろよあれ!」

「あれって、サイバーランス社のロゴマークじゃない!」

 

 中型ヘリの機体側面に描かれていたのは、サイバーランス社のロゴマーク。つまり、同機がサイバーランス社が所有するヘリである事を物語っていた。

 やがて中型ヘリは、道路を挟んでお台場ビッグスタジアムの目の前にある広場に着陸する。

 

「皆ー! お待たせ!!」

 

 そして、中型ヘリのドアを開き、機体の中から姿を現したのは、誰であろう凛空と、凛空にエスコートされ姿を現したミカの二人であった。

 まさか、二人がヘリコプターを使ってやって来るなどとは想像もしていなかったバン達は、唖然となるのであった。

 

「? 皆、どうしたの?」

「あ、あぁ、その……」

「そう、精神統一してたの! ね!」

「お、おう! いよいよアルテミス本番だからな!」

「そうだね、お互い頑張ろう!」

「ん。でも、試合で当たれば、容赦しない」

「勿論さ!」

 

 自分達と凛空との価値観の違いを見せつけられ言葉を失っていた、等と正直に言えず言葉に詰まっていたバン。

 だが、アミの咄嗟の機転により、何とかその場を誤魔化す事に成功するのであった。

 

 

 

 

 無事にバン達と合流を果たした凛空とミカは、共に目の前の階段を上る。

 そして、最後の一段を上り終え、一行は、お台場ビッグスタジアムの正面出入り口を潜った。

 

 お台場ビッグスタジアム内には、既に多くの観客達の姿で埋め尽くされている。

 そんな人々の中をかき分けながら進み、何とか受付に到着すると、早速エントリーを行う。

 受付嬢の笑顔に見送られながら、エントリーを済ませた凛空達は、アリーナを目指して歩み始めた。

 

 その道中、凛空達が足を運んだのは、大会スポンサーとして契約している各企業が、自慢の商品を出店している企業ブース。

 各企業ブースに設置されているモニターには、LBXのデモ映像などが流れている。

 

「お? 凛空くーん!」

 

 そんな企業ブースの中には、当然ながらサイバーランス社の出店スペースも存在し。

 その近くを凛空達が通った刹那、サイバーランス社の出店スペースから一人の社員が凛空の存在に気がつき、声をかけた。

 

「凛空、知り合い?」

「うん。ごめん皆、先に行ってて、僕、少し話してから行くよ」

 

 バン達に断りを入れると、凛空はバン達と別れ、声をかけた社員の方へと近づいていく。

 

「アストナージさん、いらしてたんですね」

「あぁ、嶺部長の代わりにね。展示している、プロジェクトMS関連のLBXの説明役さ」

 

 スーツの上から作業着を着込んだ、アストナージと呼ばれたその社員は、プロジェクトMSの開発チームの一員であり、凛空もよく知る人物であった。

 

「そうだ。凛空君もアルテミスに出場するんだろ? 頑張ってくれよ!」

「はい! ありがとうございます! 所で、アストナージさんも観戦するんですか?」

「そりゃ勿論! なんてったってLBX世界大会アルテミスだからな! 出場する選手たちが独自に改造を施した機体、この目で確かめずにはいられんさ! できる事なら、実際に手にして解析したいものだが。……あぁ、何だか考えてたら無性に気になってきた! もしも、もしもだ、機体の長所を殺すような無茶な改造をしてようものなら、俺は黙っちゃいないぞ! そもそも改造とはな──」

「あはは」

 

 開発チームの中でも、LBXを含む機械工学の造詣が深い事でも知られるアストナージ、その気さくで気のいい性格から、凛空も信頼を寄せる人物の一人であるのだが。

 時折、熱が入り過ぎると暴走する悪い癖があり、その片鱗を目にした凛空は、苦笑いを浮かべるのであった。

 

「それじゃアストナージさん、僕、そろそろ行きますね」

「だからこそ、チューンナップは狙いを絞り込んでだな──。っと、あぁ、引き止めて悪かったな」

 

 そんなアストナージと話を終えた凛空は、再びバン達と合流するべく、サイバーランス社の出店スペースを後にすると、アリーナを目指して足を進めるのであった。

 

 

 

 

 アリーナに到着した凛空は、応援に駆け付けた北島夫婦にリュウ。それに、今回レックスのサポートメンバーとしてアルテミスに出場する事となったハンゾウと、その応援に駆け付けたゴウダ三人衆の面々と話をしていたバン達と合流を果たす。

 なお、合流した際、こっそりミカが耳打ちで、凛空が合流する前に、キヨラとハンゾウによる一悶着があった事を教えてくれたのは、ここだけのお話。

 

「皆、頑張れよ!」

「応援してるからね!」

 

 応援に駆け付けた面々に見送られながら、開会式の開始を告げるアナウンスが流れると共に、アリーナの中央ステージに、出場する面々は移動を開始する。

 程なく、中央ステージに出場するプレイヤーが集まると、突如としてアリーナ内の照明が消え、一瞬の静寂に包まれる。

 しかし、それこそが開会式の幕が上がる合図であった。

 

「西暦2046年、強化ダンボールという夢の箱の発明により、世界の物流は革新的な進歩を遂げた。革命的な未来の箱が、輸送手段の常識を覆した。しかし、この未来の箱は、やがて全く別の目的として使われる事になった。そう、ホビー用小型ロボット、LBXの戦場として! 今や、戦いの舞台は小さなストリートを離れ、大きな世界へと飛び出した!!」

 

 照明が消えると共に、中央ステージ上にLBXを模した巨大ホログラムが出現し、更には花火やライトアップ等の演出により、アリーナ内の熱気が高まっていく。

 

「集え! 世界中のLBXプレイヤー達よ! 世界の頂点をかけて!!」

 

 刹那、アリーナの一角がライトアップされると、発生した煙と共にアリーナ一角がせり上がり、派手な装いをした、大会の司会者が姿を現す。

 

「これより、第三回LBX世界大会アルテミスを開催いたします!!」

 

 そして、司会者の開会宣言により、アリーナ内の熱気は最高潮に達し、観客達の歓声が響き渡る。

 それに呼応するように、出場するプレイヤー達の気持ちも昂っていく。

 

「世界中が注目するアルテミスも、今回で第三回を迎えました! 果たして、今年はどの様な熱戦が繰り広げられるのか!? どのような結末が待っているのか!」

 

 刹那、司会者の軽快なトークが行われる中、アリーナのゲートに受付を担当していた受付嬢が姿を現し、アリーナ内に設置された各モニターが彼女の姿を映し出した。

 

「ただ一つ言える事。それは、この戦いを制したプレイヤーこそ、世界一のLBXプレイヤーであり、そのLBXは、世界で最高の性能を手に入れる事が出来るのです!! ご覧ください!!」

 

 司会者の合図と共に、受付嬢の胸元の部分が突如として展開した。その肌の下に隠れていたのは、人間とは異なる、機械で出来た体。

 そう、彼女は人間ではなく、アンドロイドだったのだ。

 

 そんな彼女の体から部品の一部が飛び出すと、各モニターは、その部品を拡大し映し出す。

 

「優勝したプレイヤーには、このクリスターイングラム社製の超高性能CPU、メタナスGXが贈られます!!」

「あれが、メタナスGX……」

「まさしく人間そのものと言える高性能アンドロイド。そんな彼女をコントロールする膨大なアルゴリズムは、何と、このメタナスGX、たった一枚で制御されているのです! その処理速度は、LBXに一般的に搭載されているCPUの実に二百倍!! まさに、世界最高のCPUと言えるでしょう!!」

 

 こうして、今大会の優勝賞品であるメタナスGXのお披露目も終わった所で、いよいよ運命の対戦トーナメント表の発表となる。

 アルテミスは、先ずプレイヤーチームが予選となる各ブロックに分かれ、トーナメント形式で各ブロックの代表を決定する。そして、決勝戦となるファイナルステージは、各ブロックの代表によるバトルロワイヤルが行われ、それを制した者が、栄えある優勝者となる。

 

 刹那、各モニターに、Aから"F"の"六つ"のブロックが表示される。

 原作ではAからEまでの五つのブロックであったが、どうやらこの世界では、ブロックが一つ増え、それに伴いファイナルステージに進出できるプレイヤーチームが一つ増える事となっている。

 

「それでは最初のエントリーは……。おーっと! いきなり優勝候補、北米エリアチャンピオンチーム、ジョン・ハワードとポール・ゴードンはCブロック!!」

 

 軽快な音楽と共に、司会者の口から次々と組み合わせの発表がなされていく。

 

「おーっと! 伝説のLBXプレイヤー、レックスチームは、Aブロックだぁーっ!!」

 

 刹那、レックスチームの組み合わせが発表されるや、観客達の歓声が沸き起こる。

 

(やっぱり、原作同様にCブロックは優勝候補とされる有名プレイヤー達が多いな。出来る事なら、Cブロックには当たりたくないな。かといって、他のブロックも色々と厄介な事になりそうだな……)

 

 そんな歓声を他所に、徐々に埋まっていく対戦トーナメント表を目にしながら、凛空はそんな考えを浮かべる。

 

 Cブロックには、北米エリアチャンピオンの他、ヴィンセント・シュナイダー率いるチーム。更には、前年のアジアチャンピオンで、最強のウォーリアー使いと名高い、森上(もりがみ) ケイタ率いるチーム。

 その他、プロメテウス社のスポンサー枠として出場している、無敵の重機軍団との異名を持つチーム・アーミーチャリオット等々。

 まさに、強豪揃いのブロックとなっている。

 しかも、そんなCブロックには、原作同様にバン・カズ・アミの三人のチームも振り分けられており。凛空としては、Cブロックに振り分けられる事だけは避けたかった。

 

 かと言って、他のブロック。

 Aブロックには、レックスのチームの他、今回一人でのエントリーとなった海道 ジンのチームが存在している事から、こちらも激戦は避けられない。

 

 Bブロックには、一見すると他のブロックと比較して有名なLBXプレイヤーは少ないようにも感じるが、一人、異彩を放つプレイヤーが存在した。

 黒のシルクハットに黒のタキシード、マントを纏い仮面をつけた、まるでミュージカルの中から登場したかの如く、場に似つかわしくない装いをした男性プレイヤー。その名を、マスクドJ。

 とても逃亡生活の只中にあるとは思えぬ大胆不敵な行動をとる、某淳一郎博士。

 おそらく、正体が知られればとある一家にとっては末代までの恥となろう、そんなプレイヤーと同じブロックとなり戦う事になるのは、色々な意味で避けたい。

 

 Dブロックには、同じミソラ一中でも腕の立つ少年二人をサポートメンバーとして引き連れての出場となった仙道 キヨラの他。

 ある意味では相弟子とも言える、"オタクロス"なる人物の弟子を称する"ユジン"なる男性プレイヤー。

 オタクロスを通じて見知った間柄であるが故に、心情的に避けたいとの思いがあった。

 

 Eブロックには、オセアニアエリアチャンピオンのボゴタ・ボコタチームの他、本大会の優勝候補筆頭とされている、昨年度の南半球LBX選手権統一チャンピオン、公式戦での戦績が二五三勝を誇るハンニバル・ハーン。

 そして、先進的なデザインの高級車で会場入りを果たした不気味な少年三人組、灰原(はいばら) ユウヤ率いるチーム。

 一見すると、ハンニバル・ハーンが一番の脅威に思えるが、実際は、灰原 ユウヤこそがこのブロック最大の難敵であった。

 

 そして最後のFブロック。

 原作に登場しないこのブロックには、今年度のアフリカ大陸チャンピオン、"D・ロンメル"という有名プレイヤーの他。

 チーム・サベージビースト、チーム・ビーハイヴファミリー等。凛空の持つ前世の記憶にも登場する、危険な匂いの名前がいくつか並んでいた。

 

「さぁ、トーナメント表の発表も残す所あと一チーム! 最後のエントリーは、これだ!!」

 

 刹那、最後まで空白であったFブロックの場所に、凛空とミカのチームが埋まり。これにより、凛空とミカのチームがFブロックを戦う事が決定し、同時に、チーム・サベージビーストが初戦の相手となった事が決定した。

 

「さぁ、準備は整った!! ファイナルステージに進出できるのは六つのチームのみ! 果たして、どのチームがその権利を手にするのか!? そして、世界の頂点を手にするのは誰かぁっ!? LBXバトル、スタートッ!!!」

 

 司会者の魂のこもった締めくくりの言葉と共に、第三回LBX世界大会アルテミス、その戦いの火蓋が切られた。




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