その後、第一回戦同様に二対二のタッグバトル方式の準決勝も無事に勝利した凛空とミカのチーム・ラウンドナイツは、無事に決勝戦に駒を進めた。
「さぁ、いよいよ、Fブロックも決勝戦を迎えました! 果たして、決勝戦を制し、ファイナルステージへの切符を勝ち取るのは、果たしてどちらのチームかぁぁっ!?」
司会者の熱のこもった声と共に、チーム・ラウンドナイツ。そして、対戦相手であるチーム・ビーハイヴファミリーのプレイヤー達が、決戦の舞台となる、中央に設置されたDキューブの前に立つ。
「チーム・ラウンドナイツ……。いや、西原 凛空」
Dキューブを挟んで対峙するチーム・ビーハイヴファミリーの三人のプレイヤー。
そのリーダーである、落ち着いた雰囲気を纏いながらも何処か不気味さを感じさせる妙齢の女性。彼女が、不意に凛空の名を口にし、凛空は眉をピクリと動かした。
「最早十分に宣伝は果たしたであろう。これ以上、更なる名声を得る必要もあるまい」
「それは、降伏勧告ですか?」
「どうとらえるかはそなたの自由。しかし、プロジェクトMSを発表し、サイバーランスが更なる名声を得た陰で、涙するものがいる事もまた事実」
そして女性は一拍置くと、更に言葉を続けた。
「我らは、その様な涙したものに救いの手を差し伸べ、救済するもの」
「あなた方の様な傲慢なる者達に裁きの鉄槌を下す」
「そう、この世から、不要な涙を消す為に」
(綺麗ごとを並べているが、要は同業他社から報酬を受け取るのと引き換えに汚れ仕事を請け負うという事か……)
リーダー格の女性、そしてチームメンバーである男女の言葉を聞き、凛空は彼女達の目的が、アルテミスの優勝などではなく、自分達のチームを潰すものと推測する。
「そろそろ話しにも飽いた。戦を、始めるとしよう」
「我らには、大いなるものの加護がある、負ける筈がない」
「このエンブレムこそ、その証」
刹那、チーム・ビーハイヴファミリーのプレイヤー達は、各々の操作するLBXをひけらかす。
リーダー格の女性が操作するのは、蜜胃や毒針などを内包した蜂の腹部を彷彿とさせる脚部のホバーユニット、そして背部の羽を模したパーツ等。その外観通り、蜂をイメージしたLBX。
クイーンで培った技術を基に、更に安定性を向上させたタイニーオービット社LBX、その名を"ホーネット"。
その僚機を務めるのは、ホーネットと同じ、黄色と黒を基調としたカラーリングのブルド改とグラディエーター。
そんな三機の肩には、蜂の巣をモチーフとしたエンブレムが描かれていた。
「それでは、Fブロック決勝戦!! Ready……」
刹那、合図と共に、決勝戦の舞台となる、燃料タンクや弾薬貯蔵庫、更には兵舎や管制塔等々、夜間の軍事基地にそれぞれの機体が降り立つ。
「我らが、自ら引導を渡してやろう。彼岸にて、心安らかに暮らすがよい。そして……」
刹那、ブルド改が装備した連装ミサイル・ランチャーが火を噴き、二発のミサイルが放たれる。
しかも、その二発のミサイルは空中で内蔵された複数の子弾を射出する。所謂多弾頭ミサイルだ。
分裂したミサイルは、フルアーマーガンダム7号機・カスタムとジーライン・ライトアーマー目掛けて飛来する。
「避けて!」
「ん!」
それらミサイル群を、両機は自慢の機動力で回避する。
刹那、畳み掛けるように、グラディエーターが装備したロケットランチャーから放たれた弾頭が降り注ぐ。
夜の闇を明るく照らす炎が軍事基地の一角に広がる中、そんな炎を突き破り、フルアーマーガンダム7号機・カスタムがスラスターを噴かせて姿を現す。
「ミカは一旦下がって」
「分かった。気をつけて」
装甲の薄いジーライン・ライトアーマーではあの火力に正面からぶつかるのは得策ではない、と判断した凛空は、ジーライン・ライトアーマーを一旦安全な場所に退避させ、フルアーマーガンダム7号機・カスタム単機で突撃を敢行する。
「ほぉ、正面からくるか。その意気や良し」
フルアーマーガンダム7号機・カスタムの行動に対して、感嘆の言葉を零す女性。
「では、こちらもそれにお応えいたしましょう」
刹那、ホーネットが装備するマシンガン、インペリアルハートが火を噴き、それを合図にブルド改とグラディエーターの得物も再び火を噴く。
飛来した弾丸をシールドで受け止めたフルアーマーガンダム7号機・カスタムは、続くミサイルとロケットの弾頭を、格納庫やビル等、建造物の間を駆け抜け、それらを盾として利用し被弾を避ける。
「く、あんな見た目で良く動く!! とっとと墜ちろ!」
グラディエーターを操作する女性の腹立たしい言葉と共に、グラディエーターは前に出ると、ロケットランチャーを一心不乱に撃ち続ける。
だが、次々と放たれる弾頭は、フルアーマーガンダム7号機・カスタムの装甲を捉える事無く、ビルや管制塔等に弾着し、それらを瓦礫とするのであった。
「まず」
刹那、それまで回避に専念していたフルアーマーガンダム7号機・カスタムがスラスターを噴かせると、牽制に二連装式ビームライフルを発砲しながら、グラディエーターに接近する。
グラディエーターは迎撃を試みたかったが、自身を狙う二筋の光を躱すのに精一杯で、そこまでの余裕はなかった。
「一つ」
グラディエーターの懐に飛び込んだフルアーマーガンダム7号機・カスタムは、左腕に持ったビームサーベルを横薙ぎに振るう。
刹那、光の刃はグラディエーターの体を一刀両断にし、その無残な姿はフィールドの一部と化した。
「く、何て奴だ」
「落ち着くのです。焦りは禁物」
「は、はい!」
一機倒されたとしても、数的にはまだ互角。いや、ジーライン・ライトアーマーが後方に下がったままの為、数的には自分達が有利。
そんな戦況を冷静に分析した女性は、チームメンバーの男性に落ち着きを取り戻させる。
そして、落ち着きを取り戻した男性は、連装ミサイル・ランチャーによる攻撃を再開させる。
空中で分裂し、フルアーマーガンダム7号機・カスタムを狙うミサイル群。
刹那、フルアーマーガンダム7号機・カスタムはスラスターの出力上昇に伴う轟音を鳴り響かせながら、その身を上空へと舞い上がらせた。
しかし、空中に対してもなお、ミサイル群はフルアーマーガンダム7号機・カスタムを追い続ける。
だが、次の瞬間。
フルアーマーガンダム7号機・カスタムは大型のスラスターユニットをパージすると、大型のスラスターユニットをデコイとして利用し、ミサイル群の回避を目論む。
その目論みは見事に成功し、ミサイル群は吸い寄せられるように大型のスラスターユニットに向かい、漆黒の夜空に火の玉を生み出した。
「やったか!?」
夜空に輝く火の玉を目にし、ブルド改を操作する男性は、確認する前にフルアーマーガンダム7号機・カスタムを撃破した気になる。
だが、その油断が、命取りとなった。
次の瞬間、漆黒の夜空から、フルアーマーガンダム7号機・カスタムがブルド改の目の前に降り立つ。
〈アタックファンクション、メガビームキャノン〉
刹那、バックパックに装備されたメガビームキャノンの砲口がブルド改に向けられると、次の瞬間、集約したエネルギーが巨大な一筋の光となり、ブルド改目掛けて放たれた。
撃破したものと思い込み、反応が遅れたブルド改は、メガビームキャノンの直撃を受けて、巨大な閃光と共に、バトルから落伍するのであった。
「まさか、これ程とは……」
平静を装っているものの、その額に汗を浮かべる女性。
戦況が不利になりつつある現状、ここからどの様に逆転するべきか、その道筋を見出そうとする。
だがそれは、フルアーマーガンダム7号機・カスタムが不意に、見当違いの方向に二連装式ビームライフルを発砲し始めた事で、中断される事となる。
「何を……、っ! まさか!?」
突然の行動に一瞬困惑した女性だが、この行動の真意に気がつくと、女性は驚きの感情を露わにする。
夜の闇の中、軍事基地を照らし出し、視界の確保にも一役買っていたサーチライト。フルアーマーガンダム7号機・カスタムは、それを破壊していたのだ。
サーチライトを破壊され、見通しが悪くなる中、フルアーマーガンダム7号機・カスタムのツインアイが、獲物を狙う狩人の如く眼光を放ち。
僅かに光の軌道を描いたのを最後に、フルアーマーガンダム7号機・カスタムの姿を見失うホーネット。
「闇に乗じて奇襲をかける気ですか……。ならば、こうするまでです!」
刹那、ホーネットはインペリアルハートで射撃を開始する。
絶え間なく続く銃声、放たれ続ける弾丸、それはまさに制圧射撃と呼ぶに相応しいものであった。
最も、今回の場合は、そちらかと言えば下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。まぐれ当たりを期待した側面が強い。
そして、暫し射撃を続けた後、漸く銃声が途絶えた所で、女性は目を凝らして成果を確認する。
だが、その時。
「……え?」
不意に、自身のCCMの画面に機体状況を知らせる表示が現れ、女性は突然の出来事に理解が追い付かず、一瞬固まってしまう。
だが、ホーネットの胴体を貫いたヒート・ランスの穂先、そして、いつの間にか背後を位置取っていたジーライン・ライトアーマーの姿を確認して、女性は漸く理解した。
サーチライトを破壊し、見通しを悪くしたのは、闇に乗じてフルアーマーガンダム7号機・カスタム、ではなく、意識の外にあったジーライン・ライトアーマーが奇襲を仕掛ける為。
そして、見通しの悪い中でホーネットの位置を把握する為に、制圧射撃の発砲炎を目印にした事。
即ち、相手の仕掛けにまんまとはまり、敗北を喫したのだという事を。
「決着-ッ!! 見事な連携技で勝利を手にし、ファイナルステージへの切符を勝ち取ったのは、チーム・ラウンドナイツだ!!」
沸き上がる観客達、割れんばかりに響き渡る声援。
それに応えるように、凛空が手を振り、ミカも、少し慣れてきたのか、小さいながらも手を振るのであった。
やぁ皆、店長だ!
今日は、作中に登場したグフ戦術強攻型についての豆知識だ。
雑誌企画であるMSV-Rにて登場したこの機体は、グフの特性をそのままに火力を強化した機体で、グフ・ヴィジャンタと同時開発された。
背部のガトリング砲、左腕部の大型ガンパック等の装備により重量増加が懸念されたが、機体構造の再設計や脚部スラスターの追加により機動性の維持に成功している。
ただし、再設計に手間取ったこともあり、生産数は38機で終了しているぞ。
では! また。