うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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果てしなき大空に宇宙(そら)を見た

 ジンを仲間に加え、悠介社長が改めて、会社の危機を救ってくれた事に対して、バンとジンにお礼を述べた所で。

 不意に、バンが手にしていたオーディーンのツインアイが点滅すると共に、バンのCCMにメッセージの受信を告げる通知音が鳴り響く。

 

「何だ?」

 

 突然の通知にバンが疑問符を浮かべていると、次の瞬間、とある人物の音声メッセージが流れ始めた。

 

「バン、もしもメタナスGXが、イノベーターに奪われたのだとしたら──」

「この声……、父さんの声だ!」

 

 その人物とは誰であろう、山野博士であった。

 

「メタナスGXの中にある解読コードを取り出す、もう一つの方法を教えよう」

「「えぇ!?」」

「メタナスGXは、内部の通信機能によって、インフィニティネットに接続されている。その為、ネット内から"ゴットゲート"と呼ばれるセキュリティゲートを突破すれば、メタナスGXの内部にアクセスする事が出来る」

 

 山野博士からの音声メッセージが終了し、メッセージを聞いた面々は、これでメタナスGXがなくとも解読コードを手に入れる事が出来ると喜ぶ。

 だが、そんな面々を他所に、結城は深刻な表情を浮かべていた。

 

「無理ですよ」

「ん? どういうことだ、結城?」

「どんな天才ハッカーと言えど、世界最高レベルを誇るゴットゲートのセキュリティを突破するのは不可能ですよ」

 

 結城の言葉を聞き、バン達の表情が喜びから一変、落胆に変わる。

 

「いや、一人だけ、突破する事の出来る人物がいる」

 

 しかし、悠介社長が口にした言葉を聞き、バン達の表情に再び希望の光が灯った。

 

「悠介さん、教えてください! それは一体誰なんですか!?」

「それは……、"伝説の超ハッカー"にしてアキハバラの長老。その名を、"オタクロス"だ」

「オタクロス……」

 

 その名を今一度呟いたバンは、早速オタクロスと呼ばれる人物に協力を仰ぐべく、オタクロスがいるアキハバラに向かおうとする。

 だが、そんなバンに拓也が待ったをかけた。

 

「アキハバラに向かう道中、イノベーターの襲撃がないとは限らない」

「なら、拓也さんも俺達と一緒に来てくれるんですか?」

「そうしたいのは山々だが。生憎、俺は兄さんと共に暴走事件の後処理をしなきゃならない。だから、一緒には行けない」

 

 すると、拓也は一拍置き、更に話を続けた。

 

「だから、俺の代わりにお前たちの護衛役となる人物と連絡を取っておいた。もうすぐ、本社ビルに到着する筈だ」

 

 拓也の話を聞き終えたバンは、拓也にお礼を述べると、他の面々と共にシーカーの本部を後にし、護衛役の人物と合流するべく本社ビルのエントランスを目指した。

 

 

 程なく、本社ビルのエントランスに到着した一行は、早速それらしい人物を探し始める。

 エントランスを行き交う、タイニーオービット社の社員達の姿が殆どを締める中。エントランスの一角に、見覚えのある長ラン姿の青年がいる事にバンが気がつく。

 

「郷田!」

「お、待ってたぜ、バン」

「もしかして、拓也さんが護衛役を頼んだのって、郷田だったの!?」

「あぁ、イノベーターの襲撃の事は、拓也さんから聞いてる。またイノベーターの奴らが襲ってきても、俺がお前達を守ってやるからな、大船に乗ったつもりでいてくれよ!」

 

 護衛役の人物とは、誰であろうハンゾウその人であった。

 頼りになるハンゾウが護衛役を引き受けたと知り、バン達も安心感を得る。特にミカは、かなりご機嫌な様子だ。

 

「それと、お前の事も拓也さんから聞いてる」

 

 刹那、ハンゾウは仲間に加わったばかりのジンを見据える。

 

「本心を言えば、俺はまだ、お前の事を完全に仲間だって認めた訳じゃねぇ。だが、バン達が仲間だって認めたんなら、俺はそれに従う」

「分かっている。心から認めてもらえるよう、言葉ではなく、行動で示していこう」

「そうか。それじゃ、よろしく頼むぜ」

 

 一触即発かと思われたが、ハンゾウもそこまで幼稚でみっともないことはなく。

 ジンに手を差し出すと、ジンと握手を交わすのであった。

 

「よし、それじゃ、オタクロスがいるアキハバラに向かうとするか」

 

 こうしてハンゾウと合流を果たした一行は、アキハバラを目指し、タイニーオービット社の本社ビルを後にするのであった。

 

 

 

 

 バン達が本社ビルを後にし、それを見届けた悠介社長達は、リニアモーターカーの暴走事故の後処理を始めた。

 事が事だけに、後処理には相応の時間を要したが、それでも何とか一段落した所で、悠介社長達は休憩を取る運びとなった。

 

「社長、どうぞ」

「ありがとう」

「拓也さんも」

「あぁ、すまない」

 

 慌ただしかったシーカーの本部とは打って変わり、静寂に包まれた社長室。

 そこで、悠介社長と拓也の二人は、霧野が用意してくれた紅茶の入ったカップを片手に、他愛もない会話に興じていた。

 

「時に拓也」

「ん、何だ?」

「お前は、サイバーランス社のLBX技術について、どう思う?」

「唐突だな」

 

 そんな中、不意に悠介社長の口から飛び出した質問に、拓也は一瞬困惑した様子を浮かべると、思考を巡らせ、自分なりの答えを導き出し始める。

 

「そうだな。……一言で言えば、"驚異"という他ないな。凛空の使用している機体もそうだが、先ほどジンが使っていたあの機体。まさか、LBXでリニアを止められるなんて、夢にも思わなかった」

「確かにそうだな。プロトゼノン、装備されたブースターの性能もさることながら、リニアを受け止めた際に生じる衝撃荷重、それに耐えうる機体の強度。更に、高い強度や剛性等を確保しつつ、機動力を損なう事のない軽量化を実現させている点等々。随所にサイバーランス社の技術力の高さがうかがえる」

 

 そこまで言うと、悠介社長は一拍置き、更に話を続けた。

 

「だが驚くべきは、あの機体がプロトの名の通り試作機という事だ。つまり今後、様々な問題点の洗い出しや改善が行われ、完成した暁には、量産も視野に入ってくる事だろう。その時、我が社のLBXは、何処まで対抗できるものか……」

「随分と弱気だな」

 

 すると不意に、悠介社長は手にしていたカップを机に置き、社長室の一面に設けられた大きな窓へと歩み寄る。

 

「いや、むしろ逆さ」

「どういうことだ?」

「久々に、熱いものが込み上げてきているんだ」

 

 そして、悠介社長は拓也に、自身の本音を包み隠さず語り始めた。

 

「山野博士が、社長に就任したばかりの私のもとに、後にLBXの基となる試作品を持ってきた時の事だ。初めて試作品を見た時、内側から、これを製品化しなければならない、そんな使命感が込み上げてきた。そして、それから私は、業務の傍ら、寝る間も惜しんで製品化の為に奔走したものだ。その結果は、お前も知っての通りだ」

 

 そこで一拍置くと、悠介社長は更に言葉を続ける。

 

「今思えば、新米社長だったあの頃の経験がなければ、私は、この会社をここまで成長させる事は出来なかっただろう。だからこそ、あの頃の、初心を忘れぬように今日まで勤しんできたつもりだった」

「だった?」

「だが実際には、リーディングカンパニーという地位を得たことで、知らず知らずの内に胡坐をかいていたようだ。技術は日々進歩し、リーディングカンパニーという地位も、絶対的ではないと、プロトゼノンを目にし、まざまざと思い出したよ」

 

 そして、再び歩み出し、程なく椅子に腰を下ろした悠介社長は、社長机の引き出しを開けると、徐に紙の束を取り出し机の上に置いた。

 

「故に、今一度初心に立ち返るべく、私はこのプロジェクトを進めていきたいと思う」

「プロジェクト?」

 

 悠介社長の口から飛び出したプロジェクト、先ほど取り出した紙の束は、そのプロジェクトの計画書であったようだ。

 計画書を受け取った拓也は、計画書に軽く目を通すと、目を見開き、「Dプロジェクト」と小さく呟いた。

 

「そうだ、我が社の次世代LBX開発プロジェクト、Dプロジェクトだ」

「でも、そんなプロジェクトの計画書を、どうして俺なんかに……」

「お前に、このプロジェクトのリーダーを任せたいからだ」

「っ!」

「どうして、そう言いたげだな。……リーダーを任せられるのはお前しかいない、私が、そう判断したからだ」

 

 暫し口をつぐみ考えに耽った拓也は、やがて、ゆっくりと口を開く。

 

「……分かった。引き受けよう」

「ありがとう、拓也」

 

 こうして、Dプロジェクトと呼ばれるタイニーオービット社の次世代LBX開発プロジェクトが、正式に始動する運びとなった。

 

 

 

 

 一方、その頃。

 Dプロジェクトを始動させる切っ掛けとなったプロトゼノン、並びに驚異と称されたLBX達を開発した当人たちは何をしていたのかと言えば。

 

「発射カウントダウン開始まで、後一分」

 

 日本国内、海風を感じられる、そんな海岸近くに存在する場所。

 周囲に住宅やビル等の建造物の他、雄大な山など、視界を遮るものがほとんど存在しない、そんな見晴らしの良い場所。

 

 そんな場所で一際目を引いているのが、千メートル級の滑走路やヘリポート、更には格納庫や管制塔等々の施設群。

 一見すると空港に見えるが、その施設群は空港ではない。

 では一体、この施設群は何の為に整備されているのかと言えば、それは、宇宙への玄関口。

 

 そう、ここは航空宇宙関連の実験場なのである。

 

「いよいよですね」

「あぁ」

 

 そんな実験場の一角、発射台に固定されたロケット。

 現在官民問わず一般的に使用されている超小型衛星用の、所謂小型ロケットよりも更に小さな、超小型ロケットとも言うべきもの。更に、そんな超小型ロケットの一部にはLBXらしきものが接続されており、そんな超小型ロケットを、サイバーランス社の開発スタッフ達は打ち上げ管制センターでモニターを介して見守っていた。

 

「カウントダウン開始、10、9、8──」

 

 やがて、開発スタッフ達が見守る中、発射のカウントダウンが始まり、カウントダウンが進むにつれ、開発スタッフ達の間にも緊張が増していく。

 

「3、2、1……、点火!」

 

 そして、カウントダウン終了と共に、超小型ロケットは閃光と共に轟音を響かせ、直後、青空に白煙で弧を描きながら、瞬く間に青空の彼方へと上昇していった。

 

「LWC7号機、間もなく高度100km、カーマン・ラインに到達します」

「おぉ!」

「いいぞ! いいぞ!」

 

 オペレーターからの報告を聞き、管制センター内に開発スタッフ達の感嘆の声が響く。

 

「LWC7号機、到達から120秒経過、自由落下を開始します」

「LWC7号機、間もなく高度40kmに差し掛かります。ゼーゴック、LWC7号機との接続解除……、ゼーゴックの分離を確認」

「LWC7号機、予定海域への落下を継続中。ゼーゴック、帰還コースを取りながら帰還中」

「ゼーゴックの帰還プログラムは正常に作動しているようだな」

「はい。これで一安心ですね」

「いや、ゼーゴックが滑走路に降り立つその瞬間まで、油断はできないさ」

 

 超小型ロケットに接続されていたLBX、ゼーゴックと呼ばれた機体は、程なくプログラムに従い、開発スタッフ達が見守る中、無事に実験場の滑走路に着陸を果たすのであった。

 

「やりましたね! これで、プロジェクトは次の段階に進めます!」

「あぁ。……しかし、まだまだ超えるべき壁は沢山ある」

 

 ゼーゴックの着陸を見届けた開発スタッフ達は、歓喜に沸く。

 だが、スタッフの口から零れた言葉の通り、今回の成功は、彼らが進めている壮大なプロジェクトの通過点でしかない。

 

 彼らが進めている壮大なプロジェクト、それは、単独で大気圏を離脱する事が可能なLBXの実用化、というものである。

 このプロジェクトを成功させる為、彼らは、プロジェクトMSにより生み出された、ナズーを上回る水陸両用性能を有する機体、ズゴックをベースとしたデータ収集並びに管制ユニットのゼーゴック、並びにLWCと呼ばれる超小型ロケットを使用し、実験を行っていた。

 

「だが、たまには喜悦するのも悪くない。ゼーゴックの回収を終えたら、宴会に行くか!」

「いいですね! 行きましょう!」

 

 彼らの目は、地球を飛び出し、宇宙に向けられていた。

 しかし、その事を他の者達が知るには、今しばらくの時間を要するのであった。




 やぁ皆、エントリィィィィィィィィ!!
 今日は、作中に登場したゼーゴックについての豆知識だ。

 OVA作品、機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079-にて初登場となったこの機体は、衛星軌道上から地上への降下強襲を目的としたモビルダイバーシステムとも呼ばれ、ズゴックの上半身を転用した機動管制ユニットと、大量兵器輸送ユニット(LWC)により構成されている。
 機動管制ユニットとなったズゴックは右腕部をセンサーに換装する等改修が施されているが、左腕部のメガ粒子砲はオリジナル同様に使用可能だ。
 大量兵器輸送ユニットは作戦に応じて様々な兵器を選択可能で、作中では対艦用大型ミサイル、R-1(アール・アイン)と呼ばれる28連装ロケットランチャー、クーベルメと呼ばれる試作拡散ビーム砲を運用したぞ。

 では! また。
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