うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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決戦、バトルロワイヤル

 暫しの休憩時間を挟み、遂に、第三回LBX世界大会アルテミスの勝者を決めるファイナルステージの幕が上がる。

 アリーナの照明が消えると、アリーナの中央ステージ、その中心がライトアップされる。

 

 そこには、これまでの予選ブロックを勝ち上がったプレイヤー達が並んでいた。

 

「さぁ、いよいよクライマックスを迎えます、第三回LBX世界大会アルテミス、ファイナルステージ!!」

 

 司会者の進行と共に、観客席の熱気も高まっていく。

 

「果たして、この中の誰が、世界一のLBXプレイヤーの称号と、メタナスGXを手に入れる事になるのか!? それではご紹介しましょう、激戦を勝ち抜いてきた最強のファイナリスト達です!!」

 

 刹那、観客席から割れんばかりの声援が響き渡り始める。

 その中には、これまでの予選ブロックの戦いで魅了されファンになったであろう、観客の黄色い声援も混じっている。

 

「先ずは、"秒殺の皇帝"の異名を持つ天才、海道 ジン! 操るLBXは、エンペラーM2!」

 

 刹那、一際黄色い声援が大きくなるが、ジンの本人は特に反応を示すことなく淡々とした様子。

 

「続いては、経歴・戦闘スタイル、全てが謎・謎・謎!! ミステリアスな仮面の騎士、マスクドJ! 使用LBXは、マスカレードJ!」

 

 紹介されると共に観客達に手を振るマスクドJ。その様子を、バンと凛空が横目で見る。

 

「一体誰が予想したか! 驚異の新人、並み居る強豪を破った奇跡の超新星、山野 バン! LBXはアキレス!!」

 

 自身の紹介が行われると、バンは表情を引き締める。

 

「特撮ヒーローを彷彿とさせる戦いで勝ち上がってきたこの男は、ファイナルステージを制し、真のヒーローとなれるか!? ユジン、またの名をオタクロスの弟子! 操るLBXは、ビビンバードX!」

 

 紹介が行われると共に、早速自慢の早着替えでユジンからオタレッドへと変身を終えると、早速名乗りを上げ、勝利宣言を行う。

 

「今大会のダークホース! これは運か、それとも実力か!? 灰原 ユウヤ! 使用LBXは、ジャッジ!」

 

 紹介が行われた、刹那。ユウヤのチームメンバーが、ユウヤの纏っていたマントを取る。

 そして、マントの下から現れたのは、奇妙なスーツを身にまとったユウヤの姿であった。

 

「最後は、この少年! その圧倒的な火力ですべてを焼き尽くしてきたイレギュラー! 果たして、ファイナルステージを制し、サイバーランスの名を更に広めるのか!? チーム・ラウンドナイツから西原 凛空! LBXは、フルアーマーガンダム7号機・カスタム!!」

 

 自身の紹介が行われると、凛空は深呼吸を行い、表情を引き締めた。

 

 こうして、ファイナルステージに臨む六人のプレイヤーの紹介が終わると、次の瞬間。

 アリーナの照明が再び灯ると共に、不意に、彼らが並んでいた足元がせり上がると、ファイナルステージ用の特別ステージが姿を現した。

 

 そして、彼らの目の前に、通常のDキューブよりも一回り程大きな、ファイナルステージの舞台となる特別なDキューブがせり出した。

 

「ファイナルステージは生き残りをかけたバトルロワイヤル! 文字通り、自分以外は全て敵という状況の中で、最後まで生き残った者が勝者となる、過酷なサバイバルバトル!!」

 

 司会者の説明を聞きながら、凛空は手にしたフルアーマーガンダム7号機・カスタムに視線を向けた。

 この大一番を共に戦う相棒は返事を返す事はなかったが、凛空には、フルアーマーガンダム7号機・カスタムが自身の気持ちに応えた様な気がしていた。

 

「それでは、第三回LBX世界大会アルテミス! ファイナルステージ・バトルロワイヤル!! Ready……」

「ビビンバードX!」

「マスカレードJ!」

「……」

「エンペラーM2!」

「アキレス!」

「フルアーマーガンダム7号機・カスタム!」

 

 そして、司会者の合図と共に、六人の手から六機の小さな戦士達が決戦の地に降り立つ。

 所々に点在する遺跡、その脇を高温のマグマが流れ、空を分厚い灰色の雲が覆う。その光景はまさに、火山噴火により崩壊の日を迎えた古代都市を彷彿とさせる。

 そんな決戦の地となったフィールドの名は、火山遺跡。

 

「灰原 ユウヤ、スタンバイだ」

 

 刹那、チームメンバーである少年の合図と共に、ユウヤは不意に両手を掲げる。

 すると、手の平に備えられた投影機を使用し、ユウヤの目の前にジャッジの機体情報を表示したモニターが投影される。

 

 これには、凛空を含めた他のプレイヤー達も驚き、観客達の間にもどよめきが起こる。

 

「嘘だろ!? あれでコントロールする気かよ!」

「もしかして、あのスーツ自体がCCMって事!?」

「何それ、ふざけてるの」

 

 バンや凛空に同行していたカズ・アミ・ミカの三人が、CCMスーツの機能を目の当たりにした感想を各々零すのを他所に。

 

(神経パルスを変換し、命令を直接LBXに伝達させる。人機一体、まさに阿頼耶識……。いや、AMSともS型デバイスとも言えなくもないか。何れにせよ、マシン・生体制御システム、脳と機械の直結だなんて、狂気以外の何物でもない)

 

 凛空は、少々険しい表情を浮かべながら、原作でも描かれていたCCMスーツの機能を目の当たりにした感想を、心の中で零すのであった。

 

「バトルスタート!」

 

 程なく、遂にファイナルステージ・バトルロワイヤルの幕が切って落とされる。

 

 

 

 

 開始早々、各機が激しい攻防を繰り広げ始める。

 激しい鍔迫り合いを演じるアキレスとエンペラーM2、ビビンバードガンを発砲するビビンバードXと、飛来する光弾を軽やかな動きで躱すマスカレードJ。

 

「悪いけど、早々にご退場してもらうよ!」

 

 そして、フルアーマーガンダム7号機・カスタムはスラスターを噴かせて跳躍すると、ジャッジ目掛けて二連装式ビームライフルを発砲する。

 しかしジャッジは、自身に迫る二筋の光を俊敏な動きで躱し、バックステップで一旦距離を取る。

 

 これには、凛空も少々眉を顰め、観客席からは感嘆の声が響き渡る。

 

(これがCCMスーツの性能か……、想像以上だな)

 

 だが、フルアーマーガンダム7号機・カスタムは諦める事無く、ジャッジに対して追撃を仕掛ける。

 一方、エンペラーM2と鍔迫り合いを演じていたアキレスは、突如乱入してきたビビンバードXの銃撃を受けて、初ダメージを負ってしまう。

 

「っ! 目の前の敵にばかり相手にしてちゃ駄目だ、周りにも注意しないと……」

 

 バトルロワイヤルの洗礼を受けたバンは気を引き締め直すと、アキレスを前進させた。

 その先にいたのは、ジャッジを追撃するフルアーマーガンダム7号機・カスタム。

 

「凛空!」

「っ! 今は他に構っている時じゃないのに!」

 

 ヒビの入ったアキレスランスに代わり、森上 ケイタから一時的に譲り受けた水月棍を振るう。

 だが、襲い掛かってきたアキレスに素早く反応し、シールドで水月棍を受け止めるフルアーマーガンダム7号機・カスタム。

 

 そんな二機を他所に、ジャッジに対して仕掛けるマスカレードJ。

 だが、漁夫の利を狙い、その二機の戦いにビビンバードXが参戦。更には、エンペラーM2も遅れて参戦する等。

 戦況は混戦の様相を深めていった。

 

「まさに息をつく暇もないバトルロワイヤル! 大混戦だぁっ!!」

「……了解。灰原 ユウヤ、サイコスキャニングモード発動だ」

(っ! 今サイコスキャニングモードと言ったのか!?)

 

 そんな中、ふとユウヤのチームメンバーが口にしたサイコスキャニングモードという単語が聞こえ、凛空はユウヤを一瞥する。

 すると、ユウヤは両手を動かし、何やら新たなシステムを発動させていた。

 凛空は、何とか発動を阻止したい所ではあったが、フルアーマーガンダム7号機・カスタムはエンペラーM2との死闘を演じており、動く事が出来ない。

 

 そんな中、遂にサイコスキャニングモードが発動し、ユウヤの目の前のモニターが変化すると共に、負荷によるものか、ユウヤの髪から色素が抜け、目も充血し赤く染まる。

 刹那、変化が現れたのはユウヤだけではなかった。

 ジャッジもまた、機体が緑色に発光すると、機体が同色のオーラを纏い始める。

 

(くそ、発動したか!)

 

 この変化に、凛空は内心苦々しい表情を浮かべ。他のプレイヤー達も、驚きを露わにする。

 

「データ収集開始」

「灰原 ユウヤ、いけ」

 

 手にしたノートパソコンを操作し、情報の収集を開始するユウヤのチームメンバー。

 それと同時に、サイコスキャニングモードを発動したジャッジが、それまでの消極的な行動から一変、積極的に攻撃を仕掛け始める。

 

 そして、最初の標的となったのは、ビビンバードXであった。

 

「な! 早い!?」

 

 まるで瞬間移動するかの如く速度でビビンバードXの懐に飛び込むと、自身の得物であるジャッジソードによる斬撃を繰り出す。

 繰り出される斬撃の速さに、ビビンバードXは躱すので精一杯の様子。

 

 やがて、胴体部に突き攻撃が炸裂し、吹き飛ばされるビビンバードX。

 

「ビビンバードX!」

「何だ、スピード・パワー共にアップしてる!?」

(アキレスのVモードと同等、いや、それ以上か)

 

 サイコスキャニングモードの発動に伴う機体性能の上昇値を、冷静に分析する凛空。

 一方、ジャッジのサイコスキャニングモードを目にし、アキレスのVモードとの親近感を覚えるバンだが、彼の意識は、突如仕掛けてきたマスカレードJに向けざるを得なくなる。

 

 デュエルレイピアと水月棍、互いの得物で鍔迫り合いを演じ始める二機。

 だがその直後、バンは自身のCCMにメッセージが送信されている事に気がつく。

 

(これを受け取れ……、マスクドJ!?)

 

 メッセージの送り主は、誰であろうマスクドJ。

 しかも、送信されたのはメッセージだけではなかった、続けて、何らかのデータも送信される。

 バトルの最中であるにも関わらず行われたマスクドJの行為に対し、バンは本人に真意を問いただしたい衝動に駆られるも、先ずは目の前のバトルに集中する。

 

 一方、凛空の操るフルアーマーガンダム7号機・カスタムは、ジャッジと対峙していた。

 

「く!」

 

 スラスターを噴かせ、距離を保ちつつ、ジャッジ目掛けて二連装式ビームライフルを発砲する。

 しかし、放たれた光の数々は、ジャッジの装甲を捉える事無く空を切る。

 

 刹那、一段と速度を上げたジャッジが瞬く間に距離を詰めると、ジャッジソードを振りかざす。

 

「ちっ!」

 

 フルアーマーガンダム7号機・カスタムは繰り出された斬撃をシールドで受け止めるも、サイコスキャニングモードで威力の増したその一撃は、シールドを伝い機体にダメージを伝達させる。

 刹那、フルアーマーガンダム7号機・カスタムは攻撃後の一瞬の隙をつき、スラスターを噴かせて一気に距離を取ると、着地と同時にメガビームキャノンの砲口をジャッジに向けた。

 

「なら、これで!」

〈アタックファンクション、メガビームキャノン〉

 

 次の瞬間、集約したエネルギーが巨大な一筋の光となり、ジャッジ目掛けて放たれる。

 自身に迫る巨大な一筋の光、通常ならば逃げ出したい所だが、何とジャッジは、逃げるどころか向かって行く。

 

 刹那、軌道を完全に見切ったかの如く、紙一重の所でメガビームキャノンを躱したジャッジは、そのままフルアーマーガンダム7号機・カスタムに迫る。

 必殺ファンクションの発動直後という事もあり、回避を諦めシールドを使用して攻撃を受け流そうと画策する凛空。

 しかし、フルアーマーガンダム7号機・カスタムがシールドを構えるよりも早く、懐に飛び込んだジャッジは、ジャッジソードを斬り上げながら振り抜いた。

 

「っ!」

 

 刹那、二連装式ビームライフルの銃身とメガビームキャノンの砲身部が狐を描いて宙を舞った。

 再び斬撃を繰り出される前に、何とか距離を取るフルアーマーガンダム7号機・カスタム。

 ファイナルステージ最初の落伍者にはならなかったが、その戦闘能力は半減したと言っても過言ではなかった。

 

 ジャッジもそれを理解しているのか、フルアーマーガンダム7号機・カスタムを追撃する事無く、ビビンバードXやエンペラーM2を脅威度の高い標的として変更した。

 

「はい、そうです。反応速度、及び攻撃力等、全てにおいて上昇しています。……はい、シンクロ率、システム共に安定しています」

 

 情報収集を続けているユウヤのチームメンバーは、耳に装着したインカムを使い何者かとやり取りを行う。

 やがて、やり取りを行う相手から新たな指示が出されたのか、チームメンバーの口から新たな指示がユウヤに伝えられる。

 

「灰原 ユウヤ、パワースラッシュだ」

 

 刹那、ユウヤが手を動かすと、機械音声が必殺ファンクションの発動を告げる。

 次の瞬間、ジャッジの構えたジャッジソードにエネルギーが集約する。そして、切り払うと同時に、放たれたエネルギーは凄まじい衝撃波となり、進路上にいる他のLBXを餌食にせんとしていた。

 

「バン! 危ない!」

 

 ビビンバードXやエンペラーM2、そしてフルアーマーガンダム7号機・カスタムは進路上から素早く退避して餌食にならずに済んだが。

 マスカレードJとの戦いに気を取られていたアキレスは、背中を向けていた為にパワースラッシュの接近に気がつくのが遅れた。

 

 最早、アキレスはパワースラッシュの餌食になるのかと思われた、次の瞬間。

 マスカレードJがアキレスを押し出した。

 

 その直後、パワースラッシュが命中し、爆発が起こる。

 

「えぇ!」

 

 爆煙が晴れ、そこで目にしたのは、押し出され無事なアキレスと、その横で、糸の切れた人形の如く倒れるマスカレードJの姿であった。

 

「マスカレードJ、ブレイクオーバー!! ここでマスクドJは無念の敗退!!」

 

 司会者の言葉と共に、観客達も大いに沸き上がる。

 一方、特別ステージを去るマスクドJに、バンは直前の行動の真意を問おうとするものの、襲い掛かってきたエンペラーM2に気がつき、機会を逸するのであった。

 

「ぐ、ぐぁぁっ!!!」

 

 だが、その直後、突如としてユウヤの様子に変化が現れる。

 声にならない声をあげ、頭を押さえ始めるユウヤ。ユウヤの目の前のモニターにも、ERRORという不吉な単語が表示されている。

 

「そんな。……システム、解除不能。停止できません」

 

 異変に気がついたユウヤのチームメンバーは、原因となったサイコスキャニングモードの緊急停止を試みるも、どうやら失敗に終わった様だ。

 

「ふ、ふふふ。……あはははははっ!!! あっはははは!!!」

 

 やがて、一旦痛みが引いたかのように落ち着いた次の瞬間。

 ユウヤは狂ったかのように笑いだし、狂気に満ちた笑顔を浮かべると、ジャッジの操作を再開する。

 

「ユジンさん、逃げて!」

「え!?」

 

 標的となったビビンバードXに凛空が避難を呼びかけるも、ジャッジが装備する大型の盾、トゥループロテクターによるシールドバッシュを受け、ビビンバードXは吹き飛ばされ地面に倒れ込む。

 そして、起き上がれぬビビンバードXのもとへ、ゆっくりと近づくジャッジ。

 

「く、させるか!」

 

 それを見て、ビームサーベルを手にしたフルアーマーガンダム7号機・カスタムがビビンバードXの救助に向かうものの。

 ビームサーベルの一閃を躱したジャッジが繰り出す蹴りを受け、吹き飛ばされてしまう。

 

 こうして、邪魔者がいなくなると、ジャッジは一旦ジャッジソードとトゥループロテクターを手放し、その両手でビビンバードXを掴んだ。

 

「はは、あははははっ!!」

 

 刹那、ジャッジは掴んだビビンバードXを近くにある遺跡の柱に叩きつける。

 更には、ビビンバードXの頭部を鷲掴みにすると、勢いよく遺跡の壁に何度も叩きつけた。

 それは最早、バトルと呼べるものではなかった。あまりにも一方的なその光景に、バンや凛空、そして観客達も言葉を失う。

 

 やがて、ジャッジはビビンバードXの頭部を掴むと、無理やり引っ張り始めた。

 次の瞬間、ビビンバードXの頭部が、ジャッジの手によりもぎ取られる。

 

「ビビンバードX!!」

「ビビンバードX、ぶ、ブレイクオーバー! ユジン、またの名をオタクロスの弟子、ここで敗退!」

 

 先程とは異なり、司会者の言葉が空しくアリーナ内に響き渡る程、今のアリーナ内は静まり返っている。

 だが、そんな状況を更に悪化させるかのような光景が、繰り広げられる。

 

 頭部を失い最早機能を停止したビビンバードXに対し、ジャッジは再び手にしたジャッジソードでいたぶり始めたのだ。

 

「や、やめろ! やめてくれ!!」

 

 これにはオタレッドも堪らず、ユウヤに駆け寄ると、いたぶるのをやめるように懇願する。

 だが、ユウヤは狂気に満ちた笑みを浮かべるだけで、いたぶるのをやめる様子はない。

 

 そんなユウヤの姿を目にし、オタレッドは本能的な恐怖を感じ取り、特別ステージから慌てて去るのであった。

 

 

 やがて、いたぶる事に飽きたのか、ジャッジは再び残りのLBXに対して攻撃を開始する。

 しかし、その途中で一瞬動きが止まる。

 それは、ユウヤが何らかの痛みで頭を押さえたからであった。

 

「で。……一人に、しないで」

 

 刹那、絞り出すような声でそう呟くと、再び狂ったように笑いだし、ジャッジの操作を再開する。

 

「駄目です、制御不能です」

「はい、はい、分かりました。おい」

「あぁ」

 

 そんなユウヤを他所に、ユウヤのチームメンバーの少年二人は、ノートパソコンを閉じると、そのままユウヤを残して特別ステージから逃げるように去る。

 その様子を目にし、カズとアミの二人は憤慨する。

 

「いや、嫌だ!! あああああぁぁぁぁっ!! 一人に、しないでっ!!」

 

 刹那、ユウヤは更にもがき苦しみ始める。

 それに呼応するように、ジャッジも、出鱈目にジャッジソードを振るい、ジオラマの破壊を始める。

 

「一人に、しないで……」

「っ!」

 

 刹那、ユウヤがもがき苦しんだ拍子に、CCMスーツの一部が破れ、ユウヤの体に残った古傷が露わになる。

 ジンはそれを目にし、何かを思い出し、驚きの表情を浮かべた。

 

 直後、ジンは険しい表情を浮かべ思考を巡らせると、程なく、意を決した様にバンと凛空に声をかけた。

 

「凛空君! それに、山野 バン! 一緒にアイツを止めるぞ!」

「え?」

「いいか、よく聞け! あのスーツのコントロールシステムが暴走している。このままでは、灰原 ユウヤの精神は崩壊、いや、最悪死を招くだろう」

「でも、そんな……」

「バン! 今はジン君の言う通りに!」

「わ、分かった。Vモード、起動!」

〈アドバンスドVモード〉

 

 ジンの提案に一蹴躊躇したバンだが、人の命がかかっていると知り、暴走するジャッジを倒すべく、ジンと凛空と共に共闘を開始する。

 

「暴走したジャッジの行動は予測不可能。だが、三機同時に攻撃を行えば!」

 

 ジャッジ目掛けて三方から突撃を仕掛ける、アキレス、エンペラーM2、そしてフルアーマーガンダム7号機・カスタム。

 だが、間もなく間合いに入ろうとした、その時。ジャッジはジャッジソードを横薙ぎに振るう。

 刹那、それにより生じた風圧で、三機は吹き飛ばされる。

 

「もう一度だ!」

 

 しかし、三機は諦める事無く、再びジャッジに対して突撃を敢行する。

 そして、今度は三機とも間合いに入ったものの、ジャッジは三機の攻撃を防ぐと、再びジャッジソードを横薙ぎに振るい、三機を間合いから遠ざける。

 

「くそ、どうすればいいんだ!」

「く……」

「バン、ジン君。僕に考えがある」

 

 もどかしさを募らせるバンとジンに、不意に凛空が声をかけた。

 

「フルアーマーガンダム7号機・カスタムでジャッジの動きを止める、その隙に、アキレスとエンペラーM2はジャッジに必殺ファンクションを」

「えぇ、でもそれじゃ!」

「時間がないんだ!」

「山野 バン、凛空君の作戦でいくぞ」

「わ、分かった」

 

 凛空の捨て身の作戦に、躊躇するバンであったが、凛空の揺るぎない決意の眼差しを目にし、作戦を了承するのであった。

 

「おそらくチャンスは一度きり、二人とも、頼んだよ!」

「分かった!」

「あぁ!」

「いくよ!」

 

 刹那、スラスターを噴かせ、フルアーマーガンダム7号機・カスタムがジャッジ目掛けて飛び出す。

 すると、それに反応し、ジャッジはジャッジソードを構える。

 

〈アタックファンクション、パワースラッシュ〉

 

 機械音声が発動を告げた、次の瞬間。

 切り払うと同時に、凄まじい衝撃波がフルアーマーガンダム7号機・カスタム目掛けて飛来する。

 だが、フルアーマーガンダム7号機・カスタムは回避する素振りを見せなかった。

 

 刹那、パワースラッシュを正面から受けたフルアーマーガンダム7号機・カスタムの姿が、爆発の中に消える。

 

「あははははははっ! あは!?」

 

 また一機、邪魔者を消したと、ユウヤが確信した、次の瞬間。

 爆煙を突き破り、フルアーマーガンダム7号機・カスタムが、否、基本フレームとなるガンダム7号機が姿を現す。

 

「っ!?」

 

 倒したと思い込み反応が遅れた隙に、ガンダム7号機は一気にジャッジの懐に飛び込む。

 だが直後、ジャッジはジャッジソードをガンダム7号機に振り下ろさんとしていた。

 

 しかし、ジャッジソードがガンダム7号機をとらえることはなかった。

 

 何故なら、ガンダム7号機は機体各所に装備したサブスラスターを使用し、まるで踊るかのようにジャッジの背後に回り込む。

 そして、背後に回り込んだガンダム7号機は、ジャッジの動きを封じるべく、ジャッジを羽交い絞めにする。

 

「今だ、二人とも!」

〈アタックファンクション、インパクトカイザー〉

〈アタックファンクション、ライトニングランス〉

 

 刹那、アキレスとエンペラーM2が放った必殺ファンクションが、動きを封じられたジャッジに命中し、巨大な爆発を発生させる。

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

 次の瞬間、ユウヤは断末魔を挙げると、CCMスーツのスパークが治まると共に意識を失い、倒れ込む。

 

「ジャッジ、ブレイクオーバー!! 灰原 ユウヤ、ここで敗退!」

 

 無事にジャッジを撃破し、安堵の表情を浮かべるバンとジン。

 だが、バンはふとある事に気がつくと、爆煙の晴れたDキューブ内に視線を向けた。

 

 するとこそには、ジャッジの残骸が飛び散る中、装甲の各所にヒビが入り、一部はコアスケルトンが露出する等、無残な姿となったガンダム7号機が佇んでいた。

 

 その姿を目にし、ギリギリのところで耐えたのだと、バンが胸を撫でおろした、その時。

 

「バン、僕の分まで頑張ってね」

 

 ガンダム7号機は、ゆっくりと倒れ込み、再び動き出す事はなかった。

 

「フルアーマーガンダム7号機・カスタム、ブレイクオーバー!! 西原 凛空も、ここで無念の敗退!!」

 

 こうして、ユウヤと凛空の敗退が告げられた所で、意識を失い倒れたユウヤの救護の為、試合の一時中断が告げられる。

 程なく、数名の医療スタッフが担架と共に姿を現し、担架にユウヤを乗せると、医務室への搬送を始めた。

 

 搬送されるユウヤの姿を見送ると、凛空はバンとジンの二人に声をかける。

 

「バン、ジン君。二人とも、ファイナルステージ、頑張ってね!」

「あぁ。凛空の分も、俺、頑張る!」

「当然だ」

 

 そして、無残な姿となったガンダム7号機を回収すると、凛空はミカを連れて特別ステージを後にする。

 ファイナルステージ敗退とはいえ、アルテミスを終えて肩の荷が下りているのかと思いきや。凛空の表情は、ここからが本番とばかりに、より一層引き締まった表情を浮かべていた。




 やぁ皆、店長だ!
 今日は、作中に登場したグフ・ヴィジャンタについての豆知識だ。

 雑誌企画であるMSV-Rにて登場したこの機体は、機動力を重点的に向上させた戦闘工兵用の機体だ。
 グフの特徴でもあるヒートロッドとフィンガーバルカンが撤去され、4種類のオプション装備が用意されている。
 生産は主にキャリフォルニアベースで行われ、22機生産されたぞ。

 では! また。
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