うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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新たなる戦いの始まり

 お台場ビッグスタジアムでの、イノベーターによるプラチナカプセルとメタナスGXの強奪事件から、早いもので三日ほどが経過していた。

 世界中が注目していた第三回LBX世界大会アルテミス、その最中に起こった今回の事件。

 しかも、実行犯である赤の部隊は、メタナスGXを警備していた警備員だけでなく、侵入経路を巡回中の警備員や偶然遭遇した大会スタッフ等、合計で十数名を死傷させていた。

 

 これ程の犠牲者を出した今回の事件、世間が注目しない訳もなく。連日、テレビや新聞、更にはネットニュース等、何れもトップニュースとしてこの事件を取り扱っていた。

 当然、世間の注目を集める事件を解決するべく、警察も本腰を入れて捜査を開始してはいるが、事件に海道 義光が関与しているとあっては、今回の事件が迷宮入りする可能性は高かった。

 

 

 こうして、世間が強奪事件の一端を知る事となる中、事件の当事者であるバン達は、次の戦いに備えて鍛錬を積む一方、独自に情報収集を開始していた。

 

「だからリュウ、闇雲に撃ってるだけじゃ駄目よ」

「そうだ、もっと相手の動きを見て撃たないと」

「わ、分かってるよ!」

 

 いつもの集会場所であるキタジマ模型店にて、店内に設置されたDキューブで鍛錬の一環としてバトルを行っているのは、ミカとリュウの二人。

 そのバトルを観戦していたアミと北島店長は、リュウに助言を与える。

 

 しかし、撃てども撃てども当たらない焦りからか、リュウは二人の助言を軽視するかのように、更に撃ち続ける。

 

「や、やった!」

 

 すると偶然にも、放たれた一発の弾頭がジーライン・ライトアーマーをとらえ、爆発を起こす。

 直撃したと思ったリュウは、自身の勝利を確信した。だが、次の瞬間。

 爆煙が晴れて目にしたのは、地面に出来たクレーター。そこに、ジーライン・ライトアーマーはおろか、その破片と思しきものも見当たらなかった。

 

「い、いない!?」

 

 リュウがジーライン・ライトアーマーの姿を完全に見失った、次の瞬間。

 上空から、スラスターを噴かせて着陸したジーライン・ライトアーマーは、瞬く間にリュウの操作するブルド改の間合いに飛び込むと、必殺ファンクションのファランクスを繰り出した。

 

 刹那、連続の突き攻撃を食らったブルド改は、瞬く間に倒れると、その機能を停止させた。

 

「はぁ……、またか」

「進歩のない奴だな……」

 

 バトルに負け、がくりと肩を落とすリュウ。

 一方、観戦していたアミと北島店長は、既に何度目にもなる光景を目にして、呆れた様子で感想を零していた。

 

「ねぇあんたー、荷物運ぶの手伝ってくれなーい?」

「それじゃ、ちょっと行ってくるわ」

 

 そして、沙希に呼ばれて北島店長がその場を後にする。

 

「くー! ミカ、もう一回だ!」

「え?」

「リュウ、まだやるの!?」

「当たり前だろ! 今のままじゃイノベーターとは満足に戦えない! アキレスが破壊された分、俺が頑張るんだ! 俺だって、立派なシーカーの一員なんだから!」

 

 大好きなアミの前でかっこいい所を見せたいからか、それとも、シーカーの一員としての責任感からか。

 リュウは再びミカに再戦を申し込むと、何度やっても結果は同じと零すミカを他所に、ブルド改の修理を始めた。

 

 一方、そんな男気溢れる台詞を口にしたリュウに対して、特に惹かれた様子もないアミは、店内の一角で情報収集に励んでいるバンとカズのもとに足を運んだ。

 

「どう、何か分かった?」

「まだ、特には」

 

 持参したノートパソコンを操作するカズと、それを横で見つめるバン。

 そんな二人のもとに足を運んだアミは、ノートパソコンのモニターを覗き込む。

 そこに表示されていたのは、海道 義光の公式ホームページであった。

 

「海道 義光を追っていれば、イノベーターの動きも分かるかもしれないからな」

 

 バンの口から語られた検索理由を聞き、アミは納得した様子を見せる。

 

「海道 義光先進開発省大臣、ブルーハウス・若葉を訪問……。カズ、このブルーハウス・若葉を調べてくれないか?」

 

 一方、バンは公式ホームページの活動報告から最新の報告ページに目を通すと、カズに気になる施設を調べるように指示する。

 

「バン。これ、お年寄りの施設だぞ」

「……でも、何処かでイノベーターと繋がっているかもしれない」

 

 どう見ても無関係としか思えぬ施設にまで疑念を抱くバンに、カズとアミの二人は困惑の表情を浮かべた。

 

「ん? どうしたんだよ、二人とも」

「ねぇ、バン。やっぱり、拓也さん達から連絡がくるのを待った方がいいんじゃない?」

「そうだな。俺達だけじゃ、情報を収集しようにも限界があるしな」

「それに、何かあったら必ず連絡するって言ってたし……」

 

 カズとアミの言葉を聞き、暫し押し黙ったバンは、やがてゆっくりと語り始めた。

 

「分かってる。でも、プラチナカプセルとメタナスGXが奪われてしまったのに、このまま何もしないでただ待ってるだけなんて、俺にはできないんだ!」

 

 揺るぎない決意を秘めたバンの言葉を聞き、カズとアミの二人は、バンを説得するのは無駄な事であると理解するのであった。

 

「あーそう言えばさ」

 

 その矢先、不意にカズが、場の空気を変えようとしてか、新たな話題を切り出し始めた。

 

「凛空の奴はどうしたんだよ?」

「あれ、カズ、ミカから聞いてなかったの?」

「悪い、バンに急かされてたからさ、ちゃんと聞いてなかった」

 

 その話題とは、不在の凛空についてであった。

 

「凛空は人と会う約束があるから今日は参加できないって、そう言ってたでしょ」

「あぁ、そうだったそうだった」

 

 そして、不在の理由が判明した所で、カズは不意に不敵な笑みを浮かべると、再び口を開いた。

 

「人と会うって、もしかして、可愛い女の子だったりしてな。凛空の奴、表に出ないけど、学校じゃ女子からかなりモテモテ──」

 

 おそらく、ちょっとした冗談のつもりでそんな事を口にした、刹那。

 カズは、自身に向けられた殺気に気がつくと、ビクっと肩を震わせる。

 

 そして、同時に感じた視線の主であろう人物の方へ、恐る恐る振り返った。

 次の瞬間、カズが目にしたのは、リュウとのバトルの最中だと言うのに、CCMを持つ手元に視線を向ける事無く、鋭い眼光で自身の事を見つめるミカの姿であった。

 

 その姿を見た瞬間、カズは悟った、自身が地雷を踏んだという事を。

 

「え、えっと……、ミカさん」

「何?」

「じょ、冗談! 今の冗談だから!!」

「うん。分かってる。だって、凛空は、私を裏切るような事なんて、しないって、信じてるから」

「そ、そうですか……。と、所で、もしも、もしもの話だけどさ。もし、凛空がミカに黙って女の子と出会ってたら、ミカさんはどうするつもり──」

「のわぁぁぁぁっ!! 俺のブルドォォォォッ!!」

 

 興味本位で質問をぶつけた次の瞬間、店内に響き渡るリュウの悲痛な叫び声を聞き、カズはミカから答えを聞くまでもなく、全てを理解するのであった。

 そして同時に、冗談でも、この手の話を当人に振ってはいけないと、固く心に誓うのであった。

 

 

 

 

 一方その頃。

 話題になった凛空は、何処で誰と会っていたのかと言えば。

 ミソラ駅付近の裏路地にある落ち着いた店構えの喫茶店にて、連絡を受けて田中と会っていた。

 

「くちゅん!」

「おや? 風邪ですか?」

「いえ、多分、誰かが僕の噂をしてるんだと思います」

「成程。確かに、サイバーランス社の御曹司であり、見た目よし、気立てよしともなれば、さぞ多くの女性を虜にしているのでしょうな」

「じょ、冗談はよしてください!」

「ははは、その反応から察するに、既に意中の人はいるようですね。では、この話はここまでにしておきましょう」

 

 そう言うと、田中は残っていた分厚い厚焼き玉子のサンドイッチを食べ終え、コーヒーを一口口にする。

 そして、暫し余韻に浸った所で、漸く、今回凛空を呼び出した理由を語り始める。

 

「さて、今回貴方をお呼びした理由ですが。……貴方の事ですから、薄々、見当は付いているのではないですか?」

「アルテミスで起こった強奪事件、ですね」

「その通り。貴方が大会前にお話ししてくれた事が、最悪の形で現実のものになってしまった。……上司を含め我々も、流石に海道大臣が最後の一線を越える事はないだろうと思っていたのですが、どうやら、その認識は誤りだったようです。海道大臣が、まさかあそこまで冷酷無情な人だったとは。……そう言えば、最近は心なしか、表情にも何処か能面の様な薄気味悪さを感じます」

(あぁ、それは多分、アンドロイドとすり替わったからだろうな)

 

 田中の言葉を聞き、凛空は心の中でそんな事を独り言ちるのであった。

 

「しかし、今更貴方の話にもっと耳を傾けていれば等と悔やんだ所で、犠牲になった方々は返ってはきません。今なすべきは、今後、新たな犠牲者を作り出さない事」

 

 そして、田中は一拍置くと、再び語り始める。

 

「その為にどうするべきは、協議した結果……。今こそ、シーカーと直接接触を図り、正式な協力関係を結ぶ時であるとの判断を下しました」

「それでは、今すぐにでも?」

「いえ、流石に今日明日という訳には。こちらにも、色々と準備と言うものがありますから。とはいえ、なるべく早いうちにと考えています。勿論、その際には、貴方にも同席をお願いしたい」

「分かりました」

「それでは、私はこれで」

 

 こうして、用件を伝え終えた田中は、席を立ち店を後にしようとする。

 だが、不意に何かを思い出したかのように足を止めると、再び話を始めた。

 

「あぁ、そうだ。以前、少しばかりお話した、"例の部隊"の件についてですが」

 

 田中の口から零れた意味深な単語、それを聞いた凛空は、気になっていたと言わんばかりに、田中の顔を見据える。

 

「必要な予算、それに機材、人員のピックアップ等が完了しましたので、後は、必要な手順を幾つか踏めば、正式に部隊として発足します」

「そうですか」

「我が国初、いや、世界初の"LBX犯罪対策部隊"。……あぁ、部隊名も決定いたしましたよ、その名を、"ロンド・ベル"」

 

 ロンド・ベル、その名を聞いた刹那、凛空は口元に小さく笑みを浮かべた。

 

 ザクやガンダム等が登場するロボットアニメを原点とした一連の作品群、その中でも有名な部隊と同じ名を冠した部隊。

 それは、近年社会問題となりつつあるLBXを用いた犯罪に対抗するべく、LBXを用いた、警視庁警備部内に設立が進められている特務部隊である。

 

 ダンボール戦機の原作においても、国家の実力組織である軍隊内にLBXを用いた部隊が登場しているが、ロンド・ベルは、あくまでも治安維持を主任務としている。

 そして、同部隊に欠かせぬ装備であるLBXは、サイバーランス社、それもプロジェクトMSにより生まれた機体を同部隊用に改良した機体が配備される事となっている。

 

 世界初のLBX犯罪対策部隊、その顔としてサイバーランス社のLBXが使用されるとあれば、その宣伝効果が絶大である事は、想像に難しくない。

 凛空が浮かべた笑みには、そんな嬉しさも含まれていたのだろう。

 

 

 その後、田中が店を後にし、それから暫くして、凛空も店を後にする。

 

(原作でも折り返しであったアルテミスも終わり、これから加速的に事態は動いてくる。それは同時に様々な悲劇が描かれる事を意味している。……今度こそ、今度こそ未来を、変えてみせる!)

 

 帰路につく道中、凛空は、決意を新たにするのであった。




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そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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