「何事だ!?」
「待ってください……。え? だ、第二・第三エレベーターのシャフト内に侵入者! いえ、LBXです!」
結城の報告と共に、メインモニターに現場の映像が映し出される。
二つのエレベーターシャフト内を上層部に向かって上り続ける数機のLBXの姿。拡大されたその姿を目にし、バンが思わず声をあげる。
「これ、エンジェルスターに潜入したときに戦った!」
「間違いねぇ、イノベーターのLBXだ!」
それはバン達にとって忘れがたいLBXの一つ、インビットであった。
「防御システム、起動!」
「はい!」
正体不明のLBXがイノベーターのインビットで分かるや否や、悠介社長は撃退するべく指示を飛ばす。
刹那、インビット達の行く手を、複数の機体が塞ぐ。
「ウォーリアー?」
その正体は、タイニーオービット社が誇る傑作LBX、ウォーリアーであった。
「といっても、あのウォーリアーはプレイヤーが操作している訳ではない」
「それはつまり、自立稼働型ですか」
「その通りだ。あのウォーリアーは、我が社が開発したAIを搭載した、本社警備用の自立稼働型ウォーリアーさ」
悠介社長の言葉を聞き、凛空がウォーリアーの正体に気付くのを他所に、メインモニターには、無人機同士の激しい戦闘の様子が映し出されていた。
アサルトAR3を装備し、距離を取り銃撃を行うウォーリアー。だが、インビットの高い防御力を前に、倒すどころか足止めすらも難しい。
刹那、ワイルドフレーム特有の跳躍力を生かし接近するインビットへの対応が遅れ、一機のウォーリアーが鋭いクローの餌食となる。
それを境に、ウォーリアーが一機、また一機と、鋭いクロー、或いは内蔵された銃器からの攻撃を受けて撃破されていく。
「く!」
(やっぱり、自立稼働型の性能ではイノベーター側に一日の長があるか)
自慢の防御システムが次々と倒され、悔しさを滲ませる悠介社長。
一方、凛空は冷静に分析を行うのであった。
「警備用のウォーリアー、全機沈黙! 侵入したLBX、上の階へ移動を続けています!」
「イノベーターめ、プラチナカプセルを奪いにここまで来たか!」
「まさか、こんな手を使ってくるとはな」
インビット達の目的がプラチナカプセルの奪還である事は明白。
とはいえ、防御システムは突破され、どう対処するべきかと頭を悩ませる悠介社長。
すると、不意にバンが名乗りを上げた。
「俺、いきます!」
「バン、アキレスはもう……」
「っ! そうか」
だが、アミの言葉に、アキレスが破壊された事を思い出したバンは肩を落とした。
「バン、僕達がいくよ」
「え?」
「バンの分も、僕達が戦うよ」
「ん、当然」
「あぁ、俺とアミもな!」
「うん!」
「皆……、ありがとう!」
しかし、凛空達の言葉を聞き、立ち直るバン。
「一階のメンテナンスルームに、二つのシャフトにつながる直結のダクトがあるわ」
「なら、行きましょう!」
「おう!」
「ん!」
「うん!」
「皆、こっちだ!」
霧野の発言でLBXを操作するのに最適な場所を知ると、凛空達は拓也の案内のもと、一階のメンテナンスルームへと向かう。
そんな凛空達を背中を、バンは頼りにしていると言わんばかりに見送るのであった。
一階のメンテナンスルームへと到着した凛空達は、それぞれペアを組み、それぞれのエレベーターシャフトを担当する。
カズとアミは第二エレベーターシャフト、凛空とミカは第三エレベーターシャフトだ。
各々のLBXをダクト内に投入し、それぞれのエレベーターシャフトを目指して操作する。
程なく、無事にエレベーターシャフトに到着した各々のLBXは、挨拶代わりにと、ハンターによる狙撃、パワード・ジムによる砲撃を行う。
こうして先頭を進んでいたインビットが被弾したのを合図に、クノイチとジーライン・ライトアーマーが得意の近接戦闘を仕掛ける。
だが、無人機とは言え、機体自体の性能や搭載されているAIの性能も相まって、インビットはクノイチやジーライン・ライトアーマーと互角の戦いを繰り広げる。
一方、足場が狭くうまく援護もできないインビットに対し、ハンターとパワード・ジムはそれぞれの得物を使って攻撃を仕掛ける。
こうして、それぞれのエレベーターシャフト内で一進一退の激しい戦闘が暫し繰り広げられていたが、遂に、その均衡が破られる時が訪れる。
「もらった」
パワード・ジムが放ったハイパーバズーカの攻撃を受け、インビットがよろめいたその直後、ジーライン・ライトアーマーの放った一突きが見事に決まり、一機を仕留める。
「やったね!」
「ん」
第三エレベーターシャフトでの戦局に変化が訪れたと同時に、第二エレベーターシャフトの方でも、変化が訪れていた。
「クノイチ!」
シャフト内を落下しながら、インビットと空中戦を繰り広げていたクノイチ。
しかし、一瞬の隙をつかれ、鋭いクローで頭部を鷲掴みにされると、そのままシャフト最下層に落下する。
慌ててハンターが救援の為に最下層へと降りると、二機が落下した際に生じた煙を凝視する。
程なく、煙が晴れ、そこに広がっていたのは、落下の際に床とぶつかった衝撃で全身傷だらけとなったクノイチの姿と、クノイチを緩衝材代わりとした為ほぼ無傷なインビットの姿であった。
「くそ!」
傷だらけとなり動かなくなったクノイチを壁際に放り投げると、合流した僚機と共に、ハンターに襲い掛かるインビット。
クノイチの仇を取るべく孤軍奮闘するハンターだが、やはり複数を相手にするのは難しく、程なく弾き飛ばされ床に倒れる。
クノイチに続きハンターにも危機が訪れ、凛空とミカは何とか救援に駆け付けようとするも、とても間に合いそうにない。
このままクノイチに続きハンターも破壊されてしまうのかと思われた、その時。
アミのCCMに、一通のメッセージが届く。
「え、これって……」
それは、レベル4研究室にいる悠介社長から送られたものであった。
その内容は、動けぬ自身に代わり、パンドラのプレイヤーが自身である事を見破ったアミにとあるものを託す、というもの。
そして、メッセージに添付されていたLBXの起動コードを目にし、アミは悠介社長から託されたものが何かに気がつき、起動コードのインストール完了と共に、自身のCCMを再び操作し始めた。
「くそ、ハンター!」
一方、再び弾き飛ばされ、壁際まで追い詰められたハンター。
そんなハンターに対しトドメを刺すべく、三機のインビットが一斉に襲い掛かった、次の瞬間。
不意に、白い影が飛び込むと共に、薄暗の中、一閃が生じる。
「な!?」
「あれって、パンドラ?」
「でも、誰が操作してるの?」
ハンターの危機を救った白い影の正体は何であろう、パンドラ。
だが、プレイヤーである悠介社長はこの場にいない為、一体誰が操作しているのかと疑問を浮かべる凛空達。
「カズ、お待たせ!」
「えぇ!」
「あれって、アミが操作しているの!」
「っ!」
すると、アミが親指を立てながら、パンドラを操作しているのが自分である事を告げる。
「さぁ、いくわよ、パンドラ!」
「おいおい、どうしてアミがパンドラを!?」
「話は後よ!」
この突然の出来事に困惑するカズ、一方アミは、そんなカズを他所にインビットとの第二ラウンドを開始していた。
「遅い!」
一斉に襲い掛かる三機のインビット、その鋭いクローがパンドラ目掛けて突き出される。
しかし、鋭いクローが抉ったのはパンドラの装甲ではなく床。
直ぐに標的であるパンドラを捜索する三機のインビット、だがその直後、一機のインビットは自身の機体に違和感を覚えた。
「何処見てるの、私はここよ!」
刹那、違和感の正体、インビットの肩に乗ったパンドラがホープ・エッジを使い、インビットの弱点とも言うべき両肩にあるカメラセンサーを破壊し、早速一機を無力化させる。
「やるな、アミ!」
「凄い、初めて操作しているなんて思えない」
「ん」
「凄いわ、このパンドラ。こんなに扱いやすい機体、初めて」
その鮮やかさに感服する凛空達を他所に、アミは次の標的を定めると、パンドラを操作し両肩にあるカメラセンサーを狙う。
だが、懐に飛び込みカメラセンサー目掛けてホープ・エッジを振るった、次の瞬間。ホープ・エッジの刃は、作動したシャッターに阻まれてしまう。
「っ! エンジェルスターの時とは違う、改良されてる!」
刹那、一旦距離を取ったパンドラに代わり、今度はハンターが狙撃による破壊を試みるも、ハンターライフルから放たれた弾丸は作動したシャッターに弾かれてしまう。
「くそ、弱点がなくなっちまった!」
唯一ともいえる弱点がなくなり、弱音を吐くカズ。
一方のアミは、インビットの銃撃を掻い潜りながら、再びインビットの懐に飛び込むと、カメラセンサーの破壊を試みるも、やはりシャッターに阻まれてしまう。
それでも諦めず、何度も試みるも、やはり結果は同じであった。
その様子を不思議そうに見つめていたカズだが、ふと、アミが呟いた。
「弱点は、なくなってないわ」
「え?」
アミの言葉の意味を理解し切れず、疑問符を浮かべるカズ。
だが程なく、インビットの銃撃を軽やかな身のこなしで躱していたパンドラが壁際まで追い込まれた事に気がつき、ますます疑問符を増やす事となる。
「ここよ!」
二機のインビットから放たれる弾丸の雨を、パンドラは紙一重で躱し続け、やがて、タイミングを見計らうと共に、パンドラは弾丸を掻い潜りながら二機のインビット目掛けて飛び出した。
そして、すれ違いざまにホープ・エッジによる一閃を繰り出す。
するとそれは見事に決まり、二機のインビットのカメラセンサーは破壊される。
「カズ、今よ!」
「おう!」
〈アタックファンクション、スティンガーミサイル〉
カメラセンサーが破壊され満足に動けなくなった三機のインビットに対し、ハンターが放った必殺ファンクションが見事に炸裂し、三機同時に撃破されるのであった。
「アームの銃を撃つとき、必ずカメラセンサーのシャッターは開いている。つまり、あのLBXは攻撃と防御を同時には行えない、それに気づいたの」
「成程な」
「それで、攻撃させるために、壁際に追い込まれたふりをしたんだね」
「見事な、作戦勝ち」
「凄いな、アミ!!」
無事にインビットを撃退し、今回の撃退劇での一番の功労者であるアミに称賛を送る凛空達。
「ううん、本当に凄いのはパンドラの方よ。あのスピードがなければ倒せなかったわ」
一方のアミは、この功績はパンドラなくしてはあり得なかったと語る。
「いや、君だからこそ、パンドラの性能を十分に引き出せたのだ」
すると、モニター越しに悠介社長が、アミに対して称賛を送る。
「君に託して正解だった。……これからもパンドラを頼む」
「え?」
「私より君の方が、パンドラと良いコンビを組めそうだ」
そして、次いで悠介社長の口から出た言葉を聞き、アミは暫し固まるが。
「これからよろしくね、パンドラ!」
程なく、新しい相棒となるパンドラに改めて声をかけるのであった。
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