うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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波乱のトーナメント 前編

 開会式が無事に終わりを告げた所で、アリーナの中央ステージに変化が現れる。

 東西南北、四つの地点に設置されたDキューブがせり上がり、姿を現した。

 

 刹那、最初の予選ブロックであるAブロックが十分後に開始される旨がアナウンスで伝えられると、Aブロックに出場するプレイヤー達が、各々の準備を行うべく、選手控え室に移動を開始する。

 一方、残りの部ブロックに出場するプレイヤー達は、大会出場プレイヤー用に用意された観覧席に移動する。

 

 そして、間もなく予選Aブロックが開始されようとした、その時であった。

 

「ごめんミカ。ちょっとトイレに行ってくるね」

「ん、分かった」

 

 不意に、凛空はミカにそう言うと、トイレに向かうべく席を立つ。

 すると、近くの観覧席に座っていたバン達が気がつき、凛空に声をかけた。

 

「凛空、どうしたんだ?」

「もうすぐ試合、始まっちまうぞ」

「レックス達の試合、見ないの?」

「ちょっとトイレにね」

 

 そして、席を立った理由をバン達に説明した凛空は、観覧席を後にすると、その足でトイレに向かう、かと思われた。

 しかし、凛空はトイレに向かう事無く、普段は立ち入る事の出来ない関係者用の通路を歩き、程なく、換気口を見つけると、金網を外し、その中にバッグから取り出した機体を侵入させた。

 

 換気口から続く換気ダクトを進む白と青を基調としたその機体は、V字型ブレードアンテナにツインアイを備え、武骨な外観を有し、その背部には、白で塗装されたコンテナを背負っている。

 その機体の名は、"陸戦型ガンダム"。ガンダムの名を冠してはいるものの、その実、プロジェクトMSにて販売されている"陸戦型ジム"のアドバンスドモデルとして、一般に販売されている。

 とはいえ、ガンダムの名を冠しているとあって、その性能は高いものを誇る。

 

 そんな陸戦型ガンダムを操作する凛空は、やがて、CCMの画面に表示された機体の現在位置を確認すると、操作する手を止め、機体をその場に停止させた。

 その後、凛空は別の換気口にも同様に陸戦型ガンダムを侵入させると、合計六機の陸戦型ガンダムを、換気ダクトの各ポイントに配置する。

 全ての機体の配置を終えた凛空は、ひとまず無事に配置を終えた事に、安堵のため息を漏らした。

 

(とりあえず、準備は整った。後は、"本番"をうまく乗り切るだけだ……)

 

 凛空が今回行ったこの行動は、原作においても描かれている一つの悲劇を阻止する為のもの。

 ファイナルステージ終了と同時に、イノベーターがメタナスGXを実動部隊である赤の部隊を用いて強奪、それを阻止すると共に、原作において強奪の際に犠牲となった警備員の命を救う、という側面も持っていた。

 

 この阻止作戦を成功させるにあたり、重要となるのが、投入した機体を同時に操作する事であった。

 アングラビシダスで以前凛空が披露した複数機同時操作の技術は、この為に身に付けたと言っても過言ではなかった。

 しかし、流石に三機以上ともなると円滑な操作に支障が出る為、二機を直接操作し、残りの四機に関しては、サイバーランス社製のAIを搭載している。

 

(欲を言えば、万全を期すために田中さん達の直接的な協力が欲しかったけどな……)

 

 今回の阻止作戦にあたり、凛空は事前に田中に連絡を取り、赤の部隊によるメタナスGX強奪の未来を、"可能性"の話として伝え彼らの協力を引き出そうとした。

 あくまでも予測される未来の出来事として伝えたのは、凛空が知る原作での出来事が、田中にとっては不確定な未来の話であり。それを断定的に細かに伝えると、返って疑いの目を向けられる可能性が高いからだ。

 

 こうして話を伝えた所、裏付けもない現状では動けないと、直接的な協力は断られてしまう。

 歯痒さを感じつつも、凛空は粘り強い交渉を続け、結果、何とか"情報"という形の協力を引き出す事に成功した。

 

 その情報というのが、お台場ビッグスタジアムの設計図、そして、大会当日にメタナスGXが保管されている部屋の位置情報等であった。

 凛空は、この情報をもとに、今回の阻止作戦を練ったのであった。

 作戦の概要はいたってシンプル、メタナスGXが保管されている部屋、並びにそこに通じる通路上に六機の陸戦型ガンダムを潜伏・配置し、それぞれに装備させた、対赤の部隊の武装兵用特殊武装。"トリモチ"と呼ばれる粘着性のある物質を弾頭に搭載した、特殊ロケットランチャーを用いて赤の部隊を無力化すると言うものであった。

 

 勿論、原作通りに事が運ぶとも限らないので、陸戦型ガンダムが背負っているコンテナには、万が一の場合に備えての武装が搭載されている。

 

(今更無い物ねだりしても仕方がないか。さて、早く観覧席に戻らないと、ミカが心配しちゃう)

 

 こうして、準備を終えた凛空は、観覧席へと戻るべく足を進めた。

 

 

 だがその途中、凛空は、柱に手をつき深呼吸しているとある人物の姿を発見した。

 

「大丈夫ですか、ユジンさん?」

「え? あぁ、誰かと思えば、凛空君じゃないですか!」

 

 瓶底眼鏡にスーツという出で立ちの男性。その人物こそ、オタクロスの弟子であるユジンその人であった。

 ユジンとは見知った間柄である凛空は、歩み寄ると心配そうにユジンに声をかける。

 

「いやぁ、お恥ずかしい所を見られてしまいました」

「何処か具合が悪いんですか? 医務室にご一緒に行きましょうか?」

「いえ、体はいたって健康です。ただ少し、会場の雰囲気に圧倒されてしまいまして」

「あぁ、成程」

 

 ユジンの言葉を聞き、凛空は納得した声を漏らす。

 ユジンの主な活動拠点は、自身も特撮物をこよなく愛する一人であり、日本のサブカルチャーの聖地として今なお多くのオタク達に愛されて止まない"アキハバラ"。

 一応、アキハバラにもその地域色を反映させたLBXの大会が行われているが、やはり、観客の数や熱気などで言えば、圧倒的にアルテミスの方が高い。

 

 加えて、ユジンが少々人見知りで気の弱い性格故に、アリーナの雰囲気に圧倒されてしまうのは必然とも言えた。

 

「でも、凛空君と話が出来て、少し気持ちが楽になりました」

「そうですか、それはよかった」

 

 見知らぬ人々の多い中、見知った凛空と話が出来た事で、ユジンの気持ちも少し楽になった様だ。

 ユジンの顔色も、声をかける前よりもよくなっていた。

 

「そうだ、ユジンさんは確か、予選Dブロックでしたよね?」

「えぇ、そう言う凛空君はFブロック。僕と当たるとすれば、ファイナルステージですね」

「はい。お互い、ファイナルステージに進出できるように頑張りましょう」

「勿論です!」

 

 そして、お互いの健闘を祈った所で、凛空はユジンと別れると、観覧席に向けて足を進めるのであった。

 

 

 

 

 アリーナに戻ってきた凛空が感じたのは、アリーナを埋め尽くす観客達の熱気。

 それを肌で感じつつ、自身の観客席に戻ってきた凛空は、戻るのが少し遅くなった事をミカに謝りつつ、現在のAブロックの進行状況を尋ねる。

 

「次が、Aブロックの準決勝」

「相手はあの海道 ジンか……」

 

 既にAブロックは二回戦まで終了し、準決勝にコマを進めたのは、レックスとハンゾウのチーム。そして、海道 ジンのチーム、その他二つのチーム。

 そんな中、なんと準決勝において、レックスとジンの両チームがぶつかる運びとなった。

 これまでのバトル、文字通り全てを秒殺で片付けてきたジンと、伝説のLBXプレイヤー・レックスとの直接対決。盛り上がらない筈もなく、アリーナ内の熱気は、最高潮に達しようとしていた。

 

 そして、そんな中、遂に準決勝の幕が切って落とされる。

 

 まず先に仕掛けたのは、ハンゾウのハカイオー。

 だが、エンペラーM2は破岩刃の斬撃を軽々と躱すと、お返しとばかりに必殺ファンクション、インパクトカイザーを繰り出した。

 地面を伝い凄まじいエネルギーがハカイオーと、レックスの操作するLBXに迫る。

 

 咄嗟に横に飛び躱すハカイオー。

 一方、レックスの操作するLBX。赤を基調とした強靭なボディ、なびく尻尾など、その見た目通り火竜をモチーフとした、タイニーオービット社製のLBX、サラマンダー。

 その外観から人気は高いが、反面扱いが難しい同機をベースに、レックスが独自のカスタマイズを施した機体こそ、伝説のLBXプレイヤーが操る無敵の火竜、その名を"Gレックス"。

 

 Gレックスは咄嗟に、バーンナックルと呼ばれる近接用武装を装備した拳を地面に叩きつける。それにより生じた衝撃波の威力は凄まじく、インパクトカイザーにより生じたエネルギーを打ち消し合った。

 これには、凛空達を含め、観客達も唖然とする。そんな状況を他所に、バトルは更に熾烈さを増していく。

 

 必殺ファンクションのお返しには必殺ファンクションとばかりに、ハカイオーの我王砲(ガオーキャノン)が放たれる。

 必殺ファンクション発動直後で避けられぬと判断したジンは、咄嗟にエンペラーランチャーを構えると、内蔵された多連装ミサイルを発射し、何とか我王砲(ガオーキャノン)の直撃を回避する事に成功する。

 そして、ジンが安堵したのも束の間。

 隙を付き懐に飛び込んだGレックスが、エンペラーM2に対して必殺ファンクション・ガトリングバレットを繰り出した。

 

 刹那、バーンナックルにエネルギーが集約すると、Gレックスは威力の増したその拳を、エンペラーM2に対して次々と叩きつける。

 そして、上空に吹き飛ばされたエンペラーM2。だが、エンペラーM2も一方的にやられっぱなしではなく、お返しとばかりにエンペラーランチャーの多連装ミサイルをGレックス目掛けて発射した。

 

 必殺ファンクション発動直後で動けぬGレックス。

 絶体絶命かと思われた、その瞬間。Gレックスの目の前にハカイオーが飛び出すと、破岩刃を盾に多連装ミサイルからGレックスを守ってみせた。

 Gレックスの危機を救い、ハンゾウが安堵した、次の瞬間。

 エンペラーM2がハカイオーに飛び掛かると、インパクトカイザーを振るった。その一撃は、傷だらけとなった破岩刃を砕き、ハカイオーの頭部に直撃した。

 そして、よろめくハカイオーに引導を渡すべく、間髪入れずにインパクトカイザーが再び振るわれ、吹き飛ばされたハカイオーはバトルから落伍するのであった。

 

 しかし、次の瞬間。

 エンペラーM2の死角から接近していたGレックスが懐に飛び込むと、その拳をエンペラーM2目掛けて打ち付ける、かと思われた。

 だが、寸での所でその拳を引っ込めると、何故かエンペラーM2から距離を取るGレックス。

 

 このGレックスの不可解な行動に困惑するジンだが、絶好のチャンスを逃す事もなく、エンペラーランチャーの多連装ミサイルを再びGレックス目掛けて発射する。

 そして、発射されたミサイルがGレックスに直撃し、無敵の火竜は爆煙の中に姿を消した。

 

「け、決着! 何という高速な試合展開! エンペラーM2の前に、ハカイオーとGレックス、善戦するも撃沈! Aブロック決勝に駒を進めたのは、海道 ジンだぁぁっ!!」

 

 そのハイレベルなバトル、そして劇的な結果に、観客達は皆唖然となる。

 

「嘘……、やり直してよ」

(原作通り、か……)

 

 結果を素直に受け入れられずやり直しを要求するミカを他所に、凛空は、若干険しい表情を浮かべながら、この結果を受け入れるのであった。

 因みに、この結果に対して、負けたハンゾウはもとより、勝った側であるジンも腑に落ちないという不可思議な状況ではあったが、当事者の一人であるレックスに言いくるめられるのであった。

 

 その後、海道 ジンは危なげなく決勝戦を制し、Aブロックの代表として、ファイナルステージ進出を決めるのであった。

 

 

 

 

 Aブロックが終了し、十分ほどの準備時間が経過した後、Bブロックの開始を告げるアナウンスがアリーナに響き渡ると共に、Bブロックに出場するプレイヤー達が中央ステージに姿を現した。

 そして、各々のプレイヤーが各Dキューブの前に立ち準備が整うと、試合開始を告げる合図を待つ。

 

「さぁ、果たしてこのBブロックでは、どんなバトルが見られるのか!? 各プレイヤーに熱い視線が注がれる中、何と言っても注目すべきはサウスステージ! 今回、一人でのエントリー、果たしてその素顔や如何に!? 仮面の男、マスクドJだ!! 果たして、彼はどの様なバトルをするのか!?」

 

 試合開始前、司会者がBブロック内の注目プレイヤーを紹介する。

 紹介と共にモニターに映し出されたマスクドJ、その顔を、バンは引き込まれるかのように見つめ続けていた。

 

「それでは、Bブロック第一回戦! Ready……」

「さぁ出でよ! 華麗なる剣士、マスカレードJ!!」

 

 刹那、Dキューブ内に投下され姿を現したのは、オレンジを基調としたストライダーフレームと思しき、デュエルレイピアと呼ばれる細身の剣を装備したLBX。

 一般的に販売されている機体とは異なる、マスクドJ渾身のハンドメイドの一点ものだ。

 

 祖手に対するは、ナズーとカブト。

 

「見るがいい! マスカレードJの美しき舞を!!」

 

 開始早々、相手のナズーがナズーアームの水の弾丸を発射するも、マスカレードJはまるで人間が避けるかの如く柔軟な身のこなしで躱す。

 そして、マスカレードJはその見た目通りの軽々とした素早いステップを使い、ナズーとカブトを翻弄する。

 

 その素早いステップについていけず、ナズーとカブトがマスカレードJを見失った、刹那。

 マスカレードJは、死角からナズーとカブト目掛けてデュエルレイピアを突き立てると、その切先が両機の駆動部を直撃。

 装甲など施されていない、まったく無防備な駆動部に攻撃を受けた事で、ナズーとカブトはそのまま倒れて機能を停止するのであった。

 

「堪能していただけたかな? マスカレードJの優雅なるバトルを」

「何というバトル!? マスクドJ、二回戦進出を決めました!!」

 

 しなやかな動き、そして無駄のない攻撃。

 まさに優雅と呼ぶに相応しいマスカレードJのバトルに、観戦していたバン達は感嘆の言葉を零す。

 

 一方凛空も、興味深そうな視線を向けるのであった。

 

(操作している人の事は、この際触れないようにして……。あのマスカレードJの運動性能、是非とも解析して、プロジェクトMSに応用したいな)

 

 その後、マスクドJは第二回戦、準決勝と、危なげなく勝ち進み、遂に、決勝戦にまで進出した。

 決勝戦の相手は、北陸エリアのチャンピオン、神崎 ショウ、そして彼の操るグラディエーター。

 隣接する日本海の荒波の如く、激しい連続攻撃を使用し、一回戦から準決勝まで、一分以内に勝負をつけてきた超攻撃型のプレイヤーである。

 

 決勝戦の開始直後から、神崎の操るグラディエーターは積極的な攻勢に出る。

 スーパーマッハアタック等と称したその猛攻を前に、マスカレードJはそれまでのバトルとは異なり、防戦一方となり。遂には、岩肌に追い詰められてしまう。

 遂に、マスカレードJも敗北を喫するのかと思われた、その時。

 マスカレードJは、グラディエーターの攻撃を躱してみせた。

 

 しかも、その後もグラディエーターの攻撃を、司会者曰く、まさに一人仮面舞踏会と称する、まるで踊るかのような華麗なステップで躱し続ける。

 それはまさに、グラディエーターの攻撃を完全に見切った動きであった。

 

 自身の攻撃を見切られ、焦りの色を見せ始める神崎。

 そんな彼に追い打ちをかけるかのように、マスカレードJが遂に攻勢に転じる。

 目にも留まらぬ速さでグラディエーターに攻撃を加え、グラディエーターを岩肌にまで追い詰める。

 

 そして、フィナーレを飾るに相応しい、マスカレードJの必殺ファンクション、ストームソードが炸裂し、勝敗が決するのであった。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場した陸戦型ガンダムについての豆知識だ。

 OVA作品、機動戦士ガンダム 第08MS小隊にて初登場となったこの機体は、MS量産計画の一環として連邦陸軍がガンダムの余剰パーツを流用して生産した戦時量産型モビルスーツだ。
 戦時量産型と言ってもその性能は高く、多彩なオプションによりあらゆる戦闘に対応出来るように設計されている。
 しかし、それに比例して生産コストも高く、生産数は20機程度と言われ、補修用部品の希少性も相まって多くの現地改修型を生み出す事になったぞ。

 では! また。
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